時間をムダにする人の口グセ

2013年09月26日 18時26分04秒 | Weblog
著者
山崎 将志 やまざき・まさしアジルパートナーズ パートナー1971年、愛知県生まれ。94年東京大学経済学部卒業後、アクセンチュア入社。2003年に独立。事業再生コンサルティングや、生活総合支援サービス「カジタク」などの運営に携わる。『残念な人の思考法』は26万部を突破するベストセラーになった。


頭の中にあることは、言葉となって表れます。「口グセとは、その人の頭の中そのものである」というのが私の考えです。では早速ですが、時間に追われがちな人の口ぐせを見ていきましょう。

まず思いつく口グセは、

「時間がない」

ですね。しかし、みんな時間がないのが大前提で、その中でどうするのかが仕事なのです。

逆説的ですが、時間がないというのは、“終わりの時間がない”っていう意味もあると思うんです。終わりの時間を決めず、延々と仕事をするから永遠になる。だから時間がなくなる。「どんなに遅くとも7時に帰る」って決めてしまえば、その中でどうするかをちゃんと考えますからね。「まだ時間がある」と思ってダラダラ仕事をしているとメリハリもないし、締まりもない。だったら「今日からうちの部は全員6時に帰ります」ってしちゃったほうがいいんじゃないでしょうか。給料は変わらなくても労働時間が短くなるから、実質時給も上がります(笑)。

「時間がない」と似ていますが、休むべきときに休まないでいるにもかかわらず、

「俺、寝てないんだよ」

って言う人もいますね。上司がそういうタイプだったら最悪です。僕は寝ないで仕事をして成果が出せるとは思えません。

成果が出る時間って、本当に限られていると思うんです。石川遼選手を例にすると、彼が成果を出す時間としては、週に4日、70回くらいの打っている瞬間だけじゃないでしょうか。1回せいぜい10秒だから1日に700秒、10分ちょっとですよね。本当に大事な時間って実はそれだけなんですよ。そしてそれ以外は、成果を出す瞬間に良いパフォーマンスをするための準備――分析だったりトレーニングだったり――の時間です。

でも、多くの人は自分にとっての700秒/週が何であるかを理解していない。なんとなく平均的に時間を使ってしまって何でも大事になってしまう。石川選手にとっての700秒は、あなたにとっては何ですか? と問いたいですね。

以上の「時間がない」「寝てない」というのは、誰にも聞かれていないのに思わず口から出てしまう言葉ですが、相手とのやりとりの中でつい、口にしてしまう口ぐせもあります。

まず若手が上司に言ってしまいがちな口グセとしては、

「わかりました」

これはやっかいです。期限も聞かず、アウトプットのイメージも確認せず、「わかりました」と言うから安心していたら、結局出てきたものがめちゃくちゃだったり、クライアントに「ポイントがズレている」なんて言われたり……。その場を切り上げたいだけなのかもしれませんが、わかったふりをするのは不毛ですよね。

また、上司や取引先などに対して言いがちな

「すぐに対応します」


「できるだけ早くお返事します」

も要注意だと思います。時間の感覚は人によってバラバラですから、そういう相対的な表現は誤解のもとです。まぁ、あえてそう言ってごまかすときもありますけど(笑)。

具体的に「明日の午前中までに」などとノルマを課して計画を立てないと、物事って進まないと思うんです。上司と部下の間でも、ちゃんと期限を聞いて、無理を言われたら「明後日の午後までならできます」、あるいは「この仕事の締め切りもあるんですけど、どちらを優先したらいいですか?」と尋ねてプライオリティを明確にすることが大切ですね。

逆に、部下の時間を奪う上司の口グセもあります。それは、

「じゃあ、みんなで話すか」

みんなで話すこと自体はいいと思うんですけど、ノーアイデアで臨まれても困ります。10人集めたら、10人×1時間で10時間。10万円くらいの価値があるってことですよ。部下も部下でそれぞれみんな仕事があるし、巻き込んで仕事をしているふりをされるのは迷惑です。

会議に遅れてやってきて、

「今日は、何の話だっけ?」

なんていうのも同様ですね。尊大な態度をとって、威厳を感じさせたいのでしょうが、そういう自己満足の意図のためにみんなの時間を割くのはまったくの無駄としか言いようがありません。

また、最近はメールで時間を取られるというのも結構ありますよね。上司からの

「CCを入れといて」

部下からの

「CCしといたんですけど」

とか。

大きい会社の社員って、見ているメールのほとんどがCCなんですよね、実は。でも重要なことは口頭で話すから、CCに本当に必要なことは書いてない。

「一応知っておいてください」が多すぎるんですよ。


あるかなり大きい会社の部長クラスの方とのやり取りを例に挙げると、彼からのメールには必ず7人くらいのCCが付いていたんです。そこに「1週間後までに資料をお願いします」って送ったのに一向に来ないから「先日のお願いってどうなりましたか?」とメールで聞いたら、部長さんは「おい、どうなってんだ?」ってメールを出しただけという(笑)。誰かがやっているんだろうなと思っていたら、CCに入っていた7人は見ているだけ、誰も何もしないままで時間だけが過ぎていたんです。

これがCCのが実態じゃないですかね。送ったほうはCCに入れているからみんな内容を把握しているのだと勘違いしてしまうし、CCによって責任の所在があいまいになって膨大なロスを生むといういい例です。

また、これは以前、某上場企業の社長室に行ったときの話なんですが、そこの経営企画室にいる40人ほどの社員は、みんなPCに向かって“何か”をやっているんですよ。キーボードをたたいている人はまれで、だいたいがマウスを持っているだけ。

1時間で打ち合わせが終わって、社長室から僕が出てきたときも、光景が全く変わっていなかったんです。1時間ですよ! 実は時間が止まっているんじゃないか、もしかして部屋じゃなくて絵なんじゃないかと思いました(笑)。

40人×1時間ですから、40時間。40時間あれば相当なことができますよ! でもただマウスを持っているだけ。みんな暇ですよ、たぶん。本当に必要な仕事はやってないですよね。だって、CCを見ているだけですもん(笑)。

一方で、

「さっき送ったメール、見た?」

なんて、携帯に電話をかけてくる人もいます。急いでいるなら最初から電話をかけたらいいじゃないですか。「ちょっと急ぎの相談があるんだけど、今、大丈夫?」って電話である程度説明して、詳しいことは後でメールしてくれればいいのに、先にメールを送って5分後に「おい、メール見たか」。おかしいですよ。詳細が先で概要が後って、普通ないでしょう。でもメールと電話は、なぜかそれがありうるんですよね。

職種にもよるでしょうけど、相手がメールに張り付いていることを前提にしないでほしいですね。タイムラグがあるからメールが便利なわけで、即効性を求められても困ります。

そうなるとPCや携帯電話、スマホに張り付くようになって、いつも何か来るんじゃないかとおどおどして仕事が受け身になってしまうし、それでほかのもっと重要でじっくり考えるべき仕事に時間が取れない、という悪循環に陥るんです。メール基点で組織の生産性が落ちるという典型例ですね。

最後に、もっとも壮大なムダをつくりかねない口ぐせをあげておきましょう。それは、

「とりあえずやってみよう」

です。

あるアンケート調査で、コンサルティング会社が30枚ぐらいのリポートを書いてきて、それぞれのマーケットの競合比較をしようとなったんですが、どれを読んでも僕やお客さんの常識と全く違うんです。「これ、どういうふうに解釈しましょうかね?」って30分くらい話し合っていたのですが、よくよく見たらサンプル数が少なすぎて、そもそも統計的に無理があったことに気づきました。いわばリポート自体が無意味ということです。最初の時点で、この先分析を進めても仕方ないということに気づかなかったせいですね。

リポートを作成したスタッフ4人の1週間×約10時間も、それを一生懸命読み解いた僕たち5人の時間もパーです。

これはあくまで一例ですが、時間をムダにしないためには、意図であれ分析方法であれ、最初の方向性や前提条件を間違えないことが何より大切なのではないでしょうか。
http://president.jp/articles/-/9964


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