「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

遺伝子の螺旋解けて海明ける 木幡祥子 「滝」4月号<滝集>

2015-04-23 04:00:18 | 日記
 上五中七「遺伝子の螺旋解けて」の言い方は、生物学上のD
NAの転写・複製をさすのだが、ここでは地上すべての生物の
遺伝情報の継承を言っている。命のつながりということだ。季
語「海明け」にかかるこの十二音は、作者が北海道に住む方だ
からこそできた語句といえよう。よそからバスツアーで行って
流氷を見ても決して生まれない作品だ。流氷の到来、接岸、見
渡す限りの流氷原、南風が吹くことで緩み始め、流れ、そして
沖に去り、消失する。作者は海明けに至るこの流氷のさまを子
供の時から何度も見ている。そのたび無意識にでも流氷の音を
聴き、一緒に風雪や雨を浴び、海や空の輝きを感じてきている。
海明けが何たるかの理解は、自身の遺伝子構造にまで染み込ん
でいる。海明けは体内にあるのだ。(石母田星人)

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