「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

鶏小屋に少女の眠る菊日和 成田一子

2020-11-02 04:59:21 | 日記
父の実家の鶏小屋を思い出した。私は田舎だが商店街で育ち、鶏だけでなく、牛や豚を飼っていて、動物好きの私はおばあちゃんちが好きだった。泊まった朝は「卵をとってきて」と、六ツ目模様の小さな竹ざるを渡された。おじいちゃんが餌の準備をしていて、家畜たちはうるさいくらいに鳴いていて・・・と、懐かしいが、今その場所は水耕栽培の苺ハウスが三棟建っている。さて少女はなぜ鶏小屋で眠ってしまったのだろうか。眠った理由は鑑賞に必要ないような気もするが、ゆったりとした空気感を醸して「菊日和」という菊の咲き薫る庭と一帯になっている。「鶏」の語源は「庭の鳥」。咲いているのは庭に自由に咲いている黄色い小菊。ここで鶏卵の黄身の黄色が思われる。少女はもうすぐ生まれる雛の誕生を待つうちに眠ってしまったのかもしれない。思いは空間を飛び交って「秋日和」ではなく「菊日和」とした効果が存分に感じられ、思い出も手伝って、この日和に癒された。(博子)