ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

ケリー・ジョー・ヘルプス@渋谷タワーレコード

2012-09-30 14:43:15 | インストアイベント
KELLY JOE PHELPS / BROTHER SINNER & THE WHALE

インストア・イベント観覧記その12 ケリー・ジョー・ヘルプス@渋谷タワーレコード

随分と前の話になってしまいましたが、7月22日、渋谷タワーレコードにてケリー・ジョー・ヘルプスのインストアライヴを観てまいりました。

新作「BROTHER SINNER & THE WHALE」正式発売直前の来日。発売直前とはいえ、この日の渋谷タワレコでは既に販売してましたけどね。前作はギター・インスト作でしたが、今作は歌も歌ってますし、伝家の宝刀スライド・ギターもたっぷり弾いています。この日のインストア・ライヴは、この新作から数曲。5曲ぐらいでしたかね? 帽子に髭を蓄え、ラフな格好で登場したケリー・ジョー・ヘルプス。繊細且つ暖かい音色で紡がれるアコースティック・ギター。複雑に絡むリズムをしっとりとした弾力で弾きこなす右手のフィンガリングの安定感が、ブルース、カントリー、トラディショナルなどに対するケリー・ジョーならではの深い咀嚼力を醸す。抑制の効いた歌声からはエモーショナルがじわりと滲みてくる。素晴らしいの一言でしたね! リゾネーター・ギターを使ってのスライド使いも堪らないものがありました。


ライヴ終了後はお待ちかねのサイン会。私もこの最新作を購入し、サインを頂きました。それが下の写真なんですが、なんて言うか、奥ゆかしいと言うか、控えめというか…。もっと堂々と大きく書いてくれれば良いのに~、と思ったり。




ケリー・ジョー・ヘルプスの最新作「BROTHER SINNER & THE WHALE」は素晴らしいアルバムです。装飾性はいっさいなく、地味な作品と思われがちかもしれませんが、聴けば聴く程に彼のギターが雄弁に語りかけてくるかのよう。そんな彼の世界に溶け込むスライド・ギターの音色がまた滲みる。人間的であり、その一方で魔法のような作品。もちろん歌声も味わい深い。

フジロック・ベストアクト第4位! part3

2012-09-27 22:18:48 | フジロック
BUDDY GUY / LIVING PROOF

超個人的フジロック・ベストアクト企画、3組が並んだ第4位。

その3組目は、バディ・ガイ!!

いやはや、バディ・ガイですよ。昨年の直前キャンセルから1年、ついにバディ・ガイがフジロック降臨です。個人的には今年一番楽しみだったステージであり、このベストアクト企画の第1位を飾る予定だったのですが、残念ながら第4位です。

あの問題作と言われながらも近年の最高傑作とも評される最新作「LIVING PROOF」。完全にブルースを逸脱して荒れ狂うギター・サウンドは、私も初めて聴いた時、これは流石にやり過ぎでしょう?と疑問を感じたものですが、聴き進めるうちにその破壊力に圧倒されてしまい、結局、バディ・ガイ凄いな!みたいな。で、今回のライヴでもそういうバディの姿を期待していた訳ですよ。並みいるロック・アクトの全てを薙ぎ倒すようなパフォーマンスをね。もちろん、強烈に歪んだ音色でガンガンに弾き倒してはくれたんですけど、音響的にガツンとこなかったんですよね~。なんて言いますか、歪みすぎてこもってしまっているような。得意の速弾きとかされちゃうとグチャッとなってしまって、バックの音に埋もれてしまう。もっとギンギンにギターの音を立たせて欲しかった。音量も上げて欲しかった。フジロックの音響に不満を持ったことはほとんどないですが、正直、このバディ・ガイのサウンドにはちょっとがっかりだったんですよね~。まあ、私の立ち位置の問題かもしれませんし、好みの問題かもしれません。ちなみにギターはいつものフェンダー・ストラト(水玉模様のやつではありません。ですがストラップは水玉)、アンプは本国で使っているものではなく、日本でレンタルしたものだったそう。

ですがね、バディ・ガイのパフォーマンス自体は流石に素晴らしいものでしたよ!まずフジロックにバディ・ガイが姿を現しただけで感動物でしたよ。そして圧倒的な存在感を放ちながら、余裕しゃくしゃくでブルースをエンターテイメントとして楽しませてくれる。かと思えば一瞬の集中力で一気にテンションを上げて、ブルースの神髄へと引きずり込んで来る。その衝動的なギター・プレイはもちろん、ディープなフィーリングを自在に操るヴォーカルも強力! これだけ自由奔放にブルースを表現しながら、それがバディ・ガイのブランドとして完成されているんですから流石は生きる伝説。いや、伝説と呼ぶにはあまりにも元気でしたけどね!

序盤に登場した「Hoochie Coochie Man」。マディ・ウォーターズの代名詞的シカゴ・ブルースの名曲。まさにシカゴ・レジェンドたるバディ節の炸裂でしたね。脂ぎった歌声で濃密なブルース・フィーリングを観客に投げかけ、その反応を楽しむかのようにさらにディープに畳み掛けていく。観客達は否応無しにバディのブルース世界へと誘われる。マイクを持たずに地声で歌う場面もあったり。御年75歳とはとても思えない強靭な喉。ギターでは、ボリュームを絞りに絞ったトーンで艶めかしく弾いたかと思えば、観客をあしらようかのようにギターを裏返しにし、腹で弦を擦ってノイズを出したり、かと思えば速弾きも含めた強烈なスクイーズ・ギターを昇天するかのように弾きまくる、とにかく圧巻の一言。さらにマディ・ウォーターズの「She's Nineteen Years Old」へ繋げるあたりも流石!

マディ関連では「Louisiana Blues」も演ってましたね。この曲ではワウ・ペダル使いが印象的でした。私の位置からは見えませんでしたけど、おそらくあの水玉模様のペダルを使っていたことでしょう。カヴァーで印象的だったのはジョン・リー・フッカーの「Boom Boom」。およそバディらしくない選曲のように思いましたけど、インパクトは抜群でした。そしてアルバート・キングの名を語って始めた「Drowning On Dry Land」。どっぷりとしたスロー・ブルース。ねっとりと情念を絡ませてくるようなブルース表現はバディならではのディープさ。途中、ギターを弾きながらステージから下がっていったバディ。あれ?何所行っちゃったの?と思っているうちに、ステージ向かって右側の観客達が大騒ぎに。え!バディ、降りてきたの!?と思い背伸びをして見てみるものの、私の位置からは観客の頭しか見えず…。その間、バディの姿は見えずとも、激情的なギター・ソロだけは聴こえてくる。そしてしばらくして何事もなかったかのようにステージに戻ってきたバディ。結局あの時、バディは何所に居たのか分らずじまい。やっぱりフィールドに降りてきてたんですかね?ちなみにこの曲って、バディがそういう事よくやるみたいなんですよね~。

エリック・クラプトンやジミ・ヘンドリクスを引き合いに出して、そのスタイルを真似したりっていうのももうお馴染みですよね。「Strange Brew」とか「Voodoo Child」なんかは流石に盛り上がりました。こういったカヴァー曲でのサービス精神旺盛さっていうのは、やはりバディ・ガイですよね。別にロック・ファンへ向けてのサービスじゃないですよ。だって、クラプトンもヘンドリクスもみんなバディ・ガイに影響を受けてるんですから。バディにしてみればロックなんて自分の子供みたいなもんなんです。多分…。

そして個人的に嬉しかったのは「Fever」ですよ! もちろんあの有名曲のカヴァーです。私はバディがヴァンガード時代、68年にリリースしたライヴ盤「THIS IS BUDDY GUY」が大好きでして、ホントよく聴いたものです。で、「Fever」はこれに収録されてるんですよ。こういったヴィンテージなバディを感じさせてくれる選曲は嬉しいですよね~。昔に比べるともっとムーディなアレンジでしたけど、あの「Fever」を歌うバディ・ガイ、感無量でした!

もちろん、「While You Were Slipping Out」、「Do Your Thing」、そして「Feels Like Rain」など、90年代以降のバディを彩った楽曲達も圧巻でした。バディ・ガイらしくヒステリックに激情する歌声を聴かせてくれたのは「Damn Right, I've Got the Blues」だったかな? なんかもう常にシーンの最前線を歩んで来たバディの生き様を感じさせられるようでしたね。最新作からは「74 Years Young」を演りました。自らを“74歳の若造”と歌うこのブルース。この日、76歳のバースデーを翌日に控えたバディは、思わせぶりに決め台詞を“76 Years Young~♪”と歌ったり。これぞバディのブルース道ですよ! 間奏のギター・ソロの荒くれ具合も堪りませんでしたね。格好良かったです!

あと、バディのやりたい放題なステージ捌きにぴたっと付いて来るバック・バンドにも拍手。おそらく歴戦のツアー・バンドを引き連れて来てくれたんでしょうね。特にギターとの掛け合いで沸かせてくれた鍵盤奏者(Marty Sammon)は印象的でした。


なんだかんだでブルースの魔王っぷりを見せつけてくれたフジロックのバディ・ガイ。オレンジ・コートを濃密なブルース・フィーリングで満たしてくれました。まだまだ若い76歳!天晴でした!

フジロック・ベストアクト第4位! part2

2012-09-22 15:30:34 | フジロック
SEUN ANIKULAPO KUTI & EGYPT 80 / FROM AFRICA WITH FURY: RISE

超個人的フジロック・ベスト5。いや今年はベスト6なんですけどね。しかも第4位が3組いるという…。

という訳で、今回は第4位、その2組目。  シェウン・クティ&エジプト80!!!!

これは凄かった! なにせグリーン・ステージで真っ昼間からアフロビート2時間ですからね。普通に考えたらシェウン・クティはオレンジもしくはヘヴンのトリでしょう? 実際に09年に出演したときはオレンジのトリでした。それが今年はメイン・ステージですからね。しかも2時間。これは快挙、いや暴挙か? なにせ日高社長も「チャレンジ」と語ってましたからね。それはまだ詳しいタイムテーブルが発表される前、 テレビ朝日で放送されたフジロック特番でのこと。さらに日高社長は「最低でも2時間の枠を作る」「ひたすら踊っていられるという体験をして欲しい」とも語っていました。アフロビートがメインで2時間!?これにはたまげましたね。実際にタイムテーブルが発表されて、午後1時から3時までというシェウン・クティの枠を確認し、あらためて「フジロックって凄いな!」と感動したものですよ。だってヘッドライナーのノエル・ギャラガーより長いんですから!

さて、7月28日、土曜日の真っ昼間。フジロックのメイン・ステージに登場したシェウン・クティ&エジプト80。観客はちゃんと集まるのか?そして盛り上がるのか?そんな心配をよそに、圧巻なステージを繰り広げてくれました。シェウンは相変わらず精悍そのもの。ステージ上でしなやかに体をくねらせ、歌い、サックスを吹くその姿には黒々としたオーラがあって、何かゾクゾクさせられましたね。そしてそんな彼があのエジプト80(シェウンの父であり、アフロビートの創始者と讃えられるフェラ・クティが生前に率いたバンド)を仕切る姿には、アフロビートの継承者としての貫禄が溢れている。そして彼らの繰り出すリズムがまたエグイ! ファンキーなグルーヴがポリリズミックにうねりまくり、そこにホーン隊が絡んでくる。ドラムス、ギター、ベースなど近代的な楽器が躍動する一方で、巨大な木の幹のような大きな太鼓を馬乗りになって叩いてる人や、球体のパーカッションを持って踊りながらひたすらジャラジャラ鳴らしてる人などが、いかにもアフリカンな香りを漂わせてくる。いや最もアフリカンだったのは2名の女性ダンサーかもしれませんね!

黒い肌に派手な色柄の衣装を纏い、顔にはペインティングを施し、頭から体までジャラジャラとビーズで飾り付けられている。そんな彼女達のダンスと言えば、大半は観客に背を向けてお尻を上下に激しく振っている。しかももの凄い早さと切れ味で。これが格好良いんですよ!痺れまくりでしたね。もちろんそれだけじゃないですけどね。ちゃんと振り付けもあったりするんですが、泥臭いというか、素朴というか、原始的というか、それがまたアフリカ臭を際立たせているんですけどね。また飾り気のまったく無い“合いの手”のようなバック・コーラスも土着臭プンプンでした。

私は出来るだけ近くで観ようとモッシュピットの中で観ていたんですけど、間近で観るアフリカ軍団の迫力と言うのは半端無い。でも前の方に居ると、「グリーンステージでのアフロビート」という巨大さを実感出来ないので、一旦モッシュピットを出て、後方まで一回りしてきたんです。なんか感動的でしたね。あの緑に囲まれたフィールドに轟くアフロビート。まさに山にこだまし、大地が揺れるようでしたよ! そしてそのビートを浴びるように、フィールドを埋め尽くすフジロッカーズ達が思い思いに踊っているその光景は、やはり日本一のロック・フェス!! っていうかこんなロック・フェスが日本で実現していることが奇跡的ですよね~。

曲目については正直、よく覚えていません…。「Mr. Big Thief」、「Slave Masters」「The Good Leaf」あたりは演りましたね。まあとにかく何所を切ってもアフロビートな訳ですよ!延々と続く濃密グルーヴにただただ身を任すのみ。シェウンの唸るような歌声と呪術のように繰り返される反復フレーズ。まるでじゃれあうように踊る女性ダンサー、彼女達が発する独特の“合いの手”がさらに中毒性を誘う。スピリチュアルな神秘性が感じられたスローな曲は「Rise」だったかな? シェウンの吹くアルト・サックスによるブレイクが沸きに沸いた「You Can Run」も印象的でしたね。

本編はおよそ1時間45分くらいだったでしょうか? 2時間枠の割には早く終わっちゃったな…という感じでしたが、それでも1時間45分ですからね! 天晴ですよ!その間、踊り続けた観客達も見事。しかもまだ踊り足りない、もっとアフロビートに浸かりたい!とばかりに鳴り止まない拍手。そして再びステージに帰ってきたシェウン・クティ&エジプト80の面々。アンコールは「Mosquito Song」。私もこの頃には最前列かぶり付きで楽しんじゃいました。格好良かったです!!

アンコール込みでおよそ2時間。まさに、3日間で最も熱かったステージ!!






フジロック・ベストアクト第4位! part1

2012-09-20 17:39:33 | フジロック
THE KINKS / KINKS

さて、あの最高だったフジロック・フェスティヴァルから早2ヶ月が過ぎようとしています。もう遠いい過去のような雰囲気になりつつある今日この頃ですが、先日、フジテレビNEXTにて「FUJI ROCK FESTIVAL’12 完全版」が放送され、また気分が苗場に戻ってきた感じになってきたところで、我がブログも重い腰をあげ、毎年恒例の超個人的ベスト・アクト企画に乗り出したいと思います。毎年書いてますが、あくまでも私の趣味と気分だけで選んだベスト・アクトですよ!

さて、いきなりで申し訳ありませんが、これまで「ベスト5」を選んできたこの企画ですが、正直、今年は無理です。何が無理かって、どうしても5組に絞れません。4位候補が3組あって、どうしてもここから1組を振り落とせないのです。なので、今回はベスト6です。という訳で、まずは第4位から! (なんでベスト6なのに第4位からなのか?それは第4位に3組が並んでいるからです。)

その3組が並ぶ第4位、まず1組目はレイ・デイヴィス&バンド!!!


レイ・デイヴィスは土曜にグリーン・ステージ、日曜にフィールド・オブ・ヘヴンと、2ステージに出演しましたが、私が観たのは日曜日。つまり最終日のヘヴン、トリですよ! 私にとっては、3日間の締めでした。これで最後という、期待と寂しさの入り交じった気分。おそらくヘヴンに集まった人の多くもそういう気持ちだったと思います。残念ながら集まった観客数は少なかったかもしれません。ですが同じ時間帯にグリーンではレディオヘッドが、ホワイトではアット・ザ・ドライヴ・インがやっていたという、そんな時分に敢えてレイ・デイヴィスを選んだ人達というのは、よっぽどのレイ好き、もしくはヘヴン好きな訳で、そんなマニアックな雰囲気漂う中、ステージは始まりました。

1曲目は「I Need You」。正直な話、キンクス解散後のレイ・デイヴィスにつきましてはほとんど追いかけていない私なので、昔のキンクス時代の曲を沢山やってくれたら良いな~、なんて思っていたのですが、いきなり来ました! しかも65年のシングルB面曲。1曲目から微妙にマイナーな曲で攻めてくるあたりは、さすがは英国流のひねくれ屋と言ったところでしょうか? その後も「Where Have All the Good Time Gone」、「I'm Not Like Everybody Else」、「This Is Where I Belong」、「Too Much On My Mind」、「Dead End Street」と言った通好みな曲が続きます。それにしても初期キンクスの曲ばかりですよ! 「Where Have All the Good Time Gone」なんかは嬉しかったですね~。黒いジャケットで決めて、ギターを弾きながら歌うレイ・デイヴィスがまた格好良い! 60歳代後半とは言え、身のこなしもしなやかで、想像以上にロッカーでした。それでいてその歌い口は、たとえ英語詩の内容が分らなくてもイメージとして何かしらのストーリーが伝わってくるかのような味わい。ビート感と同時に哀愁を漂わせるような表情豊かなレイの楽曲をスウィング感たっぷりにサポートしたバック・バンドも素晴らしかったです。

そして中盤に早くも登場の大名曲「Sunny Afternoon」。やっぱこれですよね!歌詞とか正直分らないんですけど、サビなんかは雰囲気で私も一緒に歌っちゃいましたよ。レイは歌も含め常に観客に語りかけるようにステージを進行していくので、ついつい乗せられちゃうんですよ。でもそれがヘヴンの雰囲気も相まって独特の親密感を生んでいく。“ファファファファ~”のコーラスが印象的だった「David Watts」、サビの盛り上がりでロック・オペラの片鱗を見せつけてくれた「Victoria」。ケイジャンっぽいノリに思わず踊り出したくなった「Come Dancing」。レイ・デイヴィス・ワールドがヘヴンの夜を華やかに包み込んでいく。

当初、レイ・デイヴィスがヘヴンのトリと発表された時、正直、意外だな~と思いました。ヘヴンらしくないな~、みたいな。今年で言えば、やはりスティーヴ・キモックやトゥーツ&ザ・メイタルズなんかはヘヴンの雰囲気にぴったりだと思うのすが、英国ロック・レジェンドのレイ・デイヴィスはどうなんだろう?と半信半疑で臨んだものの、これが合うんです! 森の中、ミラーボールが揺れるヘヴンの空気に! やっぱりレイにはストーリー・テラーとしての独特の雰囲気がありますし、そのストーリーを巧みに観客達と共有していくような非現実感が、ヘヴン特有の空気に共鳴するのかもしれません。それと観客の少なさもかえって良かったですね。なんて言いますか、今、敢えてここに居る充実感みたいな。そしてそんな空気をステージも含め、全ての観客達で共有するような一体感。なんか幸せでしたね。レイもそんな観客達に対し、終始笑顔で、愛情たっぷりに接してくれていたと思います。そんなハッピーなヴァイヴに満たされた空間。ヘヴンならではの親密度ですよ!

ステージは終盤。ブルージーに始まった「You Really Got Me」が突如、ロックに暴れ出す!あのキラー・リフです! 観客も待ってましたとばかりに大盛り上がり。やはりこの曲の爆発力は半端無かったですね~。リズムに突き上げられるが如くの開放感。観客達も踊りまくりつつ、畳み掛けるようにサビを連呼!いや~楽しかった!

レイは一旦ここでステージを去りますが、ほどなくして戻ってくる。ここからはアンコール。まずはギタリストと2人(ドラマーさんも居たかもしれません…)でアコースティック・セット雰囲気による「Waterloo Sunset」。これも大名曲ですよね。もちろん“シャララ~!”で大合唱。続いて「Dedicated Follower of Fashion」。これも大好きな曲。キンクスらしい曲ですよね。レイは曲名の部分を観客に歌わそうとしますが、流石に上手く歌えない。ですがより簡単で印象的な“Oh, yes he is!”でのコール&レスポンスで大盛り上がり! この辺りのフレンドリーな感覚はアコースティックならでは。それにしてもアンコールでこの曲が聴けたのは嬉しかった!

そして極めつけは「Lola」。もうこれは迷い無しの大合唱ですよ! 前日のグリーンではこの名曲を演らなかったそうですけどね、この夜はまさしくハイライト。“ララッラッラ、ローラ!”、私もたっぷり歌いました! ラストはバンドが戻っての「All Day and All of the Night」。キンクス屈指のギター・リフが炸裂する! レイは激しいステップを踏んで観客を煽る。それに応えるかのように観客達もお祭り騒ぎ。ホント素晴らしい夜でした!


何だかんだでキンクス時代の曲オン・パレード! 今年はストーン・ローゼス、ノエル・ギャラガー、レディオヘッドなど、UKロックが大充実なフジロックでしたが、本当の英国好きは、やっぱ最後にこれ観ないとね、と思いました!


01. I Need You
02. Where Have All the Good Time Gone
03. I'm Not Like Everybody Else
04. This Is Where I Belong
05. Too Much On My Mind
06. Dead End Street
07. Sunny Afternoon
08. Nothin' In The world Can Stop Me Worryin' 'Bout That Girl
09. David Watts
10. Hard Way
11. Victoria
12. 20th Century Man
13. Celluloid Heroes
14. Come Dancing
15. You Really Got Me
-------------------------------------------------
16. Waterloo Sunset
17. Dedicated Follower of Fashion
18. Lola
19. All Day and All of the Night


*上の写真は「You Really Got Me」を収録したキンクスの1st作。64年のリリースですから、後2年で50周年ですか? 歴史を感じますね~。




さて、以上がレイ・デイヴィスのライヴ・レポな訳ですが、この夜のヘヴンの雰囲気が最高だったので、その辺についても少し書かせて頂きます。

実は私、偉そうにレイ・デイヴィスのライヴ・レポを書いてる割には、ちょくちょくステージ前から離れたりしてたんです。UKロックが好きな割にはレディヘにまったく興味が無いという我が妻がヘヴンに来ていたので。まあ、とにかくこの夜のヘヴンは人が少なかったです。ステージが始まると後方には人影まったく無しですからね。こんなに空いてるヘヴンは久しぶりでしたよ。個人的には01年にエミネムの裏だったホットハウス・フラワーズの時を思い出しましたね(あれも最高でした!)。 ま、あの時はもっとガラガラでしたけど…。で、途中でちょっと抜け出して、妻がくつろいでいるロータスカフェへ行ったんです。客は妻しか居ない。コーヒー飲みながら椅子に座ってもほぼ障害物無しでステージが見えちゃう。これはこれで極上でしたね。で、妻がピザを食べたいと言うので、さくら組へ。もちろん客ゼロですよ。あのいつも大混雑のさくら組が。そして焼き上がった極上のピザを食べる。レイ・デイヴィスのライヴを観ながら。最高の気分でしたね!まあ、なんて言いますか、ただ空いてるから良かったというだけではなくて、最近のヘヴンには無い、浮世離れしたゆったりした時間がことのほか滲みました。 まさに天国! 妻も混雑しているヘヴンしか知らなかったのでこの状況には大喜び。例年、ヘッドライナー~クロージング~記念撮影~Power to The Peopleと、グリーンのモッシュピットで締める妻でしたが、今年ばかりは「最後、こっちに来て良かった!」とご満悦でした。レイのライヴも思いのほか知っている曲が多くて楽しかったとのこと。そしてライヴ終了後のヘヴン独特の黄昏を味わって、帰路についたのでした。



レイ・デイヴィス演奏中のヘヴン


ロータス・カフェのベンチからステージを。


さくら組のピザ「ビアンカ・コン・カルチョフィ」


ミラーボールの光が揺れる帰り道。





ジョー・サンプル&クレオール・ジョー・バンド@ブルーノート東京

2012-09-16 14:29:36 | ニューオーリンズ

9月11日、ブルーノート東京にて、ジョー・サンプル&クレオール・ジョー・バンドを観てまいりました。このバンド名義では昨年に引き続き2度目の来日。しかも初作品「CREOLE JOE BAND」リリース直後というタイミング。私が観たのはこの日の2ndショーです。

開演予定時間を過ぎた頃、会場が暗くなり、後方からバンド御一行がステージに現れる。先頭を歩くのはジョー・サンプル。片手に赤ワインを持って颯爽と登場です。ステージ中央にはご存知レイ・パーカー・JR.(g,vo)と女性シンガーのエリカ・フォールズが並ぶ。向かって左に我らが山岸潤史(g)、さらにその左にラブボードのアレックス・マクドナルド、右側にはジョー・サンプル。後列にはダグ・ベローテ(ds)、ニック・サンプル(b)、スキップ・ナリア(kbd)という布陣。本来なら、ここにアコーディオンのブルース“サンパイ”バーンズが加わるはずでしたが、残念ながら急遽キャンセル…。私はこのキャンセルの報を当日の朝知ってがっかりでした…。

このクレオール・ジョー・バンドは、ジョー・サンプルが自身のルーツであるザディコに取り組んだプロジェクト。そしてザディコと言えばアコーディオンな訳で、本場のブルース“サンパイ”バーンズの存在は欠かせないはずでしたし、個人的にも彼の演奏を観るのを楽しみにしていたんですけどね~。

1曲目は「Creole Joe」。彼らのテーマ・ソングとも言える曲からスタート。濃密なザディコではないですが、ポップなルイジアナのノリを感じさせる楽しい雰囲気。ブルース“サンパイ”バーンズが居なくても、何だかんだでメンバーの半数はルイジアナ/ニューオーリンズ系の人達ですからね。中でも特に目を引くのがラブボードのアレックス・マクドナルド。ラブボードとは洗濯板をパーカッションにしたもので、アコーディオンと並んでザディコには欠かせない楽器です。で、このアレックス・マクドナルドはドゥエイン・ドプシーのバンドで活躍していた人。つまり、ブルース“サンパイ”バーンズが居ないこのクレオール・ジョー・バンドにおいて、彼だけが唯一ザディコを本職としている人なのです。ですが見た目はパンク! 坊主頭、ピアス、派手なTシャツ、そこから出る長い両腕には入れ墨。そんな悪ガキ臭を漂わす白人青年の彼。彼のラブボード捌きは泥臭さよりも切れ味勝負な感じ。しかもこの切れ味が半端無い。ドラムのフィルに対抗するが如く、それに合わせて高速フレーズを切り刻む。これが格好良い!! ちなみにドラムのダグ・ベローテもジョン・クリアリーのバックなどで活躍するルイジアナの人。アコーディオンを弾くのはジョー・サンプル。残念ながら私がザディコに求める“勢い”は有りませんが、彼の弾くどこか人懐っこく朗らかな音色は、結構好きです。


「Louisiana Lovin'」、「Down In New Orleans」とリリースされたばかりのアルバム「CREOLE JOE BAND」の曲が続き、客席もルイジアナらしい楽しい雰囲気に染っていく。そんなステージを引っ張るのは昨年の来日公演同様、レイ・パーカー・JR.です。彼のユーモア溢れるパフォーマンスにはついつい引き込まれますね。そして新加入の女性シンガー、エリカ・フォールズも頑張っていました。この人もニューオーリンズのシンガーで、近年のアーマ・トーマスやドクター・ジョンの作品にバック・コーラスで参加したりもしてる人。彼女の見せ場は中盤にやって来ました。まずは「Don’t You Touch My Cush Cush」。R&B調の曲で、彼女の歌唱は流石のリズム感でしたね。こういう曲をもっと聴きたかった!なんて思ったり。やっぱ良い声してますよ!

ちなみにこの“Cush Cush”って言葉、どういう意味なんでようね?下ネタですかね?レイ・パーカー・JR.がそれっぽく説明して喜んでましたし。エリカ・フォールズも自分のお尻を掴んで“Cush Cush”と言って盛り上がったり。それを見たアレックスなんて大爆笑してましたね。で、そのアレックスがラブボード・ソロで気を吐いたのもこの曲でしたっけ? レイ・パーカー・JR.が客席を指差して、アレックスにあそこへ行って弾いてこいみたいな無茶振りを指示。アレックスはここぞとばかりにジャカジャカ鳴らしながらフロアに分け入っていく。私の目の前を通り、もの凄い早さでボードを擦ると言うか、ほとんど叩いてる勢い。最終的には後方のテーブルに乗っかってのワンマン・ステージ。やってくれます!

そしてスティーヴィー・ワンダーのカヴァー「Higher Ground」。ここでもエリカ・フォールズがソウルフルな歌声を聴かせてくれました。終盤へ向けてどんどん昂揚感を増していく歌唱は流石の一言。しかも隣でアレックスが暴れてる。ザディコでもなんでもないこの曲でアレックスがノリノリ。体をブンブンと振り回しながら派手なフレーズを連発。この人、ホントにパンキッシュ!

徐々に黒人シンガーとしての真価を表していくエリカ・フォールズが、最もその凄みを見せつけたのがスロー・ナンバー「If Anybody Ask You」。これには参りました。ジョー・サンプルのキーボードをバックに歌うこの曲。彼女の歌唱は神がかってましたね。どっぷりとしたブラック・フィーリング。ニューオーリンズらしい暖かな包容力。高低差を自在い操る圧巻の歌唱力。徐々に感情を解放していくかのような表現力。聴き終わった後、思わず目がうるうるしちゃいましたよ。こういう歌唱は、日本ではなかなか聴けませんよ! もちろんジョー・サンプルの鍵盤にもうっとりでした。

そんな感動に包まれた会場を仕切り直すかのようにファンキーな「Boomti, Boomti, Boom Boom」。ここからはレイ・パーカー・JR.の時間。前回もやっていたスロー「Please Forgive Me」でのアダルトなちょいエロ・フィーリングは今回も健在。恍惚とした歌声は、もう名人芸。最前列の女性に絡んでいくあたりも流石のエンターテイナー振り。山岸潤史のブルージー極まりないギターソロも素晴らしかったですね!

サディコ名曲「Zydeco Boogaloo」ではメンバーそれぞれがソロを回す。それまで控えめな印象だったジョー・サンプルもキーボードでブギウギ調のソロを聴かせてくれました。そしてやっぱりアレックスは気を吐いてましたね。掛け声のようなコーラスでも、水を得た魚のようにノリノリでした。そして「Creole Joe Groove」で一旦終了。アンコールは「Louisiana Woman - Texas Man」。決めの“Aiyee!!!”の部分をみんなで叫んだり、ノリの良いおばちゃんをステージに上げて一緒に歌ったりの大盛り上がり。

なんだかんだで楽しさ一杯のライヴでした。ブルース“サンパイ”バーンズのキャンセルを知った時は、ザディコとしてどうなっちゃうの?と心配になりましたが、元々、アルバム「CREOLE JOE BAND」自体もかなりポップで、私が求めるザディコとは大分違っていましたからね。それでもあのアルバムは大好きだったりするんです。なんて言いますか、ルイジアナのホーム・パーティ的な楽しさに溢れてるじゃないですか? (もちろんルイジアナのホームパーティなんて参加したこと無いので想像の世界なんですけどね…)。今回のステージもまさにそんな印象でした。そういう意味でも、あのアルバムのライヴ版としての雰囲気は充分に出ていたと思います!!

吉岡正晴さんのブログによりますと、ブルース“サンパイ”バーンズは、9月8日の東京ジャズへの出演後、息子さんが怪我で足を骨折したという報を聞き急遽帰国の途についたそうです。


セットリスト↓

01. Creole Joe
02. Louisiana Lovin'
03. Down In New Orleans
04. Don’t You Touch My Cush Cush
05. Zydeco Train
06. Higher Ground
07. If Anybody Ask You
08. Boomti, Boomti, Boom Boom
09. Please Forgive Me
10. Zydeco Boogaloo
11. Creole Joe Groove
-------------------------------
12. Louisiana Woman - Texas Man



*上の写真はメンバー全員にサインを頂いたフライヤー。それにしても出演者全員のサイン会ってすごくありません? 8人ですからね! 緊張も8倍ですよ! 外人さんに「サンキュー」しか言えないのは仕方ないとして、山岸さんにも「ありがとうございます!」しか言えなかった自分…。でも出来上がったこのフライヤーはなかなか壮観。って言うかもうどれが誰のだか分りません…。



CREOLE JOE BAND / CREOLE JOE BAND
で、なんだかんだでCDにもサインを頂きました。




~関連過去ブログ~ お時間有ったらぜひ!

 12.09.10 クレオール・ジョー・バンド
 11.05.21 クレオール・ジョー・バンド@ブルーノート東京(昨年5月の来日公演レポ)

東京JAZZ フリー・イベント

2012-09-15 18:16:07 | フェス、イベント

9月7日~9日の3日間、東京国際フォーラムにて開催された東京ジャズ・フェスティヴァル、今年も地上広場にて嬉しい無料ライヴが行なわれました。毎年これを楽しみにしている私も7日と8日の2日間、会場へ足を運んでみました。

まず7日。私のこの日のお目当ては、レバノンのベイルートで生まれ、パリで育ったというトランぺッター、イブラヒム・マーロフ。格好良かったですね~。アラブ的な音階を使っているらしいのですが、単なるジャズとは一味違う一種独特のムードがありましたね。途中、ボ・ディドリーの「I Am A Man」、と言うよりマディ・ウィーターズ的なブルースを織り込みながらその独特のムードは密度を増していく感じでした。圧巻だったのは彼の故郷をタイトルにした「Beirut」。曲前のMCではレッド・ツェッペリンのことを話していたようですけど、前半は静かに荒涼とした叙情性を紡ぎ、後半からハードロック的展開に雪崩れ込む様はまさにツェッペリン!! しかもそんなツェッペリン的ダイナミズムの中にイブラヒム・マーロフならではのムードが渦巻いている。格好良かったですね~! ですが残念ながら私、この夜は別に予定(ビルボードでMEIKOのライヴ)があったのでイブラヒム・マーロフを途中で諦めなくてはならないのでした…。


そして8日。この日はたっぷりと野外のジャズ・イベントを楽しみました。と言っても、この日はジャズと言うよりかなりミクスチャーな面子。まずはBRUUT! から。オランダから登場のジャズ・バンド。ジャズといってもかなりヒップな感じで、粋なスウィング感でファンキーな演奏を楽しませてくれました。こちらもMCでレッド・ツェッペリンがどうのこうのと語り、その名も「Led」という曲を披露。今、ツェッペリン流行ってるの?みたいな。格好良かったです!

そしてこの日のお目当て、JAGA JAZZISTです。ノルウェーから来た前衛集団。数年前のフジロックで観そびれて以来のリベンジです。アルバム「One-Armed Bandit」のジャケットを思わせるスロットマシーンの絵柄が飾り付けられたステージに現れた9人のオーケストラ。ジャズ・ロックをベースにしながら、音響やポスト・ロック的な先鋭さも濃厚。予測不可能な曲展開が宇宙的なアンサンブルでスリリングに駆け抜ける。ギター、ベース、キーボード、ビブラホン、トランペット、チューバ、などなど多彩な音色。しかも一人一人が曲ごとに楽器を持ち替えるという、サウンド的にも視覚的にもドラマティックな展開に引き込まれていく。さらにドラマーさんがやけに盛り上げ上手で、ことあるごとに前に出てきて観客を煽る。それに答えるように観客達も最後は総立ちで盛り上がる。ラスト曲は「Music! Dance! Drama!」。圧巻でした!

そしてこの日の最後を締めたのが、BBB Sound System DJ Set。これはイスラエル出身、ニューヨーク発のバルカン・ミクスチャー・バンド、バルカン・ビート・ボックスによるDJセット。ジャズ・イベントでこれ大丈夫なのかな?と思いきや、音が鳴ると同時に観客席もほぼ総立ち。BBBのメンバー3人が鳴らすビートが有楽町の空に響き渡る様はかなり快感。手動のパットを駆使しながら繋がれるリズムはやたら肉感的で、女性ダンサーが出てきた頃には観客達も出来上がって完全に野外パーティの様相に。純粋にジャズを聴きに来た人達は唖然としていたかもしれませんけどね。およそ1時間、踊りまくりなDJタイムでした。有楽町という、都会の真っただ中ならではの開放感でした!!


今年も屋台村との同時開催でしたので、ライヴの合間にフェス飯っぽい食事も楽しめて、楽しい1日でした。




クレオール・ジョー・バンドのブルース“サンパイ”バーンズが出演キャンセル!?

2012-09-11 08:02:04 | ニューオーリンズ
楽しみにしていたジョー・サンプル&ザ・クレオール・ジョー・バンドのブルーノート東京公演、なんとブルース“サンパイ”バーンズの出演がキャンセルになったそうです。残念でなりません…。昨日ブログをアップしたばかりで、楽しみにしていたんですけど…。


http://www.bluenote.co.jp/jp/artist/joe-sample/

クレオール・ジョー・バンド

2012-09-10 18:03:32 | ニューオーリンズ
CREOLE JOE BAND / CREOLE JOE BAND

現在来日中のジョー・サンプル&クレオール・ジョー・バンド。ジャズ/フュージョン界の大物ピアニスト、ジョー・サンプルが自身のルーツでもあるザディコをやるために組んだバンドです。昨年5月にクレオール・ジョー・バンド名義で初来日し、そのコンセプトを披露してくれましたが、あれから1年以上が過ぎ、ようやく彼らのスタジオ作「CREOLE JOE BAND」がお目見えいたしました。フュージョン色はほぼ皆無、かといって濃密なザディコという感じでもなく、ポップで聴きやすいサウンドに仕上げられています。なんて言いますか、ルイジアナのホーム・パーティに招かれたような、そんな楽しい感じです。

1曲目「Down In New Orleans」からスタート。和やかな雰囲気で、まずはニューオーリンズ/ルイジアナの音楽へようこそ!といったところでしょうか。昨年の来日公演でもフロントを務めた女性シンガー、シャロン・マーティンの懐の深い暖かな歌声が印象的。この方はニューオーリンズで活躍するジャズ・シンガーのようですね。C.J.シェニエとジョー・サンプルの弾く朗らかなアコーディオンも良い感じ。C.J.シェニエは言わずと知れたザディコ・キングであるクリフトン・シェニエの息子。もちろん、現行ザディコ界のトップ・ランナーの一人。

続いて「Louisiana Woman - Texas Man」。キース・フランクのアコーディオンが軽快に疾走するロッキン・ザディコ。ドラムスのブラッド・フランクはキースの弟。ザディコ界では有名なファミリーです。この土っぽいリズム、最高ですね! ここでザディコには欠かせないラブボードを擦るDemitric Thomasも、おそらくフランク・ファミリーと活動を共にする方なんでしょうね。C.J.シェニエの泥臭い歌声も最高ですし、ジョー・サンプルのピアノのもご機嫌!!

なんとなくネヴィル・ブラザーズっぽいアダルトなファンク・ナンバー「Zydeco Train」。レイ・パーカーJr.のギター・カッティングがまるでニューオーリンズ・ファンクのようで格好良い。ここでドラムを叩くのはニューオーリンズきっての敏腕ドラマー、レイモンド・ウェバー! 流石の切れ味!! Wilbert “T.A.” Millerのハーモニカも効いてます。

これぞルイジアナ流パーティ・ソングな「Jambalaya Jumble」。歌うはやはりニューオーリンズのジャズ/R&Bシンガー、フィリップ・マニュエル。艶やかなR&Bを歌わせたら天下一品の彼ですが、こういった軽やかな曲もかなりいけますね。

そしてこのバンドのテーマ・ソングとも言える「Creole Joe」。弾力抜群のC.J.シェニエの歌声が最高ですが、ここでジョー・サンプルと共にアコーディオンを弾くのはまだ30歳代前半の若手ブライアン・ジャック。ラブボードのJody Lemelleはブライアン・ジャックが率いるザディコ・ギャンブラーズのメンバー。この曲、ポップですけどルイジアナらしいローカル色が感じられてなかなか良い曲ですよね。

フィリップ・マニュエルの素晴らしい歌唱が聴ける「Down Home, Low Down Zydeco Blues」。ここでブルージーなギターを弾きまくっているWayne "Animal" Turnerという方はカントリー界隈のギタリストのようですね。そしてラストはしっとりとしたスロー・ナンバー「If Anybody Ask You」。ヴォーカルはC.J.シェニエとのことですが、随分とアクを押さえてストレートに歌っている印象。短いですがジョー・サンプルのピアノ・ソロが良いですね。

これまでのジョー・サンプルのキャリアから考えたら、彼らしいアルバムとは言えないかもしれませんが、何せ構想12年の末に実現した、ジョー・サンプル自身のルーツ作品ですし、全曲ジョー・サンプルの作曲。ピアノ、オルガン、キーボードはもちろん、11曲中7曲でアコーディオンも弾いてますからね。その分、C.J.シェニエのアコーディオンがあまり聴けないのが残念ですが、彼はヴォーカリストとしてフューチャーされているので良しとしましょう。もちろんC.J.シェニエ以外にもルイジアナ勢が多数参加していますしね。

とにかく、ルイジアナ勢とジョー・サンプル人脈が和気あいあいな、聴いていて思わず笑顔がこぼれるような、そんな作品です。



C.J.CHENIER / CAN'T SIT DOWN
こちらは昨年リリースされたC.J.シェニエの最新作。正直な話、「CREOLE JOE BAND」を聴いた後にこれを聴くと、やっぱりC.J.はこうでなくっちゃ!!って思いますよ。血湧き肉踊るようなグルーヴにアグレッシヴなヴォーカル。最高ですね!もちろんアコーディオンも弾きまくってます。灼熱の「Zydeco Boogie」は「CREOLE JOE BAND」にも参加しているWilbert “T.A.” Millerとの共作。ジョン・リー・フッカーや、カーティス・メイフィールドのカヴァーも有り。2011年度のグラミー賞『Best Regional Roots Music Album』部門にノミネートされました。



さて、そんなジョー・サンプル&クレオール・ジョー・バンドが現在来日中です。既に先日行なわれた東京JAZZでそのステージを体験された方も多いことでしょう。そしていよいよ東京での単独公演が、ブルーノート東京にて、明日9月11日、そして12日の2日間行なわれます。今回は残念ながらC.J.シェニエは不参加なんですが、その変わりに、ブルース“サンパイ”バーンズが来ています。C.J.シェニエに比べると随分とマニアックな存在ですが、マニアック故に、彼が来るというだけで、ザディコ・ファンの間では結構な話題になっているとか。そして気になるラブボード奏者はアレックス・マクドナルド。この人はドゥエイン・ドプシーのバンドで活躍している方だそうで、こちらも期待大! あと女性シンガーのエリカ・フォールズもニューオーリンズのシンガーで、この「CREOLE JOE BAND」にもバック・ヴォーカルで参加していますし、近年のドクター・ジョンや、アーマ・トーマスの作品なんかにも名前を見つけることができたりします。



クレオール・ジョー・バンド、今回の来日メンバー↓

Joe Sample(p,accourdion)
Ray Parker Jr.(g,vo)
Nick Sample(b,vo)
Doug Belote(ds)
June Yamagishi(g)
Bruce "Sunpie" Barnes(vo,accordion)
Skip Nalia(key)
Erica Falls(vo)
Alex McDonald(scrubbing-board,tp)




SUNPIE / LOUP GAROU
ブルース“サンパイ”バーンズの94年作。いきなりサックスやサイパン自身が吹くハープがフューチャーされた異色曲からスタート。でもこれが格好良い! 一方でオールド・スタイルなザディコを感じさせるフレイヴァーも濃厚で、 爽快なイナタさが格好良い! さらにブルージーな味わいもあったりで、そんなごった煮感がまたニューオーリンズらしくて最高! ハービー・マン「Memphis Underground」のザディコ・カヴァーにもにんまり。

ちなみにブルース“サンパイ”バーンズについてもう少し詳しく知りたい方は、ブルース銀座さんのこちらのページ→http://black.ap.teacup.com/sumori/1184.htmlがお薦めです。おそらくサンパイ・バーンズについてこれほど詳しく親切に解説してくださっている日本語のサイトはここだけだと思います。


*9月11日追記: ブルース“サンパイ”バーンズは、ブルーノート東京公演を急遽出演をキャンセルされたそうです。東京ジャズには出演していたそうなんですが、どうしたんでしょう?

http://www.bluenote.co.jp/jp/artist/joe-sample/




~関連過去ブログ~ お時間有ったらぜひ!

 11.05.21 クレオール・ジョー・バンド@ブルーノート東京(昨年5月の来日公演レポ)

MEIKO@Billboard-LIVE

2012-09-09 12:56:23 | SSW
MEIKO / THE BRIGHT SIDE

9月7日、ビルボードライヴ東京にてMEIKOのライヴを観てまいりました。私が観たのはこの日の2ndショー。整理番号一番だったので、最前列ど真ん中かぶり付きでした。

ジョージア州出身のアメリカ人ですが、祖母が日本人とのことなのでクォーターですね。ちなみにMEIKOはミーコと読むそうです。高校卒業後にLAに出て、ホテル・カフェ(ハリウッドにある、若手シンガー・ソング・ライターの登竜門的なライヴハウスだそう)でウェイトレスをしながら腕を磨いていたとか。またLAに来たばかりの頃友達になったのがプリシラ・アーンで、1年程ルーム・メイトとして過ごしたそうです。ちなみに私がミーコの歌声を初めて聴いたのは、08年にリリースされたホテル・カフェ製作のクリスマス・コンピ「The Hotel Cafe Presents: Winter Songs」でした。ここにプリシラ・アーンや、ケイティ・ペリー、サラ・バレリスなどと共にミーコも収録されていたんです。で、その声に一発でKOされ、既にリリースされていたデビュー作「MEIKO」を購入し、そのマジカルな歌声の大ファンになった次第なのです。あれから4年、待ちに待った2nd作「THE BRIGHT SIDE」が発売され、まさかの初来日ですよ!

さて、そのミーコのステージ。1st作から「Reasons To Love You」でスタート。今までCDで聴いてきたあの声を生で聴ける喜び。彼女が歌い出した瞬間から聴き惚れてしましました。もちろん声だけでなく、本人が目の前にいる訳ですからね。髪を束ね、金色のラメ入りシャツに白いスカートという容姿もキュート。続いて「How Lucky We Are」。これも1st作からの曲で良い曲なんですよ!さらに最新作から「I'm In Love」、「Stuck On You」と続く。

ミーコは終始アコースティック・ギターを弾きながら歌いますが、そんなフォーキーな質感を残しながら、ポップに仕上げるシンプルなバック・バンドの演奏も良かったですね。特に様々な音色でタイトなリズムを提供するドラマーさんは際立ってました。「Stuck On You」ようなアップテンポの曲では特に。この曲は最新作のトップを飾る印象的なハッピーソングで、私も大好きな曲。ミーコの歌声もCD以上に瑞々しくエモーショナル!!彼女の歌声って独特のかすれ具合があって、声自体が魅力的なのはもちろんなんですが、頼りな気な語尾や息継ぎなどに何とも言えない情緒が感じられるんです。しかもそれをポップに聴かせるあたり、かなりの個性派だと思います。しかも「Leave The Lights On」のような少し陰のある曲ではその個性が憂いを持って響くから不思議。やはり彼女の歌声はマジカルです! そしてこの曲の演奏も出色の出来映えでしたね。

さらに「When The Doors Close」、「Good Looking Loser」と新作からの曲が続きます。「Good Looking Loser」では一旦バック・メンバーが下がってミーコが一人でアコギ弾き語り。これも嬉しかったですね。やはりフォーク・シンガーとしてのミーコの姿も観たかったですからね。それにしてもミーコの曲はポップ・センスに溢れた良い曲ばかりです。この曲なんかも、ゆったりとした優しいメロディにただただ身を委ねたくなるような。生で聴いたら尚更ですよ!

片言の日本語を交えてのMCも可愛らしく、1曲終わる度にホッとしたような表情を見せる初々しさも印象的でした。でも歌い始めれば、ミーコの世界まっしぐらですからね。あとは何を演ったでしょう? 「Piano Song」、「I'm Not Sorry」、「Lie To Me」、「Boys With Girlfriends」なんかは演りましたね。ラストは再び一人で「Real Real Sweet」を弾き語り。去っていくバンド・メンバーにミーコが敢えて日本語で「お疲れさまでした」と声をかけていたのがちょっと可笑しかったです。そして最後の弾き語りはまた至福の一言!

拍手喝采に包まれステージを去るミーコ。鳴り止まない拍手にもちろんアンコール。ミーコが一人で戻ってきて、なんとオーティス・レディングの「Sitting On The Dock Of The Bay」を弾き語り。ミーコはオーティスと同じジョージア州出身とのことですが、これは意外な選曲でした。ミーコのカラーに染まったサザン・ソウルもなかなか良かったです。で、この曲で終わりかと思いきや、客席から「Under My Bed」と声がかる。そして急遽バックのギタリスト(キーボードだったかな? エレキ・ギターとキーボードは兼任だったので…)をステージに呼び戻して始まった正真正銘のラスト曲「Under My Bed」。これは嬉しかったですね! デビュー作のなかでも私が一番好きだった曲。感無量でした!!

終了後はお楽しみのサイン会。私もTシャツを買ってサイン会に参加。持参した最新作にサインを頂きました。会場で売っている日本盤とはジャケが違うので、ミーコも「これはアメリカ盤だわ!」みたいな。「何所で買ったの?」的に聞かれたのですが、「タワーレコードです!」という杓子定規な答えしか出来ませんでした…。もちろん通訳の方を介してですけど。ミーコは終始笑顔で、和気あいあいとした雰囲気でした。




会場で購入したTシャツ。なかなか可愛いですよね。


*既に記憶が曖昧だったりするので、曲目等、間違いがあったらごめんなさい。




TEDER TELAVIV TOKYO 2012

2012-09-06 14:52:22 | フェス、イベント
日本にTEDERがやって来ています!!って言うか、そもそもTEDERって何ですか?

答えは、テルアビブにあるオンライン・ラジオ局です。

テルアビブとは、地中海に面したイスラエル最大の都市。そしてフリー誌「Night Out」9月号によれば『テルアビブ市は、ドバイに次ぐ中東有数の大型都市であり、地中海に面した温暖な気候からバカンス・シーズンにもなると世界中の観光客が集まってくる屈指のリゾート都市でもある。またビーチに沿って、多くのクラブやバーが立ち並び、パーティ・ピープルのメッカとしても、近年注目を集めている』。そんなところだそう。

そして2010年の夏、そのテルアビブの一角にオンライン・ラジオ局として誕生したのがTEDERです。その現地の様子についてはまた「Night Out」誌を引用させて頂きますと、『リサイクル品を使った建物の中には、レコードや本、デザイン雑貨が販売され、併設のバー/カフェではイスラエルで著名な料理人であるエヤル・ジャニ氏プロデュースによるメニューを楽しむことが出来る。メインストリームではなく、良質で“リアル”なライヴや音楽がかかり、アンダーグラウンド・カルチャーの最新の動向に気軽に触れることができる』とのこと。さらに、テルアビブのアーティストが集うファクトリーのような存在として、また海外からも先鋭的なゲストを招くなど、毎年、夜な夜な盛り上がっているようです。

そのTEDERが日本にやって来ているのです。今年は日本とイスラエルの国交樹立60周年だそうで、その文化交流の一環として、TEDERの日本上陸な訳だそうです。イスラエル大使館も正式サポートしているというオフィシャルなイベントでありながら、こんな刺激的なラジオ局をそっくり持ってきてしまうというのは画期的ですよね! 場所は原宿(かなり明治公園寄り)のLapaz&Creme de la creme 。2FのCreme de la cremeでは「TEDER POP UP RADIO」と題された音楽発信、及びイスラエルのアーティスト達によるアート作品の展示販売。そして1FのLapazではイスラエル料理が楽しめるそうです。

注目はやはり「TEDER POP UP RADIO」ですよ! イスラエルの最先端アーティストによるDJやライヴを中心に、9月4日から9月25日まで、21日間にわたって様々なプログラムが繰り広げられます。もちろんイスラエルだけでなく、SOIL &“PIMP”SESSIONやJAZZY SPORTなど日本勢も参加しますし、ジャイルス・ピーターソンも出る!しかも一部のイベントを除き、閲覧無料!!もちろんオンライン・ラジオですから、これらが世界へ向けて配信される。

で、9月4日、私もTEDER初日に潜入してまいりました。お目当てはBOOM PAMのライヴ。ギター、ドラムス、チューバの3人組。シンプルなトリオ編成ながら低音がチューバっていう編成がヤバいですよね。タイムテーブルでは21時30分スタートになっていたので、私は21時過ぎに会場に到着。2階へ向かって階段を上ると、既にドンスカドンスカと音が漏れ放題。あれ?もう始まってるの?と思いながら扉を開けるとそこはまるで異空間。まず外人さん率が異様に高い。そしてBOOM PAMの爆音がジプシー臭濃厚なミクスチャー・グルーヴ。ここは日本か?と思いながら、周囲を見渡すと、あちらこちらに創造性豊かなアート作品が並んでる。ちょっとドキドキする雰囲気でしたね。

BOOM PAMのライブは、思いのほかアグレッシヴでした。メンバーはサックス奏者を加えた4人で、とにかくパンキッシュでファンキーなごった煮感が堪らなく格好良かったです。中心人物であるUBKはバルカン・ビート・ボックスのギタリストだそうで、最後は観客の中に分け入ってギターを掻き鳴らして盛り上がってました。それにしても何故に予定時間より大幅に早く始まったのでしょうか? 単なるいい加減な人達?それとも現地進行とネット配信のスケジュールの関係でしょうか? どちらにしろ今後観に行かれる方は要注意かも。

http://teder.fm/tokyo/home



さて、バルカン・ビート・ボックスと言えば、残念ながら渋谷クアトロの単独公演は中止になってしまいましたが、9月9日、東京国際フォーラムで行なわれる東京JAZZへ出演します。また9月8日には、その関連イベントとして行なわれる無料ライヴにBBB Sound System DJ Setで出演します。こちらも楽しみ。しかも、この東京JAZZへは、バルカン・ビート・ボックス以外にもイスラエルから、オズ・ノイ、ギラッド・ヘクスマンがコットンクラブ公演に参加しますし、またイスラエルではないですが、同じ中東のレバノン出身のトランぺッター、イブラヒム・マーロフも出演します。


今月はイスラエルが熱い!!