「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

日暮まで翼をさがす海鼠かな 石母田星人

2018-03-14 19:08:39 | 日記
「七年」と題した八句が並んでいる。東日本大震災からの七年だろう。まだ復興の最中にあり、暮らしも心も落ち着いた状態とはいえない。作者は常に被災地、被災した方々に心を寄せている方である。海を思わせる「海鼠」にあの大津波を思うが海鼠のイメージを覆す不思議な句である。海底をゆっくりと這い、基本的に不活発な海鼠に「日暮まで」という活動時間のリアル。「翼をさがす」という行為は、飛びたいがためなのか、あったはずの翼の紛失なのか。兎に角、冬の寒さのなかに一心に探している。そして、疲れた海鼠の身心に来る夜が、闇が・・・。そして夜が明ける。生活のサイクルは「さがす」ということに終始する。本来を失った海鼠が詠まれたのだろうか。翼が見つかったら現状がかわる。そう信じて海鼠は這いずり回るのか。胸苦しさの残った句だった。(博子)