ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

2012 天に召された偉人達

2012-12-31 23:40:07 | 2012年総括
LEVON HELM / DIRT FARMER

残念なことに、2012年も沢山のアーティストが天に召されました。仕方ないこととはいえ、とても悲しいですね。特に4月半ば、長きに渡った癌との闘病生活が最終ステージにあるとのオフィシャルサイトによる発表の後、程なくして亡くなられた元ザ・バンドのレヴォン・ヘルム。彼の死程沈痛なものはありませんでした。ここ数年来日の噂も有っただけに、本当に残念でなりません。結局、私は一度も彼の姿を生で拝むことは出来ませんでした。でも彼のドラムも歌声も、ホント大好きでした。


ETTA JAMES / THE DREAMER
1月20日、白血病の合併症により亡くなられたブルースの女王エタ・ジェイムス。享年73歳。08年の映画『キャディラック・レコーズ』でビヨンセが彼女の役を演じて話題になったのも記憶に新しいですね。写真の作品は昨年リリースされ、最後のアルバムとなった「THE DREAMER」。彼女独特のブルージーなしゃがれ声は健在。ガンズ・アンド・ローゼス「Welcome To The Jungle」など意欲的なカヴァーも印象的でした。


THE JONNY OTIS STORY VOLUME 1 1945-1957: MIDNIGHT AT THE BARRELHOUSE
エタ・ジェイムスが亡くなられる3日前に90歳で亡くなられたジョニー・オーティス。R&B勃興期にアーティスト発掘や作曲、プロデューサーとして多くのシンガーを売り出しただけでなく、自らもバンド・リーダーとして活躍し、ゴッドファーザー・オブ・リズム&ブルースと呼ばれる偉人です。実はエタ・ジェイムスを見いだしたのもオーティスでした。14歳のエタをモダン・レコードと契約させデビュー曲「The Wallflower」のヒットを演出しました。写真は英ACEからリリースされたコンピレーションで、彼自身の名義による「Harlem Nocturne」、ビッグ・ママ・ソートンの「Hound Dog」など、彼が手掛けたヒット曲も収録されたアンソロジー。


TERRY CALLIER / SPEAK YOUR PEACE
70年代のニュー・ソウル期から独特のフォーキーな質感で人気を博したテリー・キャリアー。10月28日逝去。享年67歳。90年代に入ってクラブ界隈から再評価され、ジャイルズ・ピーターソン経由で復活してからも独特の存在感を発揮していましたね。数年前までちょくちょく来日していた印象でしたが、私はいつか観に行こうと思いつつ、結局観ることが出来ませんでした。残念です…。写真はインコグニートのブルーイがプロデュースした02年作。


MEMPHIS HORNS / MEMPHIS HORNS
サザン・ソウルに無くてはならないホーン・セクション。その筆頭と言えるのがメンフィス・ホーンズ。スタックスやハイを彩った彼らの音色こそサザン・ソウルの要と言えたかもしれません。そのメンフィス・ホーンズのサックス奏者アンドリュー・ラヴが4月12日、メンフィスの 自宅で亡くなられたそうです。享年70歳。


BOOKER T.&THE MG'S / MELTING POT
5月13日、BOOKER T.&THE MG'S のベージストとして、STAXの黄金時代を築いたドナルド・ダック・ダンが亡くなられました。来日中のことでした。ブルーノート東京での素晴らしいステージを終えたその翌朝、宿泊先で亡くなられていたそうです。日本のファンにとって、彼の死は忘れられませんね。世界最高峰のベーシストの一人でした。


MICKEY BAKER / ROCK WITH A SOCK
ミッキー&シルヴィアとしての活動でも知られるケンタッキー州生まれの名セッション・ギタリスト、ミッキー・ベイカー。11月27日に亡くなられたそうです。享年87歳。


LOUISIANA RED / LOUISIANA RED SINGS THE BLUES
2月25日、ドイツの病院で亡くなられたルイジアナ・レッド。享年79歳。50年代から活動していたアラバマ州出身のブルースマン。マディ・ウォーターズに影響を受けた豪快なスタイルは、ただ荒々しいだけじゃない味がありました。72年リリースのこの「LOUISIANA RED SINGS THE BLUES」でもマディの「Rollin' Stone」をドロリとしたフィーリングで披露しています。晩年はドイツで活動していたそうです。


EARL SCRUGGS WITH FAMILY & FRIENDS / THE ULTIMATE COLLECTION LIVE AT THE RYMAN
今やブルーグラスの代名詞、5弦バンジョーにおける3フィンガー奏法を確立し、ビル・モンローと共にブルーグラスの基礎を築いた偉大なるバンジョー奏者。3月28日、老衰にて亡くなられたそうです。88歳でした。一つの歴史の終演を感じさせられます。


DOC WATSON / DOC WATSON
5月29日、89歳で亡くなられたドク・ワトソン。フラット・ピッキング・ギターの第1人者として、ブルーグラス/カントリー・シーンに偉大な足跡を残し、後続ギタリストにも多大な影響を与えました。


TREME BRASS BAND & MARDI GRAS INDIANS / TREME TRADITIONS
ニューオーリンズのブラス・バンド文化における、象徴的な存在でもあったライオネル・バティストが7月8日に亡くなられました。81歳だったそうです。バスドラを担ぐ彼の勇姿、忘れられません。2003年にはトレメ・ブラス・バンドの一員として来日もしました。増上寺周辺をパレードもしましたし、虎ノ門 JTアフィニス・ホールでのコンサートも素晴らしいものでした。バスドラを担ぐ彼の勇姿、忘れられません…。


VA / CHESS NEW ORLEANS
9月15日、ニューオーリンズのシンガー、ジェイムズ"シュガー・ボーイ"クロフォードが亡くなられました。享年77歳。ディキシー・カップスやドクター・ジョンからシンディー・ローパーまで、数えきれないアーティストにカヴァーされ、今やニューオーリンズ・クラシックとなった「アイコ・アイコ」のオリジナルはこの人の「Jock-A-Mo」でした。写真はその「Jock-A-Mo」を含む彼のチェス録音を数曲収録したコンピレーション盤。



FRANK FROST & JERRY McCAIN / SOUTHERN HARP ATTACK
アラバマが生んだ名サザン・ハーピスト、ジェリー・マッケインが3月28日に亡くなられたそうです。81歳でした。50年代から活躍しトランペット、エクセロ、レックス等に録音を残しました。「She's Tough」「Steady」などはサザン・ハープ・クラシックとして有名。写真のアルバムはアーカンソー出身のフランク・フロストとの「SOUTHERN HARP ATTACK」。と言っても両者の60年代、ジュウェル録音を纏めたコンピ盤で、共演盤ではありません。とは言え、極上の南部ブルースとハープの魅力が味わえます。



RAVI SHANKAL / FULL CIRCLE
ジョージ・ハリスンが師と仰ぎ「ワールド・ミュージックのゴッド・ファーザー」と讃えた、シタールの世界的奏者ラヴィ・シャンカールが、12月11日、カリフォルニア州の病院にて亡くなられました。享年92歳。ノラ・ジョーンズのお父さんでもあります。



MAJOR HARRIS / THE BEST OF MAJOR HARRIS NOW AND THEN
70年代にデルフォニックスのメンバーとして活躍し、ソロ転向後も「Love Won’t Let Me Wait」などのヒットを出したフィリー・ソウルの名シンガー、メイジャー・ハリス。11月9日、心不全及び肺不全のため亡くなられました。65歳でした。



FONTELLA BASS / FREE
65年の大ヒット「Rescue Me」で知られる女性ソウル・シンガー、フォンテラ・バスが12月26日に亡くなられました。心臓発作から生じた合併症のためだそうです。写真は72年作「FREE」。ニューソウル的な深みを感じさせる作品で、後にフリー・ソウル界隈でも再評価された名作です。エリカ・バドゥにも影響を与えたと言われる名シンガーでした。



TERRY HUFF AND SPECIAL DELIVERY / THE LONELY ONE
聴く者の胸を鷲掴みにするほど甘く切ないファルセットと、ぴょんとカールしたナマズ髭で愛されたテリー・ハフ。12月14日に65歳で亡くなられました。大腸がんを患っていたそうです。76年発表の「THE LONELY ONE」は『70年代スウィート・ソウルの至宝』とまで謳われた名作中の名作。ファルセットがシャウトのように感極まっていく様は何度聴いてもゾクゾクさせられます。プロデュースはアル・ジョンソン。



MARVA WHITNEY / I AM WHAT I AM
ジェイムス・ブラウン一座のディーヴァにして『ソウルシスターNO.1』と呼ばれたマーヴァ・ホイットニーが12月22日、肺炎の合併症で亡くなられたそうです。68歳。写真は06年の復活作「I AM WHAT I AM」。全面バックアップをしたのは日本が誇るオーサカ=モノレール。翌年にこの組み合わせでフジロックに出演したのも記憶に新しいですね。あの時の貫禄のステージは本当に素晴らしかったです。



CHUCK BROWN / WE'RE ABOUT THE BUSINESS
5月16日、ゴッドファーザー・オブ・ゴーゴーとして知られるチャック・ブラウンが亡くなられました。享年75歳(76歳という説も)。




他にも、ジョン・ロード(ディープパープルのキーボード奏者)、ピート・コージー(マディ・ウォーターズやマイルス・デイヴィスの電化作品でも知られるギタリスト)、クリス・エスリッジ(ザ・フライング・ブリトウ・ブラザースのベーシスト)、デイヴ・ブルーベック(名曲「Take Five」でも知られるジャズ・ジャイアント)、ビッグ・ジム・サリヴァン(ジミー・ペイジ、リッチー・ブラックモアの師匠格でもあるギタリスト)、デイビー・ジョーンズ(モンキーズ)、ウィンストン・ライリー(ジャマイカの音楽プロデューサー)、ジム・マーシャル(ギターアンプ「マーシャル」の生みの親)、ドナ・サマー、ホイットニー・ヒューストン…。


ああ、2012年も本当に沢山の方々が亡くなられましたね。残念でなりません。

みなさま、安らかに。

2012年ベストライヴ

2012-12-31 01:07:40 | 2012年総括
2012年も、貧乏なりに色々なライヴを観ました。その中でも印象的だったのは以下のような感じ。

CSS@新木場STUDIO COAST 1/14
ダニエル・ラノワ@ビルボードライヴ東京 1/18
テデスキ・トラックス・バンド@渋谷公会堂 2/09
DR. JOHN@ビルボードライヴ東京 2/15
ボビー・ウーマック@ビルボードライヴ東京 2/22
レオン・ラッセル@ビルボードライヴ東京 3/07
ボビー・ラッシュ@ビルボードライヴ東京  4/20
アーロン・ネヴィル@ビルボードライヴ東京 5/15
JAPAN BLUES & SOUL CARNIVAL 2012@Zepp DiverCity Tokyo 5/26
キャンディ・ステイトン@ビルボードライヴ東京 7/01
MOUNT SUGAR@銀座ときね 7/08
プリシラ・アーン@ビルボードライヴ東京 7/18
チック・ロジャース@蓮田 スタジオJazz 7/22
FUJI ROCK FESTIVAL@苗場スキー場 7/26~29
SUMMER SONIC 2012 @QVCマリンフィールド&幕張メッセ 8/19
MEIKO@ビルボードライヴ東京 9/07
東京JAZZ2012 International Showcase @東京国際フォーラム地上広場 9/08
TEDER TELAVIV TOKYO 2012@原宿Lapaz&Creme de la creme 9/04
ジョー・サンプル&クレオール・ジョー・バンド@ブルーノート東京 9/11
WORLD BEAT 2012 @すみだトリフォニーホール 9/30
アラン・トゥーサン@ビルボードライヴ東京 10/15
ジョー・ヘンリー&リサ・ハニガン@渋谷 Duo Music Exchange 10/16
ノラ・ジョーンズ@日本武道館 11/08
上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト@赤坂BLITZ 11/14
シェウン・クティ&エジプト80@渋谷クアトロ 11/20


ベストアクトは?と聞かれるとなかなか難しい。総合評価ではやはりフジロックですが、アーティスト単体で選ぶとなると、悩みますね~。圧倒的だったのは上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクトと、シェウン・クティ&エジプト80。この両者はホント素晴らしかった! そしてもっともうっとりしたのがプリシラ・アーン、もっとも感動的だったのがアーロン・ネヴィル。どちらも私の心を鷲掴みでした。この4組は甲乙付け難いですね。あとはダニエル・ラノワ、ボビー・ウーマック、キャンディ・ステイトン、MEIKO、アラン・トゥーサン、ジョー・ヘンリー&リサ・ハニガン、ノラ・ジョーンズなどなど、今年も素晴らしいライヴの目白押しでした。それにしてもビルボードライヴ東京にはお世話になりっぱなしですね。特にアーロン・ネヴィルのソロ公演が実現したのは本当に嬉しかった! あと年間を通じて癒してくれたMOUNT SUGAR。特に10人限定の銀座ときねは極上の時間を過ごさせて頂きました。それと「ルーツな日記」的にはあれですが、年明けに観たCSSは最初から最後まで興奮しっぱなしで、ホント最高でした!!!

しかしこう並べてみると、お金もないのにライヴ行き過ぎですね。来年はもう少し控えます。とは言え、既にそそるライヴが続々決定していて、かなり参ってます。どうなることやら。

シェウン・クティ@渋谷クアトロ

2012-12-30 17:48:26 | ワールド・ミュージック

また随分と前の話で申し訳ありませんが、11月20日、渋谷クアトロにてシェウン・クティ&エジプト80のライヴを観てまいりました。夏にフジロックで観たばかりでしたが、あの時は昼の野外ステージ、しかも山の中という開放感抜群のシチュエーションでしたからね。そこでのまるで大地が揺れるようなアフロビートはホント最高でした。それ故に今回のようなライブハウスという狭く暗い密室でのアフロビートというのもまた気になるのです。一体どれほど濃密なのか?体験してみたくなった次第であります。

で、結果から先に言ってしまいますと、とんでもなかったです。まさに灼熱のグルーヴ地獄。密室でのアフロビートってこんなにもディープなのか!押し寄せるリズムが幾重にも重なってフロア中に充満する感じ。会場中がアフリカン・スピリッツの熱気でムンムンでしたよ! だって序盤から「Zombie」ですよ! シェウンの父であり、アフロビートの創始者でもある偉大なるフェラ・クティが残した名曲。堪りませんね~。

まずは何はともあれシェウン・クティですよ! 彼の統率力と言うか、カリスマ性が半端無い。背が高く精悍な体つきで、上半身を振り回すように踊り、歌い、サックスを吹く。彼の存在感がステージをグイグイと引っ張っていく。バックのメンバー達もそんなシェウンのオーラに亡きフェラの面影を感じているのかもしれませんね。そのシェウンが率いるエジプト80は父フェラが生前率いたバック・バンド。ドラムス、ギター、ベース、各種パーカッション、ホーン隊、とにかく大所帯。ステージ狭しと彼らが並ぶ様だけでもかなり押しが強い様相ですが、そんな彼らが繰り出す鋼のように強靭で、ドロドロと反復するリズムの応酬は濃密そのもの。そしてそれに切れ込むように入ってくるギラついたホーンリフ。格好良い~!!

最新作から「Slave Masters」、「Mr. Big Thief」、「The Good Leaf」など、オリジナルなアフリカン・グルーヴがポリリズミックに押し寄せる。ステージの右端にはひたすら踊りながら球状のパーカッションをじゃらじゃら鳴らしている人がいる。この人の愛嬌あるダンスがまた妙に“いなた”くて堪らない。そして左端には原始的なアフリカ産カウベルのようなものをただただコンコン、コンコン叩いてる人も居る。たかがカウベル、されどカウベルですよ。このひたすら鳴り続けるキンコン、キンコンが次第に脳内をグルグル回り始める。それはもうアフリカン・グルーヴの陶酔感に飲み混まれた証拠。

でもステージ上で最もアフリカンなのは二人の女性ダンサーですよ! 黒光りする肌を強調するような露出の多い白い衣装、頭から前身をビーズで飾り付け、目の回りに施された虹色の大きなペインティングが一際目を惹く。いかにもアフリカン。彼女達は観客に背を向けて激しく腰を振る。そのスピードとキレが半端無い。セクシーと言うより圧倒的に格好良い!! ほとんど腰振りっ放しなイメージですが、一応ダンスとして振り付けもある。でもそれはまるで子供がじゃれあってるようであり、それがまたいかにも土着な雰囲気を醸す。踊るだけではなくコーラスもしますが、ハモるとかいうのではなく、ひたすら合いの手のような感じで、その反復がまた陶酔感を誘う。そういった部分もひっくるめてこの女性ダンサーの存在全てが格好良い! 私なんかは8割型この2人ばかりを観てましたからね。まあ、それは過去2回フジロックで観た時も同じでしたけどね…。

新作からのスピリチュアルなタイトル・ナンバー「Rise」も良かったですね。ダンスビートだけではない深みを見せてくれました。終盤の「You Can Run」では上半身裸となったシェウンのサックス・ブレイクが炸裂! この曲は盛り上がりますよね~。それにしてもシェウンの煽動力は流石としか言いようがないですね。この頃には完全にバンドも観客も一体となってアフロビートの渦の中でしたから。こういう親密感はやはりライヴハウスじゃないとね。シェウンの演劇めいたコミカルなアクションも印象的。

アンコールは前作から「Mosquito Song」。まずはバンドメンバーと女性ダンサーが登場。シェウンが居ないせいか、ダンサー達が大はしゃぎ。メンバー達と戯れるように踊りまくり。とにかく楽しそう。中央でダンサーとホーン隊の人達とが折り重なるように踊る様は、ちょっと昔懐かしのランバダとか思い出したり。そんなやりたい放題な現場に現れたシェウンがその様子を見てあきれ顔。そんなことも含めてアンコールならではの祝祭感。もう観てるこっちも楽しくてしょうがない。そしてラストの「Mosquito Song」の濃密度がまた凄まじかった! もうクラクラしちゃいましたね。

終わったあとはまるで台風一過のように茫然自失かつ幸福感一杯の晴れやかさ。アフロビートってなんだ!? フジロックとはまた違う、クラブ公演ならではのとんでもない濃密体験。最高でした!!

*既に記憶が曖昧です。曲目等間違いがありましたらごめんなさいね。


メンバーの足下に有ったこの夜のセットリスト↓




上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト@赤坂BLITZ

2012-12-28 22:58:15 | ジャズ
随分と昔の話になってしまいましたが、11月14日、赤坂BLITZにて上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクトのライヴを観てまいりました。2012年度のジャパン・ツアー追加公演であり、唯一のライヴ・ハウス公演であり、これがツアー初日となったこの公演。私にとってはフジロック以来およそ4ヶ月ぶり今年2度目のトリオ・プロジェクト。フジロックで見せた圧倒的な熱演は個人的なベストアクトでしたが、果たして今回は如何に! なにせライヴハウスでのスタンディング公演ですからね!

開演前、ライヴハウス独特の密集感に観客達のトリオを待望する空気がどんどん濃縮されていく雰囲気。まだかまだかと待ち構える中、いよいよ3人がステージに現れる。上原ひろみ、アンソニー・ジャクソン、サイモン・フィリップス。歓喜の大声援がこだまするなか、ライトに照らせれる3人の姿は既に神々しいレベル。そして始まったのは最新作のタイトル・トラック「Move」。いきなりの凄まじさ! 3人の音が絡み合い、弾けあい、混ざりあう、アグレッシヴこの上ない音空間。ライヴハウスらしいラウドな音質がまたこのトリオに合っている。やっぱこのトリオはロックですよ!そして観客の反応もロック! 上原ひろみの弾けるパッションに呼応してその都度「ギャー!ギャー!」と声をかける。さらにその声に反応するかのように上原ひろみのプレイは激しさを増していく。これは狭いライヴハウスならではのロックな親密感と濃密度。堪りませんね~。後半にはサイモン・フィリップスのドラムソロが炸裂する。上原ひろみとアンソニー・ジャクソンによるプログレッシグなリフに挑みかかるように凄まじいソロを叩くサイモン・フィリップス。そんなソロを含めた3人の織りなす音像は、もうジャズでもロックでもない得体のしれないエグさに溢れ、それがステージ上に見えない「怪物」を描き出すような。観ているものはただただその怪物に飲み込まれていく。

「Endeavor」「Rainmaker」と新作からの曲が続くステージ。ノードを使かったファンキーな曲でも、美しい旋律が流れ行く曲でも、その怪物感はまったく薄れない。昨年、一度でも「サイモン・フィリップスのドラムは上原さんの魅力を引き出すタイプではないのではないか?」なんて思ったことを素直に謝りたい。これはまさにこの3人にしか現出し得ない巨大な怪物であり、この怪物感こそ現在の上原ひろみが目指す音風景なのではと思いたい程、とにかく圧倒的。上原ひろみとサイモン・フィリップスのバトルは技巧を超えたレベルで肉感的に弾けあう。そしてその両者を包み込みむように繋ぎあわせるのがアンソニー・ジャクソンの懐の深いベース・ライン。と、思ったりしていましたが多分それも間違い。この夜はこれまでになくベースの音がよく聴こえました。しかもアグレッシヴこの上ないブリブリの低音で。アンソニー・ジャクソン、この人、思いの他えげつないベース弾きますよ! このトリオの怪物感は案外この人のベースによるところが大きいのかも? と思う程、とにかく揺れ幅の大きいぶっといベース・ラインにやられっぱなしでしたね。「Endeavor」でのピアノに拮抗するかの如くに歌いまくるベース・ラインの見事なこと!彼のファンキーなベースから始まる「Margarita!」も格好良かった! 一見、縁の下の力持ち的なアンソニーですが、いやいや、彼も主役。まさにトリオですね。上原ひろみ、サイモン・フィリップス、そしてアンソニー・ジャクソン、3人が極限的に混じりあう凄まじさ、天晴です!


CAST誌に掲載された上原ひろみのインタビュー曰く、新作「MOVE」を製作するにあたってものすごい量の練習とリハーサルを繰り返したそうです。もちろんアンソニーもサイモンも。その積み上げこそ現在のこのトリオの原点なんでしょうね。それこそ前作「VOICE」はまだ顔見せ程度だったのかも。それぐらい現在の凄まじさは計り知れない。もちろんツアーによる積み重ねもあるでしょう。それは成長と言うよりは、ようやく本来の姿を見せ始めた、そんな感じ。そして当初からこのヴィジョンを思い描いていたであろう上原ひろみ、もう私の想像の遥か上を行っちゃってます、当たり前ですけどね。

そしてそんな上原ひろみのソロ・コーナー。ピアノに向かって弾き始めたのは「I Got Rhythm」。でも正直、初めの数分は何の曲だか分りませんでした…。新曲?とか思いきや、ラグタイム調のパートまできてようやく、あ、「I Got Rhythm」か!みたいな。その後はジェットコースター的展開でガンガン飛ばしまくる。もう何所へ行ってしまうのか分らなくなるような強烈な弾けっぷり。その力強くも超絶的な鍵盤裁きから上原ひろみの“快感”と“狂気”がビンビンに伝わってくる。やはりこれぞ上原ひろみですよ! 大好きです!

上原ひろみにとっても初めてだったという単独公演でのスタンディング・ライヴ。圧倒的な密度と濃度で駆け抜けたステージ。最後を飾るのは最新作からの大作「Suite Escapism」3部作。相変わらず天然脱力系な喋り口で観客達を和ませつつ、この曲で最後と告げる上原さん。それに「え~!!」と不満そうな声を漏らす観客達。その声を聴いて、「あの~、この曲すごく長いんで~、大丈夫だと思いますよ。」と諭す上原さん。しかも「応援次第でどんどん長くなりますから」とのこと。流石です。

そして始まった3部作。これはもう「素晴らしかった!」の一言。やはりこのトリオ、怪物ですよ! 私もそこそこ新作「MOVE」は聴き込んでるつもりですが、ライヴで聴くと、ホント何所までがキメで何所からがインプロなのかさっぱり分かりません。キメにしてはあまりにもフリーキーですし、インプロにしてはあまりにもプログレッシヴ。参りましたね。そしてこの3部作。ドラマチックな曲展開も、3者様々なインプロの応酬も、ここまで行っちゃうとなんか美しかったです。ホント、美しかった!!!

*上の写真は会場で購入したパンフレット。2万字インタビュー等、読み応えあります。



この日のセットリスト↓ (「The Tom And Jerry Show」はやらずに「I Got Rhythm」でした。上原さんの気分で変更したんですかね?)





~関連過去ブログ~ お時間有ったらぜひ!

 12.11.14 フジロック・ベストアクト第1位!


クリスマスと言えば

2012-12-27 01:07:37 | フェス、イベント
昨日はクリスマスでしたね。クリスマスと言えば、ケーキ! 今年は銀座三越で買ったCHOCOLATIER PALET D'ORのケーキです。その名も「キャンドルナイト」。しかし開けてびっくり! 小さなサンタさんに悲劇が…。




ごめんね、サンタさん。私の運び方が雑だったがために…。なんか見事に頭から行っちゃってるし…。





救出したら、バンジョー弾いてました。こういうの好きです!


で、このケーキ、めちゃくちゃ美味しかったです。中はチョコレートのスポンジと何かのムース。何だろう?とにかく旨い! しかもそのムースの中に球状をした柑橘系の酸味が仕込んであってこれがまた良いアクセントになってる。周りのクリームも普通の生クリームとは違う不思議な味わい。そして2段目はロールケーキと苺。贅沢です。もちろん飾られたチョコレートも最高!

あ~、美味しかった!

ケーキが美味しいと、それだけで良いクリスマスだ~、と思えてしまいます。

ノラ・ジョーンズ探検隊 その8

2012-12-25 01:22:23 | SSW
A VERY SPECIAL ACOUSTIC CHRISTMAS

今日はクリスマス・イヴですね。みなさんいかがお過ごしですか?

という訳で、今回はノラ・ジョーンズのクリスマス・ソングを探っていきたいと思います。まずは2003年にリリースされた「A VERY SPECIAL ACOUSTIC CHRISTMAS」。これはSpecial Olympics支援のチャリティ・シリーズの1枚で、87年のマドンナ、ホイットニー・ヒューストン、ブルース・スプリングスティーンなど豪華アーティストが参加した第1弾以来、これが6作目の作品でした。今作はこれまでと趣きを変えたアコースティック、しかもカントリー/ブルーグラスが主体。リーヴァ・マッキンタイヤ、ウィリー・ネルソン、アラン・ジャクソン等、カントリー・スターはもちろん、アール・スクラッグス、ラルフ・スタンレー、サム・ブッシュ、リッキー・スキャッグスなど、ブルーグラス界の名手達も参加しています。特にアール・スクラッグスのバンジョーが奏でる「Jingle Bells」や、ラルフ・スタンレーの土っぽく枯れた歌声が響く「Christmas Is Near」なんかは心温まります。

賛美歌「O Come All Ye Faithful」を歌うパッティ・ラヴレス、ポップな自作曲「Only You Can Bring Me Cheer (Gentleman's Lady)」をキュートに歌うアリソン・クラウス、軽快な中にもカントリーの哀愁を感じさせるロンダ・ヴィンセントの「Christmas Time At Home」など、歌姫達の美声にもうっとりです。そんな中、このコンピのラストを締めるのがノラ・ジョーンズなんです。こういったカントリーのコンピ盤にノラが収録されているというのが嬉しいじゃないですが。ですが、ここでのノラはジャズなんです。

ピアノ弾き語りによるホレス・シルヴァーの「Peace」。これが絶品。深く沈むようなスモーキーな歌声、そしてピアノのタッチがまた心に滲みます。これは名演ですよ! こういうノラ・ジョーンズはやっぱり素敵です。ちなみにこの曲は、デビュー作のデモ録音と言われる「FIRST SESSION」にも納められていたようですね。



VA / 100倍幸せなハッピー・クリスマス
そしてこちらは今年リリースされたばかりのクリスマス・コンピで、ノラの「Silent Night」が収録されています。新鮮味で言うなら、これを本来トップでドーン!と紹介するべきところなのですが、アルバム自体があまりにも商業的な雰囲気で、ヴィジュアル的にもあまり好みではないのため、2番手に甘んじてもらいました。で、ノラの「Silent Night」ですが、こちらは現在のノラらしく、ちょっぴりダークにざらついた質感ながら、どこか可愛らしい雰囲気で、こちらもなかなか素敵な感じ。



Cyndi Lauper & Norah Jones / Home for the Holidays
こちらは昨年iTunesで購入した1曲。アルバムではありません。でもシンディー・ローパーとノラ・ジョーンズのデュエットと聞いただけで興味をそそられますよね。何せ個性的な二人ですから、どんなデュエットになるのかと思いきや、これが意外とリラックスした雰囲気で、二人のフィーリングがことのほか心地良い。異色の組み合わせながら、枠にとらわれない自由な感性を持つ二人、案外相通じるものがあったのかもしれませんね。



WILLIE NELSON / AMERICAN CLASSIC
最後はこれ、ウィリー・ネルソンの09年作「AMERICAN CLASSIC」。もちろんクリスマス・アルバムではありません。ジャズ系の職人達をバックにしたスタンダード・アルバムです。ここでノラがゲスト参加している「Baby It's Cold Outside」もクリスマス曲として良く歌われる曲。直接的にクリスマスのことを歌った曲ではないようですけど、この曲聞くとクリスマス気分になっちゃいますよね~。で、ノラとウィリーのデュエットも極上。これ、大好きです!!


という訳で、今宵はノラの歌うクリスマスを聴きながら、メリークリスマス!!!

そそるライヴ 12月編

2012-12-03 07:53:40 | そそるライヴ
関東近辺にて12月に行われるライヴ、フェス、イベントのなかで、気になるものをピックアップしてみました。

12/03(月)GALACTIC @Ebisu LIQUIDROOM
12/04(火)Macy Gray @ビルボードライヴ東京
12/06(木)Clairy Browne & The Bangin' Rackettes VS Mountain Mocha Kilimanjaro  @Daikanyama UNIT
12/08(土)LEON WARE & Friends @ブルーノート東京
12/09(日)Gregg Stafford with ハチャトゥリアン楽団 @浅草HUB
12/09(日)上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト @東京国際フォーラム
12/10(月)RON CARTER BIG BAND @ブルーノート東京
12/11(火)Modern Irish Project @吉祥寺コピス前 投げ銭!
12/14(金)RON CARTER TRIO @丸の内コットンクラブ
12/21(金)JOHN PIZZARELLI @ブルーノート東京
12/24(月)RITA COOLIDGE @ブルーノート東京
12/24(月)The Stylistics @ビルボードライヴ東京
12/26(水)THE PERSUASIONS @丸の内コットンクラブ
12/29(土)Zydeco Kicks @池袋 FREE FLOW RANCH
12/31(月)Al McKay Allstars plays music of Earth, Wind & Fire @ビルボードライヴ東京
12/31(月)THUMBS UP&STOVES ~COUNTDOWN PARTY 2012-2013~ @THUMBS UP&STOVES

お出かけの際は事前のご確認をお願いいたしま~す!