旅限無(りょげむ)

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冗談も過ぎるとホラーになる 其の壱

2012-02-28 16:08:03 | 政治
■ちょっと前までは政治家やマスコミが「国難!」を連呼していましたが、当時は東日本大震災と同時に発生した原発の大事故を指していたものですが、野田ドジョウ首相が奇妙な政治的判断に基づく「事故収束宣言」をしてしまってからは、何となく国難は近いうちに起こると誰かさんが言っている日本国債の大暴落を意味するようになったしまったような感があります。不思議な話でありますが、忘れっぽさを自覚している日本人は何かと節目を大事にする習慣がありまして、テレビ界では3月11日から1周年を意識した特別番組を山ほど作って準備中のようであります。国会の低劣な議論を聞いていますと、まだ1年しか経っていないのにと思いますし、政府の対応の遅さを見ますれば、もう1年も経っているというのに!と腹立たしくもなります。

■今でも民主党政権は玩具箱をあさる飽きっぽい幼児の如く、あれこれ思いついては責任の所在も不明な言動が続いておりますが、野田ドジョウ首相個人は不退転の決意で消費税増税にまっしぐらなのは、何処かの誰かさんがしっかり手綱を握り脇腹に拍車を掛けているからではなかろうか?それにしましても旅限無が沈黙していた1箇月の間、西の方ではイランとイスラエルが軍事衝突を起こすかも知れず、隣国は祝賀用の配給食糧が足りないからと米国に対して物騒な物乞い外交を始め、欧州のユーロ危機は発生源のギリシアで逆恨みの暴動騒ぎが起こって出口は見えず、世界経済を支えていると鼻息が荒かったチャイナも雲行きが怪しくなってチベットでは悲惨な焼身自殺が続いているというのに、それもこれも対岸の火事だと暢気に眺めている日本では、東日本大震災から間も無く1年になると言うのに復興は進まず原発大事故も何の根拠も無いのに「収束宣言」が出されてまるですべてが解決してしまったかのような錯覚が広がっているような気がします。それなのに日本中の耳目を集めているのは関西の某女芸人が怪しげな占い師のお告げで「神様」に翻弄されているという驚くほどちっぽけな事件なのはどうしてなのでしょうなあ。

■事件が起こっている現場は「維新の会」が旋風を巻き起こしている大阪らしいのですが、流動化が極に達しようとしている政治の問題とは比較にならない小さな芸能ニュースのような気がしてなりません。とは申せ、その政治の方も政権交代が起こってからはお笑い芸人が羨(うらや)むほどの喜劇性を帯びて参りましたなあ。何も出来ない民主党政権ですが、次の選挙で政党自体が胡散霧消してしまう前に消費税の増税だけは強引に実現させてしまおう!と何処かの誰かさんが熱心に糸を引いているようであります。既に棺桶に片足どころか下半身は入ってしまったような民主党ですから、そろそろ我先に桶から這い出して来る議員も増えていきそうな気もします。


民主党は7日、計11人いる党最高顧問・副代表に特定分野の政策を担当させる方針を固めた。最高顧問の鳩山由紀夫元首相は外交、菅直人前首相は新エネルギー政策を担当し、幹事長室に提言する。輿石東幹事長が発案し、両氏も了承した。ただ、首相時代に鳩山氏は普天間飛行場移設問題で、菅氏は東京電力福島第1原子力発電所事故に絡むエネルギー問題で迷走した経緯があるだけに「ミスキャスト」との声も出そうだ。
2012年2月8日 産経ニュース 

■この芥子粒みたいにちっぽけなニュースを耳にした時には心底驚きました。悪い冗談もここまで来れば誰も笑わないでしょうし、民主党という寄り合い所帯の素人集団が隠し持っている恐ろしい一面を垣間見てしまったような恐怖すら感じてしまいます。どうせ最高顧問に祭り上げるのならば、鳩山サセテイタダク元首相には「沖縄問題」を押し付けるべきでしょうし、菅アルイミ前首相ならば新エネルギーではなく「東京電力問題」を担当させるべきではなかろうか?名目だけの名誉職であることは明々白々なのですが、いざ選挙となったら絶対に応援演説のお呼びが掛からない二人組を党の頂点に置いてしまって、一体、どんな選挙戦を考えているのやら……。もしかすると次の選挙の前に民主党自体が消滅していると挙党一致で腹を括っているのでしょうか?

■さてさて、待ちに待った民間の専門家による原発事故調報告書が公表されまして、菅アルイミ前首相が「元凶」と名指しされている由。そら見たことかと胸の痞(つか)えが多少は下りた人もいるかも知れませんが、400頁にも及ぶという報告書に副題をつけるとするならば、2月15日の国会で自民党の塩崎議員が提案した「菅直人リスク」を採用したら如何でしょう。当日の議事録を確認しておきましょう。


私は今回原子力規制組織を見直す最大の目的はなんだろうか?と。私は「菅直人リスク」を無くす、コレではないかと思っています。「菅直人リスク」がわからない人はいないと思いますが、原子力災害本部長、つまり総理が原災本部長となるわけですけれども原災本部長として事故の翌朝早朝に現場に行って大混乱をもたらす。SPEEDIを活用せずに福島の子供たち、県民を放射能に曝す。専門的知識もないのに「ベントをしろ」「海水を注入を止めろ」「浜岡原発を止めろ」「玄海原発の再開を撤回しろ」法令に定めのないストレステストを事故後三ヶ月もたってから「やれ!」。。支持率アップを狙ったパフォーマンスとしか思えないようなことを次々にやる。そしてさらに問題なのはメルトダウンのような重大なことが起きているにもかかわらず二ヶ月も隠蔽する、そういう危機にあたって数々の失敗と身勝手をいっぱいやってきた。こういうことで国民の不安を煽って原子力政策の大きな信用失墜をもたらす、これが私は「菅直人リスク」と言っているんです。…… 

■うーむ、実に的確な「定義」が並べられておりますなあ。まるで民間事故調の報告書を事前に読んでいたかのような内容になっておりましたぞ。


いや、菅直人さんのような人は滅多にいないから大丈夫だと、こういう方もおられるんですけれども私は「菅直人リスク」を抱える政治家はたくさんいると思うんです。国家の統治機構というのはどんなことが起きてもどんな人が総理になっても基本は崩れない、そういうふうに作り上げるのが立法府としてのつとめだと思っているんです。しかしながら残念ながら今回の原子力規制庁は引き続きこの「菅直人リスク」が続くようになっているんです、なんにも変わらずに。ですから被災者、被爆者、避難者にどう顔向けできるのか私には理解出来ない。正直本当に失礼な話だなあと思っております。 

■確かに菅アルイミ前首相のような人物は「滅多にいない」でしょう。あのように気味の悪い人物を総理大臣に選んだのは、決して有権者・国民ではなく民主党議員の過半数でありますから、「菅直人リスク」はそのまま「民主党リスク」へと拡大解釈されて次の選挙では野党は競って愛用することでしょう。それを察知して野田ドジョウ首相は珍しく激して反論したのも当然のことでありましょうなあ。人間、誰しも痛いところ衝かれると感情的になるものです。


原発事故の発生の時の菅さんの対応は立場によっていろいろご批判はあるかもしれない。少なくとも支持率を上げるパフォーマンスは無かったし何かを隠匿しようという意思は無かったということはご理解頂きたい。立場によってご批判があるというのは承知しておりますがその表現だけはおやめ頂きたいと思います。 

■そう言われるとますます「菅直人(民主党)リスク」の印象が強くなって記憶に深く刻み込まれてしまいます。「支持率を上げるパフォーマンス」以外に菅アルイミ前首相は何をしたのでしょう?無様に官邸を追われた後も「延命寺」からお遍路旅を再開したのもパフォーマンス以外の何ものでもありますまい。しかも夜な夜な酒を喰らって同行記者達を相手にクダを巻いていたとの話もありましたから、何とも不謹慎なお遍路さんパフォーマンスであります。

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