ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

63年のボブ・ディラン 〜ニュー・ヒーロー〜

2018-05-28 19:00:28 | フジロック
BOB DYLAN / THE FREEWHEELIN' BOB DYLAN

まさかのフジロックに出演するボブ・ディラン。という訳で60年代から70年代初頭、ロック草創期におけるディランの偉大さを探ってみたいと思います。今回はその第1回。


ボブ・ディラン、1941年5月24日ミネソタ州タルースの生まれ。

彼がウディ・ガスリーに憧れ、フォーク・シンガーに成るべくニューヨークへ出てきたのは61年の1月でした。19歳ですね。若い頃の彼はロックン・ローラーを夢見ていたそうですが、この頃既にR&Rは死に体に向かっていました。兵役を終えたエルヴィス・プレスリーはかつての輝きを失い、少女をツアーに連れ回したチャック・ベリーは逮捕、エディ・コクラン、バディ・ホリー、リッチー・ヴァレンスは既にこの世になく、若きディランが憧れたリトル・リチャードは引退し牧師になっていました。

さて、フォーク・リヴァイバルのメッカ、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジに辿り着き、コーヒー・ハウスで歌い始めたボブ・ディラン。この時はまだ全くの無名だったはずですが、同年10月には大手のコロンビアと契約し、11月にはデビュー・アルバムの録音をしています。この下積みの短かさに驚かされますよね。彼を見初めたのはかのジョン・ハモンド。ベニー・グッドマン、カウント・ベイシー、ビリー・ホリデイなどを手掛けてきた大物プロデューサーです。この頃のボブ・ディランは、一口にフォークと言っても、リズム的な面も含め黒人ブルースからの影響が濃かったりもしますので、ブラック・ミュージックへの理解が深かったジョン・ハモンドは、そんなディランのユニークさを見抜いていたのかもしれませんね。しかし翌年リリースされた1st作「BOB DYLAN」はまったくヒットせず、会社からも「ハモンドの道楽」と揶揄されたとか。

ですがボブ・ディラン、次作でその才能を爆発させます。それが写真の2ndアルバム「THE FREEWHEELIN' BOB DYLAN」。63年のリリース。カヴァー曲が大半を占めた前作を反省してか、ほぼオリジナル曲で構成されています。ある意味、シンガー・ソングライターとしてのディランを語るなら、これがデビュー作と言っても良いかもしれません。「Masters of War」、「A Hard Rain's A-Gonna Fall」、「Talkin' World War III Blues」、「Girl From the North Country」、「Don't Think Twice, It's All Right」など、初期の名曲が詰まっています。ですが何と言っても「Blowin' In The Wind」でしょう。日本では邦題の「風に吹かれて」と言った方が通りが早いでしょうか。

いわゆるプロテスト・ソング風ですが、直接的に異議を唱えたり、煽動するものではなく、抽象的な表現を含むいくつかの問い掛けと、その答えは風に舞っている、というどこかフワッとした詩情に、若きディランの非凡さが伺われます。この曲はすぐにピーター・ポール&マリーにカヴァーされ、全米2位の大ヒットとなります。そして作者のディランも一躍注目されることとなります。

このピーター・ポール&マリー版「Blowin' In The Wind」がヒットした63年7月、ディランはニューポート・フォーク・フェスティヴァルに初出演します。ジョーン・バエズとのデュエットを含む複数のステージで歌い、その瑞々しいパフォーマンスで一躍主役の座へ躍り出ます。同年8月にはキング牧師の演説で有名な「ワシントン大行進」に参加して歌い、12月にはトム・ペイン賞を受賞するなど、まさにフォーク界の新しいヒーロー誕生を印象づける活躍ぶりでした。

そしてそんな溌剌とした活動とは裏腹に、この後もず〜っと続く、ディラン流の”つむじ曲がり”といいますか、”我が道を行く”感は、この20歳を超えたばかりの新人時代から全開なのであります。例えば、当初「THE FREEWHEELIN' BOB DYLAN」には、「Talkin' John Birch Paranoid Blues」という政治的な風刺曲が収録される予定でテストプレスまで作られましたが、上の判断により土壇場で別の曲と差し替えられるという騒ぎがありました。またそれと前後して、かのエド・サリバン・ショーへの出演が決まったものの、よせば良いのにその「Talkin' John Birch Paranoid Blues」を歌おうとしたという。案の定、局から変更を求められたものの、それを拒否。出演自体をキャンセルしています。トム・ペイン賞の授賞式でも、その場にいる人達の顰蹙を買うようなスピーチをしたとか…。なんて言いますか、パンキッッシュですよね〜?

まあ、ロックン・ロールが下火になったあの時代、プロテスト・ソングこそ最も過激な音楽だったのかもしれませんからね。その中心地だったグリニッジ・ヴィレッジは、当時最も進歩的で、最もラジカルな空気に溢れていたはずで、音楽生活の第一歩として、そこを目指したボブ・ディランの嗅覚の鋭さ、いや、選ばれた者の本能とでも言うべきでしょうか? またそこでジョン・ハモンドに見いだされるという運命、やはりこの時からボブ・ディランは、どこか違っていたのでしょう。




さて、ロックンロールに憧れ、フォークで成功を掴んだボブ・ディラン。彼が諦めたロックン・ロールは、遠く海を渡り、イギリスで新たな芽吹きを迎えます。ディランが「Blowin' In The Wind」で注目を浴びたと同じ63年、イギリスではリヴァプールからザ・ビートルズが「PLEASE PLEASE ME」でアルバム・デビューを飾り、チャートを翔上がります。そして一説によりますと、パリ公演の際、ポール・マッカートニーがDJからディランのこの「THE FREEWHEELIN' BOB DYLAN」を手に入れたとか。まあ、ビートルズがいつディランを知ったかについては諸説あるかと思いますが、とにかく、ビートルズがディランを知ったことで、時代は大きく動いていきます。

という訳で、次回は「65年のボブ・ディラン 〜ロック誕生〜」です。(いつ書くか分りませんけどね…。)

そそるライヴ 5月編

2018-05-02 22:12:49 | そそるライヴ
関東近辺にて5月に行われるライヴ、フェス、イベントのなかで、気になるものをピックアップしてみました。


5/01(火)EDMAR CASTANEDA @ブルーノート東京
5/03(木)Leroy Hutson @ビルボードライヴ東京
5/12(土)Hermeto Pascoal e Grupo @渋谷 WWW X
5/13(日)MOONCHILD @ブルーノート東京
5/13(日)Tim Easton @鎌倉 Cafe GOATEE
5/14(月)MARK GUILIANA JAZZ QUARTET @丸の内 コットンクラブ
5/15(火)The Soul Rebels @ビルボードライヴ東京
5/16(水)Kehlani @マイナビBLITZ赤坂
5/18(金)The Three Degrees @ビルボードライヴ東京
5/21(月)Konono No.1 @代官山 UNIT
5/23(水)(U)nity @新宿 Brooklyn Parlor
5/23(水)FINEST WORLD SOUNDS @渋谷 WWW
5/24(木)MARCUS MILLER @ブルーノート東京
5/25(金)Jimmy Cliff @恵比寿 LIQUIDROOM
5/26(土)Rei @新宿 ルミネゼロ LUMINE THE QUARTIER-LA presents「クロッシング」
5/26(土)GREENROOM FESTIVAL'18 @赤レンガ地区野外特設会場
5/27(日)GREENROOM FESTIVAL'18 @赤レンガ地区野外特設会場
5/28(月)THE WAILERS featuring JUNIOR MARVIN @ブルーノート東京
5/28(月)VINTAGE TROUBLE @渋谷 CLUB QUATTRO
5/30(水)ADAM ROGERS "DICE"  @丸の内 コットンクラブ
5/30(水)Chris Dave and the Drumhedz @ビルボードライヴ東京


お出かけの際は事前のご確認をお願いいたしま~す!

エドマール・カスタネーダ at JAZZ AUDITORIA

2018-05-01 19:13:54 | ジャズ
4月29日、お茶の水で開催されたジャズ・イベント「JAZZ AUDITORIA」にて、南米コロンビア出身のジャズ・ハープ奏者、エドマール・カスタネーダのライヴを観てまいりました。

私はこれまで何度かエドマール・カスタネーダのライヴを観ているんですが、それはゴンサロ・ルバルカバや、上原ひろみといったピアニストとのデュオだったので、エドマールのリーダー公演となると、今回が初めてでした。なのでとても楽しみにしていた今回のステージ、ミーハー魂を炸裂させて、最前列ど真ん中で堪能させて頂きました。

さて、ほぼ定刻、ステージに上がるバンドメンバー達。ドラムスのロドリゴ・ヴィラロン、ソプラノ・サックスのシュロミ・コーエン、そしてハープのエドマール・カスタネーダというトリオ編成。オープニングは「Cuarto de Colores」。相変わらず高音から低音まで縦横無尽に旋律を紡ぐエドマール・カスタネーダ。メロディー、コード、ベースラインを同時に弾いてるような超絶テクニック。それはクラシックで使われる流麗なハープとは全く違う、パーカッシヴでエッジの効いた音色。何度聴いても、何度観ても圧倒されてしまいます。

しかもピアノとのデュオと違い、ドラムスが入るとリズム面が強化される分、ラテンのグルーヴがより鮮明になる印象で、ハープの躍動感に思わず身体が揺れてしまいました。さらにソプラノ・サックスのフリーキーなソロもスリリングで、ハープとの対比も面白かったです。

エドマールの扱うハープは、カスタマイズされているそうで、弦の上部にセットされたレバーによって半音の上げ下げができるようになっているそう。つまり、通常はピアノで言う白鍵の音しかだせないハープに、黒鍵の音を出せるようにしてあるとのこと。あと、弦の付け根にも何か仕掛けがあるようで、演奏中、弦を高速で弾きながらも、その上下を忙しく調整していました。ただそれはあまりに早業なので、私のような素人には、聴いていてもどう音が変化しているのかは実感出来ないんですけどね…。

ですが2曲目「Entre cuerdas」のイントロでは、明らかに同じフレーズを繰り返し弾き続けながら、上部のレバーを下ろして転調する、なんて技を見せてくれていました。まあ、そんなことも含めて彼のハープ奏法には「いったいどうなってるの?」っていう感じの連続で、まさに超絶テクニックでしたね。しかも技術だけではなくて、とても感情的。溜め息が出るほど美しいのです。圧巻は彼がソロで披露した「Jesus de Nazareth」。スピリチュアル且つエモーショナル。本当に素晴らしかったです!!

あと今回はエドマールのリーダー公演ということもあり、ピアノとの異種コラボのような緊張感とはまた違う、リラックスした雰囲気も感じられました。演奏中に客席へ向かって戯けてみせたり、バンドメンバーと笑い合ったり。そんな豊かな表情から、彼の楽しい人柄が滲み出ていました。

さて、本編ラストは上原ひろみさんとのデュオでもお馴染みの「For Jaco」。これはファンキーでしたね~! そしてアンコールの「Colibri」を含め、およそ1時間のステージは拍手喝采のなか終了。最後にはイベントらしく、短いインタビューもあり、ハープの解説や、ラーメンが好きなこと、昨日も上原ひろみさんとラーメンを食べたこと、などを楽しげに話していました。

そして終演後はサイン会もありまして、私もしっかり頂いて参りました。



この日のセットリストは以下のような感じだったと思いますが、間違っていたらごめんなさいね。全部インストなので、難しいんですよ…。

Cuarto de Colores
Entre cuerdas
Jesus de Nazareth
For Jaco
Colibri