ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

ダニエル・ラノワ@ビルボードライヴ東京

2012-01-19 15:15:31 | ルーツ・ロック
BLACK DUB / BLACK DUB

1月18日、ビルボードライヴ東京にて、伝説的プロデューサーとして知られるダニエル・ラノワの初来日公演を観てまいりました。私が観たのはこの日の1stショー。3階席的なカジュアル席から、眺めるように堪能してまいりました。

U2、ピーター・ガブリエル、ボブ・ディランなどを手掛けてきた名プロデューサー、ダニエル・ラノワ。私にとってはネヴィル・ブラザーズの「YELLOW MOON」のプロデューサーとして神的存在。もちろん「ACADIE」をはじめとするソロ作品も大好きです。ですが、ダニエル・ラノワがどんなライヴ・パフォーマンスをするのか?ということについてはまったく知りませんでした。何せ、幽玄的な音響空間を特色とする音作りに秀で、05年には「BELLADONNA」というインストのアンビエント作をリリースしていますし、昨年リリースされたバンド名義の最新作「BLACK DUB」ではレゲエ/ダブに急接近。いったいどんなライヴをするんだろう?みたいな。

そして始まったそのステージ。メンバーは中央にダニエル・ラノワ(g,vo)、その向かって左にブライアン・ブレイド(ds)、右にジム・ウィルソン(b,vo)というトリオ。1曲目、いきなり1stソロ作「ACADIE」から「The Maker」。やっぱり「ACADIE」には思い入れがあるのでいきなりテンション上がりましたね~。しかもアルバムで聴くよりアメリカーナ的でこれがまた格好良い! ラノワの歌声は思いのほか土っぽくざらついている。そこにベースのジム・ウィルソンがコーラスを付ける。二人は向き合い顔を見あわせながら熱のこもったハモリを聴かせてくれて、その熱気からくる昂揚感は言わばアメリカン・ロック的。そういえばラノワの風貌もカントリーを思わせるむささでした。終盤のギター・ソロになってラノワは足下のエフェクターをバーン!と踏む。するとそれまで地味だったギターの音色が一気に増幅され、ラノワ独特のエコー感と歪みを纏ったギター・サウンドが響き渡る。このギラッとした艶と、立体的に広がるような音色はホント素晴らしかったです!

「Silverado」、「Slow Giving」、「Messenger」と、新旧織り交ぜた楽曲が続く。ラノワらしい抑制された音世界に響く幽玄且つ鮮やかなギター・サウンド。レスポールのネックを細かく振って音を揺らしていたのが印象的でした。でやっぱりラノワとウィルソンの歌が良い! 歌物としての楽曲の良さっていうのもあらためて実感させられましたね。そしてブライアン・ブレイドのドラムス! ルイジアナ出身の現代最高峰のジャズ・ドラマーの一人。もちろんラノワとの付き合いも長い。控えめなれど多彩なアイデアで楽曲に色彩を与えると同時に、独特のスウィング感が終始心地良い揺れを醸していましたね~。もちろんウィルソンのベースも良いですし、ギター、ドラムス、ベースという最小限の絡みが、神秘的且つアーシーな物語りを語ってくるような音像でした。またメンバー3人の距離が近いため、常にアイコンタクトを取りながら親密な音楽空間が作られているのも印象的でした

中盤にはアンビエントなインストを2曲。特にラノワがスティール・ギターを弾いた曲が良かったですね~。実はラノワはスティール・ギターの名手としても知られるので、彼のスティール・ギターが聴きたかった!という人も多かったのではないでしょうか? もちろん私もそんな一人。ラノワがレスポールを肩から下し、スティール・ギターの前に座ったときは、お!いよいよかと、ちょっと緊張しましたね。そしてスライド・バーを滑らせるその先には映像的な想像力を掻き立てるように広がるサウンド。うっとりでした。

そして名曲「Shine」に続いて「Duo Glide」。後半のギター・ソロが凄かった! 低音が凶暴な程歪みまくったギター・サウンドもさることながら、その力強く突き進むようなコード・ストロークはまるでニール・ヤングのよう。途中、それっぽいギター・リフも飛び出したりして。またギターを弾く姿が格好良い! そう言えば、少し前にニール・ヤングの話題作「LE NOISE」をプロデュースしてたっけ?なんて思いながら。そして「Fire」。ラノワのソウルフルな歌声に聴き惚れる。さらに「Still Water」。優し気な浮遊感にちょっとほっこり。こういう曲でのラノワのギター・ワークも秀逸。

そしてラストは「BLACK DUB」から「Ring The Alarm」。しかも「BLACK DUB」の中でも最も先鋭的でオルタナ色の濃いアップ・ナンバー。正直、これを演るとは思いませんでしたが、これが凄まじく格好良かった! 疾走するスピード感の中でギラギラと閃光を放つようなギターは近未来的、もしくは宇宙的な感じ。そしてそのスピード感をひたひたと加速させていくのがブライアン・ブレイド!! 後半におかずを畳み掛ける切れ味にはゾクゾクさせられましたね。

1時間強、残念ながらアンコールはありませんでしたが、素晴らしいライヴでした。色々な面で私のダニエル・ラノワ像を塗り替えてくれるステージでしたが、振り返ってみれば、それら全てがダニエル・ラノワらしい幻想的なトリップの流れの中にあったような気がします。終わった後、何とも云えない余韻が脳裏に焼き付いていました。



↓メンバーの足下にあったセットリストを激写↓




*トップの写真は、ダニエル・ラノワがブライアン・ブレイド等と結成したバンド、ブラック・ダブ名義の作品で、ダニエル・ラノワのリーダー作としては最新作。リリースは一昨年ですかね。今回のライヴでもこの中から「Silverado」、「Ring The Alarm」をやっていました。次回はぜひブラック・ダブでの来日に期待!