旅限無(りょげむ)

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捨石ごろごろ民主党 其の壱

2011-12-04 15:06:55 | 政治
■師走に入りまして例年ならばクリスマスとお正月が近いとて、何やらそわそわ気忙しくなる中にも新しい年を迎える清新な気分が徐々に盛り上がって行く頃合なのでありますが……東日本大震災と原発大事故の被災地からぽつぽつと喪中葉書が届き始めますと、早めに用意せねばと思う年賀状に喜びの言葉を書くのも躊躇(ためら)われる重い気分が押し寄せて来るようであります。この8箇月余りの長い長い時間、日本はどうなってしまったのか?その疑問を一身に受けてしっかりと答えを出さねばならないはずの政治はどうなっているのかと思えば、国民の生命財産よりも大事な政党助成金を確保するためだけの政界再編の生臭い風が何処からともなく吹き始めているとかいないとか……。

野田佳彦首相は3日、千葉県立船橋高校の同窓生が主宰する企業経営者団体「政経倶楽部連合会」の東京例会に出席し、消費税増税と環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への交渉参加、安全保障面の強化ーの3点を挙げ「不退転の覚悟で臨む」と実現に強い意欲を示した。
……久々に出席したこの日は、約15分間にわたり熱弁をふるった。しかし公邸に戻った際、一川保夫防衛相について「辞任論にはどう対処するか」と記者団から質問されても無言を貫いた。
2011年12月3日(土)20時48分 産経新聞 

■いざ政権を奪って総理大臣になってみたら、「駅前留学はノバ、駅前演説はノダ」などと下手なダジャレに乗せて気楽に出来もしない絵空事を並べて好き放題に政権批判を続けているわけにも行かず、官僚作文を一言一句間違わないように「慎重」を装って自らの政治家としての無定見が露見しないように、既に二代続けて愚かで軽率な首相を輩出してしまった崖っぷちの民主党代表としては解散総選挙を一日でも一時間でも先延ばしすることにのみ全身全霊を傾けて政権与党の旨味と快感を少しでも長く味わっていようと、内輪と国際会議ではハメを外して相変わらずの大風呂敷を広げるものの、公式の記者会見や国会の場では揚げ足を取られないように木で鼻を括ったような話しかしない野田ドジョウ首相なのであります。

■高校の同窓会では「不退転の覚悟」を熱く語った野田ドジョウ首相は同日の夕方には東京都内に戻って再び「不退転の覚悟」を披瀝していたそうですから、しばらくは「不退転の覚悟」をあちこちで愛用することになるのかも知れません。しかし、マニフェストに羅列した空手形を筆頭に、民主党政権はずっと威勢のよい話を花火のように打ち上げては引っ込める、一歩前進三歩後退を繰り返しているのですから、今更「不退転」を濫発されても「不」の字が余分でうそ臭く感じられてしまいます。退却・撤退・引退の「退」と七転八倒の「転」をくっ付けたような迷走と停滞の民主党政権の2年余りは長過ぎた春の椿事だったような気もしますなあ。


野田首相は3日夕、都内のホテルで開かれた中小企業経営者の会合に出席し、消費税率引き上げを含む社会保障・税一体改革の取りまとめや、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に向けた協議などについて、「不退転の覚悟でしっかりやる」と述べた。……会合は非公開で行われ、首相は15分間のあいさつを行った。出席者によると、首相は当面の政策課題として、消費税率引き上げ、TPP交渉参加、安全保障の三つを挙げ、「自分の代で、捨て石になってけりをつける」などと語った。
2011年12月3日(土)20時5分 讀賣新聞 

■高校の同窓会でも15分間の熱弁だったそうですから、ほとんど同じ内容だったと思われますが、少し色合いを変えて今度は「捨石」です。民主党政権全体が巨大な捨石の山と化しているような気もしますから、その頂上に乗っかっている首相が「捨石」になって転がり落ちる前に捨石の山ががらがらと崩れ落ちるかも知れません。あちこちで新たな三点セット(税制改革・TPP・安全保障)を何がなんでも強引に推し進めるぞ!と吼えて歩いている野田ドジョウ首相ですが、既に紙くず同然ではありますが民主党の『政権交代』マニフェストを開いてみますと、どこにも「社会保障・税の一体改革」の文言は見付かりません。税金に関しては第1章「ムダづかい」の第9項に「公平で簡素な税制をつくる」と書かれておりますが「租税特別措置」の見直しばかり並んでいるだけでした。これは選挙公約だった予算の無駄遣いを一掃すれば増税は不要だ!というホラ話と同工異曲の魔法だったことが今となっては見え見え。

■TPPにしましても「マニフェスト政策各論」の第7章「外交」の第51項には「米国との間で自由貿易協定(FTA)を締結し、貿易・投資の自由化を進める」と掲げてありまして、自民党政権が米国側との交渉に失敗した事実を嘲笑しつつ、自らの外交能力の低さも知らずにうっかり書いてしまった一節だったようです。さらに第52項には「アジア・太平洋諸国をはじめとして世界の国々との投資・労働や知的財産など拾い分野を含む経済連携協定(EPA)、自由貿易協定(FTA)の締結を積極的に推進する」とも書いてありますから、両項目の実現も出来ないまま一足飛びにアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)に向けて向こう見ずな跳躍を試みようと、マニフェストには影も形もなかったTPPに参加するという大博打を打とうという話のようです。

■そして「安全保障」の入り口に横たわっているのが沖縄の普天間基地移設問題であります。しつこくマニフェストにこだわりますが第7章の51項に「日米地位協定の改定を提起し米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」と書かれておりまして、鳩山政権発足以来、一度も「地位協定」に関する交渉が始まったという話は聞けず、その代わり「在日米軍基地」に関しては「国外、最低でも県外」という最終目標が唐突に首相の口から出て大騒ぎになったのでした。それ以降の経緯を野田ドジョウ首相も知っているはずなのですが……。


米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先をめぐり民主党の鳩山由紀夫元首相が「最低でも県外」と発言したことを「誤りだった」と断言した玄葉光一郎外相。だが、野田佳彦首相はこの発言を鳩山氏に謝罪し「過剰な気配り」を演出、玄葉氏も(10月)28日の記者会見で懸命に釈明するなど、腰砕けとなってしまった。発端は(10月)26日の衆院外務委員会での発言だった。
「誤りだったと思っている。あの発言を聞いて、鳩山政権ができたらこの問題で終わるのではないかと思い、現実のものになった」玄葉氏は、鳩山氏が衆院選前の平成21年7月、沖縄県内の集会で「『最低でも県外』の方向で積極的に行動したい」と発言したことに対しこう答弁した。これに激怒したのが鳩山氏サイドだ。……
「『党沖縄ビジョン2008』に『県外移設を模索』と書いてある。それを選挙で言っただけで勝手に言ったわけではない!」しかし、普天間問題は鳩山氏が「県外」にこだわったために迷走した。その反省から、首相は日米合意に基づく名護市辺野古への移設方針をぶれずに進めようとしている。にもかかわらず、首相は(10月)27日夜、鳩山氏らとの会食で玄葉氏の発言について「間違いだ。申し訳ない」と謝罪してしまった。…… 
■「模索する」というのは細大漏らさぬ情報収集に全力を注ぎ水面下で地道な根回し交渉を徹底的に進めることを意味するのが常識なのですが、鳩山サセテイタダク元首相にとっては選挙前の景気づけにリップサービスの材料にしてしまうことを意味していたようです。野党時代ならば「だったらいいなあ。ねえ、皆さん!?」と聴衆を煽って盛り上げる材料にしても良いのでしょうが、もしかしたら本当に政権交代が実現して自分が総理大臣になってしまう可能性が少しでも見えている時には言ってはならない事でしたなあ。


玄葉氏自身は(10月)28日の記者会見で、首相の謝罪について「直接聞いていない」としたものの、「『誤りだった』との認識に変わりはないか」と問われると「いずれにしても、沖縄の皆さんに大変申し訳ないというのが私の心理だ」とはぐらかしてしまった。当の鳩山氏は28日、都内でアレクサンドル・パノフ元駐日ロシア大使と会談するなど、引き続き外交での影響力発揮に意欲を示している。沖縄では鳩山氏の議員辞職を求める声が依然としてくすぶっているのだが。
2011年10月28日 産経ニュース 

■沖縄県民に愛想尽かされ、ママの金で飼い慣らしたはずの手下にも逃げられ、虎の子だったロシアとのパイプも使い物にならなくなった鳩山サセテイタダク元首相は、次の選挙に出ようと出まいと政治生命は尽きたも同然のようで、菅アルイミ前首相と揃って存在感は皆無で何処でどうしているのやら……。こうした異常な光景を見ただけでも民主党には政権担当能力はまったく無かったのだと改めて分かるのであります。勿論、この話題は直近の防衛相と高級官僚の舌禍事件との関連で引き出したものなのですが、この問題は野田ドジョウ首相が「適材適所」だと強弁する任命責任だの防衛省内の認識不足だの、あるいは一大臣や官僚の劣化などという簡単な問題ではないのではないか?という深刻な不安から始まっている話なのであります。

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2 コメント

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Japanese (noga)
2011-12-04 15:50:32
英米人の脳裏には、現実の世界があると同時に、非現実の世界観 (world view) がある。

現実の世界を現在時制の内容で表現すると、非現実の世界は未来時制の内容として表現できる。
現実の世界と非現実の世界は、英語では一対一の対応がある。
そして、現在時制の内容に対応した未来時制の内容が過不足なく考えられる。

真実は現実の中にある。が、真理は考え (非現実) の中にある。
現実は真実である。現実の内容として述べられる非現実は嘘である。
時制がなく、現実と非現実の区別がつかなければ、本人は嘘ついてるという自覚はない。
話の内容が現実離れしていることに違和感がない。

現実の内容は五感の働きにより得られるが、非現実の内容は瞑想により得られる。
現実の世界が過不足なく成り立つように、考えの世界も過不足なく成り立っている。
もしも、考え (非現実) の世界に矛盾があれば、それを見つけて訂正しなければならない。
自他が協力して構想の中の矛盾を丹念に淘汰すれば、非現実の世界は現実の世界と同じ広がりと正確さをもち、場当たり的な発言の内容とはならない。

日本語脳は、非現実の内容を脳裏にとどめ置くことができない。
それは、日本語には時制がないからである。
日本人は常に実を求めている。現実にとどまることのみを信じている。
日本人の考えは、現実の外に出るものではない。
現実を現実の外にある理想に導くものではない。

西遊記に出てくる孫悟空は、自己の有能さに得意になっていた。だが、釈迦如来の手のひらの中から外に出ることはできなかった。孫悟空には、世界観がないからである。

英語の時制を使うことができない英米人は、子供のようなものである。
だから、非現実の世界を考えることができない日本人は、12歳の子供のように見える。

考えがなければ、議論ができない。
日本では「議論をすれば、喧嘩になります」と言われている。
意思は未来時制の内容である。
時制が無ければ、恣意となり、その思いは公言にもならず宣言にもならない。

物事の決着は、談合により行われる。
そこには、公言も宣言も必要でない。
意見を述べようとすると「理屈を言うな。理屈なら子供でも分かる」と言って相手にしない。
もっぱら恣意と恣意のすり合わせを行って決着する。いわゆる、どんぶり勘定である。
和をもって貴しとなすためには、金を配るしかない。これも馬鹿の一つ覚えか。
現ナマは、現実の内容であり、日本人には信用の証となる。

究極の人生目的は、狭義の自己利益・金を得ることにある。
国内では、学閥など序列を作って自己利益を確保しようとする。それで、忠義が尊ばれている。
人間が縦一列に並んで他を入れない密な人間関係である。
序列作法の励行により、序列の外に出られない島国根性が植えつけられる。だから、玉砕を覚悟する。

国内においても、国際社会においても、日本人は金を配って存在感を示そうとする。
これもひとえに社会の中での序列順位向上のためである。
だが、日本人は内容のない発言により信用を失うことが多い。
それでも、日本人は人類のために貢献している。
だが、その貢献の仕方は、発言のない家畜が人類に貢献するのと似たところがある。

http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/terasima/diary/200812
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nogaさんへ (旅限無)
2011-12-06 15:26:55
いらっしゃいませ。毎回、痛烈な日本人(語)批判をありがとうございます。「考え (非現実) の世界に矛盾があれば、それを見つけて訂正しなければならない。自他が協力して構想の中の矛盾を丹念に淘汰すれば、非現実の世界は現実の世界と同じ広がりと正確さをもち、場当たり的な発言の内容とはならない」にはまったく同感です。国会で揚げ足取りと口喧嘩ばかりしている間に日本はどんどん衰えて行くのでしょうね。
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