旅限無(りょげむ)

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解散・解党・憲法改正 其の七

2010-09-27 15:48:58 | 外交・情勢(アジア)
■『日本新華僑報』の分析が続きます。

(4)中国政府は衝突事故を期に各国の態度を量った。米国は日本に肩入れすることなく、他の主要国及び東南アジア諸国も中国を批判することはなかった。逆に国家主権を守る中国の態度を称賛し、日本の振る舞いに対して疑念を抱いたほどだ。各国は明らかに中国を刺激することを避けている。もし軍を動員して尖閣問題を解決したとしても、各国の態度は変わらない。そのことがはっきりとした。 

■「中国の態度を称賛」した国の名前は寡聞にして存じませんが、援助を受けているアフリカの某国あたりのことでしょうか?まるで北朝鮮の宣伝報道みたいですが、「日本の振る舞いに疑念を抱いた」というのは、逮捕・拘留ではなく「処分保留」で「釈放」してしまったことであるなら、息を潜めて事態の推移を見つめていた関係諸国が呆れ返って「日本は何をやっているんだ?!」と返答不要の疑問を持ったという話ならば本当でしょう。

■「もし軍を動員して尖閣問題を解決したとしても……」の下りは、日本が世にも珍しい憲法を後生大事に守っていて「軍隊」を持っていない事を承知の上で書かれているのなら、チャイナが軍事的に尖閣諸島を占領して「専守防衛」の自衛隊を蹴散らしてしまっても大丈夫、という恐ろしい話なのでしょうなあ。もう憲法前文に書かれた「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持」することがちょっと難しくなったと正直に表明しては如何でしょう?現場の海上保安庁の皆さんに外交問題の重荷まで押し付けるのも、もう限界ではないでしょうか?勿論、その後ろに控える海上自衛隊も手枷足枷で身動きが取れずにいるのも実に変な話です。


5)衝突事故は北朝鮮情勢の緊張緩和をもたらした。哨戒艦沈没事故以後、米韓は頻繁に合同軍事演習を繰り返している。中国は米韓を刺激することを避けてきたが、それは決して譲歩を意味したわけではない。衝突事故を通じて米国の注意をひきつけることで、朝鮮半島の安定と北朝鮮労働党代表者会の開催を有利にする効果があった。
以上の通り、今回の衝突事故は一石二鳥どころか、一石五鳥という大きな成果をもたらし、中国の国家利益保持に貢献した。
2010年9月23日 Record China 

■北朝鮮が「代表者会」を開催できないのは、将軍様の病状が悪化して突発的な椿事や事件が起きる惧れがあるとか、噂される世襲候補が若過ぎたり別の候補も完全に消えたというわけでもないとか、今年の大洪水が独裁体制の崩壊の引き金になりそうだとか、可哀想な国内事情があってのことだと言われていますし、米韓両国の合同軍事演習も軍部の暴発を牽制するのが目的で代表者会議の開催を妨害するためではないでしょう。こんな牽強付会・我田引水の分析で恩を着せられては北朝鮮も不愉快でしょうなあ。

■9月24日に香港の政治学者、林泉忠という人が「日本の民主党は対中政策を転換させたのか?」と題した記事をブログサイトに発表したそうです。/font>

……事件前に公表された2010年度版防衛白書で日本は中国を仮想敵国と明確に位置付け、事件後に発足した菅直人首相の改造内閣では対中強硬派の前原誠司氏が外務大臣に任命された。民主党は対中政策を転換させたのか?その背景とは?中国はどのように対応すれば良いのか。…… 

■代表時代に「現実的な脅威だ」と名指しして来た相手ですから、懸念する気持ちも分かりますが、元々、寄せ集めの民主党政権に「転換させる」ほどの外交政策があったとは思えないのですが……。前の代表・首相が13年も掛けてまとめた普天間基地の移設問題を「最低でも県外!」と向こう見ずな寝言で大混乱させてしまったのは日米同盟を「転換」させ兼ねない騒動ではありましたが、挙党一致で寝言を実現しようという動きは見えず、最後には「公約ではない」などと言いだしっぺの首相本人が尻に帆掛けて敵前逃亡したのでしたなあ。

■今年度の『防衛白書』に関しては、チャイナが目くじら立てて怒って見せなくても竹島問題への言及があるのを嫌って、お詫び作文を用意していた仙谷官房長官が公表の日程を遅らせて韓国に気遣ってみせた事で、北方領土問題で攻められているロシアが日本政府のダブル・スタンダードを言い立てて来るぞ!と休職外交官の佐藤勝さんが警告を発していましたが、実行支配された竹島を譲るのなら東シナ海は俺のものにできるぜ!とチャイナが思わない方が不思議でしょう。仙谷さんは後に「欠地王」ならぬ「欠地官房長官」として歴史に残る可能性がありますなあ。


中国がこれほど厳しい対日報復措置をとった理由は、
▽日本に最大レベルの警告を発するため。東シナ海ガス田問題にも波及することを恐れた
▽防衛白書で中国を仮想敵国としたことで、両国の戦略的互恵関係の構築が頓挫した
▽米国が中立の立場を止め、日米で年内に共同統合演習として「離島奪還」訓練を行うこと
▽菅改造内閣で「親米反中」の前原外相が就任したこと―の4点だ。 

■本来ならば尖閣諸島の領有と国際海洋法に基づくEEZの設定問題は同じ根っこから生え出しているものでしょうから、日本側が尖閣とガス田を一括して安全保障問題の最重課題にしてしまうと、昔懐かしい帝国主義時代かもっと昔の春秋戦国時代に逆戻りして、終戦の誓いをした日本も冷戦構造の崩壊に対応して安全保障政策を大転換させずに怠けていたことを悔いて、新しい時代の「戦争」に対応できるように変身してしまったらどうしよう?と「仮想敵国」ならば心配するでしょうなあ。

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