羽田空港跡地5.9haを大田区がURと財務省から合わせて165億円で購入する議案を可決しました。奈須りえは以下の理由から反対しました。補正予算の反対理由と合わせてご覧ください。
大田区民が使えない羽田空港跡地に165億円+ 和泉洋人内閣総理大臣補佐官座長で動く、財務省に88億URに77億
https://blog.goo.ne.jp/nasrie/e/34a49705842b4a51dcbb1a9d3138d925
フェアな民主主義 奈須りえです。
第59号議案第60号議案の「土地の取得について」について反対の立場から討論いたします。
今回の二つの議案による、5.9haの土地購入は、不思議なことだらけです。
財務省は昨年の9月に時価売り払いを決めています。
その後財務省が不動産鑑定に出したのが昨年末と財務省関東財務局から聞いています。鑑定結果が出るまでに6か月かかったそうですが、通常これくらいの期間かかるうえ、大田区が6月に土地購入できればいいといった要望をだしていたと聞きました。
9月に国有財産関東地方審議会答申結果が出ているのですから、作業にもっと早く取り掛かることもできたでしょうし、大田区も当初予算に間に合うよう国に求めることもできたはずです。
大田区は、当初予算に算定できず、臨時会での予算送付となったことを、相手方の価格の提示から見積もり合わせに変更したため、と説明していますが、そもそも、大田区は、当初予算に間に合わせようという時間軸で動いていなかったことになります。
しかも、不思議なのが、大田区が財産価格審議会を開催していないことです。
当初の相手方のつまり財務省の価格の提示であれ、見積もり合わせであれ、あれだけ広い土地ですから、おおよその価格の目安を持っておきたいと考えるのは当然だと思います。
広い土地の値段は、買える人も限られ安くなるはずです。しかし、大田区が買うと手を挙げている中での値段決めとなれば、国は高く売りつけようとするでしょう。大田区が財産価格審議会を開催していないとなれば、高くかわされる可能性もありますが、高値かどうかさえ大田区はわからないことになります。
しかも、見積もり合わせは、大田区が価格を記載した札をいれ、予定価格以上で契約が成立する方法ですが、5回までと決められていて、5回全部予定価格より低ければ、土地を取得できないことになります。
高すぎる金額を入れれば、区民に損失を与えることになりますし、低すぎれば、土地を取得できません。
通常であれば、大田区として妥当な金額の目安を持っておくべきですが、大田区は、この価格の目安を専門家の意見を踏まえながら決めたと言います。
貸し付ける地代が、事業者やコンサルでしたから、今回も土地を購入したい事業者、コンサルに聴いたのかもしれませんが、だったら、財産価格審議会を開催すべきだったのではないでしょうか。昨年の関東財務局の審議会終了が9月ですから、価格の目安を知るための不動産鑑定の時間は十分あったはずです。
それどころか、大田区は国から買うに際して財務省の見積もり合わせのために札に記載した金額を決めるためのやり取りや打ち合わせに関する文書は存在しないと言っています。
個人的な口頭のやりとりで88億円がきまったなら問題で公文書として残すべきです。
森友学園の財務省の土地取引でも価格決定に関わる文書の存在が問題になり、文書の改ざんの問題にまでなり、財務省は国民の信頼を大きく損ねました。こうした反省から相手方価格の提示から見積もり合わせになったはずですが、大田区が価格の根拠を持たず、見積もり合わせが適正となぜ言えるのでしょう。
特にこうした規模が大きい土地は購入者が限られるため㎡当たり単価は低くなる傾向があります。ましてや大田区が買うと決めた土地ですから国の言い値にならない確たる根拠が必要です。
そのうえ、跡地取得に至るまでの意思決定に関わる文書は事務事業の構成または適切な意思決定に障害を生ずる恐れがあるので契約締結後に公開すると言いますが、今回の契約は対UR、対国と一対一の関係にあり、それ以外の当事者は存在しません。
URについては、当初の平米単価から4割も上がっており理由のわかる文書がどこにもないというのはあり得ません。具体的理由を明らかにせず開示しない理由を付すのは問題です。
隣の第二ゾーンは、国が直接事業者に貸し出していますが、第一ゾーンは大田区が165億円も支払います。買って貸しださなければ、大田区の財源165億円は大田区民のために使えるのに、URと財務省に取られてしまうのです。
なぜ買うか、大田区は歴史的な経緯と抽象的な説明しかしません。
審議会の議事録に大田区が買う第一ゾーンと国が直接貸し付ける第二ゾーンの違いは何かという委員の質問に関東財務局管財第二部長が「過去にいろいろございまして、この羽田空港は戦後GHQに接収された経緯がございます。戦前から空港島の中で暮らしていた住民の方が約3000名ほどいらっしゃった中でGHQから強制立退命令をうけ、大田区の区民が着の身着のままで周辺地域委への移住を余儀なくされた、そういった歴史がございます。こういった過去の経緯を踏まえて、大田区としては自ら土地を取得して、空港の中に町をつくって、大田区としてしっかりまちづくりを行いたいという意向もあって土地購入の要望に至ったということでございます」
とこたえています。
跡地に緩衝帯や緑地の機能はなくなったと答弁していますが、そもそも、「区民生活の安全と快適な生活環境の確保」や「騒音の緩衝帯や緑地の機能」など考えていなかったということです。
区民が住んでいたから買い戻してしっかりまちづくりしたいとなれば、当時の地権者に土地を返すのかと思えばそうではありません。それでは、大田区はこの跡地について、大田区してしっかりまちづくりを行っているかといえば、跡地の開発は事業者を募集し、事業者に提案させますから、内容は事業者が決めているといっていいと思います。
それでは、跡地開発のコンセプトは誰が決めたかといえば、大田区が平成23年3月に作った「羽田空港跡地利用に関する調査~「国際都市おおた」に寄与する第一ゾーンの検討~」の方針が平成27年の統一地方選挙後に大幅に変わっています。
そこに、和泉洋人(いずみひろと)内閣総理大臣補佐官が座長の「羽田空港周辺・京浜臨海部連携強化推進委員会」が大きく影響を及ぼしていることは、その後の委員会報告で「跡地に関する報告は、羽田空港周辺・京浜臨海部連携強化推進委員会でやっていて、動きがきちんと行われて報告できる状況があれば適時、報告する」と答弁していることからもわかります。
まちづくりといっても、それまで大田区が積み上げてきた内容が反故にされて、内閣補佐官が座長でメンバーは国の役人がほとんどの羽田臨海部委員会に仕切られて決まっているのです。国策だと言っていい事業で、だから、国家戦略特区に指定され、サンドボックスに指定されているのです。国家戦略特区も、サンドボックスも、規制を取り払う仕組みですが、サンドボックスは、既存の枠組みにとらわれることなく参加者や期間を限定したら「まずやってみる」ことを許容するしくみです。そうした意味では、跡地に入る企業が研究開発と称して遺伝子やAI武器など何でもできる場所になるのではないかという心配もあります。
大田区が土地を買っても買わなくてもかわりなく、この内閣総理大臣主導のわくぐみでまちづくりが進むということです。歴史的経緯を主張して区民の財源を投入するには、あまりにも高額で大田区民の住民福祉のメリットがみえません。
しかも、跡地はこの5.9haを大田区が購入するだけでなく、大田区が中心となって区画整理事業を行うことも決められています。
大田区が行う区画整理事業ですが、UR施工で、大田区は区画整理の事業計画書さえ見ることができないと答弁しています。UR施工を選んだのは大田区に区画整理のノウハウが無いからですが、それなのに土地を買って大田区がしっかりまちづくりしたいというのも不思議な話です。
また、今回、URから購入する部分と財務省から購入する部分の平米当たり単価が違っていますが、国有財産審議会で、管財第二部長は、「国有地とURの保留地は基本的に評価上はおそらく同じになる」と答えています。
平成28年7月の区画整理の事業概要の時から保留地の単価が㎡あたり21万円から29万円と4割近くもあがっています。残りの宅地を仮にURの単価で購入することになれば、大田区は、さらに155億円しはらわなければなりません。
財務省は昨年の9月に第一ゾーンの時価売り払いを決めています。国有地審議会で、第一ゾーンは売るのに第二ゾーンは貸し出すという違いについて「第二ゾーンは空港の持つポテンシャルを活かすと言った行政財産的な性格があるので、国交省が行政財産のままそれを民間に定期借地によって貸し出す」と言っています。
第一ゾーンを国が直接貸し出さないのは、行政財産的な性格さえないということなのです。
国では民間事業者に直接貸し出せない土地を、大田区が買って民間に貸し出すと、大田区民の負担は総額で一体いくらになるのでしょう。
土地だけで、今回の165億円に残りのたくち購入分概算155億円を加えると300億円を軽く超えます。ほか道路広場に11億円、大田区は羽田空港公園約2.0haも区が施工すると言っていますから、さらに公園の整備費用負担と金額は膨れ上がります。
シティマネジメントレポートで、10年後に大田区の基金が激減し借金が膨れ上がる予測をしていましたが、こうした使い方をしていれば基金はすぐになくなってしまうでしょう。
大田区が購入する理由も、購入したことによる区民のメリットも抽象的で財政負担も莫大で、にもかかわらず、全体像も示されないことから反対いたします。