旅限無(りょげむ)

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捨石ごろごろ民主党 其の弐

2011-12-06 13:33:45 | 政治
■相変わらず反省が足りない野党第一党の自民党が、手薬煉(てぐすね)引いて待っていたとばかりに実に情けない政権奪回策を発動して民主党内の小沢グループに所属する山岡マルチ大臣と、地元の支援者の不安が的中して舌禍事件を起こした一川シビリアン防衛相に問責決議を突きつけてやる!と息巻いているようです。しかし、閣僚とはいえ今の民主党政権を考えれば、失礼ながえらちっぽけな二つの生首を斬り落として凱歌を上げてみたところで、どこからも喝采は起きず快哉の叫びも聞こえないでしょうなあ。就任直後の会見で「これから勉強します」と臆面も無く語った素人大臣を大量生産していたのは自民党のお家芸みたいなものでしたし、怪しげな団体から政治献金を受けていた閣僚だって少なくなかったのですから、上品に言えば五十歩百歩、下品な表現なら「目糞鼻糞を笑う」の類の話であります。

■そもそも1000年に一度の大災害に襲われて、100兆200兆の緊急救国予算が組めない赤字だらけの財政状況を置き土産にして政権を追われた自民党に民主党政権の稚拙な災害対応を責める資格などありませんし、沖縄の米軍基地問題に関しても民主党政権のドタバタ劇を笑っている立場ではないでしょう。世界一危険な普天間基地を辺野古に移転する計画をまとめ上げた功績を自画自賛して、ちゃぶ台返しでめちゃくちゃにした鳩山サセテイタダク政権以来の迷走に悪口雑言を浴びせてみたところで、沖縄返還時の密約問題を筆頭に自民党政権が進めた安保ただ乗り論の言い訳に沖縄を使った政策が常に正しかったとも思えませんからなあ。少なくとも今の政権よりはマシだった!などと空元気を出してみても国民は振り向いてはくれないでしょう。それにしても官僚主義丸出しの野田ドジョウ政権の血も涙もない機械的な強引さには辟易しますなあ。


……政府は辺野古移設に向けた環境影響評価書の年内提出を目指しており、関係閣僚は沖縄県側の態度を軟化させようと、入れ代わり立ち代わり沖縄を訪問している。だが、田中聡前沖縄防衛局長の不適切発言で、その努力も水の泡になろうとしている。同時並行で玄葉光一郎外相も自民党の標的にされ出した。……今月2日の衆院外務委員会。質問に立った自民党の河井克行衆院議員は……10月26日の衆院外務委での玄葉氏の答弁だった。……河井氏はひとつの疑問を抱いた。玄葉氏が同ビジョンを知っていたのなら、鳩山氏の発言を聞いて「鳩山政権ができたらこの問題で終わる」とは思わないのではないかという疑問だ。逆に、同ビジョンの内容を知らなければ、それはそれで問題ということになる。……「沖縄ビジョンが問題で、これで鳩山政権が終わると思ったのか。それなら(10月26日の答弁と)話が違う」と問いただした。この疑問に玄葉氏は……「沖縄ビジョンでそういう(県外の)方向が出されていたのは承知している。一方であのときのマニフェスト(政権公約)には県外と書いていなかった」この発言と10月26日の衆院外務委での発言を総合すると、「党の政策である沖縄ビジョンに明記していても、マニフェストに明記していなかったため、鳩山氏の発言を聞いて驚いた」ということになる。しかし、この釈明には無理がある。それでは民主党にとって沖縄ビジョンとは何だったのか。…… 

■既に国民の多くは大量にばら撒かれたマニフェストなど手元に残してはいないでしょうし、手にした時にも熟読した人はそれほど多くなかったかも知れません。斜め読みしただけの人も熱心に読んだ人もその後の民主党政治を見ていれば、書いた物であろうと口から出たものであろうと民主党の「言葉」の軽さと空疎さには呆れ果てて腹も立たなくなったいるのではないでしょうか?従って今更『マニフェスト』だの『沖縄ビジョン』だのを謝金の古証文みたいに懐から取り出して閣僚に突きつけてみたところで、なにもかもがウソだったのですから細かい文言の解釈を問われたところで痛くも痒くもない、それほど民主党政権は公約を蔑(ないがし)ろにしてしまったということでなのでありましょうなあ。


一方、首相も今月2日の外務委で「マニフェストには(県外と)書いていない」と強調し、その上で、「選挙直前に党代表(鳩山氏)が発言したわけだからそれは極めて重い」と玄葉氏を擁護した。普天間問題の迷走について玄葉氏は「党全体として責任を負っていかなければならない」、首相は「党で責任を感じなければいけない」とそろって同じ趣旨の答弁をしている。だが、その言葉に重みはない。鳩山氏には当然、問題があるが、玄葉氏と首相の発言には「鳩山氏に責任を押しつけたい」という思いがにじむからだ。沖縄ビジョンとマニフェストを都合よく使い分ける姿勢から「誠意」が伝わってこないのは筆者だけではあるまい。前沖縄防衛局長の不適切発言や、一川保夫防衛相の「(少女暴行事件の)詳細は知らない」発言で沖縄県には怒りが燃え広がっている。外務省幹部からはついにこんな声が漏れ出した。
「辺野古移設の可能性は極めて低くなった。いつまでも『辺野古に移設する』と突っ張ることはできない」
2011年12月3日 産経ニュース 

■思えば政権交代が起こった総選挙は、それまで慣用されていた「地滑り的勝利」どころではなく三つの震源域が連動してズレた東日本大震災にも似た不運な偶然が重なったな不思議な現象だったような気もします。長過ぎた自民党政治を終わらせるのには成功したものの、まさか夢見がちの素人集団が内ゲバにばかり熱心で内政も外交も停滞と混乱の極に達するとは誰も想像しなかったのでありました。大量に当選した1年生議員だけでなく当選回数だけは多い無名のベテラン議員でさえも自分の所属政党が発表した『マニフェスト』や『ビジョン』を熟読研究していなかったのではないか?と今更ながら疑ってしまう事態が頻発しております。自民党政権が米国とやっとの思いでまとめ上げた移設計画をぶっ壊してしまったのは鳩山サセテイタダク元首相個人の責任だ!と言いたいけれども言えない辛さも分かりますが、菅アルイミ首相は昨年12月17日に恐る恐る沖縄を訪問して空き缶叩いての「帰れ!」コールの大歓迎?を受けて逃げ帰って以来ほぼ1年間、首相の訪問は実現せぬまま「マニフェストに書いてない」との国会答弁が出るに至ったのでありますから、基地移設はほぼ不可能だと言えましょうなあ。

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