旅限無(りょげむ)

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イラク内戦 其の弐

2007-01-31 21:48:22 | 外交・情勢(アメリカ)

……バグダッドの自動車爆弾は中心部ハラジの中古品市場で起きた。現場は、電化製品や衣類、薬品などを売買する人々で混みあう場所として知られ、爆発は断続的な銃撃戦の後で発生したという。周辺に駐車中の10台以上の車両も爆発によって燃え、黒煙が立ち上るほどの威力だった。イスラム教シーア派主導のマリキ政権は今月、宗派や政治的な所属を考慮することなく、不法な武装集団を壊滅させると宣言。ロイター通信によると、21日には3200人の米兵が新たにバグダッドに到着し、22日早朝には駐留米軍の支援を受けたイラク軍が、スンニ派住民が多く居住するバグダッド北部のアダミーヤ地区を封鎖するなど、武装勢力の封じ込めに全力を挙げていた。

■悪者扱いされるスンナ派が、大規模な封じ込めに怒って市の中心部で暴れたということなら、「4つの戦争」には含まれない「反政府活動」になりそうですなあ。イラク民主化の唯一の成果だったはずの新政府の樹立が、新たなテロの原因になってしまったら、ブッシュ大統領には弁解の余地が無くなってしまいますぞ。


バグダッドでは、今月16日にも大学での爆弾テロなどで95人が死亡したばかりだった。……22日には…イラク北部のタルアファルやモスルで道路脇の爆弾や自動車に仕掛けられた爆弾が爆発、警察官や兵士ら約20人が死傷した。
1月23日8時0分配信 産経新聞

■家の中に居たら米兵に逮捕されたり誤射される危険が有るし、市場に行けば自動車爆弾が炸裂するし、学校に行ったら自爆テロで、物騒な市内を出たら道路脇に仕掛けられた遠隔操作の爆弾が爆発します。朝日新聞の記事によると日本風に言う「無縁仏」がどんどん増えているのだそうですなあ。政権を取ったシーア派が力を持ってしまったので、市内の墓地もシーア派の縄張りになって、スンナ派の遺族は怖くて埋葬に行けず、誰かに頼んで宗派を明かさずに埋葬してもらうのだそうです。お葬式も挙げられない遺族の中からテロリスト志願者が出て来るのは仕方が無いような気もしますなあ。テロによる犠牲者の陰に隠れてしまいますが、フセイン時代には中東でも有数の設備を誇っていたバグダッド市内の病院群が、長年の空爆と電撃攻撃によってぼろぼろになってしまい、満足な治療が受けられないまま命を落とす患者がたくさん居るそうです。その内、バグダッド市は広大な墓地に囲まれてしまうかも知れません。

■イラクの陸上では戦闘が終結していますが、米軍は航空母艦を3隻もペリシア湾に並べて北のイランと南のソマリアに圧力を掛けているそうです。石油を運ぶタンカーが引っ切り無しに通過するペルシア湾の入り口がホルムズ海峡で、その外側にはイエメンという国が有って、米国海軍はアデンに軍港設備を持っているのですが、水上自爆テロで2000年10月に巡洋艦コールに大穴を開けれてから、ペルシア湾内に逃げ込んで?いるようです。ですから、アフリカ沿岸に用事が出来る度に、タンカーや貨物船の間を縫って出入りしているという実に迷惑な状態が続いているらしいのですなあ。

■そこで起こったのが日本のタンカーと米原潜との接触事故でした。日本時間9日午前4時頃、米ロサンゼルス級原子力潜水艦「ニューポート・ニューズ」と川崎汽船所有の大型タンカー「最上川」(16万トン)が接触した事故ですが、甚大な被害は出ず環境汚染の心配も無かったのですが、双方とも使い物にならなくなって修理にも時間が掛かるとの話でした。最近になって原潜の艦長が能力不足との理由で解任されてしまいましたが、そんな人が原潜を操って参加しているのが米国の対テロ戦争なのですぞ!


米紙ワシントン・ポスト(電子版)は24日、米軍が22日、ソマリア南部で対地攻撃機AC130による第2波の攻撃を実施したと報じた。攻撃対象は国際テロ組織アルカイダ関係者とみられるが、作戦の成否は不明。作戦はエチオピア軍と合同で行われたという。米軍は今月上旬、98年のケニアとタンザニアの米大使館爆破テロの容疑者とされる3人のアルカイダ幹部を標的とした攻撃を実施したが、失敗したと言われる。米軍は空母1隻をソマリア沖に派遣し、ソマリアでの軍事作戦を支援している。
1月25日 毎日新聞

■このように米軍はアルカイダの残党を大仰に追い回しているのですが、莫大な戦費を使っても効果が上がりません。映画『ブラック・ホークダウン』に絵が描かれたように地上戦で大失敗をしてから、恐ろしくて陸軍部隊を送り込めないらしいのですが、神出鬼没のテロ集団を航空母艦から飛行機を出して追い回すというのは、随分と非効率なことです。イラクからの撤退を民主党が大統領選挙に利用して騒いでいますが、ソマリアに手を出して大恥を掻いたのは民主党のクリントン大統領ですから、イラク以外からの撤収などは民主党も考えていないはずです。


パキスタン内務省によると、首都イスラマバード中心部にある米国系高級ホテル「マリオット」のゲート付近で26日、男が自爆し、ホテルの警備員少なくとも1人が死亡、数人が負傷した。男も死亡した。当局者によれば、爆発物を身に着けた男が従業員専用のゲートから建物に近づこうとし、警備員に制止された際に自爆した。爆発の衝撃でホテルの建物の一部や駐車中の車が損壊した。 
1月26日 時事通信

■アフガニスタンにも兵を増派し、復興資金も積みまして拠出しているのですが、山岳地帯の国境を自由に出入りするテロリスト達は、パキスタンで時々騒ぎを起こします。米国も英国も「主戦場」が決められず困っているのでしょう。本来なら、イラクなんぞに手を出さずにアフガニスタンの復興に集中していれば良かったのでしたが、もう手遅れですなあ。

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