ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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09年ベスト・アルバム 第1位!!

2010-01-20 18:24:56 | 2009年総括
第1位 : LEVON HELM BAND / @MERLEFEST

このライヴ盤は最高です!! 08年4月26日のマールフェストでのレヴォン・ヘルム・バンドのステージを収録したもので、元々は FESTIVALINK NET というライヴ音源のダウンロードを中心に販売しているレーベルから出されたもののようですが、これがめでたく日本盤として09年に発売になりました。

96年に咽頭癌を発症し、それから数年は声の衰えが激しかったそうですが、07年の「DIRT FARMER」、そして09年の「ELECTRIC DIRT」という2枚のスタジオ作で、完全復帰と断言出来るような元気な歌声を披露してくれたレヴォン・ヘルム。ですが果たしてライヴではどうなのだろう?という心配もありました。で、このライヴ盤なのです! 元気でした!もちろん若い頃と比べれば衰えていますよ。もうすぐ70歳ですからね。しかも咽頭癌を乗り越えてということを考えれば、奇跡的とも言える程元気な歌声を聞かせてくれているのではないでしょうか? それに年齢を重ねた味わいと渋みもまた格別。その声はしゃがれているけどハリがあり、独特のファンキーさと土っぽさに溢れています。そして何より愛嬌がある。この声が好きというか、なんか愛おしいんです。最高です!

ただ残念なことに、レヴォンの喉や体力を慮ってのことかは分かりませんが、全曲をレヴォンが歌っている訳ではありません。数曲はバック・メンバー達が入れ替わり立ち代わりでリード・ヴォーカルを務めていきます。しかしこのヴォーカリスト達が個性派揃いで、まるで南部のソウル・レビューやカントリー・レビューのような雰囲気を感じさせてくれて格好良いんですよ! バック・メンバーは、エイミー・ヘルム、ラリー・キャンベル、テレサ・ウィリアムス、ブライアン・ミッチェルといった、お馴染みのメンバーを核に、スティーヴン・バーンスタインを中心にしたホーン・セクションが入るという、ほぼ「ELECTRIC DIRT」と同じようなメンバー。さらにゲストにサム・ブッシュとブルース・ホーンズビー。もちろんレヴォンはドラムも叩いているようです。結局、最新作「ELECTRIC DIRT」が持つ芳醇な躍動感は、日頃のライヴで培われたもの、そのものだったという訳ですね。なんか納得です。そして前後しますがこの「@MERLEFEST」が曲目こそ違えど、そのライヴ版と言っても良いのかもしれません。

レヴォン・ヘルムが歌うザ・バンド時代の名曲「Ophelia」と「Rag Mama Rag」。感無量です。特にリズムが良いですね~。堪らないものがあります。そしてホーン隊が素晴らしい!泣きたくなりますね。もちろんレヴォンの声も最高です。この曲にこの声あり!!って感じです。そして前作「DIRT FARMER」収録の「Got Me A Woman」や「Anna Lee」。さらにボブ・ディランの「It Takes A Lot To Laugh, It Takes A Train To Cry」やレイ・チャールズの「I Want To Know」、ブルース・スプリングスティーンの「Atlantic City」などのカヴァー。どれもこれも熟成されたバンドの演奏とレヴォンの歌心とが溶け合った、ライヴならではの躍動感に満ち溢れています。

06年にレヴォンのライヴ・セッションを収めた作品「MIDNIGHT RAMBLE MUSIC SESSIONS」でフューチャーされたデルタ・ブルースマン、リトル・サミー・デイヴスが歌う「Everything’s Gonna Be Alright」と「Baby Scratch My Back」。それぞれリトル・ウォルターとスリム・ハーポのカヴァー。この人ももう相当のお歳だと思うのですが元気ですね~。 さらに、おそらくラリー・キャンベルが歌っていると思われる「Deep Elem Blues」、誰だか分かりませんがもの凄いしゃがれ声で歌う「The Shape I’m In」。これ誰ですかね? ブライアン・ミッチェルかな~。もちろんレヴォンの愛娘エイミー・ヘルムとラリー・キャンベルの奥方テレサ・ウィリアムスも素晴らしい美声とハーモニーを聴かせてくれます。この二人がまたカントリーな良い声なんですよ。

で、そんなヴォーカル陣以上に素晴らしいのがバンドの演奏。フォーク、カントリー、ブルース、ゴスペル、ニューオーリンズと、ありとあらゆるルーツ系ミュージックをごった煮にしたような演奏はまさにザ・バンド直系といった感じ。やはりギターからマンドリン、フィドルまで弾きこなすラリー・キャンベルの存在は大きいですね。それとピアノやアコーディオンでガンボなノリを演出するブライアン・ミッチェル。さらにスティーヴン・バーンスタインが率いるホーン隊。格好良いです!

最後を締める大名曲「The Weight」。レヴォンの絞り上げるような歌声が妙に染みます。女性陣のコーラスがまた良いですね。それにしても名曲ですよね~、この曲は。終わった後も極上の余韻を残す。そしてその余韻に浸りながらしばらく鳴り止まない拍手と歓声がこの日のコンサートの素晴らしさを物語っていますね。

これはまさにルーツ・ミュージックの桃源郷。来日してくれないですかね~。このメンバーで! 無理でしょうね…。

09年ベスト・アルバム 第2位

2010-01-18 13:24:10 | 2009年総括
第2位 : WILLIE NELSON AND ASLEEP AT THE WHEEL / WILLIE AND THE WHEEL

「ルーツな日記」が趣味と気分で選んだ09年ベストアルバム30選の第2位! ウィリー・ネルソンとアスリープ・アット・ザ・ウィールとの共演盤です! これは最高です! 聴いててこんなにも心がウキウキと弾むアルバムはそうは有りません!!

ウィリー・ネルソンはご存知カントリー界の大御所。70代後半に差し掛かりながらも、高品質な作品をばんばんリリースしています。09年には2枚のアルバムをリリース。一つはアメリカン・スタンダードを歌ったその名も「AMERICAN CLASSIC」。そしてもう一つが、その一つ前の作品となる今作「WILLIE AND THE WHEEL」です。こちらは古き良きウエスタン・スウィングをトリビュートした作品。

ウエスタン・スウィングとは、カントリーにジャズのスウィング感を融合したもので、1930年代にテキサスで生まれたそうです。ボブ・ウィルズやミルトン・ブラウンなんかがそのパイオニアと言われます。この30年代はビッグ・バンドによるスウィング・ジャズが大流行していた頃なので、カントリー界でも先鋭的なミュージシャンがそれを取り入れようとしたのでしょうね。もしくは単純にカントリーで楽しく踊りたかっただけかもしれませんが。ま、何はともあれ思わずステップを踏みたくなる、そんな魅惑のカントリー・ミュージックな訳です。

そしてそんな愛すべきウエスタン・スウィングを現代に伝える最高峰のバンドがアスリープ・アット・ザ・ウィール。日本ではあまり馴染みが無いバンドかもしれませんが、グラミー賞のカントリー部門を何度も受賞している凄いバンドなのです。特にボブ・ウィルスをトリビュートした「RIDE WITH BOB」は名盤として知られています。で、そんなアスリープ・アット・ザ・ウィールをバックにウィリー・ネルソンがウエスタン・スウィングの名曲を歌う! こんなの悪いはずがありません!

もちろんこの両者は初顔合わせと言う訳ではありません。先の「RIDE WITH BOB」にもウィリーはゲストで参加していましたしね。なのでウィリー・ネルソンのウェスタン・スイング作品のバックをアスリープ・アット・ザ・ウィールが務めるというのは嬉しいサプライズであったと同時に、この組み合わせしかあり得ない当然の結果のようにも思えました。ですがこれの実現には、意外な人物が絡んでいたようです。

それはジェリー・ウェクスラー。アトランティックでアレサ・フランクリンをはじめ数々のソウル名盤を世に送り出した偉人にして、サザン・ソウルからスワンプ・ロックにいたる南部ミュージックの仕掛人でもあります。このジェリ・ウェクスラーが今作「WILLIE AND THE WHEEL」のエグゼクティブ・プロデューサーにクレジットされているのです。この辺りのお話は萩原健太さんのブログ「Kenta's Nothing But Pop!」に詳しいので、ちょっとかいつまませて頂きます。

70年代初頭、ウェクスラーはカントリー・ロック/スワンプ・ロックに興味を示し、ダグ・サーム獲得のためテキサスはオースティンに赴きます。そしてあるクラブでダグ・サームとその前に演奏していたウィリー・ネルソンを観て、即座に契約を結んだそうです。しかしウィリーはアトランティックを2枚のアルバムを残しただけで契約打ち切りとなります。実はこの時ウェクスラーは、ウィリーの3枚目のアルバムとして、アスリープ・アット・ザ・ウィールとの共演盤を計画していたそうなのです。ですがその計画も契約打ち切りにより儚く消えてしまった訳です。

しかしここで話は終わらない。それから30数年を経た07年、ジェリー・ウェクスラーはウィリー・ネルソンのコンサートを見に行き、そのときオープニング・アクトをつとめていたアスリープ・アット・ザ・ウィールを見てかつての計画を思い出したのです。そうして誕生したのがこの「WILLIE AND THE WHEEL」という訳です。ウェクスラーは残念ながらその翌08年に亡くなられてしまいました…。

この作品は言わば、ウェクスラーが最後に残してくれた置き土産のようなものなのです。萩原健太さんもアトランティック時代のウィリーが大好きだと書かれていますが、私も全く同感なのであります。そしてこの「WILLIE AND THE WHEEL」が、音楽的趣向は大分違うとは言え、あのアトランティック時代の続きという意味合いもあると思うと、さらなる愛着が沸いてくるんです。

曲目はボブ・ウィルスやミルトン・ブラウン、スペイド・クーリーなんかが歌った名曲の数々。「Corrine Corrina」や「I'm Sittin' On Top Of The World」なんていう超有名なトラッドも含まれています。とにかくアスリープ・アット・ザ・ウィールのスウィング感溢れる演奏が堪りません。何度聴いても心が弾みます。もうウキウキです! 弾むリズム隊と軽やかに絡むソリスト達の演奏の素晴らしいこと! 特にスティール・ギターやフィドルの音色が堪りませんね。そして随所でトラディショナルな息吹を吹き込むホーン隊。主役となるウィリーの歌声も暖かさの中に渋みと苦みがあって、彼独特の味わいを滲ませています。そしてその歌声に呼応するように入るコーラスがまた良いんですよね。アットホームな雰囲気の中にも、共演盤ならではのスリリングな呼吸が感じられます。最高です!

とにかくウエスタン・スィングに対する愛に溢れた作品。 テキサスって良いな~。

09年ベスト・アルバム 第3位

2010-01-16 17:37:24 | 2009年総括
第3位 CYRIL NEVILLE / BRAND NEW BLUES

我が年間ベストアルバムもいよいよ第3位。シリル・ネヴィルです。ご存知ネヴィル・ブラザーズの末弟です。やっぱり私はシリル・ネヴィルが大好きなのです。たとえフジロックを一人すっぽかしたとしても、私にとってシリル・ネヴィルは特別な人なのです。

これまでシリルはネヴィルズの中でも最もミクスチャーな感覚を前面に出してきた人で、ニューオーリンズ・ミュージックにアフリカ、レゲエ、ヒップホップなどを貪欲に取り入れてきました。そしてそれはネヴィルズ以上に自身のプロジェクトであるアップタウン・オールスターズやトライブ13などに顕著でした。そして今作はブルースです。シリル・ネヴィルによるブルース・アルバム。そう聞いただけで私は興味津々だったのであります。

とは言え新作がブルース作だと聞いた当初は、正直シリルがブルースを歌う?って想像出来ませんでしたし、案外消化不良的なアルバムになるのでは?なんて失礼な心配もしていたり…。ですがそこは流石シリル・ネヴィルでした! 別にシリルがブルースを歌う訳ではありません。いや歌うんですけど、歌う以前にこれはシリル流のミクスチャーな感覚での新しいブルース解釈なのです。シリル・ネヴィルここにあり!です。「BRAND NEW BLUES」というタイトルに偽り無しなのです!

プロデューサーは新進気鋭のラテン・ファンク・バンド、ピンプス・オブ・ジョイタイムの中心人物ブライアンJ。このバンドはニコデマスが主催するワンダーウィールからデビューしているバンドで、ワンダーウィールと言えば、アフロ、ラテン、中近東、ジプシーなどの民族要素をブレイクビーツ、ハウスなどと融合したミクスチャーな音楽をリリースしているレーベル。ブルース・アルバムを作るにあたってジョー・ヘンリー辺りではなく、こういう方面の新しい才能と組むところがシリルらしい。でもシリルとワンダーウィールの繋がりはよく分かりません…。ただ今作以前にもピンプス・オブ・ジョイタイムの07年のデビュー作「HIGH STEPPIN」にシリルが1曲ゲスト参加していたり、トライブ13の「THE HEALING DANCE」にはブライアンJがソングライターにクレジットされてたりしています。

ゲストには、兄アート・ネヴィル(organ)、甥のアイヴァン・ネヴィル(organ)とイアン・ネヴィル(g)、さらにタブ・ベノワ(g)、ジャンピン・ジョニー・サンソン(harp)、ウェイロン・ティボドー(washbord)といったニューオーリンズ/ルイジアナ勢も参加していますが、さほどニューオーリンズ臭は感じられません。ですが得体の知れないガンボなごった煮感と、ひりひりとしたストリート感があり、音の“ざらつき”と“ぎらつき”にはラテンの匂いがします。キーマンはやはりブライアンJ。この人、ギター、ベース、ドラムスといった核になる部分をほとんど一人でこなしているんです。ゴツゴツとした質感のギターはこの作品の印象を決定付けていますし、ファンク・バンドを率いるだけあって、跳ねるドラムにグルーヴするベースと、かなりのやり手です。

とは言え全体を支配するのはシリルのヴォーカル。独特の粘り気を持ち、エモーショナルを絞り出すように歌うあの歌唱です。特別ブルースを意識しているようには感じませんが、これまでに無い程に生々しい質感の歌声は、今まで以上にソウルフルですし、やはりブルージーなのかもしれません。その歌声からは内に秘めた魂のようなものがひしひしと感じられます。やはり熱い漢なのです。

1曲目、ジミー・リードの「I Found Joy」。ラテンとニューオーリンズが融合したようなアレンジで、人を食ったようなチープなリズムが堪らなく格好良い! ニューオーリンズなオルガンはアート・ネヴィル。続くタブ・ベノワとイアン・ネヴィルのギターにアイヴァン・ネヴィルのハモンドも入るタイトル曲「Brand New Blues」。ブルージーなイントロからネヴィルズ印のファンキーな展開になります。抑制を効かせながらも唸るような、吠えるようなシリルの歌が良いですね。そしてブライアンJのギターが格好良い「Shake Your Gumbo」と「Cheatin' And Lyin'」、さらにジョニー・サンソンのハープとウェイロン・ティボドーのウォッシュボードが小気味良く暴れる「Cream The Beans」、これらはシリルとブライアンJの共作曲ですが、たしかにブルースではあるのかもしれませんが、リズムにも響きにも妙にざわざわとしたアングラ感のようなものがあって惹かれます。

力強いワンコードからサビへと流れる一見マディ・ウォーターズ風な「Mean Boss Blues」。ですがドラムの跳ね方、アイヴァンのオルガン、サンソンのハープなどがグラグラと絡み合い、決してシカゴではないガンボなうねりを産み出しています。そして今作中で最もストレート・ブルースな「Blue Blue Water」。またしてもジミー・リードのカヴァーですが、あまりにもブルース的すぎて、反ってこのなかで異質に感じます。しかしストレートにブルースを歌うシリルもかなり良いです。ラストを締める「Slave Driver」もブルージーですが、オリジナルがボブ・マーレーであるところが凄い。まさにレゲエ・ブルース、シリルらしいアイデアですが、味わいはディープです。

ブルース。確かにブルースです。ですがそんじょそこらのブルースとは一味違うブラン・ニュー・ブルース。いやはや、シリル・ネヴィルの底力を感じさせられる傑作です。

09年ベスト・アルバム4位~5位

2010-01-15 15:32:31 | 2009年総括
4位

LEVON HELM / ELECTRIC DIRT
レヴォン・ヘルムの最新作。まるでザ・バンドのような1曲目「Tennessee Jed」からテンション上がりまくりです。前作「DIRT FARMER」も素晴らしかったですが、それから2年後という早いスタンスでまたも傑作を届けてくれました。咽頭癌を乗り越えてのこの充実振りは嬉しい限りですね。前作はアコースティックを基調としたトラディショナルな味わいが濃い作品でしたが、それに比べると今作はおよそ半数の曲でエレキギターが前面に出て、数曲ではブラス隊も入るなど、ブルース色やロック・テイストを増した華やかな仕上がりになっています。

何はともあれレヴォンの歌声が良いですね。しゃがれてはいますがハリがある。そして独特の躍動感に溢れてる。土っぽくて、ファンキーで、めちゃくちゃソウルフル! 何より人間味に溢れてる! こういう歌を歌える人ってなかなか居ませんよね。もちろんドラミングも最高! やっぱりザ・バンド独特の跳ねたリズムはレヴォンが産み出していたんだと再確認させられました。あとマンドリンも弾いてますよ~!

プロデューサーは前作から引き続いてラリー・キャンベル。バックにはキャンベルの奥方テレサ・ウィリアムスや、レヴォンの娘エイミー・ヘルム、そのエイミーのバンド仲間でもあるバイロン・アイザックス(b)、ピアノやオルガンからアコーディオンまで弾きこなすブライアン・ミッチェルなど、近年のレヴォン周辺でお馴染みといったメンバーが名を連ねています。まるで“レヴォンと愉快な仲間達”的な雰囲気ですが、それは音楽からも伝わってきます。

そして「Tennessee Jed」にいかにもザ・バンドなホーン・アレンジを施しているのはセックス・モブのスティーヴン・バーンスタイン。これなんて往年のアラン・トゥーサンを意識してるんだろうな~、なんて思っていると、7曲目「Kingfish」と11曲目「I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free」ではそのアラン・トゥーサンがホーン・アレンジにクレジットされている!! 堪りませんね~

曲目はカヴァー中心ですが、グレイトフル・デッド、マディー・ウォーターズ、ランディ・ニューマン、ステイプル・シンガーズ、ハッピー・トラウム、ニーナ・シモンなど、ジャンル・レスでありながらレヴォン・ヘルムらしい選曲になっています。この選曲のセンスもさることながら、レヴォンの個性とバンドの一体感でカッチリと一つの作品に纏め上げられているところがまた素晴らしい!


5位

BUDDY & JULIE MILLER / WRITTEN IN CHALK
昨年のグラミー賞で主要3部門を総なめにしたロバート・プラント&アリソン・クラウス。その時のパフォーマンスで、その二人とT・ボーン・バーネットの陰に隠れてほとんど画面に映らないギタリストが居たのをご存知でしょうか? そのギタリストこそ今作の主役バディ・ミラーなのです。

バディ・ミラーはオルタナ・カントリー界の名ギタリストとして知られ、数あるサポートの中でも、エミルー・ハリスのバック・バンド“スパイボーイ”での活躍は有名で、その名演は彼女の98年のライヴ盤「SPYBOY」として残されています。近年ではソロモン・バークのカントリー作「NASHVILLE」(06年作)のプロデュースが印象深いですね。ソウルとカントリー、もしくは黒人と白人の垣根を取り払った素晴らしい作品でした。もちろんソロのシンガー・ソング・ライターとしても活躍し、素晴らしい作品を多数残しています。04年の「Universal United House of Prayer」は傑作でしたね。

そして今作のもう一人の主役がバディの奥方ジュリー・ミラー。彼女もシンガー・ソング・ライターとして90年代からソロ作を数作品残しているのですが、残念ながら私は聴いたことが無いんですよね~。すいません…。で、このご夫婦は、それぞれで活躍する一方、夫婦名義の作品も残しているわけです。今作はその3枚目になるのでしょうか?

ラリー・キャンベルのフィドルに導かれて始まる1曲目「Ellis County」。哀愁たっぷりの旋律が素晴らしいジュリー・ミラーの作品で、なんとアルバム全12曲中8曲がジュリーの作となる曲で締められています。ジュリーの作り出す素朴且つ切ないメロディーが今作の核になっている感じです。そしてそのメロディーと共に二人の個性的な歌声が聴けば聴く程染みてくる。アウトローな響きを持つバディの声と、儚さと刺とを併せ持つようなジュリーの歌声。そして両者のハーモニー、最高です。

今作中唯一の夫婦共作ナンバー「Gasoline And Matches」はガレージ風味のオルタナ・カントリー。ジュリーの静かな歌声が美しいスロー・ナンバー「Don't Say Goodbye」。ここでハーモニーを付けるのはパティ・グリフィン。ロバート・プラントとジェイ・ベルローズ(ds)が参加し、あの雰囲気を再現するかのような「What You Gonna Do Leroy」。スチュワート・ダンカンのフィドルとガーフ・モリックスのラップ・スティールが効いてますね~。そして元はおそらくリズム&ブルース系の曲と思われるカヴァー「One Part, Two Part」はスカッとしたカントリー・ロックに仕立て上げられている。しかしバックにはREGINA & ANN McCRARYという黒人姉妹がコーラスを付けるという憎い演出。その他、ジュリーの物憂い歌声に惹かれるジャジーな「Long Time」、バディの重くソリッドなギターが格好良いブルース・ロック「Memphis Jane」などなど。最後はエミルー・ハリスがコーラスを付けた「The Selfishness In Man」で雄大に終わる。名盤です!



それにしてもレヴォン・ヘルム(4位)とバディ&ジュリー・ミラー(5位)、どちらもラリー・キャンベルの活躍が光っていますね。で、レヴォンも、キャンベルも元を辿ればボブ・ディラン(6位)のバック・バンドの出。ちなみにバディ&ジュリーはレヴォンの前作「DIRT FARMER」でコーラスを付けている。さらにバディ・ミラーとジム・ローダーデイル(9位)は盟友のような仲で、近年も共演を重ねています。なんか私のベストアルバムはこの辺りの人脈総ざらいのようになっていますが、正直、この辺りを聴いていれば、「ルーツな日記」的に鉄板なのです!

09年ベスト・アルバム6位~10位

2010-01-13 23:47:52 | 2009年総括
6位

BOB DYLAN / TOGETHER THROUGH LIFE
やっぱりボブ・ディランでしょう。この声には抗いがたい説得力があります。前作「MODERN TIMES」の延長上にあるような作風ではありますが、ロス・ロボスのデヴィッド・ヒダルゴの参加によるラテン色に新たな妖気を感じますよね~。そしてアルバム全体がディランならではの緊張感で包まれていますね。ディランの声には前作同様に魔力的な強さを感じますが、それと同時に何処か儚げな響きも感じます。そしてバック・バンドの演奏は芳醇なルーツ・ミュージックを奏でながらも、退廃的に歪んでいる。このアルバムの持つ不思議な緊張感は、そんなアンバランス感が絶妙の均衡を保っているからなのかもしれませんね。「Beyond Here Lies Nothin'」や「If You Ever Go To Houston」のような異国情緒の深い曲が特に秀逸。「Life Is Hard」や「This Dream Of You」のようなセンチメンタルな曲も味わい深い。マディ・ウォーターズのあの曲を使った「My Wife's Home Town」も強烈。全体の色合いとしては“枯れ”ているかもしれませんが、でもその“枯れ”をも“凄”みに変えてしまう力をディランは持っている。やっぱりディランは魔王なのです! って6位じゃちょっと低過ぎるかな~。ちなみに前作「MODERN TIMES」は当ブログの06年ベストアルバム第1位でした。

7位

FUNKY METERS / LIVE IN JAPAN
ニューオリンズ・ファンクの雄、ファンキー・ミーターズによる09年の夏に行われた渋谷クワトロ公演の実況録音盤。2枚組で2時間越え。これは沼です。底なし沼です。肩までどっぷりな感じです。これぞバイユー・ファンクの真骨頂です。有名な曲や大好きな曲が次から次へと繰り出されるのも感無量ですが、それ以上にただただグルーヴに浸かり続ける快感! まるでアメーバのようにリズムを変化させていくバイユー・ジャム・セッション。堪りません。私はこの日のライヴは見逃しましたが、この2日後フジロックで観ました。私にとって今年のベスト・アクトでした。それにしてもバティステのドラムは凄いですね~。フジで観た時以上のパワフルさを感じます。そしてイアン・ネヴィル。彼もソロになると結構弾いていた印象がありますが、こんなにアグレッシヴだったかな~? で、全体的にエコーが深くかけられてる感じで、どこかサイケ・ファンク的な雰囲気すら感じさせる。緩さともっちゃり感を色濃く感じたフジとはちょっと違う印象ながら、そこがまた新鮮で格好良い! アート・ネヴィルのオルガンも良い音してますし、沼グルーヴを強烈にうねらせるジョージ・ポーター・ジュニアのベースも最高です。若きイアンのカッティングも中毒性があって良いですし、それらを後ろからガンガン攻め立てるようなバティステのセカンドライン・ビートも強烈! 4人それぞれの音が刺激し合いながら絡み付き、ドロドロと2時間強のファンク沼。あ~、また生で体験したい!!

8位

LITTLE JOE WASHINGTON / TEXAS FIRE LINE
ダイアルトーンが誇るテキサス・ブルースの怪人リトル・ジョー・ワシントン、4年振りの新作。のっけからJBの「I'll Go Crazy」をグシャグシャに歌い、掻きむしるようにギターを弾きまくる。これがブルースか?いやこれぞブルースでしょ! 洗練されて奇麗になりすぎたブルースばかりが幅を利かせる昨今ですが、ここではそんな洗練とはおよそかけ離れたプリミティヴな勢いに圧倒されます。正直、歌もギターも決して上手くはないですよ。ですが驚異的にエグイ。もうまるでエグ味の塊。そのエグ味でもってサム・クックの「You Send Me」やヘッドハンターズの「Chameleon」なんかをやってしまう破天荒さ。堪りませんね。しかも「You Send Me」はかなり良い!! このやさぐれた歌唱はこの人にしか出せない味わいですね。そしてギターも凄い。流石はテキサスな切れ込みを感じさせながら、感情先攻で弾けまくる。もういかがわしいフレーズの連発ですが、そこにリトル・ジョーならではの泥臭さが溢れています。そんなやりたい放題なリトル・ジョーに対してタイト且つふくよかなグルーヴを提供するバック・バンドがまた素晴らしい。ダイアルトーンの職人達ですね。自由奔放なリトル・ジョーをどっしりとしたの演奏でカチッとサポートしています。ホーン隊を含む極上なサウンドが何故かドロドロのリトル・ジョーとよく絡むんですよね。ギラギラとしたアール・キングの「Those Lonely Lonely Nights」は特に絶品です。



9位

JIM LAUDERDALE / COULD WE GET ANY CLOSER?
快調に新作をリリースし続けるジム・ローダーデイル。ドリーム・プレイヤーズを率いた前作「HONEY SONGS」も素晴らしい作品でしたが、今作はブルーグラス・アルバムです。カントリー・ロックなイメージのあるジム・ローダーデイルですが、実は過去に2度もグラミーのブルーグラス部門を受賞しているグラッサーなのです。で、今作も本年度のグラミー賞にノミネートされています。まず曲が良い!! 全曲ジムの作曲及び共作曲で締められています。各メンバーが鬼のようなテクニックで疾走する脅威のハイ・スピード・ナンバー「I Took A Liking To You」からスタートし、雄大な大地を思わせる、カントリーらしい開放感と哀愁をメロディーに乗せ、ロマンティックな土っぽさを持った歌と演奏が並びます。アコギ、マンドリン、バンジョー、フィドルの音色からブルーグラスの魅力がたっぷり味わえると同時に、ジムらしいロック・テイストも隠し味的に感じられます。そしてプロデューサーでもあり、ジムの過去作でも活躍していたRANDY KOHRS のリゾネーター・ギター。彼のスライドは今後も注目です!

10位

JOHN BOUTTE & PAUL SANCHEZ / STEW CALLED NEW ORLEANS
実は08年の作品のようなのですが、多分日本に入ってきたのは09年だろうと言うことで…。ジョン・ブッテとポール・サンチェスの共演盤です。現在のニューオーリンズ・シーンで注目を集めるシンガー・ソング・ライターの二人ですが、どちらもデビューは90年代という比較的若い世代。特にジョン・ブッテは近年驚異的に頭角を表してきてますね。1曲目「Stew Called New Orleans」からブッテの暖かみのあるハスキーな声はもうソウルフルを通り越して“崇高”と評したい響き。バックの演奏がシンプルなので余計にブッテの歌声がダイレクトに染みてきます。スロー・ナンバー「A Meaning Or A Message」なんか染みまくりです。一方のポール・サンチェスも、柔らかさと苦みを伴った素晴らしい声の持ち主で、二人のリード曲が交互に配され、その個性の対比と融合も面白い。サンチェスの弾くアコースティック・ギターも美しいですね。そしてもう一人のキーマンがトランペットのリロイ・ジョーンズ。彼のペットがトラディショナルな香りを吹き込みます。オリジナル中心の曲目も心地よいスウィング感を持った秀曲揃い。カヴァーではジェリー・ロール・モートンの「I Thought I Heard Buddy Bolden Say」やポール・サイモンの「American Tune」も取り上げています。「American Tune」でのブッテの歌唱も神がかってますね。

09年ベスト・アルバム11位~20位

2010-01-12 13:17:26 | 2009年総括
11位

ALLEN TOUSSAINT / THE BRIGHT MISSISSIPPI
ジョー・ヘンリーがプロデュースしたアラン・トゥーサンのニューオーリンズ・ジャズ作品。ニューオーリンズの息吹とアラン・トゥーサンの軽やかで円やかなタッチを存分に楽しめます。そしてジョー・ヘンリーらしい退廃的なムードが、古き良きニューオーリンズへの哀愁を際立たせています。聴けば聴く程味が出る傑作。

12位

RICKIE LEE JONES / BALM IN GILEAD
これは名盤ですね。前作も素晴らしかったですが、今作はもっと落ち着いた暖かい雰囲気。フォーク、カントリー、ソウル、ゴスペルなどがスピリチュアルに融合しています。彼女の歌声がまた素晴らしいですね。何処か頼りなげで儚い雰囲気なれど、何かある種の“境地”に達したような力強さがあります。ゲストにベン・ハーパー、アリソン・クラウス、ビル・フリゼール、などが参加。

13位

MORIARTY / GEE WHIZ BUT THIS IS A LONESOME TOWN
このアルバムはよく聴きました。フランスから登場の不思議バンド、モリアーティ。古き良きトラッドやブルースの世界を独特の視点で演劇的且つシュールに描きます。アコースティック主体の素朴なサウンドには確実にいにしえの魔力が染みています。ローズマリーの飾らないながらも不思議な魅力をもった歌声にも惹かれます。そしてライヴも最高なんです!


14位

NORAH JONES / THE FALL
1曲目のポップさには驚かされましたが、流石はノラ・ジョーンズ。でも正直、あまりポップな方向へは行って欲しくないなとも思っています。ただある意味、もう何をやるか分からない存在になりつつあるので、好きなように何所へでも飛んでいって欲しいとも思います。しっとりとしていながら、そんな大きな翼のようなものを感じさせる作品です。


15位

上原ひろみ / PLACE TO BE
ライヴ前とライヴ後で聴こえ方がガラッと変わったアルバム。もちろんライヴ後の方が色々聴こえてきました。これを聴くとやっぱりライヴでの興奮が甦ってきちゃうんですよね~。でもそういったプラスαは差し引いた順位のつもりです。ピアノ一つでの自由な表現力と同時に、リズム面での躍動感を味わって欲しい作品。


16位

ALICIA KEYS / THE ELEMENT OF FREEDOM
本当はこのアルバムを1位にする予定だったのに…。期待が大きすぎたかな?っていうか前作が素晴らしすぎた。今作には残念ながらアリシアらしいストリート感やブラック・ミュージックとしての“うねり”のようなものがほとんど感じられません。しっとりとはしているけどポップスに近い。なによりあまりにも80年代を意識したサウンドが好きになれません。でもアリシアの歌が沢山詰まった新作という価値だけでこれぐらいの順位にはなります。もちろんビヨンセとの共演曲をはじめ、グッとくる曲もありましたけどね…。それだけに残念です。


17位

BOBBY RUSH / BLIND SNAKE
ブルースとは匂いだ! 最近のブルースは匂わない…。でもボビー・ラッシュは匂います! いかがわしいファンク・ブルースの隙間からチトリン・サーキットで染み付いた臭気が滲み出てきます。脂の乗った歌声に乾いたハープの響きが堪りません。


18位

MARIA MULDUR & HER GARDEN OF JOY / MARIA MULDUR & HER GARDEN OF JOY
マリア・マルダーとその仲間達によるジャグ・バンド作。ジョン・セバスチャン、デヴィッド・グリスマン、タジ・マハール、ダン・ヒックスといった強烈なメンバーが参加。ジャグ・バンドならではのグルーヴ感がたっぷり楽しめます。そしてマリアの年期の入った歌声も最高です。


19位

BOB DYLAN / CHRISTMAS IN THE HEART
ディランのクリスマス。これは反則でしょう! 衝撃度で言えば09年のナンバー・ワン! でもその効力はクリスマス時期にしか発揮しなさそうなのでこの順位に落ち着かせました。この衝撃は、また今年のクリスマス時期までお預けです。


20位

ALEC OUNSWORTH / MO BEAUTY
クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤーのヴォーカリスト、アレックのソロ作。なんとニューオーリンズ録音で、ジョージ・ポーター・ジュニアとスタントン・ムーアも参加している。といってもさほどニューオーリンズ色は感じられませんが、アレックのよたれ声がいい具合に絡み付く。個人的にクラップも大好きですが、こっちの方がさらに好みです。

09年ベスト・アルバム21位~30位

2010-01-11 12:10:11 | 2009年総括
21位

INDIA. ARIE / TESTIMONY: VOL.2, LOVE & POLITICS
長~く待たされた前作からの続編。待ったかいがありました。

22位

THE DEREK TRUKS BAND / ALREADY FREE
デレクのスライドが良いのはもちろん、バンドとして最高!

23位

WILLIE NELSON / AMERICAN CLASSIC
ジャズ系の職人達をバックにした大人のスタンダード・アルバム。渋いです。

24位

THE ROBERT CRAY BAND / THIS TIME
来日公演も好評だったロバート・クレイ。スカッとしたブルース。こんなに生々しいギター弾く人でしたっけ?

25位

VA / GILLES PETERSON PRESENTS HAVANA CULTURA - NEW CUBA SOUND
ジャイルズがキューバに赴き、その目で観た、耳で聞いた今のキューバ音楽。格好良いです!

26位

MONSTERS OF FOLK / MONSTERS OF FOLK
ブライト・アイズとマイ・モーニング・ジャケットのジム・ジェームスとのユニット。コナー・オバーストも良いですけど、ジム・ジェームスの声が持つ神秘的な緊張感は特別です。

27位

RAMBLIN' JACK ELLIOTT / A STRAGER HERE
ランブリン・ジャックのいなたく妖しいブルース集。

28位

LEDISI / TURN ME LOOSE
弾むR&B。爆発するソウル!

29位

SARAH JAROSZ / SONG UP IN HER HEAD
フォーク/ブルーグラス界期待のニュー・ヒロイン。

30位

LOS LOBOS / GOES DISNEY
ロス・ロボスがディズニー? 企画物なれど侮るなかれ。


いまさらですが、09年のベスト・アルバム30枚です。もちろん何かデータを集計したり、採点基準が有ったりという、そんな論理的な根拠はいっさい無い、私個人の趣味と気分で出来上がったベスト30です。ほんの余興ですので、御了承を。では、順次発表していきますのでお楽しみに。

ルーツな日記09総決算

2009-12-31 23:15:09 | 2009年総括


さて、毎年恒例の年間ベストアルバムですが、今年は年明けにベスト30を発表したいと思います。対象作品は基本的に今年発売されたCDで、リイシュー作品や発掘音源、映像物は除外しました。もちろん何かのデータを集計したり、客観的に分析し項目ごとに点数を付けたり、そんなことはいっさいしない、私の気分一つのベスト30です。お楽しみに!

で、そのベスト30から除外した作品の中で、あまりの素晴らしさ故にどうしても触れておきたい作品が2つあります。それはビヨークの「VOLTAIC」(写真左)とビヨンセの「I AM ... YOURS(写真右)」。どちらも映像ありきの作品ということで対象外とさせて頂きました。でも年間ベストな出来映えなのです。

ビヨークの「VOLTAIC」は、単なる付録つきのライヴ・ボックスではなく、「VOLTA」というアルバムがほんの序章に過ぎなかったような、あのアルバムの奥に横たわる広く深い世界をたっぷりと見せてくれる、しかもボックスとしての芸術性も高いという、ビヨークならではのアートを感じさせてくれる作品。やっぱりこの雑然としたボリュームに必然性と芸術性を持たせ、一つの作品として高い完成度で纏められるのは、世界広しと言えど、現在はビヨークぐらいしか居ないんじゃないですかね。デラックス・エディションが流行っているなか、こういう作品をドーンと出すビヨーク。あっぱれです!

そしてビヨンセの「I AM ... YOURS」 これはもう、いかに今年のビヨンセがシンガーとして最強かを世に知らしめるような作品。09年8月、ラスベガスのウィン・アンコール・シアターでのステージで、観客数はわずか1500人。サマソニや日本ツアーのショーとはまるで違いますが、それでもビヨンセはビヨンセ。何度も書きますけど最強です。やっぱ声が凄い!! まず尋常じゃない声量。そしてハリがあって勢いがある。もちろん多彩な声音の使い分け、驚異的なフェイク、震えるようなビブラード、どれをとっても最強としか言いようが無い! さらに百面相のようにコロコロと変わる大げさな表情や大仰な踊りには、演技力とか表現力を遥かに越えたブラック・ミュージックならではの“濃さ”がある。これがまた堪らないんです。序盤の「Halo」から鳥肌物のライヴ。


さて、今年も昨年に続き、異様なほどライヴに恵まれた年でした。ベストはやっぱりビヨンセですよね。あのライヴは凄かった。サマソニでのファーストインパクトも驚嘆でしたが、最前列で見れた埼玉スーパーアリーナはさらに圧巻でした。私の脳には「09年のビヨンセ」としてその凄まじさが永遠に刻まれた感じがします。

そのビヨンセを夏フェスに読んだサマソニこそ今年の夏のハイライトでしたが、もちろんフジロックもヤバかった。なにせファンキー・ミーターズとネヴィル・ブラザーズが揃って来てくれましたからね。彼らを野外フェスで観れた喜び。これも永遠に忘れられませんね。シリルが来なくても、雨が降っていても、彼らは最高でした! あとはプリシラ・アーン。徐々にフェスの記憶が薄れていく中、あのプリシラ・アーンの静謐な空気感だけは未だにふっと甦り、その都度甘味な気分にさせられます。

その他で印象に残っているライヴと言えば、まずは8月のマリーナ・ショウ。これは夏フェスに忙しくってレポートを書きそびれたライヴだったんですけど、素晴らしかったです。マリーナ・ショウが74年の大名盤「WHO IS THIS BITCH ANYWAY」そのままのバック・メンバーを引き連れて行ったスペシャル・ライヴ。特にギターのデヴィッド・T・ウォーカーに参りました。ソロではジャズ寄りの作品が多い彼ですが、この日はブルージー&ソウルフル。体をクネクネと揺らしながらスウィートなフレーズを連発。時に甘味なトーンでメロウに、時に強いアタックでブルージーに。ある時はマリーナに語りかけるように、またあるときは挑みかかるように。とにかくデヴィッドのギターは良く歌い、良く語る。ソウル系セッション・ギタリストとして間違いなく最高峰の匠を観た感じです。もちろん主役マリーナの歌声も素晴らしかったです。

ギタリストと言えば、大好きなシカゴ・ブルースのカルロス・ジョンソンも最高でしたし、ウッドストックのエイモス・ギャレットもありました。しかしライ・クーダーに行きそびれたのは痛恨の極みです。

メリッサ・ラヴォーとモリアーティを観た「LAFORET SOUND MUSEUM 2009」も忘れられません。特にモリアーティはライヴ以外にもランデブーというスペシャルなイベントにも参加させていただき、メンバー達と楽しいひと時を過ごせたのは一生物の思い出です。

あとはドニー・フリッツ&ザ・デコイズ、こちらも奇跡の来日でしたね。南部の香りをたっぷ堪能させていただきました。そして年末の上原ひろみ!!!

なんだかんだで今年も充実した1年でした。


来年はキャロル・キング&ジェイムス・テイラー、さらにボブ・ディラン!!! そしてフジロックはどんな面子を呼んでくれるのか?おそらく元旦にあるであろう開催発表を間近に控え、そわそわしています。早く来い来いフジロック!!


では皆様、良いお年を!!

今年のブライテストホープ

2009-12-30 16:01:48 | 2009年総括
第1位:モリアーティ!!!!

MORIARTY / GEE WHIZ BUT THIS IS A LONESOME TOWN
フランス・デビューは08年だそうですが、日本に紹介されたのは今年ということで。いやはや、このアルバムは相当聴きましたよ。いにしえのジャズやブルースが持っていた魔力をシアトリカル且つ謎めいた雰囲気で甦らせる不思議なバンドです。来日公演も素晴らしかった。


第2位:ジョシュア・ジェイムス

JOSHUA JAMES / THE SUN IS ALWAYS BRIGHTER
男性シンガーの歌唱にここまで胸を打たれたのは本当に久し振り。最近の男性シンガーは優しく歌うのが流行のように思われますが、そういった趣向とは無縁のリアリティを感じさせる歌声です。ライヴはタワレコでのミニ・ライヴしか見たことが無いのですが、生歌はさらにエモーショナルで染みました。次はフジロックで観たいです!


第3位:SARAH JAROSZ

SARAH JAROSZ / SONG UP HER HEAD
最近手に入れたこのアルバムにもやられました。まだ10代の女性シンガー・ソング・ライターで、ギター、マンドリン、バンジョー、ピアノを弾きこなすマルチ・プレイヤー。古き良きフォーク&ブルーグラスな息吹を匂わせつつ、卓越した演奏力でジャム・グラス的な広がりをも持ちます。何せバックにはジェリー・ダグラス、スチュアート・ダンカン、マイク・マーシャルなど、錚々たるメンバーが参加していますからね~。飾らない歌声がまた心地良いです。生で観てみたいですけど、このジャンルでの来日は難しいかな~。

第4位:ダイアン・バーチ

DIANE BIRCH / BIBLE BELT
SSW系ではおそらく今年一番の大型新人でしょうね。70年代を伺わすこの歌声は素晴らしいですね。ニュー・ソウルっぽい雰囲気があるのも堪りません。来日公演に行きそびれたのが悔やまれます。