「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

三葉虫の複眼化石なづな粥 加藤信子

2018-03-16 06:30:49 | 日記
 この意表を突く二物衝撃の句は楽しかった。なづな粥は七草粥と同意。数字が重なるので回避したのだろう。一年の邪気を祓うとされ、我が家でも欠かさないが、外は寒く、雪がつもっていたりして探すのが大変でスーパーで七草パックを買ってしまおうかと思ったりする。そんな心持で身を低くして一生懸命地面を見ている。一緒に探してくれたらいいのにと炬燵に居る夫の「目」をあてにしたくなったりする思いや、「草」は「葉」であること、過去と新しく始まったばかりの今年。変わらずに受け継がれてきた事と、カンブリア紀で唯一複眼を持つ生物である三葉虫の視力はあまり良くなく、複眼を増やす進化を遂げていることなどが思われ、類似と対照が混在して季語との呼応を果たしている。息災を願って炊き上がった粥の白と青(緑)のコントラストが一層美しくも感じられた句であった。(博子)