ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

ダーティ・ダズン・ブラス・バンド@ビルボード東京

2011-11-01 09:54:09 | ニューオーリンズ
THE DIRTY DOZEN BRASS BAND / VOODOO

10月30日、ビルボード東京にてダーティ・ダズン・ブラス・バンドを観てまいりました!

ダーティ・ダズン・ブラス・バンド(以下DDBB)と言えば、ニューオーリンズのブラス・バンドの代表的バンドであり、伝統的なブラス・バンド・サウンドをファンク化させた歴史的先駆者でもあります。そしてそのファンク化の要となったのがスーザフォン奏者のカーク・ジョセフ。今回はその伝説的スーザフォン奏者カーク・ジョセフを含む最強メンバーでの来日とあって、私も期待に胸膨らませて現地に赴きました。

私が観たのはこの日の2ndショー。係員に案内された席はステージ向かって右側の良席。しかし左奥に巨大なスーザフォンが置かれているのを目に留めて、慌てて「向こう側が良いです!」と我がまま言ってスーザフォンがよく見える左側の席へ。そして待つこと1時間。場内が暗くなりいよいよメンバーが登場。

まずはギタリスト、ドラマー、そしてカーク・ジョセフがステージに上がる。本物です! そしてそのカーク・ジョセフがラッパのお化けみたいなスーザフォンを担ぎ上げると、客席から思わず『凄いな~』という声が漏れる。まずこの3人のみで挨拶代わりにインストを披露。ビルボードのインフォーメーションによれば、ドラムスはジャマール・ワトソン、そしてギタリストは今メンバー唯一の白人ジェイク・エッカート。もう、この時点で私の目はカーク・ジョセフに釘付け。椅子に腰掛けながらぶっといグルーヴをボバボバと吹きまくってる。本物だ~! しかし肝心な音そのものは団子状態で細かいフレーズまで聞き取れない…。え~!って感じでしたが、なんとか耳をこらして聞き取ろうみたいな。

そしてフロントのホーン隊が登場。右奥からバリトン・サックスのロジャー・ルイス、テナー・サックスのケヴィン・ハリス、トランペットのエフレム・タウンズ、そして一番左側にもう一人のトランぺッター、グレゴリー・デイヴィス。カーク・ジョセフと共にDDBBのオリジナル・メンバー4人衆です。ずら~っと並んだ絵面が格好良い! メンバーが揃った一発目は「Charlie Dozen」だったかな。なんか感慨深いものがありましたね。ギラギラとしたホーン・アンサンブル、それを後ろから煽りまくるようにうねるカーク・ジョセフのスーザフォン。これぞDDBBだ!って感じでしたよ。

そして次の曲ではまさかのカーク・ジョセフによるスーザフォン・ソロまで飛び出して。しかもこの頃には耳が慣れたのか、スーザフォンの音も粒立ちよくはっきりと聴こえるようになってきた感じ。驚いたのはカーク・ジョセフがワウ・ペダルを踏んで音色をギャンギャン変化させていたこと。こんなこともやるのか~!なんて思いつつ、伝統と革新に満ちた匠の技に酔いしれました。場内拍手喝采の中、曲はなんとスライ&ザ・ファミリー・ストーンの「If You Want Me To Stay」へと流れていく。ケヴィン・ハリスが渋いしゃがれ声で唸るように歌っていたのが格好良かったですね~。

そしてやたらスピードアップした「Remember When」。ホーン隊のキレのある疾走感が堪りませんでしたね。シャッフルのリズムが心地良かった~!さらに「Caravan」とジャズっぽい曲が続く。この曲ではメンバー達のわりと長いソロ回しがあって、カーク・ジョセフの2度目のスーザフォン・ソロがあったのもこの曲だったかな? 像の鳴き声のように高音へしゃくり上げる得意のフレーズには観客も大喜びでしたね。

ちなみにカーク・ジョセフはソロだけではなく、曲中も普通にワウペダルを踏み続けてましたね。あれで独特のえぐいグルーヴ感を生み出してるのかもしれませんね。ジャマール・ワトソンのドラムスも安定感抜群で流石でしたし、ジェイク・エッカートも控えめながら堅実なプレイでリズムに彩りを加えてました。しかしやはりグルーヴを支配するのはカーク・ジョセフのスーザフォンでしょう。ドラム・セットにギターが入るという、マーチング・バンドではない、どちらかと言うとジャム・バンドに近い自由なグルーヴながら、スーザフォンの低音がニューオーリンズならではのガンボなノリを存分に体現させてくれる。セカンド・ラインなリズムはもちろんですが、例えば「If You Want Me To Stay」でのスムーズなファンク・グルーヴとか、「Remember When」の中盤における4ビートっぽいノリとか、「Caravan」でのひたすら地を這うようなうねりとか、それぞれのグルーヴに独特の“ハネ”や“粘り”が濃厚で。私なんか気がつくとカーク・ジョセフのベース・ラインを追いかけていましたからね。

さて、中盤に入って驚いたのはジェイムス・ブラウンの「Sex Machine」が始まったこと。マジで~!!とか思ってると、そのJBノリを引き継ぐ形で「Use Your Brain」が始まる。もの凄くスピーディーでファンキーな「Use Your Brain」。スタジオ録音はわりと牧歌的なこの曲がこんな風になっちゃうの!?っていう。しかもカーク・ジョセフの吹く低音ラインが凄まじい! やたらグルーヴィーな高速フレーズをあり得ないキレで吹きまくってる。もう痺れまくりでしたね。客席はビルボードらしくみんな座って鑑賞していたんですが、このとき程座っていることがもどかしく感じたことはありませんでしたね。さらにロジャー・ルイスによるエコーを効かせたエギゾチックなバリトン・サックスのソロ・タイムへ。これも強力でしたね。会場中が、フリーキーに溢れるようなバリトンの音色で満たされていく感じ。圧巻でした! 最後はまたファンキーな「Use Your Brain」へ戻り、フロントにブラス隊が4人も並ぶ中央でエフレム・タウンズがさらにトランペットの同時2本吹きという無茶をする。そういうところ好きです! ま、トランペット2本吹きと言っても、1本は普通のトランペットより一回り大きいものだったので、音的にも意味があったんでしょうけどね~。

このファンキー極まりない「Use Your Brain」でも席を立たない観客に痺れを切らしたのか、グレゴリー・デイヴィスがみんなそろそろ立とうよ!的な呼びかけを。もちろん観客も待ってましたとばかりに総立ち。グレゴリー・デイヴィスによるコール&レスポンスのレクチャーの後始まったのが「Me Like It Like That」。練習通りにサビをみんなでコール&レスポンス! 最前列のお客さんはマイクを向けられて歌わされたりしてましたね。そしてミーターズ「Cissy Strut」からパーラメントの「P. Funk (Wants to Get Funked Up」へと続く怒濤のファンク・メドレー。もう踊りまくり!

ラストはロジャー・ルイス大爆発の「Dirty Old Man」。ヒップホップっぽいリズムに乗ってファンキーなリフを吹き、ラップみたいなサビを歌うロジャー・ルイスのやんちゃっぷりが格好良かった! しかも女性客をステージに上げては激しく腰を振って踊りあうというロジャーの現役振り!計4名程の女性達が次々にロジャーに捕まって一緒に踊りまくるという、なんともカオスな盛り上がり。カーク・ジョセフはスーザフォンを置き、踊りながらマイクを口に当ててベース・フレーズを唸ってるし、DDBBってこんなバンドでしたっけ?みたいな感じで最高でした!!

メンバーがそれぞれステージを後にし、これで終わりかと思いきや、最後に残ったロジャーが名残惜しそうにバリトン・サックスを吹き始める。それにグレゴリー・デイヴィスがトランペットを合わせる。ドラムスのジャマール・ワトソンもしっとりとサポート。曲は「St James Infirmary」のような枯れたジャズ曲。いや「St James Infirmary」そのものだったかもしれません。(すいません、私のようないい加減な知識&記憶では、インスト曲の曲名をその場で断定するのが困難だったりするもんで…。) ま、とにかくそんな寂し気な哀愁漂う曲ですよ。これも痺れましたね~。最後にこうくるか! 参った!


そして終演後、メンバー全員にサインを頂きました。上の写真がそのジャケットです。ここに写っていないジャマール・ワトソンとジェイク・エッカートは「ここには俺達写ってないから…」みたいな感じでサインをするのをためらってまして、英語の喋れない私は、申し訳ないと思いながらも、どう気持ちを伝えれば良いのかと困惑しつつ、ダメもとで力強く『アイ、ウォンツ!!』って言ってみましたら、ジャマール・ワトソンが嬉しそうに『ユー、ウォンツ!? オッケー!!!!!』と言って、笑顔でサインを書いてくれました。その後、ジェイクも快くサインしてくれました。やりました!

カーク・ジョセフにはDDBBのジャケとは別に、彼のソロ・プロジェクトであるKIRK JOSEPH'S BACKYARD GROOVEのジャケも持参してたので、そちらを見せましたら、「おー!!バックヤード・グルーヴ!!!!」って感じで、驚きつつ大変喜んでくれました。持っていったかいがありました! もちろんそちらにもサインを頂きました!(写真下↓)


KIRK JOSEPH'S BACKYARD GROOVE / SOUSAFUNK AVE.



私はDDBBを観るのはこれが2回目。初めて観たのは03年のフジロックでした。その時はカーク・ジョセフはもちろん、グレゴリー・デイヴィスも居ませんでした。エフレム・タウンズとロジャー・ルイスは居ました。でもケヴィン・ハリスは居なかったかも…。(その頃はまだメンバーに対する知識も薄く、記憶もあやふやで…) あの時のフジで観たDDBBは良かったんですけど、ちょっと不完全燃焼な感じもあったんですよね。でも今回は完全燃焼でした。正直な話、私は現在のDBBBより、初期の頃のDDBBの方が好きです。ですが今回のライヴを観て、現在のDDBBの凄さを思い知らされました。ジャム・バンド的な広い視野を感じさせるファンク・グループとしてのDDBB、やっぱりとんでもないライヴ・バンドでした! しかもちゃんとDDBBならではのニューオーリンズなガンボ感、そしてブラス・バンドならではの熱気を感じさせてくれる。流石、最強メンバー!これからのさらなる活躍も楽しみです!!


*曲目等、誤りがありましたらごめんなさいね。



コメントを投稿