「 ユダヤ古代誌 」 その4

2016-06-24 17:54:40 | 

 著者のヨセフスは、ローマに降ったユダヤの指揮官だったが、それ以前にユダヤ人は、セレウコス朝シリアの支配を受けていた。なので、この本は単にギリシャ語で書かれているだけでなく、ギリシャ文化からの影響も見て取れる。

 モーセは神に祈って言う。「 彼ら ( モーセの政敵 ) が尋常ではない仕方で生を断つようにして下さい。・・・・・・それはあなたの力を万人に顕示するとともに、あなたにたいして冒涜的な考えをいだく輩はいずれもこうした運命に苦しむのだという恐怖によって人びとの中庸や穏健への教訓にもなります 」。
 この場合の 「 中庸 」 とは、いったいどういう意味なのか、ワシにはわからない。神に対する絶対服従を前提とする 「 中庸 」、とは? アリストテレスの権威を借りたいだけなのか。

 神に見捨てられたサウルは、自分の運命を知るために、女腹話術師に預言者サムエルの霊を呼び出してもらう。サムエルの霊はハーデース ( 冥界 ) から上って来て、サウルに告げる。「 おまえは息子たちとともに明日の戦闘で斃れ、わたしのもとに来るのだ 」。
 「 ハーデース 」 とは、何か。ギリシャ人が信じる 「 ハーデース 」 をそのまんまここに持って来たのか。それとも、ユダヤ人が信じる 「 冥界 」 を、ギリシャ語に訳したものなのか。
 ヴェーバーによると、ユダヤ人には来世がどんなものなのかという観念が欠けていたというが ( 「 古代ユダヤ教 」 )、果たしてどうだったのだろうか。
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