旅限無(りょげむ)

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五輪後のチャイナ 其の参

2009-04-25 10:24:43 | 外交・情勢(アジア)
■チャイナ側は知的所有権に関してどんな認識を持っているのか、甚だ疑問に感じていると、次のようなニュースが目に付きましたぞ。

中国国家知的財産権局の田力普局長は21日に行った記者会見で、中国でみられる携帯電話などIT分野の模倣製品について、「模倣や盗作による製品製造は技術革新ではないということを強く認識しなければならない」として、製造企業を戒めた。……「山寨(パクり)」という言葉が流行しており、有名メーカーの携帯電話を模した製品が「山寨機」と呼ばれている。ただ、「山寨」の定義ははっきりしておらず、違法、合法の場合も含まれる。

■随分前のことですが、香港の映画界にはシナリオ本が存在しないという話を聞いたことがあります。シナリオは映画監督の頭の中にだけ存在していて完成するまで映画の内容は出演者もスタッフもまったく分からないのだとか……。理由は簡単で、他社がスパイを送り込んでアイデアを盗み、本家よりも早く撮影して封切ってしまうからだそうです。今は香港映画を米国ハリウッドがリメイクする時代ですから、まともな映画製作が行われているのかも知れませんが……。

■チャイナ観光の土産の中で隠れた人気があるのが日本製を下手に真似た菓子類で、わざわざ日本語の誤記を印刷してある包装で笑える上に、実際に中身を一口食べてみると食感も味もまったく違う!という「一粒で二度おいしい」ちょっと危険な土産物だとか……。


田局長は「パクりとはいっても、独自の新たな技術を詰め込み、品質が良く、機能が多彩で他社の権利を侵害しておらず、合理的な価格で消費者に受け入れられていれば、そうした製品は肯定されるべきだ」との認識を示した。その上で、「中国当局が知的財産権の保護に力を入れていることは、外部からの圧力によるものではなく、自国の発展のためだからだ」と説明。「技術革新を重要視し、独自の技術を持つことを奨励する雰囲気を確立して、考え方を変えることができて初めて、海賊版や模倣による権利侵害などは減る」と述べた。
2009年4月23日 毎日新聞

■パクリ自体が「他社の権利を侵害して」いるという単純な常識を欠いた局長さんのお説教には、まったく説得力がありません。技術と法律の世界的な問題を「雰囲気」と「考え方」の話にすり替えている間は、チャイナが知的所有権を尊重する国に変わることはなさそうです。きっといつまでも「肯定されるべき」偽物が作られ続けるのでしょうなあ。とは言っても立派な自国産の製品をぞろりと並べる大イベントも行われておりますぞ。


中国海軍の創設60年を記念する中国初の国際観艦式が23日、北海艦隊司令部のある山東省青島沖で実施された。米露など14カ国から艦艇21隻が参加。胡錦濤国家主席(中央軍事委主席)が観閲した。中国は近く初の空母建造に乗り出すとみられており、国際協調をアピールして「脅威論」をぬぐい去る狙いがありそうだ。

■チャイナの海軍「創設60年」につきましては、『日本の隣の軍事大国 其の参』に書きましたが、これほど大掛かりな観艦式になるとは予想しておりませんでしたなあ。


……同日午後、胡主席は駆逐艦「石家荘」に設置された台に上り、海上に整列停泊した外国軍艦の間を航行しながら観閲した。中国海軍も最新鋭の大型駆逐艦や機密性の高い原子力潜水艦などを国外に対し初めて披露した。

■チャイナでは国内各地の地名を軍艦に付ける傾向があるようですが、勿論、その多くは「正しい歴史認識」に裏打ちされた革命戦争の激戦地から取られているようです。駆逐艦「石家荘」というのも、1947年11月6日~12日に激戦があった有名な場所で、人民解放軍にとっては最初の大都市攻略に成功したという記念すべき聖地なのだとか……。勿論、この時の敵は大日本帝国陸軍ではなくて蒋介石の国民党軍でした。


胡主席は先立って同日午前、日本を含む29カ国代表団と会談し、軍事路線について「中国は断固として平和発展の道を歩む。中国は永遠に覇権をとなえず、軍拡競争にも参加せず、いかなる国の軍事的脅威にもならない」と強調した。

■本当に「平和発展の道」を進んでくれれば嬉しいのですが、実際には「軍拡競争」の先頭を走っているのを多くの国が心配し日本にとっては立派な「軍事的脅威」となっております。国内インフラの未整備やら教育や医療など急いで対処しなければならない政治課題が多いと言うのに9兆円以上もの莫大な軍事予算を注ぎ続けているチャイナであります。


中国海軍は1949年4月23日に国民党海軍第2艦隊が造反して人民解放軍の華東軍区海軍創立を宣言。陸軍主体の中国軍で70年代までは沿岸警備が主任務だったが、改革・開放政策がスタートした80年代から近海、遠洋作戦に変わり、急速に近代化を遂げた。
2009年4月23日 サーチナ

■今では立派な兵器輸出国にまでなったチャイナは、日本が自ら禁じている武器商売で外貨を稼ぎまくり、日本が自ら禁じている核兵器の技術をどんどん発展させて原子力潜水艦から発射できる多弾頭型核兵器まで持つに到っております。因みに今回の観艦式には、ブラジル、フランス、バングラデシュ、カナダ、オーストラリア、ロシア、タイ、シンガポール、米国、インド、メキシコ、パキスタン、韓国、ニュージーランドの艦艇が招待されております。国名を見渡しますと、チャイナの「お得意様」「手下」「援助対象国」「仮想敵国」「宿敵」がごちゃごちゃと並んでおりますが、当面の邪魔な国であるはずの日本には「海上自衛隊幹部」だけの招待状が届いただけで、自衛隊の艦艇は一隻も招かれませんでした。

■台湾を標的にする時に米国艦隊に脅されないためにも航空母艦の建造を悲願としているチャイナの海軍は、北朝鮮のテポドンみたいに日本を無視して米国との太平洋山分け二等分に向かって突き進んでいるようにも見えますなあ。チャイナが笑いのタネにしかならない偽物を作っている時代の方が、もしかすると平和なのかも知れませんぞ。
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