旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

気が重い民主党政権下の新年 其の壱

2011-12-16 15:08:26 | 政治
■米国のオバマ大統領が「米国のイラクでの戦争は終わる!」と始めた大統領と同じくらい唐突で無責任に宣言してしまいましたが、アフガニスタンからも忙しく軍隊を引き上げて選挙公約を一つでも実現して再選を目指そうと必死のようであります。米国、ロシア、チャイナ、韓国などなど来年は世界が一変するような各国首脳の交代劇が予定されておりますから、今年中東諸国で起こった「アラブの春」が来年は何処に飛び火するのかと心配していましたら、露骨な不正選挙がバレてしまったロシアが一挙にキナ臭くなり始め、日本の報道では小さな扱いだったイランによる米国自慢の無人偵察機の無傷での捕獲!という大事件が起こり、これが直接の引き金となったとしか思えないタイミングでイランと取り引きする奴は米国内の銀行取り引きを制限するぞ!という強力な経済制裁法が可決された由。表向きの制裁理由はイランが核兵器を完成させてしまったら世界大戦が始まってしまうかも知れないから、というものなのですが……。

■間も無く終わる今年、日本は東日本大震災と原発大事故に襲われ、欧州統合の象徴だった共通通貨のユーロが崩壊の危機に陥って歴史的な円高が天井に張り付いたまま、とどめはタイでの大洪水で日本企業の海外生産拠点が壊滅的な被害を受けてしまうという文字通りの国難の年だったことになりましょう。しかし、最大の国難は大震災・原発事故に対して無能・無策ぶりを遺憾なく発揮して政権与党の民主党が代表・総理大臣を交代させねばならなかったという政治の不毛がすっかり根付いてしまっていることではないでしょうか?


自民党の谷垣禎一総裁は13日午前の党役員会で、野田佳彦政権の政権運営について「非常に心許ないことが明らかになってきた」と批判し、「選挙を視野におきながら、そのための準備態勢をしっかり整えていきたい」と指示した。政権への攻勢を強めると共に、早期の衆院解散・総選挙に向けた選挙準備を本格化させるよう求めたものだ。……問責決議が可決した一川保夫防衛相、山岡賢次国家公安委員長(消費者問題担当相)の2氏について「徹底的に辞任に追い込まなければいけない。それが参院の意思だ」との声が続出。2氏の更迭を求め、野田政権を追い詰める方針を確認した。
2011年12月13日 産経ニュース 

■年明け早々、谷垣総裁はベトナムやインドを訪問するのだそうですが、やはり野党暮らしは手元不如意で欧米諸国を歴訪する資金が無いようであります。税金の無駄遣いの代表だった在外公館の勘違い役人と結託した大名旅行を楽しめた昔を知る身ならば、手の平を返した外務官僚の冷たい仕打ちと屈辱的な扱いに腸(はらわた)が煮えくり返って「政権奪還」への執念を強める効果だけありそうですが、旅費が安い近場とは言え外遊などしている場合ではないでしょうに?!万が一にも自民党政権の復活を望む声が日本の何処かに残っているとしても、一川シビリアン防衛大臣や山岡マルチ公安委員長を辞職させるような小事を野党第一党の最大の任務だと勘違いしているようでは、次の総選挙までには自民党の復活を臨む声は掻き消えてしまうでしょうなあ。確かに民主党政権はあれもこれを先送りして日本をめちゃくちゃにし続けておりますが、自民党政権から受け継いだ数々の「負の遺産」が大き過ぎて寄り合い素人集団の手に余るというのが実情でしょうから、そんな巨大な宿題を作ってしまった責任を果たすために原因究明と対策提言を大急ぎで実行しない限り、年金制度を食い潰し赤字国債の山を築き、あまつさえ原発問題を隠蔽し続けた罪は放射能汚染と同じくらい簡単には消えますまいぞ。所詮は戦後復興と冷戦時代の米国追従政策を担う仕事が終わった段階で自民党は歴史的使命を終えていたのに、政権にしがみついて政党として老醜を晒し続けたのが日本の悲劇なのでありましょうが……。

■憲政史上最も愚かな首相と最も無能な首相の後を継いで、政権交代の最後の夢をつなぐために「少しはマシな首相」が登場するかと国民の半分くらいは淡い期待を持って過ごした100日余り、嗚呼、やっぱりダメだったかと年末の日本にあちこちで溜息が漏れております。


政権発足100日を経て行き詰まりを見せている野田佳彦首相。党内融和を優先させ重要案件を先送りさせても内閣支持率は下降の一途。その元凶を探ると民主党執行部のダメぶりが浮かび上がる。

■党内融和が裏目-輿石東幹事長
「党内融和の象徴」として首相から党運営を委ねられた輿石東幹事長。就任当初は「参院のドン」として君臨した自民党の青木幹雄参院議員会長ゆずりの剛腕を発揮し、小沢一郎元代表らの動きを封じながら、衆参ねじれ解消に動くのではないかと恐れられた。ところが、結果は腰砕け。日教組で培った組織偏重の手法は裏目に出てしまい、自民、公明両党は対決路線にかじを切った。先見性と決断力を疑問視する声もある。代表的なのは、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉参加をめぐる対応。離党をちらつかせる慎重派を押さえ込めず、11月10日の政府・民主三役会議で、同日夕に予定された「参加表明」延期を首相に進言した。これを真に受けた首相は翌11日に記者会見を延期し「交渉参加に向け関係国と協議に入る」と玉虫色の表現でごまかした。結果は「決断できない首相」と印象づけ、内閣支持率は下落。輿石氏は「熟慮を重ねて慎重派に配慮した会見だった」と満足そうに語り、自らの力不足を首相に責任転嫁した罪の意識は感じられない。…… 

■先の参院選で若い対立候補に落選直前まで追い詰められて僅差で首の皮一枚つながった程度の老兵を「参院のドン」などと持ち上げる提灯記事を書いて図に乗らせたのは大手新聞社の政治記者諸兄ではなかったのか?かつての金丸信と同郷とは言っても外交・安全保障にはまったくの素人、財政も税制も専門外の輿石幹事長に政局を委ねるのが大間違いと言うものでしょう。


一川保夫防衛相と山岡賢次国家公安委員長への参院問責決議への対応も同じ。続投させれば自公との協調路線は崩れ、来年の通常国会の混乱を避けられないにもかかわらず「辞める必要はない」の一点張り。小沢氏に近い両氏のクビを切れば自らの沽券に関わると保身に走ったとしか思えない。…… 

いよいよ「検察VS小沢」の喧嘩が裁判所を舞台に裏も表も公表されつつありますから、菅アルイミ前首相や仙谷ノーコメント政策調査会長代行が政権交代が実現した最大の功労者であるのに病的に毛嫌いして干し上げ、未曾有の天災・人災に見舞われた東北地方の復興担当にもせずに座敷牢に押し込めたままにして、野田ドジョウ首相にも圧力をかけて手足を縛り、最初から経歴と資質に問題のある閣僚人事しか出来ないように追い込んでしまったのも、民主党内の「小沢嫌い」病が原因でしょう。そこにネジレ国会を乗り切る実力者に祭り上げられた輿石参院会長が木に竹を接ぐような中途半端な橋渡しをするから、さらに野田ドジョウ首相を追い詰めることになってしまいます。「党内融和」を掲げたら自分の言葉と努力で党内の壁を破っておくべきでしたなあ。まあ、民主党内には「小沢嫌い」病よりも「次はオレ」病が蔓延していて総理大臣の地位がどんどん低下しているという事情もあるのでしょうが……。

最新の画像もっと見る