旅限無(りょげむ)

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イラク内戦 其の参

2007-01-31 21:49:11 | 外交・情勢(アメリカ)

イラクの首都バグダッド中心部のペット市場で26日、爆弾が爆発し、AFP通信によると、買い物客ら15人が死亡、35人が負傷した。この市場は、犬や猫、鳥などを販売するガズル市場で、毎週金曜日に開かれる。目撃者によれば、鳥を入れる箱の中に仕掛けられた爆弾だったという。市場のある商業地域バーブ・シャルジ地区では22日、中古品市場で88人が死亡する爆弾テロが発生。25日も別の商業地域のカラダ地区で80人が死傷する自爆テロが起きている。イラク政府は米軍増派を受け、不法武装勢力に対する圧力を強めている。……
1月26日 読売新聞

■これは「4つの戦争」の「(3)武装勢力による攻撃」のようですが、反政府活動の一環なのか、宗派間の対立が理由なのかは分かりません。それにしても、ペットの鳥を入れる箱に爆弾を詰めて持ち込まれては堪りませんなあ。


イラクの首都バグダッドで27日、2台の自動車爆弾が爆発し、合計で15人が死亡した。爆発があったのは、イスラム教シーア派住民が多く居住する地区。イラクではこのところ、買い物客で混み合う地域を狙った武装勢力による攻撃が相次いでいる。この日の爆発も、果物などを売る市場で週末の買い物客を狙ったものとみられる。……イラクのマリキ首相の事務所によると、ブッシュ米大統領は27日に同首相と電話会談し、治安確保に向けた計画を全面的に支援すると述べた。……
1月28日 ロイター

■バグダッド陥落直後から、ブッシュ大統領は何度「治安確保」と言ったでしょう?日本政府も他人事ではありません。特別に法律まで作って復興支援に出向いておきながら、お役御免となって無事に帰還してすべてが終わったような気になっていては行けないのでしょうなあ。ブッシュ大統領の大失敗だったのは明らかですが、それだからと言って人間らしい生活が送れない状態にしたままイラク国民を見殺しにして良いはずはありません。別におっ取り刀で武装勢力と戦いに行かなくても、長年の石油購入国として中東諸国に働き掛けて独自の国際会議を開けるくらいの外交力を示さなければならない時期ではないかと思います。アジアの外れで暢気な顔をしていたことが、こうして関係国が殺気立っている時には案外と毒気に当てられずに公平な立場で重要な役割を果たせるような気がするのですが、肝腎の人材が政界にも官界にも居ないのでしょうなあ。

■そんな感想を抱くのも、事態は既に「治安回復」などと言っている場合ではなくなって、立派な内戦状態に入っているからなのです。


イラク中部のイスラム教シーア派聖地ナジャフ近郊で28日、駐留米軍とイラク軍の合同部隊は、正体不明の武装勢力と激しい戦闘を展開、イラク治安当局者らによると、武装勢力側の死者は250人以上に上った。戦闘中に米軍のヘリ1機が撃墜され、乗員2人が死亡、イラク兵が少なくとも19人が死亡した。戦闘は、ナジャフの北約20キロの地域で同日朝に始まり、米軍は戦車や攻撃ヘリを投入、同日夜になっても戦闘が続いた。

■「正体不明の武装勢力」というのは無気味な表現ですが、宗教的な情熱に冷水をぶっかけるような政策を採っていたサダム・フセインが居なくなった後、一挙に宗教的な感情が純化されて噴き出すのは予想されたことで、新興宗教風の集団が林立するのも不思議ではないわけです。


ロイター通信がイラク警察筋などの話として伝えたところによると、武装勢力は「天国の戦士」と名乗り、シーア派の中心的教義ともいえるマフディー(救世主)の降臨が近いと唱えるアハマド・ハッサーニ・ヤマニという指導者が率いる終末論的なカルトの一群。ヤマニ師はナジャフに事務所を構えていたが、1月初めに当局により閉鎖を命じられたという。

■ブッシュ大統領自身が、挫折続きでアルコール依存症になっていた身を「神に救われた!」と公言しているのですから、イスラム教徒の信仰心を否定するわけには行きません。「カルト」というややこしい問題が「治安回復」に入り込んで来ると、宗教的な熱狂が逆に燃え上がって伝統的な集団にも引火する危険が高まります。

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