「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

焼入れの水奔りたるパリ―祭 木下あきら 「滝」9月号<滝集>

2015-09-17 05:05:12 | 日記
 包丁やナイフ、刀、鋼を使った鋳物を作る際に、焼入れは
欠かせない作業である。実際に目にした記憶はないのだが、
「村の鍛冶屋」の一節、
 しばしも休まず鎚打つ響き
 飛び散る火花よはしる湯玉・・・で見たような気になって
いる。千度以上に熱せられた鋼を叩き、叩き、水に入れる。
この時の水は、冷水ではなくひと肌以下の水だそうだ。する
と水は沸点まで上昇する。と、湯玉が生じて水が奔る、中七
の措辞が効いている。これを繰り返して物の形を作る。作者
はこの作業を目の当たりにしているのだろうが、何故パリ―
祭なのか?季語との距離感は難しい。(小林邦子)