亡父に親孝行せず悔やむ

2011年09月20日 09時29分35秒 | Weblog
 20代の大学生女子。私が高校生になってまもなく病気で亡くなった父の人生が、哀れに思えてなりません。

 我が家では両親の仲は冷めていて、私と兄の面倒は、ほぼすべて父が見てくれました。私と兄も、そんな父を頼っていました。かといって、私は父と仲が良かったわけではなく、自分のことを優先してばかり。父に親孝行をほとんどしてきませんでした。

 父が亡くなった時、家族のために働き、愛情を注いでくれた父に、なぜ孝行してあげなかったのかと悔やみました。幸せな家庭を築くことができなかった父は、果たして幸せだったのかと思います。

 今となっては父に聞くこともできないし、ばかげた悩みかもしれません。でも、父が幸せを感じられなかった点で、私は加害者でもあります。父に申し訳ない気持ちで、涙が止まりません。いまだに父の死から立ち直ることができないのです。どうしたらいいでしょうか。(大阪・E子)


 あなたは心の優しい人ですね。お父さんの人生を振り返りながら親孝行できなかった自分を責めていますが、この相談文のあなたの心がもう十分親孝行していると感じます。

 目にみえなくても、大事な人の精神は受け継がれています。お父さんが生前あなたとお兄さんにたくさんの愛情を注いでくれたから、あなたは人の気持ちがわかる優しい人になりました。そしてこれからもこの優しさで人に接していくでしょう。それはお父さんが望んでいたことだと思います。

 おばあちゃん子だった私も祖母が亡くなった時、あなたと同じように涙が止まりませんでした。祖母がいなくなったという悲しみが湧き、祖母にひどいことを言ったままだった自分を悔やんだのです。でも、時間と共に私の心の中で祖母が生きていることがわかりました。気がつくと一緒に笑い、一緒に考えてくれるのです。

 夜、空を見上げながら、どんな一日だったかお父さんに報告してください。ちゃんと答えてくれますよ。お父さんに恥じない生き方こそ、最高の親孝行です。

 (増田 明美・スポーツ解説者)

(2011年9月19日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/jinsei/shinshin/20110919-OYT8T00175.htm

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