ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

マリア・マッキーに愛を込めて その2

2013-02-28 20:38:05 | SSW
MARIA McKEE / MARIA McKEE

性懲りも無くラヴレターのようなタイトルで書き始めてみましたが、たんなる来日直前予習の続きです。

さて、ローン・ジャズティス解散後から2年後となる89年にリリースされた、マリア・マッキーの初ソロ作「MARIA McKEE」(写真)。これをCDショップで見つけたときは嬉しかったですね~。即購入しワクワクしながら帰宅して聴いたのを覚えています。ですがローン・ジャスティスのような気合いたっぷりのマリア・マッキーを期待していた当時の私にとっては思いのほかソフトな内容で、ちょっと物足りない印象でした。ですがマリア・マッキーの歌が聴けるだけで充分でしたし、その歌声の持つ美しいエモーションは聴けば聴くほど私の胸に染み込んでくるのでした。ソフトと言っても「Can't Pull The Wool Down (Over The Little Lamb's Eyes)」や「Drinkin' In My Sunday Dress」のようなローン・ジャスティスの1枚目を思い起こされるカントリー・ロックもちゃんと入ってますしね。ですが個人的には美しいメロディーと麗らかなカントリー・テイスト溢れる「Am I The Only One (Who's Ever Felt This Way?)」が一番好きでした。この曲は名曲ですよ。明るく暖かな中にも独特の憂いを含んだマリアの歌声がまた素晴らしい! そして彼女の歌声が素晴らしいと言えば「Nobody's Child」、「Panic Beach」、「Breathe」などのスロー・ナンバーです。この辺りのマリアの感情表現にはただただ聴き惚れるしか無かったですね。

で、このアルバム、あの頃はまだどうしても“元ローン・ジャスティス”の作品というイメージで聴いていましたが、あらためて今聴き返してみると、これはカントリー/ルーツ系の女性シンガー・ソング・ライターの作品として傑作の部類に入る逸品ですよ! 先の楽曲に加え、開放感溢れる良質のフォーク・ロック「I've Forgotten What It Was In You (That Put The Need In Me)」、ゴスペル・フレイバー香るソウル・バラード「More Than A Heart Can Hold」。何処か退廃的なムードを醸す「This Property Is Condemned」、ピアノ弾き語りによる「Has He Got A Friend For Me?」など、色彩豊かな曲が並びつつもマリアの類い稀な歌声が一つの大きな流れを感じさせる。良いアルバムですね~。

プロデュースはミッチェル・フルーム。バックにはマーク・リボー(g)、リチャード・トンプソン(g、mandolin)、トニー・レヴィン(b)、ジム・ケルトナー(ds)など、今見るとこんな人達が参加してたの!?とびっくりするような名前がクレジットされています。もちろん元ローン・ジャスティスのメンバーも加わっています。特にブルース・ブロディは准プロデューサー的な立場で深く関わっていたようです。



MARIA McKEE / YOU GOTTA SIN TO GET SAVED
ソロ・デビュー作から4年の月日を経た93年にリリースされた2ndソロ作。当時ブラック・クロウズやジェイホークスを手掛けていたジョージ・ドラクリアスがプロデュースを手掛け、乾いた質感と立体的且つ芯のあるサウンドが印象的。 特に、南部ソウルからの影響が感じられる「My Girlhood Among The Outlaws」や「Why Wasn't I More Grateful (When Life Was Sweet)」辺りが抜群に格好良い! 他にもダスティ・スプリングフィールドのメンフィス録音のカヴァーがあったり、このころマリアのベクトルは南部ソウルに向いてたのかな?何て思ったり。ホーン隊にメンフィス・ホーンズを招いているのもしかり。だからと言ってマリアのヴォーカルが突然いなたくなったりする訳ではありません。マリアはあくまでもマリア! 彼女らしい美しいカントリー調もちゃんとありますし、ヴァン・モリソンのカヴァーもあるなど、聴かせどころも多いです。また前作から引き続きのブルース・ブロディはもちろん、ローン・ジャスティスの初期メンバーであるドン・ヘフィントン(ds)とマーヴィン・エツィオーニ(b)が参加しているのも嬉しいところ。

そして翌94年だったかな? ついにマリア・マッキーが初来日したんです。もちろん私も行きましたよ! 初めて生で観るマリア・マッキーの姿とその歌声に感無量でした。ですが内容についてはほとんど覚えていません。「East Of Eden」で始まり「You Gotta Sin To Get Saved」で終わったようなおぼろげな記憶がありますが、 何分昔の話なのでかなり曖昧です。ただ「You Gotta Sin To Get Saved」はスタジオ録音ではゆったりとした南部臭を感じさせるナンバーなのですが、ライヴではアップテンポなカウ・パンク・スタイルで演奏され、えらく盛り上がったのを覚えています。



MARIA McKEE / LIVE AT THE BBC
08年にリリースされた、91年と93年のライヴを収録したライヴ盤。91年の方は「MARIA McKEE」からの楽曲を中心にローン・ジャスティス時代の曲やサントラ収録曲も含め7曲。私の大好きな「Am I The Only One (Who's Ever Felt This Way?)」のライヴ・ヴァージョンが聴けたのが何よりの収穫。そして93年の方。こちらは来日公演と近いので、おそらく日本でのライヴもこれと似た感じだったのではと想像したり。「East Of Eden」で始まり、ハイライトが「You Gotta Sin To Get Saved」のカントリー・パンク・ヴァージョンという展開にもあの日のライヴを彷彿とさせるものがあり、あの時の興奮が甦りました。



MARIA McKEE / LIFE IS SWEET
95年にアラニス・モリセットが世界デビューし、彼女のグランジを背景にした激情型ヴォーカルはセンセーショナルを巻き起こしました。かく言う私もアラニス・モリセットは大好きでした。ですが彼女の成功には嫉妬心を抱いたりもしました。マリア・マッキーのファンの方は多かれ少なかれ皆さんそういう気持ちを持たれたのではないでしょうか?いや、私だけですか? そこへマリア・マッキーの新譜が届きました。これが完全にグランジ化した強力盤。これまでのカントリーもソウルも全部どこかへ吹っ飛んでしまった感じです。マリア・マッキー・ファンの間では流石にここまでの変化には賛否両論だったかもしれませんが、私は大歓迎でした。マリア自身が轟音ギターを弾き、さらに激情ヴォーカルで染め上げる。その感情表現は痛々しいまでに美しい。そして楽曲がまた良い! アラニスに限らず90年代以降に台頭した女性シンガーに対し勝手に嫉妬心を燃やしていた私にとって、これこそ本家だ!と、この作品の素晴らしさはどうだ!と溜飲が下がる思いでしたね。ですが残念ながら一般的にはさほど話題にならなかったようで、それもマリアらしい…。


この「LIFE IS SWEET」は96年のリリースですが、同年、このアルバムを引っさげての再来日が叶いました。もちろん私も行きました。この時は渋谷ON-AIRでした。新作で披露されたマリアの世界をライヴでどっぷりと堪能しました。なんかこの時のマリアはほとんど別世界の人のような雰囲気で、その鬼気迫る歌唱に圧倒された記憶があります。とは言え、これも昔の話なので、ほとんど覚えてないんですけどね。




VA / EVANGELINE MADE: A TRIBUTE TO CAJUN MUSIC
さて、マリア・マッキーは自身のアルバム以外にも、色々なところで録音を残しています。何せ公式デビューはソロで参加した84年の映画「ストリート・オブ・ファイヤー」のサントラですからね。あとサントラですと「パルプ・フィクション」とか、「デイズ・オブ・サンダー」とか。特に「デイズ・オブ・サンダー」に提供した「Show Me Heaven」は全英1位を記録するマリア・マッキー最大のヒット曲になりました。その他コンピや客演(ロビー・ロバートソン「Somewhere Down The Crazy River」のPVには参りましたけど…)など探せば色々出てきますが、個人的にはなんだかんだ言ってカントリーを歌うマリアが好きなので、映画「ソングキャッチャー」から誕生した名コンピ「SONGCATCHER」に収録された「Wayfarin' Stranger」とか、ドワイト・ヨーカムに客演した「Bury Me」なんか良いですね。

でもそんな中で私が最も面白いと思ったのは02年にリリースされたコンピ盤「EVANGELINE MADE: A TRIBUTE TO CAJUN MUSIC」(写真)。タイトル通りルイジアナのケイジャン・ミュージックをトリビュートした作品。ルイジアナが誇るサヴォイ・ファミリーやボーソレイユのメンバーを中心に、カントリー、ポップ、ロック界からゲストを招いて製作され、グラミー賞にもノミネートされた名盤です。マリア・マッキーは「Ma Blonde Est Partie」と「Tout Un Beau Soir En Me Promenant」という2曲のトラディショナルを歌っています。マリア・マッキーとケイジャンって結びつきませんが、マリアはケイジャンが好きで、CLEOMA BREAUXによる「Ma Blonde Est Partie」のオリジナル・ヴァージョンをいつも聴いてたとライナーで語っています。他にはジョン・フォガティ、リチャード&リンダ・トンプソン、パティ・グリフィン、ロドニー・クロウェル、ニック・ロウなどが参加しています。

ちなみに、Wikiによりますと、この作品でマリア・マッキーはこ写真家/ミュージシャンのジム・エイキンと知り合い、結婚することになったそうです。以降、二人三脚による活動になる訳ですが、今回の文章、既にここまでで異様に長くなってしまっているので、ここからは駆け足で。



MARIA McKEE / LIVE IN HAMBURG
03年リリースの4作目「HIGH DIVE」を挟み04年にリリースされたライヴ盤。03年ドイツで収録。個人的に「LIFE IS SWEET」直後のライヴが残されていないというのが残念でならないのですが、こちらのライヴ盤には「LIFE IS SWEET」と「HIGH DIVE」収録曲が半々ぐらいで構成されています。オフィシャルにしては録音状態があまり良く無いですが、妖気めいた迫力で迫るゴシックなマリア・マッキーを堪能できます。でもMCのしゃべり声はちょっと可愛い。ま、ルーツっぽさはほぼありませんけどね。



MARIA McKEE / PEDDLLIN' DEAMS
そして05年に発表されたスタジオ作としては5枚目となる「PEDDLLIN' DEAMS」。これはアメリカーナ! やっぱりマリアにはこっちが良く似合う。昔のようにはち切れんばかりのエネルギッシュな歌ではなく、いい具合に年齢を重ねた“苦み”を含んだ歌声が味わい深い。プロデュースはジム・エイキン。彼は作曲にも携わり、ベース、ギター、キーボードなど演奏でも貢献。さらにジャケ写他のアートワークでもその才能を発揮しています。マリアの信頼振りが伺えますね。マリアとジムの他 Jerry Andrews(g)とTom Dunne(ds)を加えた4人だけで作られた、シンプルな中にもフォーク/カントリーの豊かな香りと、何処かノスタルジックな味わいを感じさせる傑作です。ニール・ヤングのカヴァー「Barstool Bluse」も秀逸。



MARIA McKEE / LATE DECEMBER
07年リリースの現在最新作。「PEDDLLIN' DEAMS」の次のアルバムと言うことでその延長を期待していたんですが、見事に裏切られました。(ま、前作の延長のような作品を作ったことなんて今まで無いんですけどね)。今作は前作の幾分枯れた味わいが嘘のようにポップ且つロックな瑞々しさ。若返ってます。ルーツ色は後退しましたが、懐かしいマリアの歌心を味わえるような作品です。プロデュースはマリア・マッキーとジム・エイキン。二人の共作曲も4曲納められるなど、二人のパートナーシップ振りが伺えます。


この「LATE DECEMBER」以降、今日までマリア・マッキー単独名義での純粋な新作は発表されていないのですが、昨年、ジム・エイキンと共同で「After the Triumph of Your Birth」という映画を製作し出演もしているそうで、そのサウンドトラックがTHE SHOOTISTというバンド名義でリリースされ、マリア・マッキーがフューチャリングされているそうなんですが、残念ながらそのCDは私の手元にはありません。前評判ではマリア・マッキーの実質的新譜だなんて言われたりしていましたが、とりあえずiTunesで試聴してみても、それ程マリアがフューチャーされているようには聴こえなかったんですけど、どうなんですかね?


さて、それでは長くなりましたが最後にいくつか動画をピックアップ。


http://www.youtube.com/watch?v=ystALTFm1t8
思いっきり南部ソウル路線の「Why Wasn't I More Grateful (When Life Was Sweet)」。って言うかバック・バンドが格好良過ぎるんですけど。この人達何者ですか? ちなみに初来日した時のマリアも髪型とか確かこんな雰囲気だったと思います。(バックはこんな大所帯ではありませんでした。)


http://www.youtube.com/watch?v=FwBlNlkIsuQ
おそらく2度目の来日公演に近い頃だと思われる「Absolutely Barking Stars」のライヴ映像。瞳孔開きっ放しのような表情がとにかく美し過ぎる。もうただただ見とれてしまう。そしてマリアの轟音ギターと刺すような歌声に徐々に胸を抉られていくよう。やはりこの時期のマリアは神がかってました。今から16~7年前ですかね。


http://www.youtube.com/watch?v=3kDuCK40vfE
昨年8月、映画「After the Triumph of Your Birth」のプレミアにおけるライヴ映像。いわゆるオーディエンス録りですが、直近のマリア・マッキーのライヴが約50分楽しめます。



さて、いよいよビルボードライヴ東京でマリア・マッキーに再会です。ビルボードのサイトによるインフォでは、バックにはヴォーカリストを一人連れてくるだけのようなので、ほとんど弾き語りでしょうか。「Am I The Only One (Who's Ever Felt This Way?)」とか歌ってくると嬉しいんですけど。あとぜひピアノも用意して頂いて、先の8月のライヴのように「Wheels」を演って欲しいんですね。とりあえず会場に行ってピアノがあったらガッツポーズです。まあ、何はともあれ楽しみでなりません。


(前回に引き続き、長~い文章にお付き合い頂きありがとうございました。)




~関連過去ブログ~ お時間有ったらぜひ!

 12.2.26 マリア・マッキーに愛を込めて その1

マリア・マッキーに愛を込めて その1

2013-02-26 10:44:19 | ルーツ・ロック
LONE JUSTICE / LONE JUSTICE

何やらラブレターのような恥ずかしいタイトルで書き初めてしまいましたが、要するに3月初めにビルボードライヴにて来日公演を行うマリア・マッキーの予習特集です。当ブログで、これまでマリア・マッキーについてはほとんど触れてこなかったかもしれませんが、実は私にとっては女神のような存在で、80年代後半から90年代の半ばにかけて、間違いなく私のフェイヴァリット・アーティストでした。

私がマリア・マッキーを知ったのは、正確に何年のことだったかは覚えていませんが、確かなのは御茶ノ水のディスク・ユニオンでのこと。そこでたまたま流れていたライヴ・ビデオに目が釘付けになったのです。激しくギターを掻き鳴らしながら吠えるが如くの勢いで歌う女性シンガーに。この人誰?と思ったものの、何故か何所にも手がかりがない。買いもしないのに「このビデオ誰ですか?」と店員さんに聞く勇気もなく、手当り次第に店内のビデオを探したものの見つからず、悶々とした気持ちを抑えつつその日は諦めたんです。ですがあの映像の衝撃が忘れられず、また流れてはいないか?とことあるごとにディスク・ユニオンを覗きにいったりしていたある日、どういうきっかけかは覚えていないのですが、見つけたんです。ローン・ジャスティスというバンドを!そしてそのリード・シンガーがマリア・マッキーだったのです。

そのビデオは「LONE JUSTICE LIVE」という87年にリリースされたものなので、おそらく私がそれを手にしたのも87年だったのだろうと思います。その時既にローン・ジャスティスは1stアルバム「LONE JUSTICE」と2nd作「SHELTER」をリリースしていました。しかも既に解散していたかもしれませんがよく覚えていません。っていうかそういう情報もあまり手に入れられない時代でしたしね。なにせ今から26年も前の話ですよ! 私もまだ10代でしたからね。ビデオもすぐには買えず(後に結局買いましたけど)、まずは2枚のレコードをレンタル店で借りました…。

とにかくデビュー・アルバム「LONE JUSTICE」(写真上)に写るマリア・マッキーの美しさにクラクラしちゃいましたね。そして1曲目「East Of Eden」のボ・ディドリー・ビートに乗ったエネルギッシュなマリアの歌声に大興奮。もうその時点で完全に惚れてしまいました。(すいません、今回はずっとこんな感じです)。当時のマリア・マッキーはジャニス・ジョプリン以来の才能などと賞されていたのですが、ジャニスのようなしゃがれ声ではなく、突き抜けるような美声が奔放に駆け巡っていく感じ。このアルバムは決してパンキッシュではありませんが、当時パンクに傾倒していた私にとって、マリアの歌声はグサグサと胸に突き刺さりましたね。激しいアップ・テンポのカントリー・ソング「Working Late」や「Soap, Soup And Salvation」の格好良さなんかも目から鱗でした。そして「Don't Toss Us Away」や「You Are The Light」のようなスローな曲の美しさにも耳を奪われました。このアルバムは私がマリア・マッキーの魅力に取り憑かれた作品であり、メタル&パンクにどっぷりだった私が初めてカントリー・テイストなるものに心惹かれたアルバムでもあります。ですが、このローン・ジャスティスのドラマーがエミルー・ハリスのホット・バンド等で活躍していたドン・ヘフィントン(実はつい先日、同じビルボードライヴでのヴァン・ダイク・パークス公演にドラマーとして来日していました )だったり、ゲストにEストリート・バンドのスティーヴ・ ヴァン・ザントや、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのマイク・ キャンベル、ベンモント・テンチが参加したりしていることなどは、当時の私にはどうでも良いことでしたね~。



LONE JUSTICE / SHELTER
1st作リリースの翌86年に発表された2nd作「SHELTER」。ですが鳴り物入りでデビューした前作があまり売れなかったようで、マリア以外のメンバーが総入れ替えとなる憂き目に遭っています。(結成メンバーのギタリスト、ライアン・ヘッジコックだけはクレジットされていますけどね)。確かにサウンド的にはダイナミックになって、よりスケールの大きいロックン・ロールを展開してはいるんですが、どうしても売れ線に傾いたという印象が拭えません。ツクツクツクツクと鳴り続けるU2っぽいギターとか、ポップなキーボードとか、あの時代の流行だったんですかね? ちなみにプロデューサーにはジミー・ アイオヴィンとスティーヴ・ ヴァン・ザントが招かれてますが、彼らは前作にも関わっているので、そういう意味では1st作の空気を引き継いではいるんですけどね…。と、若干ネガティヴ意見を書かせて頂きましたが、マリア・マッキーの歌声は前作にも増してキレキレでして、まるでエモーショナルの塊のよう。特に「Wheels」や「Inspiration」の歌唱は凄い! 楽曲も良い曲が多いですし、なんだかんだで名盤なのであります。ですがこれが結局ラスト・アルバムになってしまいます。

ちなみに、ちょっと話がそれますが、ジミー・ アイオヴィンはパティ・スミスの78年作「EASTER」のプロデュースを務めた人で、その時のパティ・スミス・グループのキーボード奏者が第2期ローン・ジャスティスに加入したブルース・ブロディなんです。私の大好きなパティ・スミスとマリア・マッキーがおよそ10年の月日を経て繋がっているという事実を知って、えらく喜んだりしたものでした。当然その人脈にはブルース・スプリングスティーン周辺も絡んでくる訳で、なかなか面白いです。



LONE JUSTICE / LONE JUSTICE LIVE
そしてこちらが例のライヴ・ビデオ。86年12月、ニューヨークのRITSにて収録。「SHELTER」発表後でメンバーは第2期のもの。このビデオは本当に良く見ました。多分、私が生涯で一番繰り返し見たビデオなんじゃないでしょうか。残念ながら今は我が家にビデオデッキが無いので見れなくなって久しいのですが、これを初めて見たときの衝撃は今も忘れません。



LONE JUSTICE / RADIO 1 LIVE IN CONCERT
93年にリリースされたライヴ音源。タイトルから察するにラジオ用の音源なんでしょうね。86年の11月にロンドンで録音さているようです。メンバーは先のビデオと同じです。スタジオ作のような大仰さの無いシンプルな演奏が良いです。そして衝動の赴くままにシャウトするマリアのヴォーカルはもうほとんどパンクな格好良さ。まるでレコードのように歌わない崩しっぷりに痺れます。



LONE JUSTICE / THIS WORLD IS NOT MY HOME
日本では99年にリリースされたベスト・アルバム。とにかくデビュー前の未発表音源に驚喜しました。よりカントリー・テイストが濃厚で、ロカビリーっぽくもあり、ガレージ的でもある。そしてパンキッシュ! なんか嬉しかったですね。そしてデビュー以前のマリア・マッキーに思いを馳せます。

ロサンゼルスで生まれ育ったマリア・マッキー。伝説的サイケデリック・グループとして知られるラヴの主要メンバーだったブライアン・マクリーンを兄に持ちます。10代の頃にライアン・ヘッジコックと出会い、ローン・ジャスティス結成へと至る。このベスト盤にはまだメンバーが固まる前の音源から、ゲフィンとの契約前後のセッションが数曲納められていますが、当初、カントリー色が強過ぎるとゲフィンが契約を躊躇していたというのも頷けるサウンドです。私は大好きですけどね! マール・ハガードやトラディショナルを溌剌とカヴァーする彼らの演奏はこれぞカントリー・パンクの格好良さ!荒々しく勢い抜群のマリア・マッキーの歌声も最高! またローン・ジャスティスはデビュー時からスティーヴ・ ヴァン・ザントやトム・ペティの助力を得るなど、大物ミュージシャンから愛されていたことも知られますが、ここに収録されたデビュー前の音源「Go Away Little Boy」は、なんとボブ・ディランが彼らのために書き下ろしたと言われている楽曲で、レコーディングにもボブ・ディランとロン・ウッドがギターで参加しているようです。これには驚きました。



たった2枚のスタジオ作しか残せなかったバンドではありますが、その足跡は現在でも輝きを放ち続けるローン・ジャスティス。最後にいくつか動画をご紹介。


まずは最近見つけた映像で、1985年というデビュー当時のフェス出演時のライヴ映像から彼らの代表曲「East Of Eden」。こんな映像あったんですね~。驚きました! ライヴにしてはマリアが割りとちゃんと歌ってます。
http://www.youtube.com/watch?v=SCoKX6c3iME&feature=fvwp


こちらは私がマリア・マッキーに出会ったあのビデオから「Ways To Be Wicked」。カントリー・ロックな開放感の中にR&B的な感情の発露とパンクの衝動が混在してる。こんな風に歌える女性シンガーは世界広と言えどマリアだけです。
http://www.youtube.com/watch?v=IQtRfLtyr0g


おそらく解散した87年頃と思われるMTVでのライヴ映像。これぞカウ・パンク!楽し気に歌うマリアが可愛い!
http://www.youtube.com/watch?v=vD2W1LDFuLQ


はい、次回もこんな感じで続きます。マリア・マッキーに愛を込めて!(すいません…。)

Tryo@代官山 蔦屋書店

2013-02-25 09:19:50 | インストアイベント

インストア・イベント観覧記その3 トリヨ@代官山 蔦屋書店

2月22日、代官山の蔦屋書店にてトリヨのインストア・ライヴを観てまいりました。2月20日に日本デビュー盤となる「愛と平和のリディム」がリリースになったばかりのフランスのバンド。もちろん初来日です。実は私も今回のイベント告知を見て初めて知ったバンドなのですが、結成は95年と意外と古く、本国フランスでは既に5枚のスタジオ・アルバムと複数のライヴ盤及びDVDをリリースし、絶大な人気を誇っているそうです。

メンバーはGuizmo(g,vo)、Mali(g,vo)、Manu(g,vo)、Daniel(ds)の4人編成のようですが、今回は残念ながらGuizmoは来日が叶わず3人編成でのライヴ。紹介されて登場するや否や、もうやる気満々と言いますか、盛り上がっていくぞ!的なスピリッツがビンビンに伝わってくる。アコースティック・ギターを持ったMaliがムード・メーカー&盛り上げ上手で1曲目からノリノリ。Manuは箱形のエレキギターを弾き、Danielはカホーンを叩く。アルバム・タイトルに「リディム」と付くぐらいですからレゲエがベースになっていると思われますが、レゲエと言うよりそれを含めた無国籍グルーヴな感じで、その弾けるリズムが気持ち良い! ヴォーカルを分け合うMaliとManuの個性の違いも面白い。もちろん歌詞はフランス語ですが、その異国情緒も素敵ですし、開放的で明るいメロディーの中にヨーロッパらしい哀愁や、反骨精神的なパワーも感じられたりして、なかなか一言では言い尽くせない味わいなのです。

特にキレのあるカホーンの打音にアコギのカッティングが絡む力強いリズムが良かったですね。そしてそこに乗るにMaliの歌声からは、陽性なヴァイヴと同時に真摯なエネルギーが感じられました。一方、Manuはなかなかの演技派で、複数の歌声を使い分けて楽曲に彩りを加え、とてもユニークな存在感を発揮していました。また彼の弾くエレキ・ギターも粋な格好良さがあって良かったです。

いや~、とにかく楽しい! おそらく本国では観客を巻き込んでのお祭りライヴを繰り広げているであろうことが察しがつくライヴ・バンドでしたね。今回もインストアとは言え、かなりの盛り上がりでした。アンコールもありましたしね。観客も沢山集まってました。そしておそらくフランスの方と思われる外人さん率も高かったです。


フジロックなんかに出たらきっと盛り上がるだろうな~、と思ったり。

フジロック早割り予約@岩盤

2013-02-23 23:30:52 | フジロック
今日、FRFオフィシャルショップ「岩盤」にてフジロック早割チケットを予約してまいりました! 先の抽選で外れた時は今年も早割りは無理かと思いましたが、まさかの岩盤でした。

実は私、昨年も岩盤に並んだんですけど、朝5時半過ぎに岩盤に着いたところ物凄い人で、係りの人曰く既に700人ほど並んでるとか。そして激寒のなか2時間半程並んだ結果、遥か前方で整理券終了という燦々たる始末だったんです。

なので今年はもう徹夜しかない!と思いつつも、ヘタレな私にそんな体力もガッツもあるわけがなく、今年は正直、諦めムードだったんです。だって別に早割りで買わなくても正規の値段で買えばいいわけですから。

ですが前日の夜、妻と作戦会議を開いたところ、とりあえず行くだっけ行ってみるか?ということになり、学習能力の無い二人はまた性懲りも無く早朝に岩盤へ向かったのでした。しかも昨年よりさらに30分ほど遅い時間にのこのこと。

で、岩盤は予想通りに長蛇の列。その列はパルコの大きなビルを一周してる。まあ、それは予想通りだったんですけど、昨年に比べて明らかに人が少ない。列の密度が薄いんです。しかも昨年は並ぶ時に係りの人から「今から並ばれても整理券をもらえないかもしれませんが…」みたいな宣告をされたのですが、今年は何も言われなかったんです。あれ?ひょっとして?みたいな。

6時に整理券配布が始まり、徐々に列が動き出す。昨年はある程度進むと、「駐車券終了しました」とか「入場券残りあと何枚です!」みたいなカウントダウンが始まったのですが、今年はそれも無い。いたって粛々と列が動く。あれ? これ、チケット取れちゃうかも?みたいな。

そして半信半疑のまま列は進み、スペイン坂スタジオが見えてきたあたりで、これ取れちゃったよ!と確信。並んでみるもんだね!みたいな。

そして無事に整理券をゲットし、ついに昨年のリベンジを果たしたのでした。

でもね、今回は列が終わっても整理券が残っていたようで、その後も整理券の配布は続いてたんですよ。つまり、早朝から並ばなくても余裕で貰えたということなんです。朝早く起きて寒いなか2時間以上並んだあの苦労は何だったんだろう?みたいな。

いや、それでこそフジロッカーズですよね。だって徹夜されてる方達も沢山いらっしゃったわけですから。ホント頭が下がります。恐るべしフジロッカーズ、愛すべきフジロッカーズですよ!

さて、午後にその整理券を持ってあらためてパルコ内の集合場所にて予約手続きを済まし、本日の早割り予約に関する一件は終了。何だかんだで今年もフジロックが始まったという充実感をたっぷり味わいました。


さて、来年はどうしましょ?今年のことを踏まえもう少し遅く行きましょうか? 結局、レディオヘッドとストーン・ローゼスが事前に発表されていた昨年が異常だったんですかね?一昨年以前の状況を知らないのでなんとも言えませんが。いや、その前に抽選で当てればいいんですよ!って言うか今から来年のチケの心配してもしょうがないですね。それより第1弾発表が楽しみです!




2012年 ベスト・ソング

2013-02-22 16:53:22 | 2012年総括
2012年の個人的ベストソング。私は普段アルバム単位で聴き流すような聴き方をすることが多いので、その中から特定の1曲を取り出して繰り返し聴くことはあまりないのですが、それでもやはり、突出して印象に残る曲と言うのはあります。という訳で、今回は2012年、最も印象に残った5曲。



第1位 Meiko / Stuck On You
ミーコのこの曲はホントよく聴きました。アルバム「STUCK ON YOU」かrのタイトルトラック。ちょっと気分が塞いでいてもこれ聴けば元気になるんですよね~。
http://www.youtube.com/watch?v=6jcvodNBTuA



第2位 Priscilla Ahn / やさしさに包まれたなら
これもよく聴きました~。アルバム「Natural Colors」からユーミンのカヴァー。元々好きな曲ではあったんですけど、プリシラの歌声が最高なんですよ。これには癒されました。ま、ベスト・ソングにカヴァー曲を選ぶのもどうかと思いますけどね…。
http://www.youtube.com/watch?v=1vf9dWv3dwQ



第3位 Cody Chesnutt / Til I Met Thee
あのデビュー作からの変貌に驚いたコディ・チェズナットのこの曲。素晴らしいですね! まるでマーヴィン・ゲイが乗り移ったかのようです。もちろん曲も良い!!
http://www.youtube.com/watch?v=PHBqWnKIZwo



第4位 Leonard Cohen / Show Me The Place
アルバム「Old Ideas」から。2012年で一番滲みた曲。80歳に近い詩人レナード・コーエンのバス・ヴォイスにただただうっとりです。
http://www.youtube.com/watch?v=WCtoVoE5Mm4



第5位 Natalie Duncan / Devil In Me
http://www.youtube.com/watch?v=JX_b1KU3GWY
2012年、一番の衝撃はこの曲だったかも。

ナタリー・ダンカン@ビルボードライヴ東京

2013-02-21 16:28:33 | SSW
NATALIE DUNCAN / DEVIL IN ME

2月18日、ビルボードライヴ東京にてナタリー・ダンカンを観てまいりました! 昨年デビューしたばかりですが、既にポスト・エイミー・ワインハウスの最右翼などと評されたりもする、注目の英黒人女性シンガー・ソング・ライターです。デビュー・アルバムがいきなりジョー・ヘンリーのプロデュースですからね。その事実一つだけで彼女の才能が保証されたようなものですが、実際に彼女の歌声を聴けば尚更なのです。日本ではつい先日その1stアルバムがリリースされたばかり。そんなタイミングでの来日です。私が観たのは2ndショー。整理番号1番のかぶりつきでした。

ナタリー・ダンカンはステージ向かって左端のグランドピアノに向かって腰掛ける。その右隣からギタリストのトム・ヴァラル 、ベーシストのヘンリー・ガイ、バック・コーラス&鉄琴?の女性ハティ・ホワイトヘッド、そして右端のドラムスにグリン・ダニエルズという布陣。アルバム「Devil In Me」にも一部参加しているバック・バンドですね。

1曲目は「Devil In Me」。私この曲大好きなんです。この曲を生で聴きたいがためにライヴを観に来たと言っても過言ではない程。何と言ってもナタリーの歌声ですよ! 冒頭のアカペラ部分から彼女のドロリとした黒くジャジーなフィーリングにグイグイ引き込まれる。初めて聴いた時の衝撃そのままの歌声! そしてピアノが奏でる暗く物悲しい旋律。内省的な情感を研ぎ澄ませつつ「Devil」という言葉を吐く度に徐々に得体の知れないエモーションを放出していくかのようなナタリー。ピアノの真横に座った私はそんな彼女の姿にただただ見とれるばかりでした。

1st作「DEVIL IN ME」収録曲を中心に進むセットリスト。ナタリーのハスキーでありながらふくよかな歌声のもつ苦みや、抑制された感情表現の節々からほとばしる刺すようなエモーションが辺りの空気を支配していく。バック・バンドの演奏も独特のスイート&ダークなムードで貫かれていて凄く良い。実は「DEVIL IN ME」の中でこのバンドがバックを務めているのは2曲だけ。しかもその2曲とも作品中で最もオルタナ的な質感を持った曲だったので、このバンドでのライヴはCD以上にクロスオーバーな感じになるのでは?と、ルーツ好きの私にはちょっぴり不安だったりもしたんです。ですがそのシンプルな演奏はまるで闇夜に曲の輪郭を浮かび上げるようなシックなジャズ感を感じさせ、そのサウンドは柔らかくナタリーの歌声に溶け込むようでした。正直、ジョン・スミスやグレッグ・コーエンを擁したジョー・ヘンリーによるスタジオ録音よりも私はこちらの方が断然好み。CDでは若干散漫に感じられた個性的な楽曲群も、この日のライヴでははっきりと一つの世界観を描き出していました。

その世界観はナタリーの持つ一種独特のダークネスであり、それを際立たせるバンドによる一種の箱庭のような美しさ。彼女は曲間に少しMCを挟む意外、淡々と歌い続けます。歌っている最中は客席の方もほとんど見てなかったんじゃないでしょうか。まあ、ピアノが横向きに置かれていますから仕方ないんですけどね。もちろんバンドとの馴れ合いのようなお遊びもなければ、観客に安っぽい一体感を煽ることもない。まあ、手拍子ぐらいはありましたけど。ただただ、ひたむきな歌と演奏があるだけ。しかしそこには何者も不可侵な彼女達の世界がある。いや、新人さんによる言葉の通じない国でのライヴと言うのはいたってこういうものかもしれません。ですがそれが返ってナタリー・ダンカンというシンガーの凄みを浮き彫りにした感じでしょうか。

どこのジャンルにも括られない現代的な感覚の持ち主ながら、いにしえのジャズやブルースに秘められた魔力を持っている希有なシンガーであることは間違いないでしょう! 2nd以降の活躍が楽しみです。個人的にはこの日のライヴのような路線、もしくはもっと黒い方へ行ってくれると嬉しいんですけどね~。だいたい、そういう期待って裏切られるんですよね…。



この日のセットリスト↓

01. Devil In Me
02. End
03. Lonely Child
04. Sky Is Falling
05. Songbird
06. Black Thorn
07. Been Alone Too Long
08. Old Rock
09. Brother Forgive Me
10. Find Me A Home
11. Grace
12. ???(Hold Your Head)
13. Keep Her Smiling
14. Became So Sweet
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15. Uncomfortable Silence


ナタリー・ダンカンの足下にあったセットリストには「Old Rock」の後に「Pick Me Up Bar」が記されてましたが、私が観た回では多分やりませんでした。(既に記憶が曖昧ではありますが…)。「Devil In Me」はもちろん、「Lonely Child」、「Sky Is Falling」、「Find Me A Home」、「Keep Her Smiling」など、アルバム「DEVIL IN ME」収録曲は味わい深いものがありました。そして唯一のアップテンポ曲「Became So Sweet」はCDよりさらにスピードを上げ、ナタリーが早口で歌う切れ味はリズム&ブルース的で格好良かったです! あと知らない曲も結構あったんですけど、調べてみたらそのほとんどがデラックスエディションもしくは日本盤のボーナストラックとして納められている曲でした。ですが12曲目だけは未発表の新曲のようです。“ソウルサーチャー”吉岡正晴さんのツイッターによりますと「Hold Your Head」という曲だそうです。そう言えば「ホ~ジョ~ヘ~」っていうサビが印象に残っています。


*写真は終演後にサインを頂いた「DEVIL IN ME」。黒いマジックが背景と混じって見づらいですけどね…。

嗚呼、フジ早割…

2013-02-20 00:30:41 | フジロック
あ~あ、フジロックの早割ハズレちゃいました。2年連続のハズレです。どうしよう…。岩盤に並ぼうか…。 早く苗場に行きたいよ~!

って言うかまだアーティストも何も発表されてないんですけどね~。

2012年 ベスト・アルバム リイシュー編

2013-02-17 18:48:10 | 2012年総括
VA / COUNTRY FUNK 1969-1975
「ルーツな日記」が選ぶ2012年リイシュー・ベスト10、第1位はLIGHT IN THE ATTICが編んだカントリー・ファンクのコンピ盤です。今回選んだ10枚の中で間違いなく今年一番聴いたアルバム。これにはハマりました!

まず、ここで言うカントリー・ファンクって何だろう?って思いますが、要は概ね70年代前半を中心にしたスワンプ・ロックです。スワンプ・ロックと言ってもレオン・ラッセルに代表されるLAスワンプではなく、本物のスワンプ、米南部湿地帯ロックです。つまりトニー・ジョー・ホワイト、ボビー・チャールズ、デイル・ホーキンス、ボビー・ジェントリーなど有名どころから、ジム・フォード、ラリー・ジョン・ウィルソン、ジョニー・ジェンキンスと言った隠れスワンプ名盤を残したマニアックな方々まで、これぞスワンプ!と言った人選です。

さらにジョニー・アダムス(ニューオーリンズのソウル・シンガー)、ボビー・ダーリン(ポップ・スターとして輝かしい奇跡を残したシンガー)、リンク・レイ(ピート・タウンゼントやジミヘン等にも影響を与えたエレキギターのパイオニアと言われる人)、マック・デイヴィス(プレスリー「In The Ghetto」の作者としても知られるカントリー・シンガー)など、この辺りは個人的にはスワンプ・ロックというイメージはなかったんですが、ここに納められている楽曲はスワンプ臭ムンムンなものばかり。もう盤の節々からスワンプの泥が溢れ出しそうなディープ・コンピです。

しかも“カントリー・ファンク”と名付けられるぐらいですからどれもファンキーなんですよ!ファンキーと言っても南部独特のねっとりとしたファンク・フィーリングなんですけど、それが堪らなく腰にくる。この辺りのスワンプロックをさほど掘り下げて聴いてこなかった私などにとっては目から鱗の格好良さでしたね。正直、John Randolph Marr、Gray Fox、Cherokee、Dennis The Fox、Gritzといったアーティスト達は、このコンピで初めて知りました。しかもそのどれもが格好良い!いやはや、スワンプの沼は想像以上に深いです。

もちろんスワンプですからルイジアナ/ニューオーリンズ色も濃かったり。トニー・ジョー・ホワイト、ボビー・チャールズ、ジョニー・アダムスはもちろんですが、デイル・ホーキンスもルイジアナ出身ですからね。さらにジョージア界隈のブルースマン、ジョニー・ジェンキンスが歌う「I Walk On Gilded Splinters」はドクター・ジョンの曲ですし、逆にリンク・レイの「Fire And Brimstone」は後にネヴィル・ブラザーズが「YELLOW MOON」でカヴァーするあの曲。私はネヴィルズ版の「Fire And Brimstone」が大好きだったのですが、そのオリジナルをここで初めて聴くことが出来、感無量でした。なんか独特の怪しさがあって格好良いです。

ちなみにジョニー・ジェンキンスの「I Walk On Gilded Splinters」を含むセッションではまだオールマン・ブラザーズ・バンド結成前のデュアン・オールマンやブッチ・トラックス、ジェモーなどが参加し、これがオールマン結成の契機になったなんて言われていますね。

それにしても最高ですね、スワンプロック。もちろん、厳密に言えばスワンプロックの分類には入らない楽曲も含まれているのかもしれません。なにせ私が勝手にスワンプ!スワンプ!と騒いでるだけで実際は「カントリー・ファンク」ですからね。ですが“スワンプ”というキーワードで語るのに充分な一種独特のムードで貫かれた愛すべき1枚です。

第2位

TAJ MAHAL / THE HIDDEN TREASURES OF TAJ MAHAL 1969-1973
第2位はタジ・マハールの2枚組レア音源集。やっぱりタジ・マハールは初期が良いよね!って言う人には堪らない発掘盤。アウトテイク集となる1枚目のジェシ・エド・デイヴィスを擁する前半の格好良いこと! なんでこれが未発表なんでしょう? そしてチューバ隊を率いたスタジオ録音も荒々しいノリが素晴らしい! でも楽しみにしていたアラン・トゥーサン絡みのニューオーリンズ録音はとりあえずスタジオを使ってみました程度な印象で、トゥーサン色は全く感じられずちょっぴり残念。でもこんな音源が残っていただけでなんかロマンを感じます。そして70年のロイヤル・アルバート・ホールでのライヴを納めたディスク2。こちらもジェシ・エド参加で最高です!

第3位

DAN PENN / THE FAME RECORDINGS
未発表音源を集めた「HALL OF FAME」やジョージ・ジャクソンの第2集「LET THE BEST MAN WIN」など、2012年も英ACE/KENT周辺のフェイム音源発掘にはやられっぱなしでしたが、その中でも特に印象的だったのがダン・ペンのフェイム録音集。全24曲中シングル・リリースされた「Take Me (Just As I Am)」を除く全てが未発表音源とのこと。ソングライターとして辣腕を振るっていた頃に、これ程の録音が残されていたと言う事実に驚かされます。サザン・ソウルの裏側を見せられた思いであり、若きダン・ペンの歌声と名曲の数々に心がマスルショールズへ飛んでいきそうです。(行ったことないですけど…。)

第4位

VA / BOPPIN' BY THE BAYOU
英エイスが編んだ50~60年代のルイジアナ産ロックン・ロール・コンピ。これも興味深い1枚。正直、私などは存じ上げないアーティストがほとんどなんですが、それ故にルイジアナの知られざる深部を覗いた気分で楽しめました。それにしてもこの時代、ルイジアナにもエルヴィス・フォロワーのようなロックン・ローラーが沢山居たんだと思うとちょっと面白い。既に第2集も出ているようなので、そちらもチェックしないと…。

第5位

LOU JOHNSON / SWEET SOUTHERN SOUL
「ATLANTIC R&B BEST COLLECTION 1000」シリーズからの1枚。このルー・ジョンソンのフェイム録音が素晴らしいのはもちろんなんですが、このアトランティック創立65周年を記念してのソウル名盤千円放出という素晴らしい企画全体に拍手。これはホント話題になりましたよね。まだ続編が続いているようなので、今後の展開にも期待です。

第6位

MAGIC SAM / LIVE 1969 RAW BLUES!
シカゴ・ブルース、ウェストサイド派の寵児マジック・サムが亡くなるおよそ4ヶ月前、1969年7月11日カリフォルニア州バークレーにおけるライヴの発掘音源。同時期のアン・アーバーを収録した名ライヴ盤にも収録されてない曲も含む全17曲。とにかくマジック・サムの勢い溢れるギターが凄い! 音質はいまいちですけどね…。

第7位

JOHN HIATT / PAPER THIN FM BROADCAST OTTAWA, CANADA, JANUARY 4TH 1989
ジョン・ハイアットのザ・ ゴーナーズを率いた89年のライヴ音源。サニー・ランドレスのスライドもたっぷり!! こちらはALL ACCESSというレーベルが出しているシリーズ物のようで、他にもエミルー・ハリスやタウンズ・ヴァン・ザントなどのライヴ音源がリリースされてまして、これからも目が離せません~。

第8位

VA / BLUES A RAMA LIVE AT TIPITINA'S NEW ORLEANS 1989
こちらはニューオーリンズのブラックトップがリリースしていたライヴ・シリーズの復刻版。未発表テイクなどはありませんが、永らく廃盤で手に入りにくかったものなので嬉しいですね~。特に私の大好きなとアール・キングが3曲収録された第5弾とスヌークス・イーグリンが5曲収録された第6弾のパッケージは個人的に燃えました。

第9位

CAROLE KING / THE LEGENDARY DEMOS
キャロル・キングのブリル・ビルディング時代及び1stソロ作「TAPESTRY」期のデモ音源集。作家時代のデモ音源は過去にも世に出てるのでそれ程驚きませんが、「Pleasant Valley Sunday」や「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」のデモには流石に胸が躍ります。

第10位

DAVID RUFFIN / "DAVID" UNRELEASED LP & MORE
元テンプテーションズのリード・シンガー、デヴィッド・ラフィンの幻の3rdソロ作と言われる69年の未発表作にボーナストラックを加えてHIP-O SELECTがリリース。これは元々2004年にリイシューされたもので、その時は確かネット・オンリーだったように記憶しているのですが、今回、あらためてお買い求めしやすくなって再登場した感じ。

坂田明@新宿タワーレコード

2013-02-16 13:38:09 | インストアイベント
インストア・イベント観覧記その2 坂田明@新宿タワーレコード

2月14日ヴァレンタイン・デー、私は新宿タワレコにて坂田明さんのインストア・ライヴを観てまいりました。

坂田さんはこの度「私説 ミジンコ大全」という本を出されましたそうで、この日はその発売記念ミニライヴとのことでした。その「私説 ミジンコ大全」という本なんですが、なんと「海」と題されたCDが付属しているそうで、今回はその中から4曲程披露してくれました。

コントラバス奏者とのデュオ編成による演奏にて、坂田さんが水産学科の学生時代に乗っていたという実習船の船名を曲名にした「豊潮丸」、沖縄を思わせるメロディが印象的な「Innocent Forest」、神秘的且つ深淵な広がりが素晴らしかった「Silent Plankton」、坂田さんとは友人だったという亡きたこ八郎さんに捧げた「Ballad For Tako」。たった4曲とは言えおよそ50分というインストア・イベントにしてはたっぷりな内容。と言っても半分ぐらいは喋ってましたけどね。曲に関するちょっとした解説を中心に、例えば坂田さんが主催していたミジンコ倶楽部がどんな活動をしていたとか、マニアックなお話。そんなMCも含めてディープな内容でした。何にも増してPAを通さない、素のサックスの音色が美しかった! その響きから坂田さんのエモーションがビンビンに伝わってきました。特に「Ballad For Tako」は泣けました。

ヴァレンタイン・デー

2013-02-15 23:10:25 | ニューオーリンズ
CHOCOLATE MILK / WE'RE ALL IN THIS TOGETHER, MILKY WAY

昨日はヴァレンタイン・デーでしたね。という訳で、チョコレート・ミルクはいかが?

はい、また訳が分からない始まり方をしてみましたが、つまり、ヴァレンタイン・デーにちなんで何かチョコレートに関連したアルバムはないだろうかと探したところ、このチョコレート・ミルクに思い当たったということなのです。

70年代にニューオーリンズを拠点として活躍し、アラン・トゥーサンとも縁が深いファンク・バンド、チョコレート・ミルク。写真のアルバムは数年前にリイシューされた「WE'RE ALL IN THIS TOGETHER」(77年作)と「MILKY WAY」(79年作)の2in1アルバムです。もちろんどちらもアラン・トゥーサンのプロデュース。ですがニューオーリンズっぽさはあまり感じられず、もう少し洗練されたアーバン・ファンク&メロウと言った印象です。ですが独特の円やかさやコーラスの爽やかさはいかにもトゥーサン印。特に「WE'RE ALL IN THIS TOGETHER」の方は9曲中6曲でトゥーサンが作曲にも絡んでいて(内2曲がチョコレート・ミルクとの共作、4曲がトゥーサン単独)、中には後にアーロン・ネヴィルが「WARM YOUR HEART」で取り上げる「That's The Way She Loves」もあったりで、なかなか聴きごたえがあります。







こちらは昨晩、妻から貰ったヴィタメールのチョコレートケーキ。ヴィタメールのケーキは見た目もラヴリーだし美味しくて最高です!!