21日に亡くなった元プロレスラーの上田馬之助さん(享年=71、本名・上田裕司)の追悼セレモニーが試合前に行われた。出場全選手がリング下に整列する中、坂口征二顧問(69)が遺影を抱えてリングに上がって、10カウントの弔鐘が鳴らされた。
坂口顧問は「新日本の中でも、上田さんを知っているのは俺くらいになってしまった。日本プロレスのときの先輩で、最初のころはおとなしい人だった。酒を飲んだらうるさかったけどね(笑い)。普段は温厚だった」と振り返った。
アメリカ遠征時にはタッグを組んで戦ったが、日本に帰ってきて北米タッグ王座をめぐって戦った。「(タイガー・ジェット)シンと組んだ上田さんと、よく戦った。金髪に染めて竹刀でぶったたいて、独特のキャラがあった。リングに上がっただけで絵になる人だった。リングを降りても憎まれ役に徹していた」と話した。
昨年は山本小鉄さん、星野勘太郎さん、安達勝治さん(ミスター・ヒト)、柴田勝久さんと同世代が亡くなった。「今年は大丈夫かと思ってたんだけどね。1人、1人逝かれると寂しいね。その分、俺と(アントニオ)猪木さんが元気なんだけどね」と力なく笑った。
悪役プロレスラーとして活躍した上田馬之助(うえだ・うまのすけ、本名・裕司=ひろし)さんが21日午前10時7分、呼吸不全のため、大分・臼杵市の病院で死去した。71歳だった。上田さんは、まだらに染めた金髪と竹刀を振り回すスタイルで「まだら狼」「金狼」の異名を取り、人気を博した。1996年に交通事故で脊髄損傷の大けがを負った。妻・恵美子さんによると、自宅で療養しながらリハビリを続けていたが、21日の朝食後、喉を詰まらせた様子を見せ、救急車で病院に運ばれた。
上田さんは40年6月20日、愛知・弥富市で生まれた。58年に大同工高を中退し、大相撲の追手風部屋に入門(最高位は序二段12枚目)。60年に日本プロレスに入門し、70~80年代には、本格ヒール(悪役)レスラーとして、国際、全日本、新日本プロレスなどで活躍した。事故後、胸から下が動かなくなったが、車いすで度々ファンの前に姿を見せ、講演や福祉活動も行っていた。
上田さんとタイガー・ジェット・シン(63)の凶悪タッグと、数々の名勝負を繰り広げたアントニオ猪木(68)は、所属事務所を通じ「また一人、同じ時代を過ごし、戦いを通じて信頼し合えた友人の旅立ちを見送るのは大変つらい気持ちです」とコメントした。
葬儀・告別式は24日午後1時から玉泉院臼杵会館(臼杵市市浜1126)で行われる。喪主は妻・恵美子(えみこ)さん。
21日に亡くなった元プロレスラーの上田馬之助さん(本名・上田裕司、享年71)の通夜が23日、自宅のある大分・臼杵市内の斎場で行われた。喪主を務めた恵美子夫人(72)によると、新日本などで凶悪タッグを組んだタイガー・ジェット・シンからこの日朝、国際電話があった。「ママ元気? タイガーも元気。上田はNO・1の親友だった。(今月)28日に日本に行く予定」と励ましの言葉をかけられたという。
斎場にはシンをはじめ、数々の名勝負を繰り広げたアントニオ猪木や、名誉顧問を務めていた大分のローカル団体FTOからの献花が多数飾られていた。亡くなった時、あまりのショックで足から崩れたという恵美子夫人は、祭壇の上田さんの現役時代のパネルを前に「満足していると思います」と親族を代表してあいさつ。人柄に触れ「お人よしで優しい人でした」と振り返った。今日24日に告別式が行われる。
幼い頃や若い頃というのは、“人生”というものが解らないから、「プロレス」という舞台だと、アントニオ猪木やタイガーマスク、それにジャイアント馬場、古くは力道山などといった、正義サイドのヒーローに一方的に肩入れし、ファンになり熱狂し応援するが、歳を喰って“人生”というものがある程度解って来ると、実は“悪役”の方が深いのだ、と知る。もっとも力道山は深いけどね。日本における「プロレスの父」、在日であり大相撲出身の暴れん坊で野心家、実業家であり、時に狂気の、力道山の人生はかなりディープだけど。まあ、猪木にも、ブラジル移民の子であり、現地で力道山にスカウトされて、随分力道山に苛められ、どうしても追い付けないエース馬場との確執、日本プロレス興行会社の反逆児、という猪木の人生にも、かなりな深みがありますけどね。昭和のプロレスというのは“人生”の縮図ですね。
プロレスの「悪役」は決して悪人ではない。当たり前ですけど。悪役の重みがありますね。職業=悪役プロレスラーだったんですね。正義ヒーローの引き立て役。まあ、引き立て役は、タッグマッチの正義サイドにも居ますけどね。いわゆる「やられ役」。悪者チーム、昭和40年代50年代前半頃までは外人チーム、それ以降は日本人の悪役チーム、その敵側に試合前半、反則攻撃でメッタメタにやられる、正義サイド二番手三番手の良いひとレスラー。タッグマッチの前半、外人の反則攻撃で必ず流血させられるレスラーですね。敵討ちにエースが出て行き、試合後半で悪者レスラーたちをこてんぱんに叩きのめす。昭和のプロレスの試合の構図は単純明快でした。それで満員のお客さんは大喜び。昭和も終わり頃、平成に入ってからはプロレスも試合進行の構図が複雑になって行ったみたいですね。でも、基本、正義のヒーローが居て、やっぱり悪役が居た。プロレス図式のベビーフェースとヒール。今、プロレスは日本プロレス史上一番の下火状態でしょう。極寒の冬の時代。昔の単純なプロレス図式ではお客さんは納得しない。力道山時代から、プロレスの構図には必ず物語があった。遺恨のストーリー。逆襲のストーリー。実は客はここに酔ってたんでしょうけど。今でも多分、この物語性を入れてシリーズをこなして行ってるんでしょう、とは思うけど。
プロレスの世界って、だいたい基本、新人で入って来る若者はそのプロレスの会社ないしプロレス界に憧れのレスラーが居て、それはほとんどが正義色の強い団体のエースでヒーローレスラーです。団体エースのヒーローレスラーに憧れてプロレス界に入る訳だけど、次期エース的若手レスラーになれるのはほんの一人二人で、あとは正義側と悪役側に振り分けられる。特に女子が顕著でしたね。ビューティー・ペアに憧れてプロレス界に入ったダンプ松本とかブル中野、クラッシュギャルズに憧れてレスラーになったアジャコングとかね。プロレスの悪役は仕事なんですね。普通、仕事って自分の好きなことだけやれないじゃないですか。「こんなことやりたくねえなあ」って仕事も引き受けないと仕事は成立しない。同じですね。でも「悪役レスラー」という仕事はキツい。職場の嫌われ役、とかよくいわれますけど、究極の嫌われ役が悪役レスラーです。ヘタすると自分だけではなく家族までもが嫌われ被害を被る。場合に寄っては、悪役レスラーの女房子供、親までもが難を受ける。
上田馬之助さんも、新日などで悪役レスラーをやっていた時代、上田さんには家族が居たから、上田さんの家に石を投げられて家の窓を割られたりしていた。上田さんの現役時代、家族に及ぶ危険にはかなり心配していたようですね。日本人の悪役レスラーは、ギャラはヒーローレスラーよりも外人レスラーよりも安いし、ファンからは忌み嫌われ邪険な扱いを受けるし、家族のことは被害が及ぶんじゃないかと心配だし、ホント、良い事ない損な役目ですね。でもプロレス興行の中では是非とも必要な役。日本プロレスではヒーローだった馬場選手もアメリカへ遠征に行けば、アメリカマット界では髭を生やして人相を悪くし、下駄を履き竹刀を持って悪役を演じていた。
とうとう故人となられてしまいましたけど、上田馬之助さん、懐かしいですね。「上田馬之助」って歴史上の人物が居るんですね。剣の達人で新撰組の隊士の一人。多分、プロレスラー上田さんのリングネームもそこから取ったんでしょうね。70年代後半から80年代の猪木のとこのプロレス。インドの狂虎、タイガージェット・シンとのタッグを組んで、当時の新日マットで猪木他正義レスラー軍を反則攻撃で徹底的に苦しめた、金狼、狂えるさすらいのまだら狼、悪役レスラー、上田馬之助。当時は僕も興奮してTVで試合を見てました。猪木やタイガーマスクの大ファンである、20代の僕は、タイガージェット・シンも上田馬之助も大嫌いでした。上田馬之助さんも昭和プロレス史を飾る一人です。
昔から、プロレスラーの人は早死にが多い、と言われます。過酷な職業ですからね。相当危険な仕事だし。大きく見せるためにいっぱい食べなきゃならないから決して健康に良い訳でもない。体力維持と試合中の危険回避のために、いつでもトレーニングをしてなくちゃならない。キツくて危険。悪役だと嫌われ恨まれるし。割に合わない仕事なんでしょうね。特に2000年代後半からは、格闘技熱も醒めて、プロレスは本当に下火も下火状態だし、プロレスラーやっててもまとも生活して行けるのかどうか。資本である身体の体力のためにはいっぱい食べなきゃいけないし、栄養とスタミナを着けるためには金が要る。プロレスラーって現代のワーキングプアなんじゃないですかね。
上田さんは71歳まで生きられたんだから、プロレスラーとしては長生きした方なんでしょうか。晩年は事故の後遺症で大変でしたね。悪役レスラーの人って、本当は良い人が多いんですよね。けっこうとっても良い人だったりする。“人生”の深みを教える、悪役レスラー。昭和を飾った有名人がまた一人逝った。寂しいですね。
あ、思い出した、懐かしいな。「俺たちひょうきん族」の中のひょうきんプロレスで、竹刀を持った上田馬之助さんが乱入して来て、タイガージェット・シンに扮していた片岡鶴太郎さんが近付いて行き、自分指差して「トモダチ、トモダチ」とかあるいは「仲間、仲間」とか言ったら、上田さんが竹刀を振り回して追っ払ったシーン。懐かしい、昭和の時代。