「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

紙風船つきたる音のいびつかな 庄子紀子 「滝」5月号<滝集>

2013-06-04 17:22:45 | 日記
 以前は、富山の薬売りが家々をまわり、「代金は来年、使
った分だけ頂きます」と云って救急箱を置いていったものだ。
その中には、風邪薬、胃腸薬をはじめ、痛み止めのケロリン
や、イチジク浣腸まで入っていた。薬売りは必ずと云ってい
いほど、「オマケ」に、色あざやかなセロファン製の風船をく
れた。三日月形に折り重ねてある紙風船の中から一つ取って
ふくらませ、ついて見せてくれた。「つきたる音のいびつかな」
と云われれば、確かにそうで、音から「いびつ」という形へ
の転化が見事。子供の嬉しそうな顔と一緒に紙風船がしっか
り見える。いつの頃からか薬売りは来なくなり、我が家も官
舎へ引っ越したりなどして、代金が未払いのまゝであるが、
救急箱は三・四十年たった今も薬箱として使わせてもらって
いる。(遠藤玲子)

2 コメント

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紙風船 (今村征一)
2013-06-04 20:30:23
幼ない頃富山の薬売りが年に二度程来て薬を入れ替え紙風船を置いて行つた記憶があります。それも売薬の匂がしていました。「いびつ」
は句のとおりです。
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紙風船 (博子)
2013-06-04 22:42:16
「音がいびつ」すごく分かりますね。
懐かしいですね。
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