ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

2011年 ベスト・アルバム オルタナ編

2012-01-31 12:43:13 | 2011年総括
2011年の「ルーツな日記」的ベストアルバムを鋭意製作中ですが、大好きなアルバムなのに「ルーツな日記」としては扱いにくい、という個人的なこだわりから選外とさせて頂いたアルバムがいくつかあるので、今回は番外編としてそのベスト5を。題して「2011年ベスト・アルバム オルタナ編」です。





第1位 LOU REED & METALLICA / LULU
半端無いいびつさにゾクゾクしました。意外なコラボでありながら、私にとってはこれぞルー・リード!そしてこれぞメタリカ!



第2位 PJ HARVEY / LET ENGLAND SHAKE
これは素晴らしい作品。本編に入れようか迷ったほど。でもこっちの方が座りが良いかな?って感じで。



第3位 CSS / LA LIBERCION
発売以来聴きまくってるアルバム。最初はインパクトに欠けるか?と思ったものの、聴けば聴く程テンションが上がる! 何だかんだで名曲揃い。



第4位 BJÖRK / BIOPHILIA
難解過ぎる…。されどビョーク!



第5位 MY MORNING JACKET / CIRCUITAL
これも本編に入れようか迷ったんですが、もう違う次元に行っちゃってる感じなんでこちらに。


それと2011年はプライマルスクリームの「スクリーマデリカ」が20周年ということで、豪華アニヴァーサリー・アルバムが発売されたり、サマソニで再現ライヴが行なわれたりと、あの名盤の再評価が行なわれたのも印象的でした。私にとっても「スクリーマデリカ」は色々な意味で忘れられないアルバムでしたから、あの盛り上がりは嬉しかったですね。とは言え、アニヴァーサリー・アルバムも買ってないですし、ライヴも観てないんですけどね…。

2011年 ブライテストホープ

2012-01-29 23:52:05 | 2011年総括
VINTAGE TROUBLE / BOMB SHELTER SESSIONS

2011年の「ルーツな日記」的新人賞は、2組! アラバマ・シェイクスとヴィンテージ・トラブルに決まり! とは言え、正直な話、この2組について詳しくは知りません。ですが、とにかく衝撃的に格好良い!! ジャンル的にはロックです。ですが2組ともブラック・ミュージックのエッセンスを濃厚に持っています。シンガーはどちらも黒人です。

まずはアラバマ・シェイクス。もう、名前から南部臭プンプンですよね。その名の通りアラバマ州アセンズの出身で、2009年に結成されたらしい。メンバーは、Brittany Howard(Vo. & G)、Heath Fogg(G)、Zac Cockrell(B)、Steve Johnson(Ds)の4人。2011年に4曲入りEP「ALABAMA SHAKES EP」を発表しておりまして、ここ→http://alabamashakes.bandcamp.com/ で全曲試聴できます。いなたい南部ノリを感じさせる一方で、それだけではない世界観、例えばマイ・モーニング・ジャケットのように作品を重ねるごとに巨大化していくような、そんな印象も受けます。


Alabama Shakes performing "Hold On" on KCRW

南部なノリでゆったりミドルなカントリー・サザン・ソウル。でもしっかり現代的なロック感があるから格好良い!


Alabama Shakes - You Ain't Alone

そしてこのスロー・ナンバー。ヴォーカルのお姉さんの歌が良い!! 新人らしからぬスケールの大きさを感じさせる。めっちゃソウルフル!!さらにロックの衝動に溢れてる!



そして2組目は、ヴィンテージ・トラブル。上の写真のアルバムは多分2011年に発売された彼らの1stアルバム。ここ→http://www.vintagetrouble.com/music.html でそのハイライトを試聴出来ます。こちらはLAのバンドらしい。という訳でアラバマ・シェイクスのような“いなたさ”は無いですが、名前の通り“ヴィンテージ”なソウル感は濃厚。そしてそれをロックのエッジを効かせてファンキーにドライヴさせた感じ。タイトなバンドと、キレの良いソウルフルなヴォーカルが格好良い。メンバーは、Ty Taylor(Vo. & G)、Nalle Colthttp(G)、Rick Barrio Dill(B)、Richard Danielson(Ds)の4人組。


Vintage Trouble Blues Hand Me Down Jools Holland Later Live April 2011

これやバイでしょ? バックはガレージ・ロックみたいなのに、ヴォーカルは歌も踊りも切れ味抜群のファンキー・ソウル!


Vintage Trouble - Run Outta You (Live in Session for BBC London 94.9)

そしてソウル・マナーのスロー。良いですね~。Ty Taylor はかなりの実力派ですね~。そしてジミヘンのようなギター・ソロがまた格好良い!



さて、今後も期待大、大、大、この2組。ぜひ生で観てみたい! フジロックでも、サマソニでも良いので、ぜひ早いうちに観たいです!!!

2011年 天に召された偉人達

2012-01-28 19:41:35 | 2011年総括
PINETOP PERKINS & HUBERT SUMLIN / LEGENDS

昨年亡くなられた偉大なるシカゴ・ブルース・レジェンド。パイントップ・パーキンスとヒューバート・サムリン。方やマディ・ウォーターズのピアニスト。方やハウリン・ウルフのギタリスト。

パイントップ・パーキンスは70年代のマディー・ウォーターズを支えたピアニスト。1913年ミシシッピ州ベルゾニ生まれ。“パイントップ”という名はブギ・ウギ・ピアノの創始者パイントップ・スミスからとったそう。30年代からプロとして演奏を始め、南部を放浪したあとシカゴへやってくる。そして69年にオーティス・スパンの後がまとしてマディ・バンド入り。マディの死後は、コンスタントにソロ作を発表し、近年もブルース界の最長老として貫禄の活動を続けていました。98年にはパーク・タワー・ブルース・フェスティヴァルで来日しています。この時既に80歳代半ば。ですが元気にピアノを弾き、歌うパイントップの姿が印象的でした。2011年3月21日、97歳で亡くなられました。

シカゴブルースのもう一方の雄、ハウリン・ウルフを支えたギタリスト、ヒューバート・サムリン。映画「キャデラック・レコーズ」で、マディ・ウォーターズがハウリン・ウルフから引き抜いた若いギタリスト、あの人がヒューバート・サムリンです。あれはあくまでも映画の話ですが、実際、ヒューバート・サムリンは一瞬マディ・バンドに入った時期があったようですね。そう、「キャデラック・レコーズ」といえば、ウルフが演奏するスタジオのシーンで、ヒューバート・サムリンの横に、本物のヒューバート・サムリンが出演していたとか。残念ながら私は気がつきませんでしたけど…。それはそうと、ハウリン・ウルフとその片腕的存在のヒューバート・サムリンが醸すブルースというのは、ちょっと他にない迫力がありますよね。ウルフの死後はソロ作を発表し、来日もしています。2011年12月4日、心不全のため亡くなられました。享年80歳。

写真のアルバムは、そのパイントップ・パーキンスとヒューバート・サムリンの共演盤「LEGENDS」。98年作。





他にも沢山の方々が亡くなられました。以下、拙文ながら「ルーツな日記」的追悼。



PINETOP PERKINS & WILLIE 'BIG EYES' SMITH / JOINED AT THE HIP
2011年9月16日、パイントップ・パーキンスと共に70年代のマディ・バンドのリズムを支えたドラマー、ウィリー・スミスが亡くなられました。享年75歳。脳梗塞でした。アーカンソー州ヘレナ生まれ。60年代初め頃からマディのバンドへ出入り始めますが、69年から本格的なレギュラー・ドラマーの座に座ります。パイントップ・パーキンスのピアノとのコンビネーションには定評があったようです。2010年にはパイントップ・パーキンスとの共演盤「 JOINED AT THE HIP」(写真)をリリースし、グラミー賞『Best Traditional Blues Album』部門を受賞しています。このアルバムではドラムスを息子のケニー・スミスに任せ本人は歌とハープに専念しています。




MOJO BUFORD / CHAMPAGNE & REEFER
2011年10月11日に81歳で亡くなられたモジョ・ビュフォード。マディ・ウォーターズのバックで知られるミシシッピ出身のブルース・ハーピスト。マディのバンドには60年代後半から参加して出たり入ったり。70年代にはパイントップ・パーキンスやウィリー・スミスとも同僚でした。ちなみに本名はGEORGE BUFORD で、“MOJO”は「Got My Mojo Workin' 」を十八番にしていたことからついたニックネームだとか。写真は彼の99年のソロ・アルバム。ボブ・マーゴリン(g)と二人でやってる数トラックが凄く良いです!




AMY WINEHOUSE / LIONESS: HIDDEN TREASURES
2011年7月23日、ロンドンの自宅で亡くなられたエイミー・ワインハウス。まだ27歳の若さでした。死因はアルコールの過剰摂取だったそうです。まだまだこれからという若さと、いかにも彼女らしい死に方が、かえって衝撃的で悲し過ぎました。グラミー賞授賞式にて「Rehab」で賞主要3部門を立て続けに受賞した際の彼女の表情とパフォーマンスは今でも目に焼き付いています。写真は彼女の死後にリリースされた新作(蔵出し音源を中心にサラーム・レミとマーク・ロンソンが完成させた)。最後のレコーディングとなったトニー・ベネットとのデュエット「Body And Soul」は涙無しには聴けません。




GIL SCOTT-HERON / I'M NEW HERE
ギル・スコット・ヘロン、2011年5月27日にニョーヨークの病院で死去。享年62歳。ミュージシャンであり、詩人でもあった彼。ジャズやファンクをブレンドした音楽をバックにメッセージ性の高いポエトリー・リーディングをするスタイルは“黒いディラン”と評され、ヒップ・ホップなど後塵のアーティストに多大な影響を与えました。2010年には16年振りとなるスタジオ作「I'M NEW HERE」(写真)をリリースして存在感を示していました。この最新作が魔力的な刺激を持った素晴らしい作品だっただけに、そのリリースから間もない死は残念でなりません。




MARVELETTES / ULTIMATE COLLECTION
マーヴェレッツのヴォーカリスト、グラディス・ホートン。2011年1月26日、ロサンゼルスで亡くなられました。65歳。モータウンを代表するガールズ・グループの一つだったマーヴェレッツ。61年のデビュー曲「Please Mr. Postman」はモータウン初の全米ナンバーワン・シングルとなりました。もちろんこの曲でリード・ヴォーカルを務めたのがグラディス・ホートンでした。ビートルズがカヴァーしたことでも知られますね。他に「Playboy」や「Don't Mess with Bill」などのヒット曲も。グラディスのハスキーな声、好きでした。




CORNEL DUPREE / TEASIN'
テキサス生まれの名セッション・ギタリスト、コーネル・デュプリー。2011年5月8日に死去。享年68歳。晩年は肺気腫を患っていたそうです。キング・カーティス、アレサ・フランクリン、ダニー・ハサウェイ、ロバータ・フラック、彼のギターに彩られたアーティストは数知れず。また職人的名グループ、スタッフでの活躍も忘れられませんね。そしてもちろんソロ・アーティストとしても。写真は74年のソロ・デビュー作「TEASIN'」。これ良いですよね~。職人肌の佇まいから、聴けば聴く程味が出てくる。ジャジーで、ソウルフルで、そしてブルージー。彼ならではのファンキー&メロウな感覚も秀逸。日本にも何度も来日しています。私も一度だけ生で観たことがありますが、あの独特のタイム感に酔いしれました。

さらにこの「TEASIN'」に参加していたパーカッショニスト、ラルフ・マクドナルドも2011年12月18日、67歳で亡くなられました。肺癌だったそうです。ジャズ/フュージョン系を中心に、アリサ・フランクリン、ビル・ウィザース、アシュフォード&シンプソンなどのソウル系からデヴィッド・ボウイ、ビリー・ジョエルなどロック/ポップス系まで、まさに引く手数多、八面六臂の活躍を続けてきた鉄人。また、ロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイの「Where Is The Love」など、コンポーザーとしても魅力的でした。




WARDELL QUEZERGUE / STRUNG OUT
2011年9月6日、鬱血性心不全のため81歳で亡くなられたワーデル・ケゼルグ‎。“クレオールのベートーベン”と賞されるニューオーリンズの偉大なるアレンジャー。もちろん編曲だけでなく、ミュージシャンであり、バンド・リーダーであり、プロデューサーでもありました。ニューオーリンズ作品の至る所で彼の名前を見つけることが出来ます。彼なくしてニューオーリンズは語れない程。あのプロフェッサー・ロングフェアの「Big Chief」のホーン・アレンジもこの人ですからね。しかもニューオーリンズだけではないんです。写真は彼がメンフィスのマラコ・スタジオで手がけた録音を集めたコンピ盤。C.P.ラヴ、ジミー・ドビンズ、ペギー・スコット&ジョ・ジョ・ベンソン等を収録。偉大な方でした。




BENNY SPELLMAN / GOLDEN CLASSICS FORTUNE TELLER
2011年6月3日、ニューオーリンズのR&Bシンガー、ベニー・スペルマンが亡くなられました。79歳。ヒット曲と言えば「Lipstick Traces」ぐらいしかないベニー・スペルマンですが、何故かニューオーリンズR&Bファンの間で人気が高いようです。私も大好きです。それは何故か?やはりアラン・トゥーサン作のこの曲が素晴らしく良いのと、人懐っこいスペルマンの歌声に魅せられ、この曲こそニューオーリンズを代表するR&Bの1曲と思えてしまうからでしょう。それにローリング・ストーンズがカヴァーした「Fortune Teller」のオリジナルを歌ったのもスペルマンでした。さらにアーニー・K・ドゥのヒット曲「Mother in Law」の低音のキメ部分を歌っているのもスペルマン。この曲でのスペルマンの活躍っていうのもニューオーリンズらしいんですよね~。わずかな大舞台でニューオーリンズ印の決定打を放ったベニー・スペルマン。でも生まれはフロリダだったりするんですけどね。写真は「Lipstick Traces」と「Fortune Teller」だけではないベニー・スペルマンの魅力がたっぷり味わえるコレクション。これぞニューオーリンズ!




BERT JANSCH / L.A. TURNAROUND
ブリティッシュ・フォーク界の伝説的ギタリスト、バート・ヤンシュ。2011年10月5日、肺癌のため67歳で亡くなられました。ジョン・レンボーン達と共にブルースからの影響も取り入れながら、それまでの英フォーク/トラッドの枠を越えた革新的な英国フォークを作りあげていった偉人。ペンタングルでの活躍も知られますね。写真は74年のソロ作。ブリティッシュ・フォークの香りを濃厚に残しながらも、マイク・ネスミスやレッド・ローズの参加による米カントリー色との兼ね合いが見事。ジェシ・エド・デイヴィスとのスワンプ・セッション的な曲もあったりで面白い。ついついギターに耳が行きがちですが、バート・ヤンシュの暖かく優しい歌声、そしてソングライターとしての資質も見逃せません。




EARL GILLIAM / TEXAS DOGHOUSE BLUES
ダイアルトーンが誇るテキサスのブルース・ピアニスト&オルガン奏者、アール・ギリアム。2011年10月20日(19日?)に81歳で亡くなられました。少なくとも50年代から活動しているブルース・マンで、当時わずかなシングルを残しているものの、その後の足取りはほとんど知られていないとか。そしてそれから数十年後の2005年、突如リリースされた彼のファースト・アルバムが写真の「TEXAS DOGHOUSE BLUES」。このとき既に70歳代半ば。エグ味抜群の鍵盤裁きも歌声も全てがディープ。流石ダイアルトーンなリアル・ブルースです。




HOWARD TATE / HOWARDE TATE
2011年12月2日、白血病及び多発性骨髄炎により72歳の生涯を閉じたハワード・テイト。03年の復活劇からの初来日も記憶に新しい不世出のソウル・シンガー。黒く輝くようなこの人の声は本当に素晴らしい! でも私は来日公演を見逃してるんですよね~。毎年行っていたパーク・タワー・ブルース・フェスティヴァル。ハワードが出た年は何故か敬遠してしまったのです。これは悔やんでも悔やみきれませんね。写真は72年にアトランティックからリリースされた彼のソロ作。ホーン隊を含むクールな熱を感じさせるバックの演奏に、抑制を効かせながらジワジワとエモーションを満たしていくようなハワードの歌声にはホント痺れさせられます。しかしこの後70年代後半から彼の人生は狂い始め、家族を失い、仕事を失い、ホームレス同然となり、消息不明になったとか…。そして03年に大復活を果たす訳です。復活作となった「REDISCOVERED」も素晴らしいアルバムでした。もう一度来日して欲しかった…。

そしてこの「HOWARDE TATE」をプロデュースしたのがジェリー・ラゴヴォイ。彼も2011年7月13日にニューヨークの病院で亡くなられています。ハワード・テイトにとっては育ての親のような存在。ハワードはこのアルバムだけではなく、60年代からラゴヴォイの元で録音を重ねヒットを出していました。また復活作「REDISCOVERED」のプロデュースももちろんラゴヴォイが務めました。このジェリー・ラゴヴォイはフィラデルフィアで活躍したプロデューサーで、東海岸のR&Bシーンを影で支えた功労者でした。またソングライターとしても知られ、ハワードの曲はもちろん、アーマ・トーマス~ローリング・ストーンズの「Time Is On My Side」、アーマ・フランクリン~ジャニス・ジョプリンの「Piece Of My Heart」の作者としても知られます。




ASHFORD &SIMPSON / THE BEST OF ASHFORD &SIMPSON
夫婦デュオ、アシュフォード&シンプソンの夫、ニック・アシュフォード。2011年8月22日、咽喉ガンのため亡くなられました。享年70歳。私がこの世で最も好きな曲、マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルの「Ain't Nothing Like The Real Thing」の作者がアシュフォード&シンプソン。もちろんマーヴィン&タミーの代表曲「Ain't No Mountain High Enough」もこの二人の作品。ヴァレリー・シンプソンが曲を作り、ニックが作詞をしていたそうです。楽曲クレジットに彼等の名前があればまずハズレ無しという、ソウル界屈指のソングライター・チームでした。70年代以降は自ら夫婦デュオとして活躍し「Found a Cure」や「Solid」などのヒット曲を残しています。09年には夫婦で来日し素晴らしいステージを見せてくれました。写真のアルバムは、83年にリリースされた通算11枚目の夫婦名義作「HIGH-RISE」。バックにはニューヨークの腕利きが集められ、ラルフ・マクドナルドも参加しています。




DAVID HONEYBOY EDWARDS / THE WORLD DON'T OWE ME NOTHING
伝説のブルースマンにして最後のデルタ・ブルースマン、デヴィッド”ハニーボーイ”エドワーズが2011年8月29日、 鬱血性心不全により亡くなられました。享年96歳。チャーリー・パットンやロバート・ジョンソンと同じ空気を吸った男、デヴィッド”ハニーボーイ”エドワーズ。2010年のグラミー賞で功労賞を受賞された時、大して嬉しそうな顔もしないブルース爺っぷりがえらく格好良く思えましたね。この人の弾き語りブルース、好きでした。そんじょそこらのひよっ子には絶対に真似出来ない本物のブルース。




BIG JACK JOHNSON & THE OILERS / ALL THE WAY BACK
ミシシッピのブルース・ギタリスト、ビッグ・ジャック・ジョンソンが2011年3月14日に亡くなられました。70歳。南部好きにとっては特別なギタリストですよね~。フランク・フロスト、サム・カーと組んだジェリー・ロール・キングスでもお馴染みでしたね。ですが彼が亡くなったことにより、元JRKの3人も皆故人となってしまいました。天国で仲良く再結成してくれてると良いですね。写真のアルバムは、彼が自身のバンド、OILERSを率いての98年作。脂ぎった南部汁、出てます!




LATTIMORE BROWN / Nobody Has to Tell Me
サザン・ソウル界屈指の名シンガー、ラティモア・ブラウン。3月25日に交通事故で亡くなられました。60年代に残したSound Stage Sevenへの名唱はもはや伝説的。そしてその後の長い不遇時代を乗り越え、近年は「Pain In My Heart」のシングルを発表するなどして元気な声を聴かせてくれていました。なのにそれから程なく、自宅近くで車にはねられてしまうという悲しい死。写真の作品は09年にリイシューされたSound Stage Seven録音集。名曲「I Know I’m Gonna Miss You」は泣けます。




EUGENE McDANIELS / OUTLAW
ユージン・マクダニエルズ。2011年7月29日に自宅で死去。76歳。私はロバータ・フラックの1st作「FIRST TAKE」が大好きで、特に1曲目の「Compared To What」にやられた口なんですが、その作者がユージン・マクダニエルズでした。もちろん、ロバータが歌ったユージン作と言えば、「Feel Like Makin' Love」の方が有名なんでしょうけどね。写真は彼の70年のアルバム「OUTLAW」。スワンプ・ロック風味のタイトル曲から始まり、SSWとしての味わいが色濃く感じられる雰囲気ながら、メッセージ性の高いアーティスティックな歌詞を真っすぐに歌うユージンの歌唱はやはりニューソウル。この時代、特にロバータ・フラック、ダニー・ハサウェイ、レス・マッキャン、そしてユージン・マクダニエルズ、彼等の空気感、大好きでした。




SOUL CHILDREN / GENESIS
元ソウル・チルドレンのリード・シンガーのひとり、J.ブラックフット。2011年11月30日、メンフィス近くのメソジスト・ジャーマンタウン病院で死去。65歳。癌だったそうです。スタックス屈指のヴォーカル・グループであるソウルチルドレンは男2人、女2人の4人組で、メンバー全員がリードをとれる実力派グループでした。中でも野太くシャウトするJ.ブラックフットの歌唱! その強烈に南部臭を発散しながら突き進むかのような歌唱が、グループを引っ張っていました。写真のアルバムは72年リリースの3作目。もちろんスタックスから。ヒット曲「Hearsay」での、重心の低い南部産リズムにのったJ.ブラックフットの豪快な歌唱はまさにディープ。スロー・ナンバー「All That Shines Ain't Gold」も素晴らしい! ソウルチルドレン解散後はソロ・シンガーとして活躍し、「Taxi」などのヒットを飛ばしました。






他にもロレッタ・ハロウェイ、マーヴィン・シーズ、フィービー・スノウ、シルヴィア・ロビンソン、レイ・ブライアント、ジョージ・シアリング、ゲイリー・ムーア、クラレンス・クレモンズなど多くの方が亡くなられました。さらにスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズのギタリスト、マーヴ・ タープリンとか、フォートップスのバンド・リーダーを務めていたジョージ・ラウントリーとか。スカタライツのオリジナル・ドラマーであるロイド・ニブとか。ボブ・ディランの元恋人スーズ・ロトロとか。



柳ジョージさん、ジョー山中さん、中村とうようさん、スーちゃん…。





私が個人的に多少なりとも思い入れのある方達だけでも、本当に沢山の方々が亡くなられました。残念でなりません。

みなさま、安らかに。

2011年 ベスト・ライヴ

2012-01-25 11:49:06 | 2011年総括
IRMA THOMAS / AFTER THE RAIN

ぼちぼち2011年を振りかる企画にとりかかろうと思います。まずはライヴから。

2011年も、貧乏なりに色々なライヴを観ました。その中でも印象的だったのは以下のような感じ。

G.LOVE  @タワーレコード新宿店 2/09
CORINNE BAILEY RAE @渋谷AX 3/08
JOHNNY WINTER  @ZEPP TOKYO 4/13
上原ひろみ -ソロ・ピアノ-  @丸の内コットンクラブ 4/14
OVER THE RHINE @南青山CAY 4/25
上原ひろみ×熊谷和徳  @ブルーノート東京 4/26
JOE SAMPLE & THE CREOLE JOE BAND @ブルーノート東京  5/19
FUJI ROCK FESTIVAL 7/29~31
SUMMER SONIC @千葉マリンスタジアム 他 8/13
PRISCILLA AHN @ビルボードライヴ東京 8/17
SWEET LOVE SHOWER @山中湖交流プラザ きらら 8/28
FARMERS MARKET @東京JAZZ CIRCUIT 9/04
矢野顕子×上原ひろみ @昭和女子大人見記念講堂 9/09
BEAT CIRCUIT 2011 ASA & TETE @六本木ヒルズアリーナ 10/10
THE DIRTY DOZEN BRASS BAND @ビルボードライヴ東京 10/30
IRMA THOMAS @ビルボードライヴ東京 12/02
上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト  @東京国際フォーラム 12/04
ERIC CLAPTON & STEVE WINWOOD @武道館 12/10


やはり何と言ってもフジロックですよ!コンゴトロニクス VS ロッカーズ、CSS、アマドゥ&マリアム、ウィルコ、マーク・リボー、みんな最高でした。

ですが2011年ベスト・ライヴは?と問われれば、それはアーマ・トーマス!! これに決まり!

そしてカーク・ジョセフ擁するダーティ・ダズン・ブラス・バンド。昨年はアーマ・トーマスとカーク・ジョセフを生で観れた。これにつきますね。

あと忘れてならないのが上原ひろみ。ソロ、デュオ、トリオ、公開録音と、色々な形で楽しませてくれました。特にあの震災の翌月に急遽コンサートを開いてくれたのは嬉しかったですね。今思えば、震災の後は随分ライヴに救われました。ジョニー・ウィンターが予定通り来日してくれたのも嬉しかったですね。その内容も含めて忘れられないコンサートとなりました。

あとはコリーヌ・ベイリー・レイとか、プリシラ・アーンも良かったです。


さて、2012年はどんなライヴが待っているのか? 楽しみですね!

雪ジャケ

2012-01-23 23:33:08 | ルーツ・ロック
STEPHEN STILLS / STEPHEN STILLS

1月23日夜、東京は雪が降っております。既に積もり始めてます。明日の朝まで止まなければ、すごい積もるでしょうね~。

そんな雪の日になると思い出すアルバムが、いわゆる雪ジャケです。

有名なところでは、ブルース・コバーンの「HIGH WINDS WHITE SKY」とか、エディ・モトウの「NO TURNING AROUND」とか、リヴォン・ヘルム&ザ・RCOオーケストラの「LEVON HELM & THE RCO ALL-STARS」とか、まあ色々あると思います。

ですが今夜の気分はスティーヴン・スティルスの1stソロ作「STEPHEN STILLS」なのです。

ま、何故これなのか?特に理由はないですけどね…。

横の赤いキリンが可愛いからとか?


それはそうと「Love the One You're With」はホント名曲ですよね~。



さて、積もるかな~。

フジロック・ベストアクト第1位!!

2012-01-22 23:06:58 | フジロック
KASAI AIISTARS / KASAI AIISTARS

さて、1月も下旬にさしかかった今日この頃、半年前に開催されたフジロックの素晴らしい3日間も記憶の彼方になりつつありますが、そんな時分に我がブログの超個人的フジロック・ベストアクト企画はようやく第1位の発表にこぎ着けました。

という訳で、2011年、フジロック・ベストアクト、栄えある第1位は~~~、コンゴトロニクス VS ロッカーズ!!!!!!!

2日目、土曜オレンジ・コートのトリを務めたコンゴトロニクス VS ロッカーズ。同じ時間帯、メインのグリーン・ステージではロン・ウッド率いるフェイセスが熱演を繰り広げていました。いや~、迷いましたよ、どちらを見るか。仮にフェイセスを観ていたとしたら、それは間違いなくベストアクトとなっていたことでしょう。ですが私はコンゴを選び、コンゴがベストアクトな訳です。土曜のトリとは、そういう時間帯なのです。

さて、この日の夜、私はオレンジ・コートでマーク・リボーを堪能し、空き時間の約1時間はヘヴンでワイド・スプレッドパニックを観ながら腹ごしらえ。頃合いを見計らってオレンジに戻る。いよいよコンゴトロニクス VS ロッカーズ。正直、トリの時間帯に得体の知れないアフリカン・アーティストで、ちゃんとお客さん集まるのかな~と少々心配だったのですが、これが凄い人! コンゴトロニクスってこんなに人気あるの~!?とビックリするぐらい、広いオレンジー・コートが観客で埋め尽くされていました。凄いですよね~。このプロジェクトによる音源は発売されてない状況ですよ。もちろん日本での初ライヴとなるこのステージです。それだけ注目度が高いということでしょうし、これに注目する人が沢山いるという、そんなフジロック。もう大好き! やっぱこっちに来て良かった!と思いましたよ。

笛(おそらくアフリカ土着のもの)を吹きながらメンバーが登場。とにかく大所帯。アフリカはコンゴ民主共和国からコノノNO.1とカサイ・オールスターズの選抜メンバー。ベルギーの精鋭レーベル、クラムドディスクにより発掘されコンゴ旋風を巻き起こした2大グループで、彼等こそコンゴトロニクス。そして彼等と相対するロッカーズ勢は、ディアフーフ、フアナ・モリーナ、ワイルドバーズ&ピースドラムス、そしてスケルトンズのマット・メーラン。さらにこのプロジェクトの仕掛人でもあるクラムドディスクのプロデューサー、ヴィンセント・ケニスがベーシストとして加わっている。総勢20名程。

最初は、どこに誰が居るのか把握するだけでも大変でした。フアナがいる、サトミがいる、グレッグがいる、マリアムは? マットは何所だ? そして彼等を取り巻くように異様な雰囲気のコンゴ勢。フロントには異様な形をした大きな太鼓?のようなものを叩きながら歌う男性が、この人は股間の当たりに小動物の死骸のようなものを付けてる。そしてふっくらとした身体で官能的に腰を振りながら歌い踊る女性。さらに長老のような雰囲気で一種独特の雰囲気を放つ小柄な男性。この3人はおそらくカサイのメンバーで、アフリカ土着の臭いをプンプン漂わしてました。さらにおそらくコノノの一団と思われる人達が爆音の電化リケンベをビリビリ言わしてる。アフリカって凄い!とか思っているうちにリズムはどんどんディープになっていく。

とにかくこのリズムが凄い! 何せ打楽器系がズラーっと並んでますからね。コノノ&カサイそれぞれのパーカッション群に加え、ディアフーフのグレッグ・ソーニア(ds)、ワイルドバーズ&ピースドラムスのアンドレアス(ds)、さらに電化リケンベのポリリズミックな重なりはパーカッション的ですし、巨大な木琴のようなものを叩いてる人もいる。それら打楽器群の織りなすリズムの躍動感たるや! まるで大地から湧き出るかのような、いや大地そのものが揺れてるような感じ。とにかく跳ねる、跳ねる! やはり恐るべきアフリカン・グルーヴ。そしてグレッグが凄い。そのアフリカン・グルーヴに切れ込む勢いでビートを刻む。アフリカもロックも渾然一体となりながら、あり得ないグルーヴが生み出されていく。そんな奇跡のグルーヴをフジロックという特別な環境で体感する喜び。まさに祝祭空間。

観客もリズムに突き上げられるが如くに踊りまくる。もちろん私も踊りまくる。2日目の夜という疲れも忘れる程に。そんな観客を前にしてステージ上のメンバー達もとにかく楽しそう。プロジェクト名に“VS”と付いていますが、もちろん対決する訳ではありません。なんて言うか、既にファミリーな感じ。コンゴ勢もロッカーズ勢も入り乱れて祝祭感を満喫しているよう。ですが音楽的にはそもそも相容れないアフリカ土着とオルタナ・ロックです。しかしそれがステージ上で見事な融和を成し遂げている。感動的ですらありましたね。

例えばフアナ・モリーナが歌うバックでスケルトンズのマット・メーランがギター・ノイズをギャンギャン鳴らす。それだけでも『オー!』って感じですが、そのリズムはアフリカ仕様ですからね。ワイルドバーズ&ピースドラムスのマリアムは元々からして何かに取り憑かれたようなエギゾチックな歌を歌う女性ですから、アフリカ土着との相性は抜群。それに対して、ディアフーフの紅一点サトミ嬢の歌っていうのはどうにもならない程東洋的と言うか日本的。でもこれが良かった! ディアフーフの「Super Duper Rescue Heads !」を演ったんですが、緩いアフリカンリズムに乗ってサビのメロディーを歌うサトミの歌声は何とも言えない癒しがありましたね。そしてコンゴ勢がコーラスに加わると一気にアフリカ色が増すという。そしてステージ上のメンバーがみんな幸せそうで。この曲は名場面でしたよ!

ですがメインはやはりコンゴ勢主導の曲。カサイ・オールスターズによる土着な民族臭を爆発させたような曲や、神聖な儀式を思わせるような静かな曲もありました。特にカサイのフロント3人のパフォーマンスって言うのは凄いものがありましたね。これぞアフリカ!!って感じで。そして何と言ってもコノノNO.1による電化リケンベの爆音が乱れ飛ぶ人力トランスでしょう。私はこれを生で体感するのを楽しみにしていたんです。特徴的なイントロからリズムの洪水へ雪崩れ込み、そして果てることの無い無限ループ地獄へ。ディープ過ぎる~。

この日本公演は、コンゴトロニクス VS ロッカーズのワールド・ツアー最終の地でした。この後、最後の渋谷クアトロ公演が控えてはいましたが、ディアフーフを含むフル・メンバーでの公演はこのフジが最後。終盤はコノノ勢を中心にした人力トランスがまるで終演を惜しむようかのように果てしなく続く。ループを重ねる程に昂揚感を増していき、メンバー達のテンションも上がる一方。フアナ・モリーナは何やら奇声を発するように叫びまくってるし、カサイの長老的なおじさまはエア・バイクにまたがってどっか行っちゃうし、もう訳分からないお祭状況。観客達も一線を越えたかのようにはしゃぎまくり、踊りまくってる。あ~、このまま終わらないで欲しい~~!

まさにこれぞフジロック!! ホント最高でした!



さて、これで我がブログの2011年度フジロック企画もおしまいです。いかがでしたか? 長々とお付き合いいただきましてありがとうございました!

そして、もう、今年のフジロックは始まっています!!





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ジョニー・オーティス、エタ・ジェイムス、安らかに…

2012-01-21 23:28:45 | ブルース
THE JONNY OTIS STORY VOLUME 1 1945-1957: MIDNIGHT AT THE BARRELHOUSE

1月17日、『ゴッド・ファーザー・オブ・リズム&ブルース』と賞されるジョニー・オーティスが亡くなられました。享年90歳。1940年代から、R&Bの黎明期を駆け抜け、R&Rの創世にも一役買った偉大なレジェンド。

1921年、米カリフォルニア州生まれ。両親はアメリカへ移民してきたギリシャ人でした。ではなぜ白人の彼が『ゴッド・ファーザー・オブ・リズム&ブルース』と賞されるのでしょうか?

彼は幼少期を黒人居留区で過ごしました。黒人の空気や文化をたっぷり吸収し、カウント・ベイシーなどのビッグ・バンドに憧れたそうです。18歳の時にドラマーとしてステージに立ち、その後、イリノイ・ジャケーやレスター・ヤングなどのバンドでもドラマーを務めました、45年には自己名義による「Harlem Nocturn」(キャバレーの定番曲として知られるあの曲ですね。)のヒットを放ち、プロデューサー/アレンジャーとしての才能も開花させます。

しかし彼の凄いところは、ただミュージシャンとしてヒットを飛ばすだけではなく、自身の経営するクラブを立ち上げたことです。47年にワッツ地区にて開業した「バレル・ハウス」です。さらにタレント・スカウトに力を入れ、次々に新しい才能を見いだしていきます。彼が見初めた、もしくは活動初期にバック・アップしたとされるアーティストは、リトル・エスター、ジャッキー・ウィルソン、ハンク・バラード、ビッグ・ジェイ・マクニーリー、ビッグ・ママ・ソートン、リトル・リチャード、ジョニー・エイスなどなど、そうそうたる名前が並びます。なかでもリトル・エスターがロビンズ(後にコースターズとなるグループ)と共に録音し大ヒットした「 Double Crossing Blues」や、ビッグ・ママ・ソートンの「Hound Dog」などはジョニー・オーティスが手掛けたものとして有名ですね。

さらにオーティスは、クラブとタレント・スカウトの成功を受け、その自身のバンドを率いて全米巡業に出かけたそうです。バンドメンバーはほとんど黒人だったことでしょうから、まだ人種差別の激しい時代、大変な事だったと思われます。しかしこのツアーは大成功し、やがて彼の一座は『ジョニー・オーティス・ショー』と呼ばれるようになったとか。

また50年代以降、ラジオのDJを務め、自らの選曲による「ジョニー・オーティス・ショー」を繰り広げていたりもしたそうです。レコード、クラブ、巡業、さらに電波と、メディア総動員でR&Bを広めていた訳です。もちろん彼自身もミュージシャンであり、ドラムス、歌はもちろん、ヴィヴラフォンの名手でもありました。また、彼の率いたバンド・メンバーには、バック・ビートの開祖アール・パーマーや、後にジェイムス・ブラウンの元でファンク・ギターのオリジネイターとなるジミー・ノーランなども加わってました。

ミュージシャンとしてはもちろん、バンド・リーダー、ソング・ライター、アレンジャー、プロデューサー、タレント・スカウト、レーベル・オーナーなど多角的なの活躍により、リズム&ブルースの隆盛に多大な貢献を残したジョニー・オーティス。ちなみにエリック・クラプトンが「461 OCEAN BOULEVARD」に収録した「Willie And The Hand Jive」という曲。これは元々58年にジョニー・オーティスが自己名義で大ヒットさせた曲。案外、クラプトンもオーティスの業績に敬意を表してこの曲を取り上げたのかもしれませんね。




ETTA JAMES / R&B DYNAMITE

そして今週はもう一人、偉大なR&Bレジェンドが亡くなられてしまいました。かねてからその病状の悪化が心配されていた「ブルースの女王」、エタ・ジェイムスです。1月20日、白血病の合併症により亡くなられたそうです。享年73歳。

1938年、カリフォルニア州ロサンゼルスに生まれたエタ・ジェイムス。彼女のデビューは1955年、モダン・レコードからの「The Wallflower」でしたが、このデビューをお膳立てしたのも、ジョニー・オーティスなのです。

エタ・ジェイムスは15歳(14歳?)の時にピーチズという女性3人組のヴォーカル・グループを結成し、ジョニー・オーティスの元を訪れます。そこで「Roll With Me Henry」という曲を披露するのですが、これはハンク・バラードのヒット曲「Work With Me Annie」のアンサー・ソングとして作られた自作曲でして、これがジョニー・オーティスのお眼鏡にかなう訳です。そして彼は彼女達をモダン・レコードのスタジオへと連れていきます。1954年のことです。そこには男性シンガーのリチャード・ベリーも呼ばれ、バック・バンドはジョニー・オーティスのドラムスを含む彼のバンドが務めました。こうして録音された「Roll With Me Henry」は、「The Wallflower」と改題されリリース。見事、R&Bチャートのトップに輝きました。

60年代になると、エタはチェスと契約。「At Last」、「Tell Mama」、「I'd Rather Go Blind」などのヒット曲及び名唱の数々を残します。その後も浮き沈みはあったものの、コンスタントにアルバムをリリースし続けてきました。また、映画「キャデラックレコード」ではビヨンセがエタ役を演じ、あらためてエタの存在が浮き彫りにされたことも記憶に新しいですね。遺作となったのは昨年リリースされた「THE DREAMER」。病状がかなり悪いと噂されていた時期のまさかの新作リリースに驚かされたものです。まさに死の直前まで歌い続けたディーヴァ。最新作収録のスロー・ナンバー「Misty Blue」は泣けます。



そしてジョニー・オーティス。60年代以降も息子シュギー・オーティスを伴っての「COLD SHOT」や、豪華ゲストを率いて全盛期のジョニー・オーティス・ショーを再現したような「THE JOHNNY OTIS SHOW LIVE AT MONTEREY!」など、名盤を送り出してきましたし、90年にはジョニー・オーティス・ショーとして来日もしています。そしてsoul searcher 吉岡正晴さんのブログによりますと、晩年はオーガニック農業家となり、牧師となり、ホームレスに食事を与えたり、チャリティーの仕事にも熱心にかかわっていたそうです。


ジョニー・オーティスさん、エタ・ジェイムスさん、安らかに。



*上のアルバム、ジョニー・オーティスは「Harlem Nocturn」「 Double Crossing Blues」「Hound Dog」「Willie And The Hand Jive」など代表曲てんこ盛りの好編集盤。エタ・ジェイムスは「The Wallflower」を収録した初期音源集。どちらも古き良き50年代のR&Bの熱気が感じられて最高です。若き日の二人に思いを馳せながら。



Etta James - Wallflower (Roll with me Henry)




シュロダーヘッズ@新宿タワーレコード

2012-01-20 23:57:18 | インストアイベント
インストア・イベント観覧記その1 シュロダーヘッズ@新宿タワーレコード

今日は新宿タワーレコードにシュローダーヘッズのインストア・ライヴを観てまいりました。カフェロンで知られる鍵盤奏者、渡辺シュンスケさんによるプロジェクト、シュローダーヘッズ。普段はピアノ・トリオとして活動してるそうですが、今回はインストアということもあり、ベーシストとの二人だけによるステージ。

1曲目はスヌーピーのテーマ曲として知られる「ライナス&ルーシー」。なんでもシュローダーヘッズという名前も、スヌーピーに出てくるシュローダーという男の子からきているそうですし、昨年12月にリリースされたミニ・アルバムでは、ジャケットにトイ・ピアノを弾くシュローダーを登場させて話題になってるんですよ。かくいう私も実はスヌーピー大好きでして、シュロダーヘッズはそういう意味でも気になってたんですよね~。なので「ライナス&ルーシー」もよ~く知っている曲。あのメロディーを聴くとなんかウキウキしちゃいますね。シュローダーヘッズもそんな原曲のイメージを壊さずに、それでいて新鮮な感覚を感じさせる、グルーヴィー且つキレのある演奏で楽しませてくれました。

あとはエリック・サティの「ジムノペディ」とか、オリジナル曲の「Newdays」とか、打ち込みのビートも使いながら、瑞々しくもお洒落でヒップなピアノ・ジャズを聴かせてくれました。



Schroeder-Headz / PIANO à la carte feat.Schroeder-Headz

ダニエル・ラノワ@ビルボードライヴ東京

2012-01-19 15:15:31 | ルーツ・ロック
BLACK DUB / BLACK DUB

1月18日、ビルボードライヴ東京にて、伝説的プロデューサーとして知られるダニエル・ラノワの初来日公演を観てまいりました。私が観たのはこの日の1stショー。3階席的なカジュアル席から、眺めるように堪能してまいりました。

U2、ピーター・ガブリエル、ボブ・ディランなどを手掛けてきた名プロデューサー、ダニエル・ラノワ。私にとってはネヴィル・ブラザーズの「YELLOW MOON」のプロデューサーとして神的存在。もちろん「ACADIE」をはじめとするソロ作品も大好きです。ですが、ダニエル・ラノワがどんなライヴ・パフォーマンスをするのか?ということについてはまったく知りませんでした。何せ、幽玄的な音響空間を特色とする音作りに秀で、05年には「BELLADONNA」というインストのアンビエント作をリリースしていますし、昨年リリースされたバンド名義の最新作「BLACK DUB」ではレゲエ/ダブに急接近。いったいどんなライヴをするんだろう?みたいな。

そして始まったそのステージ。メンバーは中央にダニエル・ラノワ(g,vo)、その向かって左にブライアン・ブレイド(ds)、右にジム・ウィルソン(b,vo)というトリオ。1曲目、いきなり1stソロ作「ACADIE」から「The Maker」。やっぱり「ACADIE」には思い入れがあるのでいきなりテンション上がりましたね~。しかもアルバムで聴くよりアメリカーナ的でこれがまた格好良い! ラノワの歌声は思いのほか土っぽくざらついている。そこにベースのジム・ウィルソンがコーラスを付ける。二人は向き合い顔を見あわせながら熱のこもったハモリを聴かせてくれて、その熱気からくる昂揚感は言わばアメリカン・ロック的。そういえばラノワの風貌もカントリーを思わせるむささでした。終盤のギター・ソロになってラノワは足下のエフェクターをバーン!と踏む。するとそれまで地味だったギターの音色が一気に増幅され、ラノワ独特のエコー感と歪みを纏ったギター・サウンドが響き渡る。このギラッとした艶と、立体的に広がるような音色はホント素晴らしかったです!

「Silverado」、「Slow Giving」、「Messenger」と、新旧織り交ぜた楽曲が続く。ラノワらしい抑制された音世界に響く幽玄且つ鮮やかなギター・サウンド。レスポールのネックを細かく振って音を揺らしていたのが印象的でした。でやっぱりラノワとウィルソンの歌が良い! 歌物としての楽曲の良さっていうのもあらためて実感させられましたね。そしてブライアン・ブレイドのドラムス! ルイジアナ出身の現代最高峰のジャズ・ドラマーの一人。もちろんラノワとの付き合いも長い。控えめなれど多彩なアイデアで楽曲に色彩を与えると同時に、独特のスウィング感が終始心地良い揺れを醸していましたね~。もちろんウィルソンのベースも良いですし、ギター、ドラムス、ベースという最小限の絡みが、神秘的且つアーシーな物語りを語ってくるような音像でした。またメンバー3人の距離が近いため、常にアイコンタクトを取りながら親密な音楽空間が作られているのも印象的でした

中盤にはアンビエントなインストを2曲。特にラノワがスティール・ギターを弾いた曲が良かったですね~。実はラノワはスティール・ギターの名手としても知られるので、彼のスティール・ギターが聴きたかった!という人も多かったのではないでしょうか? もちろん私もそんな一人。ラノワがレスポールを肩から下し、スティール・ギターの前に座ったときは、お!いよいよかと、ちょっと緊張しましたね。そしてスライド・バーを滑らせるその先には映像的な想像力を掻き立てるように広がるサウンド。うっとりでした。

そして名曲「Shine」に続いて「Duo Glide」。後半のギター・ソロが凄かった! 低音が凶暴な程歪みまくったギター・サウンドもさることながら、その力強く突き進むようなコード・ストロークはまるでニール・ヤングのよう。途中、それっぽいギター・リフも飛び出したりして。またギターを弾く姿が格好良い! そう言えば、少し前にニール・ヤングの話題作「LE NOISE」をプロデュースしてたっけ?なんて思いながら。そして「Fire」。ラノワのソウルフルな歌声に聴き惚れる。さらに「Still Water」。優し気な浮遊感にちょっとほっこり。こういう曲でのラノワのギター・ワークも秀逸。

そしてラストは「BLACK DUB」から「Ring The Alarm」。しかも「BLACK DUB」の中でも最も先鋭的でオルタナ色の濃いアップ・ナンバー。正直、これを演るとは思いませんでしたが、これが凄まじく格好良かった! 疾走するスピード感の中でギラギラと閃光を放つようなギターは近未来的、もしくは宇宙的な感じ。そしてそのスピード感をひたひたと加速させていくのがブライアン・ブレイド!! 後半におかずを畳み掛ける切れ味にはゾクゾクさせられましたね。

1時間強、残念ながらアンコールはありませんでしたが、素晴らしいライヴでした。色々な面で私のダニエル・ラノワ像を塗り替えてくれるステージでしたが、振り返ってみれば、それら全てがダニエル・ラノワらしい幻想的なトリップの流れの中にあったような気がします。終わった後、何とも云えない余韻が脳裏に焼き付いていました。



↓メンバーの足下にあったセットリストを激写↓




*トップの写真は、ダニエル・ラノワがブライアン・ブレイド等と結成したバンド、ブラック・ダブ名義の作品で、ダニエル・ラノワのリーダー作としては最新作。リリースは一昨年ですかね。今回のライヴでもこの中から「Silverado」、「Ring The Alarm」をやっていました。次回はぜひブラック・ダブでの来日に期待!


2月の来日ラッシュ!!

2012-01-18 17:35:10 | 余話
下記に並べたアルバム・ジャケット、「ルーツな日記」的に魅力的なアーティストがずらりと並んでいます。これ、別に「今月の10枚」じゃありませんよ。この人達、みんな2月に来日するんです!


TEDESCHI TRUCKS BAND / REVELATOR
現代を代表するスライド・ギタリスト、デレク・トラックス。彼が奥様のスーザン・テデスキと組んだテデスキ・トラックス・バンド。デレクのスライドはもちろん、奥様スーザンの歌声にも注目。
インフォメーション → ウドー音楽事務所




ROBERT RANDOLPH & THE FAMILY BAND/ WE WALK THIS ROAD
若きベダル・スティール・ギタリスト、ロバート・ランドルフ。激ファンキーなライヴを見せてくれそう。
インフォメーション → ブルーノート東京




JEFF LANG / CARRIED IN MIND
オーストラリアが生んだ至宝、ギターの魔術師ことジェフ・ラング。バンジョー弾いて欲しいな~。
インフォメーション → スマッシュ




ZAZ / ZAZ
21世紀のデヴィッド・ピアフと賞される、フランスが生んだ歌姫ザーズ。NHK「アメージング・ボイス」でも話題に。09年のフジロックで2度観たライヴは素晴らしかった!!
インフォメーション → H.I.P.




LOS LONELY BOYS / LOS LONELY BOYS
テキサス出身の3兄弟によるロック・トリオが待望の初来日。ラテン・ロックのパワーと、ゴリッとしたテキサス流ギター・プレイはやはり生で体感したい~。
インフォメーション → スマッシュ




TROMBONE SHORTY & ORLEANS AVENUE / FOR TRUE
ニューオーリンズの若きエース、トロンボーン・ショーティ。こちらもライヴは鉄板。
インフォメーション → スマッシュ




DR.JOHN AND THE LOWER 911 / TRIBAL
お馴染みのドクター・ジョン。やっぱニューオーリンズ物は生で聴きたいですよね~! ブラック・キーズのダン・オーバックがプロデュースしたという新作も気になります。
インフォメーション → ビルボードライヴ東京




BOBBY WOMACK / RESURRECTION
伝説のソウル・シンガーがビルボードに登場。ボビー・ウーマック、17年振りの来日。人は彼を「ラスト・ソウルマン」と呼ぶ。
インフォメーション → ビルボードライヴ東京




BETTY WRIGHT / THE MOVIE
マイアミ・ソウルの女王ベティ・ライト。やはり一度は生で観たい…。
インフォメーション → ビルボードライヴ東京



あまりにも来日ラッシュ過ぎて、正直、困ってます。迷ってます。ああ、どうしよう…。