旅限無(りょげむ)

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フラット化する世界? 其の四

2007-01-31 09:26:50 | 外交・世界情勢全般

タス通信によると、イランの最高指導者ハメネイ師は28日、テヘランを訪問したロシア安全保障会議のイーゴリ・イワノフ書記と会談し、石油輸出国機構(OPEC)型の天然ガス供給国協力組織の創設を提案した。ハメネイ師は会談で「世界の天然ガス埋蔵量の半分はロシアとイランにある。両国は互いに助け合い、OPECに似たガス分野の協力組織を創設することができる」と述べた。同通信は、イワノフ書記がハメネイ師の発言にどのように応じたかについて伝えていない。

■二酸化炭素の発生量を抑え、燃料電池の原料にもなる天然ガスは近未来の主要エネルギーです。その埋蔵量の半分が、ロシアとイランに有る!石油一家の息子でもあるブッシュ大統領でさえ、しぶしぶ節エネルギー政策を口にしなければならなくなった米国も例外ではありません。天然ガスを人質にとって米国を締め上げようとするのなら、米国は黙って居ないでしょうなあ。ロシアが軽率な返答をしなかったのは、既に欧州が警戒感を強めているからでしょう。悪夢のような2度の「石油ショック」を経験している世界は、OPECの動向を凝視し続けていますが、幸か不幸か話し合いがまとまらない体質を持っている組織なので少しは安心もしていられます。しかし、たった2カ国で取り引きの半分を支配してしまったら、これは世界を支配したようなものですから大変です。


英フィナンシャル・タイムズ紙は昨年11月、北大西洋条約機構(NATO)が同月に「ロシアがアルジェリア、カタール、リビア、中央アジア諸国、イランなどとOPECのようなガス・カルテルをつくる可能性がある」との極秘報告書をまとめたと報道。ロシア大統領府はガス・カルテル創設の情報を否定している。イワノフ書記のイラン訪問に先立ち、フリステンコ露産業エネルギー相が今月19日、アルジェリアを公式訪問して資源分野の関係強化を確認しており、世界最大の天然ガス輸出国ロシアの動向を欧米は注視している。
1月29日10時31分配信 毎日新聞

■イランとロシアが組んで、そこに中央アジアが加われば「上海機構」と同じ組織になってしまいます。そこにアルジェリアとカタールとリビアを取り込むのは簡単でしょうし、埋蔵量の半分を握っているイランとロシアが権力を握るのは明らかですから、国際社会に対する恐るべき影響力を持つことになりますなあ。かつてのヒトラーが目指したのが、問題の埋蔵地でした。EUがその歴史を繰り返さないことを祈るばかりですが、核開発疑惑に天然ガス・カルテル計画が絡み合うと、EUは米国と連携して圧力を掛けるでしょうから、米国がその動きをイランが「悪の枢軸」の首魁である証拠だ!などと言い出したら、イラン攻撃を黙認する国が続出する心配も有ります。

■グローバル化が進めば、国際平和が実現して人類全体が豊かになって幸せな世界が出現する、そんな楽観的な話が有るようですが、こうして水やエネルギーが偏在している現状を考えると、世界が「フラット化」されるとは思えなくなりますなあ。

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