人口減少が問題になっていますが、東京都は、このまま2045年まで人口微増が続くそうです。(今年3月に国立社会保障・人口問題研究所が発表した人口推計)
東京で起きている問題と日本全体で、あるいは地方都市で起きている問題とは違っているということです。
人口が減ることは、悪いことだと言われていますが、人口が多くて経済の中心・経済のけん引役とまで言われているたとえば東京23区の大田区は、保育園も特別養護老人ホームも足りません。
東京は、土地が高いから、用地確保が難しいし、人が多いからサービス供給量も難しい、と言うわけですが、土地が高いから固定資産税もたくさん入りますし、人が多いから住民税も多いです。ついでに言えば、大企業の本社もたくさんありますから、法人住民税もたくさん入ります。
地方は人口が少ないからダメで、東京も人口が多いからダメ。
不思議な現象が起きていますね。
そもそも、東京で社会保障が足りないということは、経済が良くても、税収は増えないか、税収は確保できても社会保障に使う額が少ないということです。
人口統計を注意深く見ると、実は、出生と死亡の差である自然増減は、東京だと2017年から減少に転じています。
にもかかわらず、その前から、東京の人口は増えていて、その要因は、東京都外からの転出入による社会的増減と、外国人労働者などの受け入れによるその他の増減だということがわかります。
東京は、建築基準法などの規制緩和で、東京での高層マンションはじめとした共同住宅建設を政策的に進めて東京一極集中を作ってきました。
なかでも、地区計画(地権者の合意形成が整うと、用途、容積率、建ぺい率、高さ、敷地規模、セットバック、デザイン、生垣化などの制限や緩和ができる)は住民参加のまちづくりと言われていますが、実際、この制度を使ったのは大手デベロッパーなどで、容積率を上げるなどして超高層マンション建設を可能にしました。
こうした建築関係の規制緩和は、建設事業者に莫大な開発利益をもたらすとともに、東京都の人口を集中させてきたと言えます。
東京都の人口は、自然に増えたのではなく、意図的な経済政策として人口を増やしてきたんですね。
社会保障のバイブルとも言われている平成24年の厚生労働白書(なぜ社会保障は重要か)が社会保障制度について、次のように説明しています。
「社会保障制度は、産業資本主義社会が形成・発展する中で、工業化に伴う人々の労働者化によって、地縁や血縁がそれまで果たしてきた人々の生活を保障するという機能が限定的になったことによって必要になってきた。それら地縁・血縁が担ってきた機能を行政が代替することによって、人々が経済活動に注力することができるようになった。」
厚生労働省のいう社会保障の原則から言えば、最も産業資本主義の進んでいる東京都心部から生み出される税財源は、そこで働く地縁・血縁を失った人たちが住み・暮らし・働くために使われなければならないということですが、それが不十分だということではないでしょうか。
政策の課題は、こういうところに現れていると思いますが、表に出ている人口減少の議論は、どうもピントが外れているように感じます。
ヒト・モノ・カネの集中する東京都から生み出される富は、様々な政策と予算の不備で、都民に還元されていません。人口の多い少ない以前の問題だと思います。
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加えて、東京の問題を指摘するなら、
23区が生み出す税収(財源)のうち約半分を東京都に吸い上げられてしまっている【都区財政調整制度】の問題があります。
23区に本来はいるべき固定資産税と法人住民税を東京都が吸い上げ、そのうちの55%を23区に分配しています。45%を東京都が使ってしまっているのです。美濃部都政のころは、まだ、それを23区民に還元していましたが、石原都政の時に、東京都から23区に流れる社会保障の補助が大きく削減されました。
人口が多いのがいいといっても、今も人口の多い都民の税収は、住民には還元されていません。
人口を増えたからと言って、私たちの暮らしが良くなるわけではありません。