ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

フジロック・ベストアクト 番外編 その2

2011-09-30 17:33:36 | フジロック
「ルーツな日記」的フジロック・ベストアクト企画。今回は惜しくもベスト5から漏れてしまったアーティスト特集のパート2。ではどうぞ!

KENSINGTON HILLBILLYS@木道亭 7/30, @GYPSY AVALON 7/31
土曜の午後、グリーンでG. ラヴ&スペシャル・ソースを観たあと、ボードウォークを使って奥へ向かう途中、偶然、木道亭で出くわしたケンジングトン・ヒルビリーズ。な~んて感じだとフェスっぽくて良いんですけどね、私の場合はもちろんタイムテーブル片手の計画的偶然です…。さて、このケンジングトン・ヒルビリーズ、カナダはトロントで結成されたカントリー・バンドだそうですが、私はまったく知らないバンドでした。フジロック・オフィシャル・サイトのプロフィールには、彼等がクラッシュをトリビュートした事を中心に書かれている印象なので、もう少しパンキッシュなのかと思っていましたが、これがもうカントリー、ド真ん中! ギタリストは多少ロッキンなキレを見せてくれますが、それも至ってカントリー的。ヴォーカリストのちょっぴりやさぐれた声もアウトロー感たっぷり。そして何と言ってもスティール・ギターですよ! これは気持ちよかった!まさに森の木々に溶け込むようなサウンドでしたね。そして翌日の最終日にも、今度はアヴァロンで彼等を観ました。最初はまばらだった観客達もライヴが進むにつれ集まってきて、ステージ前方ではみんな楽しそうに踊りまくってましたね。最後に演ったジョニー・キャッシュで知られる「Cocaine Blues」は格好良かった!!


JOJO SWING QUINTET@CAFE DE PARIS 7/30
フジロック再奥の小屋、カフェ・ド・パリで観たジョジョ・スウィング・カルテット。これもまったく知らないバンドでした。ジャズ・マヌーシュ/ジプシー・スウィングのバンドという事でしたが、フジロックが呼ぶぐらいですから、エグ味のあるミクスチャーかと思いきや、これが思いの他、正統派のスウィングを聴かせてくれました。おそらくこのバンドの中心人物であろうドラマーのジョジョ・ゴミス、彼は曲によってはウォッシュボードをチャカチャカやるんですが、これが上手い! ニューオーリンズやジャグバンドのスタイルとはちょっと違う切れ味でしたね。そして二人のギタリストがまた凄かった! 両人ともジャンゴ・ラインハルトに影響を受けてるそうですが、 驚異的なテクニックによるジプシー・スタイルのギターを思う存分に堪能させ頂きました。また紅一点の女性シンガーも、ジャジー&スウィンギーな素晴らしい歌声を聴かせてくれました。途中、ステージ前方のお立ち台へ歩を進ませ、小屋内の観客全員を巻き込んでのダンス・レッスンからのダンス大会へと雪崩れ込むエンターテイナー振りも流石でした! こういうステージを観るとフジロックって奥が深いな、と思いますよね。しかもこの後、カフェ・ド・パリは、セクシーなテキーラ・ガール達のポール・ダンス、さらに猥雑極まりないビッグ・ウィリーズ・バーレスクのステージへと続いた訳ですからね~。


なぎら健壱&OWN RISK@ORANGE COAT 7/31
意外な程に大盛況だった、なぎら健壱&OWN RISK。3日間雨模様だった天気も何故かこの時だけ快晴。歌い終わった後、自ら『フジロックの歴史を変えた』と賞した「いっぽんでもニンジン」とか、決して放送出来そうも無い「与作」の替え歌とか、フジロックとは思えない瞬間の連続に観客も沸きまくる。他には「労無者とはいえ」とか、「東スポ博士」とか、「風にふかれた頃」とか歌ってたのかな。なんて言いますか、なぎら健壱と言えばやはりフォークな印象が強い訳ですが、これが案外カントリー・テイスト濃厚だったりで嬉しかったですね。なにせ、なぎらさんを中心にフロントの3人はテンガロン・ハットで決めてましたからね。で、ここでもスティール・ギターの響きが良かった! あと優し気ななぎらさんの歌声も、苗場の森にぴったりな心地良さでしたね。でもって、曲間にさりげなく呟く毒もまた気持ち良い! 最後は「夜風に乾杯」で『酒飲め!酒飲め!酒を飲んで忘れちまえ~!』と憂いの全てを吹き飛ばすように終了。天晴でした!


TINARIWEN@FIELD OF HEAVEN 7/31
ついにフジロックに襲来した砂漠のブルース、ティナリウェン。サハラ砂漠に住むトゥアレグ族によるグループ。紺や紫など鮮やかな色彩の民族衣装に、白や黒のターバンで顔を覆うという独特のスタイルで登場。明らかに他のロック・アクトとは雰囲気からして違います。パーカッションとギター2本&ベースという編成ながら、それぞれが曲ごとに楽器を持ち替えたり。そしてそのサウンドはとにかくジワジワと来る。ギターが爪弾くベロベロとした反復フレーズはなるほどミシシッピ・ブルースに通じるものがあるものの、リズムの持つドロリとした連続性はやはりアフリカ。さらに吟ずるような歌声と共にそれらは複雑に絡み合いながらトリップ感を醸す。まるでジワジワと砂漠に取り憑かれていくような感覚。たいした盛り上がりがあった訳でもないのに、“なにか凄い体験をした”感満載の砂漠のブルース!!



とまあ、こんなところですが、他にも、60歳代とは思えない元気なパフォーマンスで“ポップ・ミュージックの魔術師”ぶりを見せつけてくれたトッド・ラングレンとか、たった2曲程しか観れなかったけど、貫禄の歌声を聴かせてくれたサム・ムーアとか、内田勘太郎をバックに向かえて憂歌団時代の曲を歌った木村充揮とか、そんなあたりも印象的でした。まあ、とにかく今年も素晴らしいライヴの目白押しでしたね~。なんてしんみり…。

さて、これで当ブログのベストアクト企画も残すところベスト2の発表のみとなった訳ですが、もう、どうでも良い感じですかね? とりあえずその前に「何でもベスト5」的な企画をやろうかな? だって、まだまだフジロックのこと書きたいし~、みたいな。



~関連過去ブログ~ お時間有ったらぜひ!

 11.09.29 フジロック・ベストアクト 番外編 その1
 11.09.23 フジロック・ベストアクト第3位! アマドゥ&マリアム
 11.09.19 フジロック・ベストアクト第4位! ウィルコ
 11.09.17 フジロック・ベストアクト第5位! マーク・リボーと偽キューバ人達
 11.08.05 フジロックの10曲!






フジロック・ベストアクト 番外編 その1

2011-09-29 14:41:57 | フジロック
さて、毎年恒例、私の趣味だけで決める超個人的フジロック・ベストアクトも第3位まで書き終えましたが、トップ2まではもう少し引っ張ります。今回は惜しくもベスト5圏外とさせて頂いたアクトの中で、「ルーツな日記」的にスルーは出来ないな、というあたりを纏めてドーン!と。もう順位はつけられないので、おおよそ観た順で。


THE NEW MASTERSOUNDS@WHITE STAGE 7/29
“銀河系最高のファンク・バンド”と賞されるニュー・マースター・サウンド。ここはグリーンのマヌ・チャオと完全に被ってまして、さんざん迷った挙げ句、身を切る思いでホワイトに行きました。いや~、格好良かったですよ! ソリッドなミーターズ&ジャズ・ファンクな感じ。エディ・ロバーツのギターもたっぷり堪能出来ましたしね。で、彼はブレイクの時などタンバリンを叩くんですけど、それがまた格好良いんですよ! 観客も彼がタンバリンを叩くたびに妙に盛り上がったり。 あとジョー・タットンのオルガンも素晴らしかった!もちろんリズム隊も最高! ちなみに、ニュー・マスター・サウンズは、急遽キャンセルになったバディ・ガイの代役で最終日オレンジのトリにも出演したそうですが、そちらではオーサカ=モノレールと共演したりで盛り上がったようです。残念ながら私は観てませんが…。


RON SEXSMITH@FIELD OF HEAVEN 7/29
私にとって今年の初ヘヴンがロン・セクスミスでした。後方に小さな椅子を広げてゆったりと鑑賞。まったく飾り気の無いショー、ただただ野外の空気と歌がある。でもそれがこれほどまでに素晴らしいとは!ロンがアコギを弾きながら優しい歌声で紡ぐ極上メロディーに疲れた体が癒されました。バックの演奏はアルバムで聴くより、もっと人肌の和やかさで、人間味溢れるスウィング感が心地良かったです。最新作からの「Believe It When I See It」や「Love Shines」辺りは特に滲みましたね。そして最後に歌ってくれた「Former Glory」、泣けました。セットリストはこんな感じだったようです↓。

01. Hands of Time 
02. Get in Line 
03. The Reason Why
04. Thinking Out Loud 
05. Hard Bargain 
06. Lebanon, Tennessee
07. Middle of Love 
08. Just My Heart Talkin’
09. Brandy Alexander
10. Gold In Them Hills 
11. Believe It When I See It
12. Whatever It Takes 
13. Love Shines 
14. Former Glory


WIDESPREAD PANIC@FIELD OF HEAVEN 7/29,7/30
今年の目玉の一つ、来日していないジャム・バンド最後の大物、ワイドスプレッド・パニックです! いや~、これはね、まさに天国でしたよ! サザン・ロックの雄大さとジャム・バンドならではの空気感をたっぷり味合わせて頂きました。そしてジミー・ヘリングのギター! 気持ち良い鳴りをしてましたね~!あの微妙に厭世観漂う風貌から、切れ味鋭いタッチで、イマジネイション豊かなフレーズをバンバン繰り出してました。同じジャム・バンド界隈でも、やはりフィッシュ、チーズ、モーなんかとはまた違う個性で面白い。延々ジャムを演るというより、もっと楽曲を聴かせてくれる印象。ですが全体の流れとして悠久のライヴ空間を現出させていく様はまさにジャム・バンド。何せ金曜&土曜の2日間でヘヴンのトリを務めた訳ですからね。しかもセットリストは下記のようだったそうですが、両日でダブり曲無しですからね!流石としか言いようがありません。ちなみに私は諸事情ありまして、2日間ともフルセットを観た訳ではありません。初日は途中からおよそ2時間、土曜は中盤のおよそ1時間程を堪能。それでもかなり満喫でしたよ。特に初日、「Tall Boy」からの終盤は圧巻でしたね~。ちなみに初日の「Fishwater」では、ニュー・マスター・サウンズの鍵盤奏者ジョー・タットンがジョイントしていたそうですが、気がつかなかったな…。

7/29
01.Radio Child
02.Pleas
03.Who Do You Belong To?
04.Diner
05.Ribs and Whiskey
06.Cotton Was King
07.Climb To Safety
08.Shut Up and Drive
09.Fishwater
10.Rebirtha
11.Driving Song
12.Porch Song
13.City Of Dreams
14.Driving Song
15.Tall Boy
16.Protein Drink
17.Sewing Machine
18.Ain’t Life Grand
19.Action Man

7/30
01.Chilly Water
02.Bust It Big
03.Chilly Water
04.Pilgrims
05.Airplane
06.Goin’ Out West
07.Blackout Blues
08.North
09.Saint Ex
10.You Should Be Glad
11.Pigeons
12.Jack
13.Henry Parsons Died
14.All Time Low
15.Papa’s Home
16.Imitation Leather Shoes
17.Love Tractor
――――――――――――
18.Surprise Valley
19.Blue Indian


G.LOVE&SPECIAL SAUCE@GREEN STAGE 7/30
「Milk And Sugar」から始まったG. ラヴ&スペシャル・ソース。「Fixin' To Die」、「50 Ways To Leave Your Lover」と、最新作から3曲立て続けに披露。そしてここまでアコギを弾いていたG.ラヴがエレキ・ギターに持ち替えて「Sweet Sugar Mama」。ファンキーなリズムにG.ラヴのダルなラップが絡む。やはりスペシャル・ソースはカントリー&フォーキーな最新作からの曲よりこっちの方が良く似合う。と思っていたらなんと、ギター・スリムのヴァージョンで「 The Things That I Used To Do」。ストレートにブルースを演るG.ラヴ、格好良かったですね~。そして自身のヴァージョンの「The Things That I Used To Do」へ繋げるという粋な展開。ハーモニカ・ソロも最高だった「Booty Call」ではビートルズの「Why Don't We Do It In The Road?」が飛び出す。ここでのG.ラヴのスライド・ギターにはやられました!! さらに「Cold Beverage」、ラストは「Just a Friend」(ビズ・マーキーのカヴァー)で締め。やっぱりこの男、野外が似合いますよ!途中、沢山のビーチボールが投げこまれたり、コール&レスポンスで盛り上がったり、G. ラヴらしい開放感溢れるステージでした!!


まだ、土曜日の折り返し地点ですが、長くなったので、次回につづきます。


*曲目等、間違ってましたらごめんなさいね。



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 11.09.23 フジロック・ベストアクト第3位! アマドゥ&マリアム
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夏結び FREE FESTIVAL@所沢航空記念公園

2011-09-25 15:37:59 | フェス、イベント
今日は所沢航空記念公園にて開催されている「夏結びFREE FESTIVAL」に来ています。私にとっては、文字通り最後の夏フェスかな? とりあえず、噂のザ・たこさんは強烈でした。あとはトリを務めるマウンテン・モカ・キリマンジャロ! 楽しみです!



帰宅後追記:

文字通り今年最後の夏フェスですし、入場無料ですし、という訳ではるばる所沢まで行ってまいりました! お目当ては、ザ・たこさん、そしてマウンテン・モカ・キリマンジャロ。まずは、ザ・たこさん。現在人気急上昇中のファンク/ソウル・グループですね。とにかくヴォーカルの安藤さんが凄い!まさに怪人! あのコテコテの濃さはクセになりますね。最後の “一人マントショー” みたいなくだりは特に最高でしたね! ファンク・ブルースな山口さんのギターも良かった!

ザ・たこさんが熱演を繰り広げたのはメイン・ステージとなる公園内の野外ステージ(日比谷野音のような雰囲気かな?)。そしてその隣の広場にセカンド・ステージが用意されている。意外とこのセカンド・ステージが揺る~い開放感で良かったですね。芝生に座って観る感じが特に。そこで観たHanaHさんという女性シンガー・ソング・ライターがまた良かった! 初めて観る方でしたが、アコギ弾き語りで、軽やかな中にR&B的なしっとり感があって。さらに歌のリズムの捉え方なんかもかなり黒っぽくて良い感じでした。本当はアーバンなスタイルでやりたいのかな~?なんて思いながらも、この日はアコギ弾き語りだったところも私的にはツボでした。彼女の後に登場した椎名純平さんのステージに飛び入りしてのキャロル・キング「君の友達」をデュエットした歌唱も素晴らしかったです!

その椎名純平さんは鍵盤の弾き語り。途中、ループを駆使して“一人ファンク・セッション”と称し、スティーヴィー・ワンダーの「Too High」を交えたり。最後にやった今年3月11日の後に作ったと言う新曲もソウルフルで良かったですね~。

メイン・ステージに戻ってTUFF SESSION。このバンドも初めて観たのですが、ヴォーカリストがヴァイオリンを弾くという珍しいレゲエ・バンド。これも凄く良かったです。そして最後はご存知、マウンテン・モカ・キリマンジャロ。怒濤の如くのファンク・グルーヴでしたね。観客達も前方へ詰め寄せ踊りまくってました。もうね、言う事ありません。ファンク万歳!!

あ~、これで私の夏も終わってしまいました。とは言え、夏が終わっても音楽三昧は続くんですけどね~。







フジロック・ベストアクト第3位!

2011-09-23 18:58:24 | フジロック
AMADOU & MARIAM / WELCOME TO MALI

フジロック・ベストアクト第3位! マリ出身の盲目夫婦、アマドゥ&マリアムで~す!!

これはね~、個人的に今年のダークホースでしたね。いや、期待はしていましたよ。ですがここまで格好良いとは思わなかった。良い意味で期待を裏切ってくれましたね。当初の予定ではアマドゥ&マリアムは30分程で切り上げ、隣で始まるサム・ムーアを観に行く予定でしたが、結局アマドゥ&マリアムを最後まで観てしまいましたからね。嗚呼、サム・ムーア!!と思いながらも、アマドゥ&マリアムのあまりの格好良さにその場から離れることが出来なかったのです。

アマドゥ&マリアムが出演したのは初日の7月29日、フィールド・オブ・ヘヴンにて19時からでした。しかしホワイト・ステージでは18時50分からリー・ペリー&マッド・プロフェッサーが、そしてオレンジ・コートでは19時30分からサム・ムーアが始まるという、個人的激戦区でして、結局私は、歴史的なダブ・マスターとソウル・レジェンドを諦めてこのアマドゥ&マリアムを観てしまった訳です。

まず、二人の見た目の格好良さに驚きました! 淡い色合いの民族衣装のような上下にサングラス。ただマイクの前に二人並んで立っているだけで妙なオーラがある。夫婦それぞれが歌うツイン・ヴォーカルで、夫のアマドゥはエレキ・ギターを弾きながら。バック・バンドはドラムス、パーカッション、キーボード、ベース、DJ、という布陣に2人の女性ダンサーが付く。で、このバンドの出す音がまた格好良い!!

アマドゥ&マリアムの音楽は、 バンバラ・ミクスチャーなどと呼ばれたりします。このバンバラとはマリに居住する部族名。つまり、バンバラの伝統音楽にロック、ブルース、ファンク、レゲエなどをミックスしたスタイルという訳ですが、これがライヴで聴くと事の他ソウルフルなんですよ! アフリカ音楽とは思えないアーバンな黒さ溢れるグルーヴにはゾクゾクさせられましたね。何せメンバーにDJがいるぐらいですから! でもよく聴くと独特のビヤビヤとした音色で弾くアマドゥのギターはアフリカらしい反復フレーズだったりするから面白い! さらにそれが独特のサイケデリック感を生み出す。その上に突き抜けるような力強さと土っぽい素朴さが同居したような二人の歌声が響き渡る。そして二人の女性ダンサーが肉感的に踊りまくる。

特に印象的だったのは最新作からの「Africa」ですね。 “アフリカー!アフリカー!” と歌われるサビの昂揚感は堪らないものがありました。その歌詞が分からずとも、アフリカ人としてのアイデンティティが濃密に伝わってくるようで、弾力のあるバックの演奏とも相まって、否が応でも熱気に包まれていく。そして「Masiteladi」も圧巻。この曲はおそらく、この夜の演奏曲中最もアップ・テンポの曲だったと思うのですが、アマドゥのギター・ソロが最高でした! 強力なギター・ブレイクから長尺ソロに雪崩れ込む訳ですが、体を微妙に斜めに傾けながら弾きまくるアマドゥは完全にロックでした! ドラムスとパーカッションが要所要所で後ろから鼓舞するように畳み掛けると、まるでその都度加速するようなアマドゥのギター。そしてコード進行が一巡するたびに終わりそうで終わらないスパイラルが生み出すカタルシス。アマドゥ、熱い!!

他には「Welcome to Mali」や「Batoma」など最新作からの曲が目立ちました。で、どの曲も大抵、イントロがなるとマリアムが「ショー!ショーッ!」(実際、何と言ってるかはよく分かりません…)という掛け声をあげるのが印象的でしたね。あとアマドゥのギターをバックに、彼の坊主頭をなでなでしながらマリアムが愛おしそうに歌う素朴な曲もあったり。それがまた堪らない味わいだったのですが、曲名は分かりませんでした…。なんか盲目夫婦のこれまでの二人三脚振りが偲ばれる雰囲気でしたね。

WIKIによりますと、二人は1980年に結婚し、と同時に共に音楽活動を始めてるそうですね。なのでその活動暦は意外に長いんですよね~。もちろん結婚する以前からそれぞれ音楽はやっていたことでしょうし、目の見えない二人にとって、音楽は生活そのものだったかもしれませんね。そして二人の人気を世界的に決定付けたのは、やはりマヌ・チャオがプロデュースした05年作「DIMANCHE A BAMAKO」でしょう。私もアマドゥ&マリアムを知ったのはこのアルバムからでした。この夜もこのアルバムから、確か「Beaux Dimanches」だったかな? DJが刺激的なビートを提供し、そこにアマドゥのギターが絡んでいく感じが格好良かったですね~。でも残念ながら、私を含めて多くの人が期待していたであろうマヌ・チャオの飛び入りはありませんでしたけどね…。

終盤はパーカッショニストがジャンベを叩きまくったり、ダンサーが踊りまくったり、みたいないかにもアフリカンな響宴が繰り広げられ、ヘヴンの盛り上がりも最高潮となっていった訳ですが、私の頭の中では今頃オレンジではアム・ムーアが! どうしよう、どうしよう、と思いつつ、初めは前から2列目で観ていたものの、じりじりと後ろに下がりながらいつでもオレンジに向かう準備は出来ていたものの、結局はアマドゥ&マリアムのステージに背を向けることが出来ず、最後まで見届けてしまったのでした。いや~、最高でした!アフリカン・パワー、恐るべし!



この後、私はフィールド・オブ・ヘヴンのトリを務めたワイドスプレッド・パニックを堪能し、帰路についた訳ですが、その帰り道、ちょろっと場外のパレス・オブ・ワンダーを覗いたところ、パレス・テントでたまたまアマドゥ&マリアムがライヴ中だったんですよ! 最後の方しか見れませんでしたが、ここではバンド無しの二人だけのステージで、ヘヴンの時とはまた違う、アフロ・ブルースな世界を感じさせてくれて凄くよかったです。もう少し急いで帰って、ちゃんと見ればよかった…。

ちなみに私は流石に体力の限界で、このパレスのアマドゥ&マリアムを観て帰りましたが、その次に登場したMO DJ、実はこの人もマリ出身で、近年はネナ・チェリーやフランツ・フェルディナンドのリミックスを手がけたりなどで人気な方だそうですが、実は彼こそアマドゥ&マリアムのバンドでDJを務めるその人だったり。そしてその次に当日発表のVERY SPECIAL GUESTとしてエントリーされたのがマヌ・チャオ。この流れはさすがパレスな濃密さですよね~。体力があれば観たかったです…。見られた方、羨ましい~。





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 11.08.05 フジロックの10曲!

フジロック・ベストアクト第4位!

2011-09-19 20:50:24 | フジロック
WILCO / WILCO (THE ALBUM)

フジロック・ベストアクト第4位! ウィルコです!!

フジロック最終日、グリーンズテージでは大トリのケミカル・ブラザーズがドムドム、バキバキ言わせていた興奮の時間帯、裏のホワイト・ステージにトリとして登場したのがウィルコでした。オルタナ・カントリーの先鞭を付けたバンドであり、現在はアメリカン・ロックの至宝とまで賞されるウィルコ。私にとってはこのウィルコが夢の3日間を締めるメイン中のメインでした!

ステージが始まる前、独特の静けさに包まれるホワイト・ステージ。そこにウィルコのメンバー6人が登場。フロントはもちろんジェフ・トウィーディ。1曲目は耳馴染みのない曲ながらウィルコらしい緊張感が感じらる曲。そしてその緊張感に溶け込むようなジェフの声。これぞウィルコ! 2曲目は最新作「WILCO (THE ALBUM)」収録曲の中でも最もアヴァンギャルドな「Bull Black Nova」。個人的には今回のステージのハイライト的な曲になるのでは?と秘かに期待していただけに、まさかの序盤の登場に早くも大興奮。終盤になると奇才ギタリスト、ネルス・クラインが引き攣るように体をくねらせながら、ノイジー&フリーキーなギター・ソロで空間を切り裂いていいく。ただこのギターの音量が小さく感じられたのはちょっと残念。それでもある種の狂気のような感性が濃密に伝わってきて圧巻でしたけどね。

そしてその狂気に続いて演奏されたのが、名作「SKY BLUE SKY」からのスロー・ナンバー「Side With The Seeds」。ジェフがこの曲を歌い出した瞬間、空気がフワッと変わりましたね。繊細且つ抑制の効いた歌声からエモーショナルが滲み出てくるよう。私この曲大好きなんですよ~。こういう曲を歌うジェフ・トウィーディっていうのは、ホント素晴らしいシンガーだなって思います。しかも苗場の森の中で聴けた喜び。ソウルフルでした!!

前半は、彼らのターニングポイントにもなった傑作「Yankee Hotel Foxtrot」からの曲も交えながら、その多彩な楽曲はもちろん、ある時は内省的な憂いを滲み出し、ある時は混沌としたうねりを引き起こし、またある時は和やかな暖かさを醸し出す。そしてそれらを職人的且つ繊細な感性で編み上げていきながら、巨大なスケール感のロックを描き出していく。ホントに凄いライヴ・バンドですよ! そしてそんな前半のハイライトは「Via Chicago」でしょう!

3rd作「SUMMER TEETH」収録の「Via Chicago」。まあ、凄かったですよ!何が凄いって、グレン・コッチェのドラム!フォーキーな美しい曲なんですが、途中、突然グレン・コッチェが暴れ出す。リズムも無視(しているように私には聴こえました…。)してドカドカ!ガッチャンガッチャン!みたいに叩きまくる訳ですよ! そのあまりの音圧と乱れっぷりに、私は一瞬目が点になり、何?壊れた?みたいにただ呆然。しかしジェフ・トウィーディは何事もないようにフォーキーにアコギを刻み、優しいトーンで歌い続ける。すると、フッとドラムも元のテンションに戻る。今の何だったの?みたいな。そしてしばらくフォーキーな世界が続きまた油断をしていると、突然グレンがそれをぶち壊すかの如くに叩き出す。まるで鬼神のような乱れ打ち。ネルス・クラインもノイジーに弾きたおす。そしてやがて全てが一カ所に終息するかのように元のテンションに戻る。その瞬間の高揚感たるや! もう、反則すれすれの格好良さ! いや~、ウィルコ凄い!って言うかグレン・コッチェ凄い!!

そして「Impossiblle Germany」。この曲はギター・ソロが圧巻でしたね。ネルス・クラインが情緒溢れるソロを展開する横で、ジェフ・トゥイーディとパット・サンソンがまるで「ホテル・カリフォルニア」のように向かい合ってツインギターのハモリを決めていく。ウィルコ流のトリプル・ギターですよ! この絡みが瑞々しい程に格好良い! そして美しい! それにしてもウィルコの引き出しの多さと、それら全てをウィルコのトーンで包み込むような懐の深さには恐れ入りましたね。もうこの時点でかなり感動!


後半になると、さすがはオルタナ・カントリーの旗手と言われただけのことはある、開放感たっぷりのロック・ナンバーを並べてくる。特に「Heavy Metal Drummer」は格好良かったですね~。あの打ち込みのビートが流れた瞬間、観客も「ウォー!!」と盛り上がりましたからね。あとネルス・クラインがダブル・ネックのギターを弾いた新曲もポップで良かった! さらに「I Got You(At The End Of The Century)」とか。2ndアルバムからの曲ですからね~。こういう選曲は嬉しい!! そしてラストはロッキンな「I’m A Wheel」で締め。それにしてもこの後半の幸福感って言うのは堪らないものがありましたね~。まったく飾ることのない6人衆でしたが、彼等が奏でるサウンドはなんかキラキラしてましたよ! あの空気感、最高でしたね。これを野外で観ることが出来たのもホント幸せでした。

ただ、難を言わせて頂ければ、ネルス・クラインのギターは、やっぱりもっと爆音でも良かったんじゃないかな~、と思ったり。


下のリストはsetlist.fmというサイトで見つけたフジロックでのセットリスト。私は細かい曲順等はもう記憶の彼方ですが、このような感じだったようですね。あらためて見ると新旧取り混ぜたバランスの良い選曲ですね。でもラスト前に3曲続けて2nd作からの曲が演奏されてるところが凄い。ちなみに新曲は、1曲目、10曲目、13曲目の計3曲。

01. I Might
02. Bull Black Nova
03. Side With The Seeds
04. I Am Trying To Break Your Heart
05. One Wing
06. Ashes Of The American Flags
07. War On War
08. Via Chicago
09. Impossiblle Germany
10. Born Alone
11. Handshake Drugs
12. Jesus, etc.
13. Dawned On Me
14. A Shot In The Arm
15. Heavy Metal Drummer
16. I’m The Man Who Loves You
17. The Late Greats
18. Red-Eyed and Blue
19. I Got You(At The End Of The Century)
20. Outtasite
21. I’m A Wheel

フジロック・ベストアクト第5位!

2011-09-17 09:18:59 | フジロック
MARC RIBOT Y LOS CUBANOS POSTIZOS / MUY DIVERTIDO (VERY ENTERTAINING!)

さて、なんだかんだでフジロックから早一ヶ月半が過ぎてしまったこの頃。今日からフジテレビNEXTでの放送もあることですし、そろそろ我がブログも重い腰を上げて、恒例のベストアクト企画でもやってみようかみたいな。もちろん、グリーン・ステージはほとんど見ていない「ルーツな日記」流の、めちゃくちゃ趣味に偏ったベストアクトです。そんな訳で、それではいってみましょう!まず今回は第5位から!

フジロック・ベストアクト、第5位! マーク・リボーと偽キューバ人達!!!

やっぱりね、このマーク・リボーと偽キューバ人達が出演アーティストに発表された瞬間、今年のフジのブッキングは切れてるな~!と思いましたよ! なにせこのマーク・リボー程、特異な立ち位置にいるギタリストはそうはいませんからね。どんなギタリスト?って聞かれても結構困りますよ。基本的にはフリー・ジャズや実験音楽フィールドの人というイメージが強い人でありながら、80年代のトム・ウェイツ、エルヴィス・コステロなどを皮切りに、最近はロバート・プラント&アリソン・クラウス、アラン・トゥーサン、バディ・ミラー、エルトン・ジョン&レオン・ラッセルなどなど、ルーツ系アーティストとの共演を重ねているという御仁。個人的にはノラ・ジョーンズ、ジョリー・ホランド、マデリン・ペルー、サハラ・スミスなど、近年の女性シンガー・ソング・ライター作品での仕事ぶりもツボ! 日本では矢野顕子のバックでも知られますね。まあ、とにかくジャンルを横断しつつ、ルーツ・ミュージックへの造詣の深さを前衛的な感覚で噛み砕いていく、まったくもって異次元のギタリストなのです。T・ボーン・バーネットやジョー・ヘンリーといった名プロデューサーの信頼も厚く、参加クレジットに彼の名前を見つけただけで、その作品の“面白さ”と“質の高さ”が保証されるような、そんなマーク・リボー。

その彼が、フジロックには自身のバンド、マーク・リボーと偽キューバ人達として出演。もちろんこのマーク・リボー、自身のソロ作も沢山出しています。マーク・リボーと偽キューバ人達名義でも、98年の「THE PROSTHETIC CUBANS」、2000年の「MUY DIVERTIDO」(写真)と、2枚のアルバムがリリースされています。プロジェクト名に“キューバ”とある通り、キューバ音楽な訳ですが、そこはマーク・リボー、なかなか一筋縄には行きません! 何せ“偽キューバ人達”ですから!

マーク・リボーが出演したのは7月30日(土)オレンジコート。後ろにコンゴトロニクス VS ロッカーズを控えたトリ前の位置。私はこの日、JOJO SWING QUINTET、ビッグ・ウィリーズ・バーレスクと最奥の小屋カフェ・ド・パリを楽しみ、ヘヴンでトッド・ラングレンを少し観た後、オレンジコートへ。そんな流れ。


さて、エスニックなオブジェの光と屋台の灯りが映える夜のオレンジコート。いよいよマーク・リボーと偽キューバ人達がステージに現れる。当初予定されていたメンバーは、Anthony Coleman(Kbd)、Brad Jones(B)、EJ Rodriguez(Per)、という先の2枚のアルバムの録音メンバー達に、本物のキューバ人であるHoracio "El Negro" Hernandez(Dr)を加えた4人+マーク・リボーという5人編成。しかしベースのBrad Jonesは来日が出来なくなったそうで、その代役としてShahzad Ismailyが来ていたようです。この人はMarc Ribot's Ceramic Dogのメンバーとのことですが、個人的にはジョリー・ホランドの最新作での活躍ぶりが印象的な方。

さて、正直な話、セットリスト等、細かいことは何一つ覚えていません…。ただただ、ラテンのリズムに切れ込んでいくようなマーク・リボーのギターが凄過ぎました! ステージ向かって左側の椅子に腰掛けながら、体を大きく揺さぶりつつ一心不乱にギターを掻きむしるマーク・リボー。そのギラギラと歪んだギターの音色からして相当エグイのですが、絶妙のタメとつんのめった感覚を繰り返すような独特のタイム感で、引っ掻くように繰り出されるフレージングのエグさと言ったら堪らない! どうやったらあんな風にギターが弾けるんでしょうね?

完全にラテンを逸脱し、空間をのたうち回るようにフリーキーに凶暴化するギター・ソロも凄かったですが、「Carmela Dame La Llave」のようなアップ・テンポ曲でのギター・リフの格好良いこと! やっぱりリズムの捉え方が強烈で、ホント痺れました! また「Aqui Como Alla」のようなムードのある曲で聞かせる、いびつながら情緒豊かな感性にも引き込まれましたね。私の大好きな、アルバム「MUY DIVERTIDO」のオープニングを飾る「Dame Un Cachito Pa'Huele」も演ってくれましたしね!この曲のギター・ソロも強力だったな~。

もちろんバックの演奏も素晴らしかったです。なんといってもオラシオ・エルナンデスとE.J.ロドリゲス! この二人のリズムは腰にきましたね~! 特にオラシオ・エルナンデスはその方面でのマニアックな人気もありそうなので、マーク・リボーのバックでこの人を観れたのはお得だったかも? またアンソニー・コールマンの鍵盤も良かったですね~。あ、そうそう、マーク・リボーの歌声も洒落っ気があってキュートでした。

この後、偽キューバ人達ご一行は、トムズ・キャビンの「新・聴かずに死ねるか!シリーズ」として日本ツアーを行い、最終日8月4日の渋谷クアトロ公演は、大入り満員の大盛況で幕を閉じたそうです。


下のリストはsetlist.fmというサイトで見つけたフジロックのセットリスト。先に書いた通り、私はセットリストについてほとんど覚えていないのですが、こんな感じだったようです。(信憑性についても分かりませんので、間違ってましたらごめんなさいね。)


01. Los Teenagers Bailan Changui
02. Jaguey
03. Fiesta En El Solar
04. Dame Un Cachito Pa'Huele
05. Como Se Goza En El Barrio
06. Carmela Dame La Llave
07. Aqui Como Alla
08. Postizo
09. Aurora En Pekin
10. El Divorcio
11. Choserito Plena


山中千尋@渋谷タワレコ

2011-09-16 18:44:55 | ジャズ
今日は、ジャズ・ピアニストの山中千尋さんのインストア・ライヴを観に、渋谷タワーレコードに来ています。ピアノ・ソロかと思いきや、ベーシストさんもいるみたい。楽しみです!




帰宅後追記:

今回はジャズでありながら、いつもの5階ではなく、おそらくグランドピアノを使う都合だと思うのですが、クラシック・フロアの6階が会場。そのピアノを取り巻くように溢れんばかりの人が集まりました。

山中千尋さんのピアノと、女性ベーシストによるウッド・ベースのデュオ。先月リリースされたばかりの最新作「REMINISCENCE」から、1曲目はカーペンターズのヒットでも知られるバート・バカラック&ハル・デヴィッド作の名曲「(They Long To Be) Close To You」。以降、キャロル・キングとジョン・コルトレーンをメドレーにした「You've Got A Friend / Central Park West」、さらにオリジナルの「Rain, Rain and Rain」などを披露。

私は山中千尋さんを生で観るのは初めてだったのですが、ジャズらしいビター感と情緒豊かな感性が素晴らしかったです。ベーシストとのコンビネーションも曲が進むにつれ瑞々しいスウィング感を生み出し、インプロの絡みも流石にスリリングでした!

やっぱ生のジャズは良いですね。短い時間でしたが、良いひと時を過ごさせて頂きました!


矢野顕子×上原ひろみ@昭和女子大学人見記念講堂

2011-09-14 12:13:52 | ジャズ
9月9日、昭和女子大学人見記念講堂にて、矢野顕子×上原ひろみのコンサートを観てまいりました。「Recording Live in Tokyo ~ Get Together ~」と題されたこのライヴ、その名の通りCDのレコーディングを兼ねたライヴなのです。

当初私の席は1Fの後ろから2列目だったのですが、カメラが入る都合とかで、少し前の席へ強制移動されるという嬉しいハプニング。結果PA卓の2~3列後ろというなかなかの良席へ。それでも上原さんの表情まで観たい私は望遠鏡片手での鑑賞な訳ですけどね。


さて、開演時間になると場内に注意事項のアナウンスが流れる。その声はなんと矢野さんと上原さんご本人。ひょっとしたら同じ曲を2度演奏するかもしれないことや、携帯電話や時計の音のこと、お子様連れの場合のことなど、優しく丁寧に、お二人の人柄とユーモアの感じられるアナウンスでした。これにより場内が和やかになると同時に、レコーディング・ライヴという特別なステージに対する期待感と、同じ空間に居合わせることによる緊張感が、同時に沸いてくるような感じでした。

しばらくしてお二人が登場。割れんばかりの拍手。ステージ中央に向かい合って並べられたグランドピアノ。ステージ向かって左側に矢野さん、右側に上原さんが座る。上原さんは上下黒で決めながら、靴だけは黒地に白色の大きな水玉模様が入っている。この水玉が良いアクセントになってましたね。そして私は矢野さんを生で観るのは多分この日が初めて。正直な話、CDも1~2枚しか聴いたことがありません。ま、言ってしまえば上原さん目当てな訳ですが、やはり矢野さんとのコラボというのは特別な感じがしますよね~。

さて、1曲目は「CHILDREN IN SUMMER」。これは矢野さんの曲でしょうか。後半、上原さんの高く高く飛翔するような、高揚感溢れるソロが素晴らしかった! そしてそのソロに絡みつくようにアシストする矢野さんのピアノも見事! 1曲目から息のあったコンビネーションを見せ付けてくれます。そして2曲目。上原さんのピアノに合わせ、矢野さんが何やら「ウン、ウン」と唸り始める。それはスキャットのように形を変え、あの童謡へと変化する…。この2曲目は矢野さんが歌う「あんたがたどこさ」。しかもこれに上原さんがモンゴ・サンタマリアの「アフロ・ブルー」を合わせるという離れ技。ある意味アヴァンギャルドな配合はこの二人ならでは。それにしても矢野さんの「あんたがたどこさ」の崩し具合と言うのは流石!としか言いようがない格好良さ。

続いて上原さんのソロ・アルバムから「Capecod Chips」。ピアノ2台のインストで演るのかと思いきや、矢野さんが歌い出したからびっくり!! ですが飛び跳ねるようなメロディーに強引に歌詞を付けて歌うもんですから、上原さんのソロ・ヴァージョンに慣れた耳ににはかなりの違和感。しかしこの違和感がスリリングで良い! まるで右側で上原さんが従来の「Capecod Chips」を弾きまくり、それに対抗するように左側では矢野さんが自分流の「Capecod Chips」を歌ってる感じ。そして両者が混じりあい、弾けあい、強力なエネルギーを生んでいく。面白い!!

続いてビル・ウィザーズの「Lean On Me」。この曲は上原さんがソロ・ライヴで取り上げていた曲。もちろんここでは矢野さんが歌う。ソウルフルでしたね。上原さんのピアノもエモーショナルの極致で素晴らしかったです! そして「学べよ」。これは矢野さんの曲でしょうね。スピード感と緊張感に溢れた二人のセッションにはもってこいの曲。しかもこの曲では上原さんの見せ場がありました。得意のベース・ソロです。立ち上がって左手で低音を弾き、右手で弦をミュートするアレです。しかもいつもなら観客に背を向ける形になってしまうところ、今回はピアノが逆向きなので、観客の方を向いてのベース・ソロとなる訳です。ピアノを弾く上原さんの姿が見たいミーハーな私にとって、これは嬉しかった! まるで観客を煽るような表情で体を揺らしながらリズミカルにベース・ソロを弾く上原さん、痺れました!!

いよいよコンサートも終盤。上原さんが作曲だけではなく、作詞も手がけたという新曲「月と太陽」。まだ出来たばかりの曲らしく、日本で演奏するのはこの日が初めて、さらに歌の入ったヴァージョンを披露するのは世界初だそう。この二人ならではの温もりを感じる美しいスロー・ナンバー。矢野さんの独特な感性に耳を奪われました。そして本編ラストは「りんご祭り」と題された“りんご”に関する2曲のメドレー。編曲は上原さんで、矢野さんは楽譜を渡されたとき、あまりの長さに絶句したそうです…。まずはグレン・ミラー楽団で知られる「Don't Sit Under the Apple Tree」。スウィング感抜群の上原さんのピアノに、躍動感たっぷりの矢野さんの歌。ストレートなスタンダードらしい演奏に場内も楽しい雰囲気に、と思いきやここから日本を代表する流行歌「リンゴの唄」へと雪崩れ込むから油断出来ません。目まぐるしく駆け抜けるように叩きまくる上原さん、やはり強烈な個性で崩しまくる矢野さん、まあ、凄いですよ!! そして再度「Don't Sit Under the Apple Tree」に戻ってノリノリで終了。天晴でした!!

アンコールは矢野さんの「ラーメンたべたい」。上原さんにとってもラーメンは大好物ですからね。MCでは「1週間ラーメン断ちをしていた」なんて喋ってた程の意気込みですよ!その上原さんはこの曲でマイルス・デイヴィスの「So What」を弾いていたらしいのですが、正直、私はよく分かりませんでした…。CDがリリースされたらその辺も含めてじっくり聴いてみたいと思います。

全体的にレコーディング・ライヴとは思えない程、リラックスした雰囲気でしたね。矢野さんも上原さんも楽しそうに演奏していました。もちろんその演奏は二人の芸術性がぶつかりあう緊張感と、それぞれのエモーショナルな表現力が混ざりあう、濃密空間そのものでしたけどね。ただ上原さんの熱量は、ソロ・ライヴや自身のバンドに比べたら若干低めだったかな?とも思いました。矢野さんとの調和に重点を置いていたのかもしれませんね。それと矢野さんのMCが非常に面白かったです!

さて、おそらくここまでがレコーディングとしての1セットだったのでしょう。事前に70分程のライヴだと断りもありましたし。ですがここで矢野さんが申し訳無さそうに、もう一度やり直したい曲がある旨をユーモアたっぷりに説明。そして「CHILDREN IN SUMMER」、「Capecod Chips」、「学べよ」、「ラーメンたべたい」の4曲を再演。同じ曲とはいえ、再度二人の演奏が聴けるのですから観客も大盛り上がり。しかもファースト・テイクと明らかに違うことをやってますし、二人とも確実に熱くなっている。録り直しとはいえまったく守勢に入るつもりなどない二人の感性はさすがアーティスト! 

上原さんなんて、「学べよ」、「ラーメンたべたい」あたりでようやくエンジンがかかってきたかのようなアグレッシヴさを見せてくれましたしね。MCでも「CHILDREN IN SUMMER」の直後に「1曲目とは思えない盛り上がりでしたね!」なんて言ってみたり、何曲も演奏し直す状況に申し訳無さそうな矢野さんに対し「レコーディングって楽しい!」とはしゃいでみたり。

「ラーメン食べたい」では矢野さんが歌い出すと同時に楽譜を探し始め、歌いながら立ち上がって手元をがさがさ探り始めたものですから、上原さんが演奏を止めてしまうハプニングも。矢野さんは「別にやめなくても良かったのよ~」みたいなことを言ってましたけどね。ちなみに本編の「ラーメンたべたい」は味噌味で、録り直しの「ラーメンたべたい」はとんこつヴァージョンだったそうです。

この“とんこつヴァージョン”が驚異的なテンションで終了し、お二人がピアノの前に並んで、場内は割れんばかりの拍手。いかにも全て終了して大団円な雰囲気でしたが、そこにスタッフさんがマイクと譜面台を用意。それを見た矢野さんは『なにこれ?まだやるの?』みたいな表情。上原さんはニコニコ顔。そして始まった、正真正銘のアンコール、「Green Tea Farm」。これはもう、ただただうっとりでしたね。全て終了後は観客も立ち上がってのスタンディング・オベーション!! 素晴らしいライヴでした!

なんだかんだで約2時間、たっぷりのライヴとなったこの日のレコーディング・ライヴ。CDリリースが楽しみです!



セット・リスト

01. CHILDREN IN SUMMER
02. あんたがたアフロ
03. Capecod Chips
04. Lean On Me
05. 学べよ
06. 月と太陽
07. りんご祭り
    Don't Sit Under the Apple Tree~リンゴの唄
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encore
08. ラーメンたべたい
09. CHILDREN IN SUMMER
10. Capecod Chips
11. 学べよ
12. ラーメンたべたい
13. Green Tea Farm

@昭和女子大学

2011-09-09 19:26:54 | ジャズ
今日は昭和女子大学にて、矢野顕子×上原ひろみ。二人の新作を予約しようか激しく迷っています…。



帰宅後追記:

結局、予約してしまいました! ライヴ・レポはまた後日。お楽しみに!