旅限無(りょげむ)

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良いお役人 其の壱

2006-03-29 12:24:46 | 政治
■まったくお役人というのは能天気な物だなあ、と呆れるような投稿文を見つけましたぞ。お役人の名前は福川伸次さんと言います。結局は「天下り」法人の自己主張らしいのですが、その能天気ぶりが並大抵でないので記録として書残して置こうと思います。3月23日の読売新聞13面、『論点』に投稿された文章です。題名は「新日本様式」だそうです。大体、お役人が「新」と言ったら眉にたっぷりと唾を付けなければなりません。

新日本様式協議会が発足した。現在の参加者は、松下電器、トヨタ、三越など47企業と、日本貿易振興機構(ジェトロ)など18法人、デザインや美術に学識の深い20人の有識者たちである。発足は経済産業省の新日本様式・ブランド推進懇談会がきっかけとなった。私も参加したが、懇談会では「ジャパネスク・モダン」(今日的な日本らしさ)が強調され、日本の伝統的な文化や技術を今日的な要素に再設計し直し、日本の新しい魅力づくりとブランド発信につなげたいという内容の提案をまとめ上げた。……

■「協議会」だの「懇談会」だの、税金の無駄遣いが止められないお役人達は、愚にも付かない「提言」やら「レポート」を作るのが大好きですなあ。この段落が「まとめ上げた」で終っているのが、何とも鼻に付く大時代的な駄文の臭いがぷんぷんなのですが、ご本人は酔っ払っているので、その悪臭に気付かないのでしょうなあ。47企業の皆さんは、デザインとブランドを武器にして国の内外で鎬(しのぎ)を削って競争している真っ最中でしょうから、暇なリタイヤ役人の道楽に付き合うのも大変でしょう。各企業が練り上げている「デザイン」こそは秘中の秘、外務省が顔色を失うような熾烈な情報合戦を繰り広げているのは業界の常識なのですから、こんな暢気な茶飲み話の場で披露するようなクズ情報など、何の価値も無いに決っているでしょ?


中国を筆頭にアジア各国の産業の強化で、激しいグローバル競争が展開され、日本の産業が価格や機能の優位性だけで差別化を図ることは難しくなっている。加えて、グローバル化の進展は、人々に自己の独自性を、精神面とりわけ文化に求める意識を促している。いまや国際競争の焦点は、その製品やサービスの醸し出す品格や趣向といった文化性に移っている。……

■もしも、この駄文が20年前か30年前に書いた物ならば、堺屋太一さんの後に続く人材?なのかとも思えますが、この人はどんな新聞を読み、テレビのニュースを観て暮らしているのか、理解できない時代錯誤丸出しの話ですなあ。役人時代に見に付けた作文術が大脳に染み込んでいるのが良く分かる、その意味では貴重なサンプルですぞ。「産業の強化」「グローバル競争」「意識を促す」などの意味不明で明らかな単語の誤用にも気づかない神経は見上げたものですし、藤原正彦先生を意識して「品格」などと平気で書けるセンスも素晴らしい役人根性の精華でしょうなあ。段落の最初に「中国」を置いて、「品格」で締める流れに、御本人はまったく違和感が無いようです。大したものです。

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