ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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ウィリー・ティー逝去

2007-11-11 17:18:09 | ソウル、ファンク
THE GATURS FEATURING WILLIE TEE / WASTED

今号のブルース&ソウル・レコード誌を読んでて驚きました。ニューオーリンズを代表するキーボーディストの一人、ウィーリー・ティーが去る9月11日に亡くなられたそうです。享年63歳。結腸がんだったそうです。

プロフェッサー・ロングヘア、ジェイムス・ブッカー、アラン・トゥーサン、エディ・ボー、ドクター・ジョン…。キラ星のごとくいるニューオーリンズの鍵盤奏者の中で、一般的にはウィリー・ティーと言う名を聞くことはあまり無いかもしれません。ですがニューオーリンズの音楽に確かな足跡を残した偉人なのであります。

アーロン・ネヴィルがネヴィル・ブラザーズ自伝の中でこんな内容の言葉を語っています。「インディアンの歌に初めてファンク・サウンドを組み合わせたのはワイルド・マグノリアスであり、ウィリー・ティーがその二つを結びつけた」と。

現在は山岸潤史がギタリストを務めることでも知られるマルディグラ・インディアンのグループ、ワイルド・マグノリアス。そのファースト・アルバムは74年の「THE WILD MAGNOLIAS」。このアルバムでキーボード及びアレンジメントを手掛けたのがウィリー・ティーでした。

元々マルディグラ・インディアンの音楽とは、打楽器にただ歌が乗るという土着的でシンプルなものだったそうですが、ここではボー・ドリスやモンク・ボードルーを中心にした伝統的なインディアン・チームと、ウィリー・ティー率いる THE NEW ORLEANS PROJECT というファンク・バンドががっぷり四つに組み、どろどろのファンクを展開しています。バンドにはギタリストにスヌークス・イーグリン、サックスにウィリー・ティーの兄アール・タービントンも居ました。実はこのアール・タービントンも去る8月3日に肺がんのため亡くなられたそうです。こういうことって続くんですね…。

さて、それにしても「THE WILD MAGNOLIAS」はかっこ良いです。特にスヌークス・イーグリンのファンキー且つ魔術的なギター・カッティングが秀逸。またインディアン・ファンクに絡むアール・タービントンのサックス・ソロに後のネヴィル・ブラザーズの雛形が見え隠れしたり…。実際、ネヴィルズの前身となるワイルド・チョピトゥーラスもこのワイルド・マグノリアスの1stアルバムから少なからぬ影響を受けていることは間違いないのです。

でも私が初めてウィリー・ティーという名を意識したのはワイルド・マグノリアスではありませんでした。それはゲイターズ。ミーターズのライバル、もしくは裏ミーターズなどと評される、ニューオーリンズ産のインスト・バンドです。(ウィリー・ティーの歌入りの曲も有り。)

彼らの70年代初頭の録音を集めたアルバムが「WASTED」(写真)です。このアルバムはよく聴きました! ミーターズのような強烈なセカンドライン・ファンクではありませんが、ローカル色濃厚なファンクの中に、ジャジーな感覚や、AOR的なアレンジが施されていたりとか、彼の歌も含め微妙にイナタい洗練さが良い味わいなのです。またニューオーリンズにこだわらない多様性もこの人の魅力ですね。レア・グルーヴとして人気が有るのにも頷けます。CD化で追加されたボーナス・トラックで聴かせるスロー・ナンバーもなかなか。もちろんウィリー・ティーのキーボードも存分に楽しめます。

ちなみにこのジャケット中央で歌っているのがウィリー・ティー、その横でソプラノ・サックスかな?を吹いているのがアール・タービントンのようです。(ただし、裏ジャケのゲイターズのメンバー・クレジットにはアール・タービントンの名はありません。)


さて、私が聴いたウィリー・ティーの最後の音源は、昨年リリースされたニューオーリンズ・ソシアル・クラブの「SING ME BACK HOME」。ニューオーリンズの大物アーティストが集まって製作されたアルバムですが、この中でウィリー・ティーは1曲、自作の「First Taste Of Hurt」を歌っています。彼の弾く軽やかなピアノも印象的な開放的なソウル・ナンバーです。ゲイターズの頃の面影を残す、人懐っこく暖かみのある彼の歌声が心に染みます。あらためて聴くと、これ、良い曲ですね。今日はこの曲ばかり繰り返し何回も聴いています。

ウィリー・ティーさんと、アール・タービントンさんのご冥福をお祈りいたします。