なまはげの姿は全く見えていないが、まだ遠くにいるなまは
げを察知して、寒明け近くの障子が震える音を感じた。なまは
げの「気配」を目に見える形で顕かにしている。つまり感覚の
具現化だ。何かの気配を察知した時点で、人間の脳は一瞬思考
を停める。再び動き出した脳は最大出力で気配の正体を探ろう
とする。多くの体験や行為の中を逡巡して「なまはげが来る」
の思考が一気に跳び出す。気配を察知してから思考を形成する
時間は、ほんの一瞬であるような気もするし、永遠が凍結され
るほど長い時間でもあるような気もする。なまはげは存在感が
強すぎるのだろうか、昔から輪郭のはっきりした吟詠が多い。
それらの句と較べるとこの句の新鮮さが際立つ。特に、察知し
た気配をP波と表現したところが新しい。大震災の後、地震発
生のメカニズムはすっかり常識になっており、地震が来る前の
地響きの音はP波によるものだと誰もが知っている。「P波」
の部分を、単に「気配」や「叫(おら)び」「声が」などと表
現するより一層の深みが出た。(石母田星人)
げを察知して、寒明け近くの障子が震える音を感じた。なまは
げの「気配」を目に見える形で顕かにしている。つまり感覚の
具現化だ。何かの気配を察知した時点で、人間の脳は一瞬思考
を停める。再び動き出した脳は最大出力で気配の正体を探ろう
とする。多くの体験や行為の中を逡巡して「なまはげが来る」
の思考が一気に跳び出す。気配を察知してから思考を形成する
時間は、ほんの一瞬であるような気もするし、永遠が凍結され
るほど長い時間でもあるような気もする。なまはげは存在感が
強すぎるのだろうか、昔から輪郭のはっきりした吟詠が多い。
それらの句と較べるとこの句の新鮮さが際立つ。特に、察知し
た気配をP波と表現したところが新しい。大震災の後、地震発
生のメカニズムはすっかり常識になっており、地震が来る前の
地響きの音はP波によるものだと誰もが知っている。「P波」
の部分を、単に「気配」や「叫(おら)び」「声が」などと表
現するより一層の深みが出た。(石母田星人)
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