ルーツな日記

フジロックブログが終わり、
サマソニブログと相成りますがどうぞ宜しく。
サマソニの雰囲気を現地よりお届けいたします!

レディシ@コットンクラブ

2009-01-26 16:36:59 | ソウル、ファンク
1月24日、丸の内コットンクラブにて、念願だったレディシのライヴを観てまいりました。も~、素晴らしかったです!

私が観たのはこの日の2ndショー。とにかく圧倒的な歌声! 「Get to Know You」、「Joy」、「I Tried」、「Think of You」、「Best Friend」、「Someday」、「Alright」など、一昨年リリースの「LOST & FOUND」からの楽曲中心のステージでしたが、このアルバムの完成度とは違う次元でライヴが凄いというのは、ある程度予想はしていましたが、その予想を遥かに上回るすごさでした。アルバムで聴かせたメロウネスを残しながらもとにかくパワフル。声そのものが黒人ならではの艶とコクに溢れ、そして表現力豊かに声音を変えながら高低差のある音階を自由自在に飛び交うような歌唱はエキサイティングこの上ありませんでした。そしてその発声を本人も楽しんでいるようでした。

そんな余裕すら感じる卓越した技量には、彼女を認めているというチャカ・カーンが脳裏を横切ったりもしました。もちろん彼女にリスペクトを贈るアーティストはチャカだけではありません。これまでにフランク・マッコム、ラファエル・サディーク、ゴードン・チェンバース、ブラッカリシャスなど、数々の作品に客演し、エラ・フィッツジェラルド、ルーサー・ヴァンドロス、アース・ウィンド&ファイアーなどのトリビュート作にも駆り出されています。さらに近々リリースされるセルジオ・メンデスの新作にも参加しているとか、まさに引く手数多。でもそんな人気振りが頷ける彼女の歌唱力です。

8歳の頃から歌い始め、デビュー前にも既にキャバレーやミュージカルで歌っていたというレディシ。ベイエリアでの活動が実り、自主制作ながら99年にアルバム「SOULSINGER」でデビュー。そのメロウな作風はネオ・ソウル・ムーヴメントの渦中で話題になりました。しかし何故か2nd作「FEELING ORANGE BUT SOMETIMES BLUE」はジャズ・アルバム。でもこの辺りがレディシの規格外の面白さ。「FEELING ORANGE BUT SOMETIMES BLUE」も一言にジャズというにはあまりにも剛胆な歌唱であり、やはり規格外。そしてこのアルバムには強烈なスキャットで歌われる「Straight No Chaser」が収録されていますが、彼女の歌に欠かせないのがこのスキャット。

この日のライヴでも自由奔放且つディープなスキャットをたっぷりと聴かせてくれました。とにかく隙さえあればスキャットを入れてくる。おそらく感情表現としてスキャットが自然に出てくるんでしょうね。そして1曲アカペラでもの凄いスキャットも披露してくれました。これは感情表現というよりスキャットのためのスキャット。ちょっと意味不明ですが、とにかく凄かったです!

レディシの歌はソウルフルこの上ありませんが、このスキャットなどジャジーな感触があるのも彼女ならでは。やっぱり彼女のルーツにはジャズがあるんでしょうね。2nd作がジャズ・アルバムだったり、エラ・フィッツジェラルドのトリビュート作に参加していたり、さらに自身のMySpaceは、ソウル版とジャズ版と二つ持っているようですし。そして彼女が満を持して契約したメジャー・レーベルはジャズの名門Verveでした。そんなジャジーな感触を上手くヒップホップやソウルにしみ込ませた傑作が、一昨年Verveからリリースした「LOST & FOUND」でした。

今回のライヴではこの「LOST & FOUND」をどう生バンドで処理するのか楽しみにしていたのですが、いやはや、レディシ本人に劣らずバック・バンドも最高でした。ドラムス、ベース、ギター、キーボード2台、女性コーラス2名の計7人編成。「LOST & FOUND」のメロウなヒップホップ的感性が、メロウを残しながらそのままソウルになった感じ。躍動感を増したファンキーなリズムに、揺れるローズ・サウンドと、セクシーにカッティングするギターが絡みます。これが生で聴くネオ・ソウルかと、感激しました! そこにあのパワフルで自由奔放でエモーショナルなレディシの歌が乗るんです! 思い出しただけであの甘味な興奮が甦ってきます。

そしてレディシはなかなかの盛り上げ上手でもありました。大胆に足を見せた衣装もディープでしたが、ファンキーな曲では座っていた観客を立ち上がらせ、一気にダンス・フロアへと変貌させたり、自らも常に踊りまくっていました。また観客とのコール&レスポンスもありました。しかも得意のスキャットでですよ! 我々も楽しみながらスキャットを真似しましたが、結構ついていくのに必死でした。

でもハイライトは何と言ってもスローナンバーでしょうね。まずやはり「LOST & FOUND」からですが「In the Morning」。もう極上でしたね。何と言っても声の響きが素晴らしい。そして感情が溢れ出るように歌われるその感性。こういうのを聴かされちゃうともう私は堪りませんね! やっぱりソウル、およびR&Bって良いなと。

さらに極め付きは昨年のクリスマス・アルバム「 IT'S CHRISTMAS」から「What A Wonderful World」。そう、サッチモのアレです。これはね~、ちょっと素晴らしすぎましたね。これが生で聴けただけで満足すぎます。ジャジーに静かに始まり、彼女を追いかけるようなローズの甘い音色をバックに、愛情たっぷりに徐々にソウルフルに高揚していく。一瞬たりとも聴き逃せない特別な瞬間でした。

この日のライヴで見せてくれた、ジャズもソウルもゴスペルも全て飲み込んだかのような押しの強いディープな歌声。そこにはある種の無骨さとも言える魂を感じました。現代的な洗練とそんな魂を併せ持つレディシ。他にも聴きたい曲は色々ありましたけど、それはまた次の来日のお楽しみということで。また来年も来日してくれることを祈ります。
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チャーリー・ハンター

2009-01-19 10:24:12 | ジャムバンド/オーガニック
CHARLIE HUNTER / BABOON STRENGTH

ニューヨークの先鋭的ジャズ/ジャム・バンド・シーンの立役者の一人、チャーリー・ハンター。彼の最新作が写真の「BABOON STRENGTH」。トリオ編成で、チャーリー・ハンターが7弦ギター、キーボードにErik Deutsch、ドラムスがTony Masonの3人。ベースが居ません。でもしっかりベースが聴こえてきます?

実は、チャーリー・ハンターの操る7弦ギターは、たぶん上2本の弦がベースになっているのです。さらにこの人、その上をいく8弦ギターも操るとか。もともとオルガン・ジャズのようなプレイをギターで出来ないものかと、自らのアイデアで特注したギターだそう。そして彼はこのギターを操り、ベース、バッキング、リードと、一人3役をこなしているとか。

で、先日渋谷タワー・レコードでチャーリー・ハンターのインストア・イベントがあったので行って来ました。今回はコットンクラブでのトリオ編成によるライヴのための来日でしたが、この日はインストアなのでチャーリーただ一人による演奏でした。ですが、彼のギターを堪能するにはもってこいかと。

噂の7弦ギター。ちゃんとピック・アップもギター用とベース用がそれぞれ付けられ、アンプもギター・アンプとベース・アンプそれぞれにつながれています。上2本の弦でベース・ラインを弾きながら、バッキングやリード・ギターを歯切れ良くこなしていきます。しかもこのベースがいい音してるんですよ!

店内のポップに書かれている言葉を見つけては、「ブルース!」「カントリー!」「ジャズ!」「ワールド!」と楽しそうに叫び、それぞれのスタイルをハンター流に弾きこなしていきます。別にアクロバティックな弾き方をする訳ではなく、奏法自体はオーソドックスなものなのですが、バラエティに富んだリズムを表現するベースラインと、それに絡むファンキーなソロ・フレーズを一手に繰り出すフィンガリングに目が釘付けでした。

そしてその驚異のテクニック以上に印象に残ったのは、彼の演奏そのものに野性味が溢れていたこと。案外、感情が先に行くタイプというか、結構強引なフレーズを連発していた印象。でも私なんかはそういうところにファンク・スピリッツやブルース魂のようなものを感じちゃうんですよね。天晴れなギタリストでした。

ちなみに私がチャーリー・ハンターを初めて知ったのは、彼の01年のアルバム「SONGS FROM THE ANALOGUE PLAYGROUND」。ここにノラ・ジョーンズが参加していて、ノラの歌が聴きたくて手にしたのが始まりでした。この時ノラはまだデビュー作の「COME AWAY WITH ME」を発表する前だったんですよね。

で、チャーリー・ハンターの最新作「BABOON STRENGTH」には7曲のライヴ音源が入ったボーナス・ディスクが付いていたんですけど、なんとノラ・ジョーンズをゲストに招いた「Tennessee Waltz」が入ってるんです。これが良いんですよ! ノラの歌と鍵盤も素晴らしいですし、後半のハンターによるジャズ/ブルージーなギターソロも良いです。もちろん他の曲も刺激的ですよ! わりと緩めな本編スタジオ作より、ボーナスのライヴCDの方が断然燃えます!

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プリシラ・アーン@ビルボードライヴ東京

2009-01-08 13:55:41 | SSW
PRISCILLA AHN / LIVE SESSION EP

iTunes って侮れないですね。昨年ノラ・ジョーンズがダウンロード・オンリーのライヴ音源を発表した際、初めてiTunesを利用し、それ以来、たま~に利用してはいたのですが、つい先日、iTunesオリジナルの音源が色々リリースされていることを知り驚きました。その中でひときわ目についたのがプリシラ・アーンの「LIVE SESSION EP」(写真)。

やっぱりプリシラ・アーンってライヴに魅力を感じるんです。1stフル・アルバム「A GOOD DAY」はプリシラのフォーキーな魅力とジョーイ・ワロンカー達の職人的ポップセンスが光る素晴らしい作品でしたが、スタジオ作としての完成度が高い分、、例えばYouTubeなんかで観られるライヴ映像程には、プリシラの歌そのものの存在感が発揮されていないようにも感じたんです。そこで、おそらくプリシラ初のライヴ音源となる「LIVE SESSION EP」です。ですがその前に、昨年11月に来日しているんですよね~。と言う訳で、遅らばせながら、11月30日プリシラ・アーン@ビルボードライブ東京、ライヴレポです。

私が観たのはこの日の2ndステージ。整理番号3番だったので、ど真ん中かぶりつきでした。でも下から見上げる感じだったのでちょっと首が疲れました。ですが白いワンピースにピンクの足が眩しかったプリシラ・アーンはとにかく可愛かったです。傍らには小さなぬいぐるみ。どなたかからのプレゼントのようで、このあたりはさすが女の子。

さて、「Wallflower」から始まったステージ。「Dream 」、「I Don't Think So」、「Masters in China」と続き、静謐で透明感溢れる歌声が会場の空気に溶け込みます。バックはガス・セイファートただ一人。彼がダブルネックのギター(ギターとベース?)でプリシラをサポートします。この人はプリシラの1stフルアルバム「A GOOD DAY」を全面的にバックアップし、「Astronaut」の共作者にもクレジットされている人。さらに Willoughby という自身のプロジェクトでも活動し、Benji Hughes や、バード&ザ・ビーなどとも親交があるらしい。そんな彼がプリシラの弾き語りにそっと音を合わせていきながら、プリシラの歌世界に広がりを持たせていきます。

広がりと言えばもう一つ、それは彼女の不思議なコーラス・ワーク。ループ・ペダルを使って曲中に自分の歌を録音し、ハーモニーを付ける、と同時に録音し、その上にさらにハーモニーを付ける。しかもいかにも“やってますよ!”というふうではなく、さりげなくあたりまえのように行う。サンプリング自体を曲中の歌で行うものだから、私のように目の前にプリシラの足があるような状態でないと、突然ハーモニーが加わったかのように感じる。しかもプリシラの声そのものなので、お客さんの中には、予め録音しておいたテープを流していると思われた方もいたかもしれない。それぐらいさりげなく、スムーズな動きで淡々とペダルを踏んでました。彼女はいとも容易くやっているように見えましたけど、これも確かなピッチと、卓越したリズム感、タイム感があってこそ成せる技なんでしょうね。その不思議なコーラスが素朴な弾き語りをプリシラらしいドリーミーな空間へ誘い、さらに「Astronaut」をサイケデリックに響かせました。

プリシラの歌声には心地良い緊張感があります。その場の空気をスーッと歌に引き込むような。それ故か前半は客席とプリシラの間がちょっと固い雰囲気でしたが、続く「Boob Song」でそれが一気にほぐれます。

アルバム未収録曲なためか、この曲の説明を語るプリシラ。この曲はちょっと笑える曲のようで、説明途中にプリシラ自身も何度も笑っていました。もちろん客席もウケていましたが、それ以上にようやく出たプリシラの笑い声。ルックスも可愛いけど、彼女のカラカラとした笑い声には本当に惹かれます。彼女の笑い声一つで一気に場内の親密感が増した感じ。英語が苦手で意味は分からなかった私も、プリシラの笑い声につられて笑ってしまいました。曲中でもちょっとおどけた感じで歌ったりして、笑いを誘っていましたね。間奏のカズーがまた良い味出してました。

ここからはMCにも乗ってきて、色々話してました。そしてよく笑ってました、カラカラとコロコロと。客席との距離もグッと縮まり、プリシラの屈託のない人柄が顔を覗かせます。「Lullaby」を挟んでアルバム未収録曲「Living In A Tree」をいい雰囲気で披露。続く「Red Cape」では曲紹介時、楽しげに“ロック”と言ってましたね。ハリー・ニルソンの「Moonbeam Song」。私この曲大好きです。生で聴くとまさに夢心地。ウィリー・ネルソンのカヴァー「Opportunity To Cry」を挟み、本編最後は「Leave The Light On」。この曲って、何気ない曲ですけど良い曲ですね。もうただただうっとりでした。

アンコールは日本のファンへのプレゼント。なんと名曲「Country Road」を日本語で。この日本語詩は、宮崎駿のアニメ「耳をすませば」からだそうです。まさか宮崎アニメが好きだとは! プリシラの歌い方にはクセがない素直な印象がありますが、その印象そのままに日本語の発音が綺麗なのに驚きました。日本語詩を楽しげに歌うプリシラ。可愛すぎます。そして最後は「Find My Way Back Home」。まってましたのウクレレが登場。最初っからステージ上に置きっぱなしになっていて、このまま使われないのか?とやきもきしていましたが、最後に登場でした。

やっぱりこの曲は素敵ですね。素朴なウクレレの響きとプリシラのしっとりとした歌声が溶け合い、至福の空間を生み出していました。しかもこのアンコールでは、これまでステージ後方に閉じられていたカーテンが開き、綺麗な夜空と夜景、そして宇宙をイメージした庭園のイルミネーションが、バックに瞬いていたのです。

でもプリシラはカーテンが開いて、イルミネーションが露になった瞬間、それをちらっと見ると、すぐに客席の方へ向き直り軽く口を歪めて微妙な表情。あれはどういう意味だったんですかね? 「ふ~ん、そういう演出ね~」みたいな感じですか?もちろんジョークとしてでしょうけど。すぐに笑顔に戻り日本語で「キレイ」と言ってましたからね。でも実は私の位置からは肝心のイルミネーションは見えてなかったんです…。あの絶景なイルミネーションをバックにプリシラの歌を聴けたら、さぞ至極のひと時だったことでしょうね。

それにしても、プリシラの歌声と人柄に酔いしれた一夜でした。そしてやはりアルバムで聴くより断然いい! 生の歌声の持つ鮮度っていうか、声そのものがもつ繊細なオーラというか、そういったものがダイレクトに伝わってきます。そして間近に見るプリシラは、ごくごく普通の女の子でありながら、天使のようでもありました。また来日してほしいですね。


さて、iTunesで手に入れた「LIVE SESSION EP」です。弾き語りライヴと思いきや、しっかりとバンド&ストリングスが付いた完成度の高い演奏です。雰囲気的には来日公演より「A GOOD DAY」に近い感じ。iTunesの音源なので、バックメンバー等詳細は分かりません。ですがLIVEと謳う以上、一発録りしたものなのでしょうね。おそらく新曲と思われる1曲目「In a Closet In the Middle of the Night」。 弦楽器のアルペジオの響き、これバンジョーですか? ひょっとしてプリシラがバンジョーを弾きながら歌っているのでしょうか? プリシラらしい静謐でドリーミーな曲ですが、バックがギターじゃないところが面白い。終盤は一人多重コーラスが美しく広がりますが、きっとループ・ペダルでやってるんでしょうね。

続く「I Don't Think So」。プリシラはこの曲大好きなんですね。インディーズ作含め、3作連続の収録。ギターの他にバンジョーらしき音が鳴っているところから察すると、バンジョー奏者はプリシラではないということですね…。(バンジョーじゃなかったらごめんなさいね。)

3曲目は出世作「Dream」。これだけハーモニカがロマンティックに響く曲もこの曲ぐらいでしょうね。ハーモニカの後のエモーショナルな歌声も良いですし、ラストのコーラスがまた素晴らしい。バックのチェロも素敵です。

4曲目はカエターノ・ヴェローゾのカヴァー「O Leaozinho」。個人的には本作のハイライト。プリシラは「Moonbeam Song」もそうですけど、原曲のイメージを損なわずに自分の個性でカヴァーする、そんなセンスというか、天性のさりげなさを持っていますよね。原曲の持つ素朴な異国情緒とプリシラのしっとり感が絶妙にマッチしています。選曲自体も天晴れ。

5曲目「Space to Write」。これも新曲でしょうか?どこかノスタルジックな雰囲気。清涼感溢れる歌声にうっとりです。ラストは噂の「Willow Weeping」。ザ・バード&ザ・ビーのイナラ・ジョージとの共作だそうです。日本公演でも大阪では披露されたらしいですね。聴きたかった~! 浮遊感のあるサビのメロディーがロマンチックで良いですね。そしてゆ~ったりとしたグルーヴが気持ちよいです。この曲は今、彼女のMySpaceでも聴けますが、そちらはスピードが若干早く、エコーが薄い分、雰囲気はちょっと違います。どちらも甲乙付けがたし。聴き比べてみるのも面白いかも。

全体的にもう少しシンプルなのが聴きたかったと思う気持ちも少しありますが、アルバム未収録曲が4曲も入ってますし、より完成度の高い作品が聴けたのだから喜ばしきこと。そして何よりプシシラ・アーンの歌声と楽曲は素敵だなと、あらためてうっとりと感じさせられました!
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プリシラ・アーン

2009-01-07 11:01:10 | SSW
PRISCILLA AHN / A GOOD DAY

昨年来日し、そのピュアな歌声と屈託の無い人柄で、まるで心地よい風のように、ふわっと日本を吹き抜けて行ったプリシラ・アーン。LAを拠点に活動する24歳のシンガー・ソング・ライターです。

昨年リリースされた彼女の1stフル・アルバムが写真の「A GOOD DAY」。ジャズの名門ブルーノートからのリリース。と言ってもジャジーではなくフォーキー。そしてブルーノートが送り出した女性シンガーと言えばノラ・ジョーンズ。なのでプリシラはとかくノラと比較され、ネクスト・ノラ・ジョーンズと評されたり。実際、プリシラの才能を最も早く見初めた一人がノラと親交の深いエイモス・リーだったり、このデビュー作にノラの最新作にも客演していた鍵盤奏者ラリー・ゴールディングスが参加していたりと、ノラを連想する人脈もちらほら。

私がプリシラ・アーンに初めて惹かれたのは、タワー・レコードでプロモーションVTRを観た時でした。それまで私のプリシラ・アーンに対する印象は、第2のノラ・ジョーンズと呼ぶにはあまりに清楚すぎる歌声の持ち主。ですがその映像でのインタビュー・シーンで彼女はバンジョーを抱えていたのです。

この人、バンジョー弾くの?と驚きました。その後食い入るように映像を見続けましたが、実際にバンジョーを弾いているシーンはありませんでした。ただ静かな歌声と対照的な軽やかで可愛らしい笑い声に惹かれました。帰宅後、YouTubeで映像を検索してみましたが、残念ながらバンジョーを弾くプリシラは発見出来ず、しかしハーモニカ、ウクレレ、カズーといった、素朴且つ土っぽい楽器を扱うプリシラを発見し、妙に嬉しかったり。

ですがプリシラの面白いところは、フォーキーでありながらも都会的なポップセンスと洗練を併せ持っているところです。ライヴではアコギの惹き語りをしながらフットスイッチで自分の声をサンプリングし、ハーモニーを付けていくという、今時な技も見せてくれます。そしてアルバム「A GOOD DAY」でもそのポップ・センスが彼女のピュア・ヴォイスをさらに奥深く響かせています。

プロデューサーは、ドラマーとしてベックをはじめ、R.E.M.やスマパンとの仕事でも知られるジョーイ・ワロンカー。リッキー・リー・ジョーンズやザ・バード&ザ・ビーなどのレコーディングにも関わり、 プロデューサーとしてはザ・インクレディブル・モーゼズ・リロイや日本のトモフスキーなんかも手掛けています。そして彼ともう一人、ガス・サイファートなる人物。ウィロウビーとしての活動でも知られる人らしいのですが、残念ながら私は良く知らないんですよね…。とにかく、プリシラとこの2人が中心になって作り上げたアルバムが「A GOOD DAY」なのです。

ドラムスはもちろんジョーイ・ワロンカー、そして殆どの曲でギター&ベースを弾くガス・サイファート。彼は鍵盤もこなしてます。そしてプリシラ・アーンは、アコギ、ピアノ、ハーモニカ、ハープシコード、オートハープ、ウクレレ、グロッケンシュピール(鉄琴)など、驚く程の多才振り。バンジョーを弾いてないのが残念ですが、オートハープというカントリー系でよく使われる楽器が登場するのは嬉しいです。

そしてこの3人に絡むのがグレッグ・カースティン(ザ・バード&ザ・ビー)のキーボードだったり、マイク・アンドリュース(ザ・バード&ザ・ビーのイナラのソロ作をプロデュースしている人)のギターだったり、オリヴァー・クラウス(近くレイチェル・ヤマガタのバックで来日する)のチェロやストリングスだったり、ラリー・ゴールディングスの鍵盤だったり。おそらくジョーイ・ワロンカー人脈と思われる、この辺りのツボを得た人選に興味心をくすぐられます。

これだけ楽器や参加メンバーの名前を連ねると、何やら賑やかな作品と思われるかもしれませんが、いえいえ、基本はフォーキーなヴォーカル・アルバムです。土っぽさも殆どありません。ある意味LAらしいセンスを感じます。そしてプリシラのゆったりとした穏やかな歌声は、トロっとした癒しと、心地よい緊張感を同時にもたらし、飾り気のない歌い方がかえって表情豊かに響きます。そしてプリシラの作る、心にスーっと入ってくるような耳なじみの良いメロディー・ラインも秀逸。

出世作となった「Dream」はまるで雪の結晶のように美しい彼女の歌声にオリヴァー・クラウスのチェロが絡みます。コーラス部分のまさにドリーミーな音の重なりに、何処かへ連れ去られそうな気持ちになります。続く「Wallflower」は穏やかなリズムとサビに向かって儚く展開するメロディーが堪りません。そして今作中最も軽やかで楽しげな曲調の「I Don't Think So」。この曲は甘酸っぱい感じのサビと間奏のハーモニカが良いですね。

さらにベンジ・ヒューズというノースキャロライナのシンガーソングラーター(おそらくワロンカー人脈)カヴァー「Masters In China」。この曲がまた良いんですよ! ゆったりと流れる静けさの中、独特の浮遊間を演出するのがウルスラ・クヌースンが操るミュージカル・ソー。いわゆるノコギリですね。この辺りのセンスにもグッときます。甘く囁くようなプリシラの歌声にもうっとりです。またこの曲でプリシラはオートハープを使用。

「Astronaut」は何処となく中期ビートルズを思わせるサイケデリックな味付けがロマンチック。「Lullaby」はオリヴァー・クラウスによるストリングスと、プリシラ一人による多重コーラスが素晴らしく、出来ればヘッドフォンで聴くのがお勧め。色々な方向からプリシラの声が重なってきます。

そしてウクレレの音色が何とも可愛らしい「Find My Way Back Home」。こういったシンプルな曲でのプリシラの歌声はまさにピュア・ヴォイス。さらにノコギリとベルがまた良い味だしだしています。続く「Opportunity To Cry」はウィリー・ネルソンのカヴァー。そして最後は逆回転サウンドが宙を舞う中、静かにスピリチュアルにプリシラの声が響くタイトル曲「A Good Day (Morning Song)」が、ひと時の夢の終わりを告げるかのよう。

プリシラの持つフォーキーかつピュアな魅力と、そんな彼女の世界観を絶妙にサポートするポップなアレンジ、さらに好奇心旺盛な冒険的アプローチが見事に溶け合った作品であり、プリシラのしっとりとした中に天真爛漫さが覗くような、そんな微妙な感性に心惹かる作品。

で、彼女のライヴを昨年11月末に観に行ったのですが、しかもかぶり付きで。でもその話しはまた次回に。それにしても、何で日本盤はジャケット変えたんでしょう? こっちの方が断然趣があっていいと思うんですけど…。



PRISCILLA AHN / A GOOD DAY
こちらが日本盤。ジャケはオリジナルに負けていますが、ジャパン・オンリーのボーナストラックとしてハリー・ニルソンのカヴァー「Moonbeam Song」を収録。原曲のロマンチックな浮遊間をプリシラらしくしっとりとドリーミーに纏めた素晴らしいカヴァー。バック陣はアルバムとほぼ一緒ですが、アコーディオンでヴァンダイク・パークスが加わっているところが特筆もの。この辺のさりげなくルーツ色を出すあたりが憎い。


PRISCILLA AHN / PRISCILLA AHN
「A GOOD DAY」に先駆けて、インディーズで発売されていた5曲入りのEP。タワー・レコードでプッシュされていましたが、当時私はさほど気に留めませんでした…。プリシラと、ワロンカー、サイファート、クラウスの4人で作り上げたまさに「A GOOD DAY」のプロトタイプ。シンプルだからこそ、生っぽいプリシラの歌に惹かれます。

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フジロック開催決定!!!

2009-01-03 09:31:35 | フジロック
フジロック・オフィシャル・サイトにて今年のフジロック開催が発表されました! 今年は7月24日(金)~26日(日)の三日間で、もちろん苗場で行われます。チケ代の値上げ値下げは無いそうです。

気になるメンツの発表はまだありません。今年はどんなアーティストが来てくれるのでしょうか? おそらく、例年通り早割り購入者をあざ笑うがごとくその期待を裏切りながら、出揃ってみると意外と濃密みたいな、そんな感じでしょう。今年は10周年でもなければUKイヤーでもありません。平常心で3月の第一弾発表を待ちましょう。


とは言え、勝手に妄想してしまうのがフジ・ファンの心情というものです。私の興味の対象はやっぱり奥の方が中心。私の希望では、昨年素晴らしい新作を発表したエミルー・ハリスとか、ルシンダ・ウィリアムスとか…。特にルシンダはロック・ファンにも充分アピールすると思うんですけど。ま、無いでしょうね…。フィッシュ再結成なんて話しもありますが、どうなんでしょう? そのフィッシュといえばヘヴンですよね。でももしフジ出演が決定しても、ヘヴンでキャパが足りるかな~?

ま、あまり期待しすぎてもね~。

現実的な部分では、トムズ・キャビン枠、もしくはバッファロー・レコーズ枠。まあ、そんなの無いんでしょうけど、例えばホット・クラヴ・オブ・カウ・タウンやジャネット・クラインに続くアーティストに期待な訳です。特にバッファロー縁のアーティストは過去に結構出てるので、今年もあると思うんです。フジに一番似合いそうなのはアサイラム・ストリート・スパンカーズあたりでしょうか? 個人的にはサニー・ランドレスやボノラマが観たいですけどね~。

そして昨年のベティ・ラヴェットに続くベテラン女性ソウル・シンガー枠はあるのか? 昨年のグラストンベリーにサザン・ソウル・クイーンのキャンディ・ステイトンが出ていたので、フジにも出てほしいな~。

ベティ・ラヴェットと言えば、朝霧ジャムに出演した翌年にフジに主演したんですよね。今年もこのパターンはあるのでしょうか? 個人的な希望ではジェフ・ラング、もしくはキティー・デイジー & ルイスに出てもらいたいです。この2組は可能性高いと思うんですけど、どうでしょう?絶対フジに似合いますよね。あとシネマティック・オーケストラ。これも観たい~!

いや、朝霧との抱き合わせ以上にありそうなのが、今年春の来日とフジ出演のセット。私がこの時期、毎年のように本物のシカゴ・ブルースがフジで観たいと熱望しているカルロス・ジョンソン。彼が今年3月に来日するんですよ~。で、その北海道公演をスマッシュがやってるようなのです!これはあるかもしれないですか? そしてもう一人、スマッシュ招聘で3月来日のアーティストの中に気になる人がいます。それはダフィー。ああ、どんどん妄想が膨らんでしまう。

さらに去年の秋、デビュー後間もなくほとんどプロモーションに近い形で来日したガールズ・グループ、ゾーズ・ダンシング・デイズも限りなく怪しい。今時のインディー・ポップですが、ここのシンガーには注目してるんです。フジで観たいな~。


さて、今年はどんな形で期待を裏切ってくれるのか? 楽しみです!!!!
とにかく新しい一年が始まりました!





あ、そう言えば、サマソニも一足早く開催が発表されてましたね。今年は記念すべき10回目の開催ということで、ついに3日間開催だそうです。と言うことは、いよいよビョークですかね? あとアリシア・キーズに続く大物R&Bシンガーの参加はあるのか? こちらも楽しみです。
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