ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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2010年 ベストアルバム第1位!!

2011-02-06 14:01:58 | 2010年総括
GALACTIC / YA-KA-MAY

2010年「ルーツな日記」的ベスト・アルバム、栄えある第1位は、ギャラクティックの「YA-KA-MAY」で~す!!!! これはホント見事なアルバムですね。まさに新世代ニューオーリンズ・ファンクの一つの到達点であり、新しい日の出とも言える傑作ですよ!!

前作「FROM THE CORNER TO THE BLOCK」でヒップ・ホップに大接近したギャラクティック。そして今作ではアラン・トゥーサン、アーマ・トーマス、ジョン・ブッテ、リバース・ブラス・バンド、トロンボーン・ショーティなど、ニューオーリンズのビッグ・ネーム達をゲストに招き、原点回帰したような印象を受けがちですが、いやいや、これは「LATE FOR THE FUTURE」~「RUCKUS」~「FROM THE CORNER TO THE BLOCK」と続いた冒険の延長上にある作品と言って間違いないでしょう。リズムのファットさやミックス感覚は相変わらずヒップ・ホップ的ですし、変幻自在のフリーキーさはジャズ・ファンクやジャム・バンドの土壌を感じさせる。もちろん、今作がこれまでのアルバムに無い程ニューオーリンズ臭に溢れているのも事実ですし、正直、それが何より嬉しかったりもするのですが、それがあくまでもギャラクティック流の新しいニューオーリンズ・ファンクとして表現されているところが見事なんです!

これだけ個性的なシンガー及びプレイヤーをフューチャーしながら、ギャラクティックのファンクネスはまったくぶれてないですからね! まさにレジェンド達をギャラクティックの土俵に上げた感じ。こんな芸当が出来るのはギャラクティックを置いて他に無いですよ。まさにレジェンド達の声をも一つの具材としてグツグツと煮立てたガンボな状態。そしてそのガンボ感をさらにディープにしているのがラッパー達の存在。今作ではニューオーリンズのラッパー達が参加しているのですが、前作「FROM THE CORNER TO THE BLOCK」に参加したチャリ・ツナやギフト・オブ・ ギャブ とはまた違う、弾けるような猥雑さがあって良いんですよ! 残念ながらヒップ・ホップに疎い私には知る由もない方達なのですが、同じラッパーでもニューオーリンズはまた一味違うなと感じさせる。

つい先日、bmr誌をパラパラめくっていましたら、今、ヒップ・ホップ界ではニューオーリンズ産の「シッシー・バウンス」という音楽が注目されているらしいのです。その名の通りシッシー達によるバウンスな訳で、いわゆるゲイ文化の中から誕生したムーヴメントのようです。私なんかは日頃から「ニューオーリンズ音楽が大好きです!」なんて言っていますが、それは随分と偏ったものであり、R&B、ファンク、ブルース、ジャズ、ザディコなどを聴いて、ニューオーリンズを分かったような顔をしていましたが、かの地のストリートには、こんなシーンもあるんだな、と目から鱗でしたね。日本にいる限り、ヒップ・ホップに興味が無い限り、こういう情報ってなかなか耳に入ってこないじゃないですか。で、この記事を読んで、もしや?と思って調べてみましたら、やはりそうでした。この「YA-KA-MAY」に参加した BIG FREEDIA、KATEY RED、SISSY NOBBYなんかはみんなこのシーンのラッパー達。って言うかシッシー・バウンスの中心的人物達なのです!!

やっぱりギャラクティックと言うバンドは、ストリートに根ざしたバンドなんだと言うことを思い知らされましたね。と同時に、アラン・トゥーサンやアーマ・トーマスなどのレジェンド達と、シッシー・バウンスの猛者達を、共演こそ無いもののギャラクティックという同じ鍋の中に入れてしまう豪快さ。堪りませんね。しかも鍋の中でしっかりと反応し合ってますからね。それがこのアルバムの凄いところ。「YA-KA-MAY」は古きニューオーリンズも現在のニューオーリンズも、そしてメインストリームもアンダーグランドも全てをガンボにしたアルバムなのです。しかもそれが新しいニューオーリンズ・ファンクとして結実している奇跡。それはこれまでにギャラクティックが果敢に挑んできたチャレンジ精神の賜物ですし、様々なエッセンスが上積みされた成果とも言えるでしょう。なにより名手スタントン・ムーアを中心にした柔軟且つ強靭なファンク振りが素晴らしい!

それにしてもギャラクティックというバンドは面白いバンドですよね。セリル・ デクロウ(vo)が脱退した後は、インスト・バンドとして活躍していくのかと思いきや、ゲストを招いて、より自由度の高い活動振りを見せる。この「YA-KA-MAY」もその自由度が成せる可能性を最大限に引き出した作品ですよね。そしてこのアルバムを引っさげての来日公演も素晴らしかった! ゲストにネヴィル・ブラザーズのシリル・ネヴィル、そしてリバース・ブラス・バンドのコーリー・ヘンリーを連れてきましたからね。もちろん彼等をフューチャーしたニューオーリンズ色を全面に出したステージでありながら、やはりギャラクティック・ファンクは唯一無比の格好良さでしたよ! (ちなみに写真はその来日時サインを頂いたもの。)

何はともあれこの「YA-KA-MAY」、ギャラクティックという最大限の自由度を誇るこのバンドの特異性が成し得た大傑作です。ニューオーリンズ・ファンクに限って言えば、トロンボーン・ショーティの「BACKATOWN」の方が注目度が高いようですし、今後の影響力も大きいかもしれませんが、あのアルバムだってプロデューサーはギャラクティックのベン・エルマンですからね。ま、そんなことも含めて、今後のニューオーリンズはますます楽しみですね!

ちなみに、「YA-KA-MAY」については、彼等の来日直前にもレビューしているので、興味がある方はそちらもぜひ!→ ギャラクティック「YA-KA-MAY」

2010年 ベストアルバム3位-2位

2011-02-05 11:07:16 | 2010年総括
第2位

GRACE POTTER & THE NOCTURNALS / GRACE POTTER & THE NOCTURNALS
間違いなく2010年、最も聴いたアルバム。正直な話、グレイス・ポッターがこれ程までに骨太なロックン・ロールで攻めて来るとは思っていませんでした。まさにアルバムを出すごとにチューンアップしていく感じの彼女とそのバンド、ノクターナルズ。デビュー作は土っぽさとノラ・ジョーンズ的な洗練を併せ持った04年の「ORIGINAL SOULE」(この時はまだグレイスのソロ名義)。さらにサザン・フィーリングとバンド感を強めた2nd作「NOTHING BUT THE WATER」(ここから正式にバンド名義)。そしてよりポップでソウルフルな歌物指向な完成度をものにした前作「THIS IS SOMEWHERE」。で、その前作「THIS IS SOMEWHERE」が出た直後にフジロックで来日したんです。07年でしたね。で、その時のライヴ、私は勝手にゴスペルやブルースなど南部テイスト香るルーツな感じを期待していたんですけど、これが思いのほかロックだったんですよ。70年代を感じさせるかなりベタなロック。しかもどこかあか抜けない感じで…。そしてあれから3年、ついにリリースされた新作が、ずばり「GRACE POTTER & THE NOCTURNALS」。自信の程が伺えますよね。まず冒頭、グレイスの妖艶且つ気合いの入った「アン!」という一声にやられます。さらにツイン・ギターによる荒々しいギター・リフ。そしてファット且つ鋭角的なリズム。グレイスの歌声もやたらテンションが高い! この「Paris (Ooh La La)」という曲はフジでも既に披露されていた曲でしたが、あの時とは確実に一皮も二皮も剥けた感じ。とにかくリズムの太さとキレにやられます。そしてバンドとしての一体感が強烈。しかしけっしてルーズなノリではない、やさぐれた感じでもない、でも明らかにロックン・ロールの妖気を感じる。バンド・イメージとしてもベーシストが女性に変わった分、一層妖艶な空気感を増しましたしね。で、やはりそんな妖婉さ濃厚な「Medicine」や、瑞々しく跳ねる「Hot Summer Night」などのアップ・ナンバーが良いですね~。「Money」や「That Phone」など南部的な楽曲も格好良い! レゲエのリズムを取り入れたオーガニックな「Goodbye Kiss」も良い! そして「Colors」や、「Things I Never Needed」等のスロー・ナンバーにもうっとり。そしてハイライトは先行シングルとなった「Tiny Light」でしょうか。メロウ・ポップな序盤から、グレイスの強烈なロング・シャウトがきまり、スコット・ターナーの荒くれたギター・ソロが押し寄せる怒濤の展開。初めて聴いた時ゾクゾクしましたね! まあ、何はともあれ、全編通してバンドから漲るエネルギーが凄いですよ。フジで観たときは、若干、無理矢理ロックしているような印象も受けたのですが、これはそんなライヴを積み重ね、メンバーチェンジの末にたどり着いたあろう、グレイス・ポッター&ザ・ノクターナル流の新たなロックンロールです! そして圧倒的なほどソウルフルでエモーショナルなグレイスの歌声が素晴らしい。また来日してくれないかな~。


第3位

PATTY GRIFFIN / DOWNTOWN CHURCH
カントリー系の女性シンガー・ソング・ライター、パティ・グリフィン。およそ3年振りの最新作はゴスペル作品。DOWNTOWN PRESBYTERIAN CHURCHという大きな教会を借り切って録音されたようです。プロデュースはバディ・ミラー!! これは素晴らしい作品ですね~! カントリーな土っぽさとゴスペルらしい敬虔な高揚感、そしてパティ・グリフィンの歌声! 女性的な繊細さとささくれたったエッジが同居したような歌唱に引き込まれます。1曲目はハンク・ウィリアムスの「House Of Gold」。広大な大地を感じさせるようなゆったりとした曲調に映えるパティの歌声。良いですね~。続くアップ・テンポの「Move Up」。スウィング感溢れるリズムと疾走感を煽るようなコーラスが格好良い!ちなみにリズム隊はジェイ・ベルローズ(ds)とデニス・クロウチ(b)。そしてオルタナ的な陰影の濃いギターを響かせるのはバディー・ミラーとDoug Lancioの二人。このバック・バンドの“湿り気”と“ざらつき”がない交ぜになったようなどこか神秘的なサウンドが良いんですよ~。そしてコーラスにはRegina McCrary とAnn McCraryの姉妹。彼女達はかのフェアフィールド・フォーの伝説的リード・シンガー、サム・マクラリーの娘さん達。まるでアメリカーナのしじまから黒人ゴスペルのフレーバーが香るような響きが秀逸ですね。トラディショナルの「Death's Got A Warrant」でもマクラリー姉妹が良い味出してます。有名な黒人スピリチュアル「Wade In The Water」ではそんな濃密なサウンドに絡み合うパティのエモーショナルな歌唱が素晴らしい。エモーショナルと言えば「I Smell A Rat」も強烈。ビッグ・ママ・ソートンが歌ったリーヴァー&ストラー曲ですが、ビッグ・ママのダイナミックさとはまた違う荒々しさと粘りを持ったパティの歌唱に痺れます。これはロックですよ!その一方でスロー・ナンバーも流石に味わい深い。ソウルフルな歌声をしっとりと堪能出来る「Waiting For My Child」は、「OH HAPPY DAY」というゴスペル・コンピでメイヴィス・ステイプルズとデュエットしていた曲。それを今回はソロで再録。さらに「Virgen De Guadalupe」はメキシコ系のゴスペル曲でしょうか?この異国情緒が光ってますね。そしてパティのオリジナル曲「Little Fire」。暖かい哀愁の溢れる良い曲なんですよね~。しかもゲストのエミルー・ハリスがハーモニーをつける。極上です。そしてラストを締めるトラッド「All Creatures Of Our God And King」。まるで神に捧げるような歌唱が感動的。素晴らしい!! ちなみにバディ・ミラーとパティ・グリフィンは、ロバート・プラントのソロ作「BAND OF JOY」に参加し、バンド・メンバーとしてツアーにも同行しているようです。

2010年 ベストアルバム6位-4位

2011-02-01 13:30:57 | 2010年総括
第4位

SOLOMON BURKE & DE DIJK / HOLD ON TIGHT
キング・オブ・ソウル、ソロモン・バークの遺作。アムステルダムのDE DIJKというバンドとのコラボ作品。正直、これが無ければウィリー・ミッチェルとの「NOTHING'S IMPOSSIBLE」がもっと上位に来たはずなんですけど、これを聴いてしまうとね~。もちろん「NOTHING'S IMPOSSIBLE」も素晴らしい作品だと思いますよ。特にソロモン・バークのディープ・ソウルな面をあれほど堪能させてくれるアルバムは近年では無かったですからね。まさに「待ってました!」という作品でした。ですが、メロウに偏りすぎていたようにも思うんです。こちらの「What A Woman」なんかで弾けんばかりの大きな歌を聴かせるソロモン・バークを体験しちゃうと、これぞソロモン・バーク!と嬉しくなってしまう訳ですよ。と同時に遺作という悲しみも強くなってしまうんですけどね…。1曲目のタイトル曲「Hold On Tight」の哀愁溢れる歌声も良いですよね。DE DIJKのフォーキーなルーツ・ロックにオルガンとホーンがソウルフルに絡む感じもまた良い。このDE DIJKというバンド、正直よく知らないんですけど、本国オランダでは82年にアルバム・デビューした、結構なベテラン・バンドのようですね。ロック的なエッジと芳醇なルーツ指向が溶け合ったサウンドで、見事にソロモン・バークの歌声をバック・アップしています。そして全12曲、DE DIJKとソロモン・バーク共作によるオリジナル曲ですからね。強烈なブルース・ギターで始まる「No One」。これ良い曲ですよね~。サビのグワ~!と盛り上がる感じ、ブルージー且つエモーショナル爆発なソロモンの歌唱! こんな風に歌える人、他にいませんよね。これは泣けます。マンドリンの音色がトラッド的な郷愁を誘う「More Beauty」、この曲なんかも近年のソロモン・バークならではの陰影に引き込まれます。ブラス・ロックな「I Gotta Be With You」の爽快感も最高! 跳ねるピアノが秀逸な「Don't Despair」も凄まじく良い曲。ホーン・アレンジも特筆ものですが、大海原のようなソロモン・バークの歌声がまた堪らない。そして強烈なジャンプ・ナンバー「What A Woman」。これライヴで聴きたかったな~。一体感で攻めまくるバンドも良いですし、それに負けないソロモンの勢いも最高! 亡くなられたのは残念でなりませんが、最後にこんな素敵なアルバムを届けてくれたソロモン・バーク。素晴らしい!!合掌。

第5位

AARON NEVILLE / I KNOW I'V BEEN CHANGED
ご存知ニューオーリンズの至宝、アーロン・ネヴィルの最新作。プロデューサーはジョー・ヘンリー。とくればもちろんリズム隊はベルローズ&ピルチ。さらにアラン・トゥーサンのピアノ。しかも内容はゴスペル作品という、こんなの悪い訳がありませんよね~。まずなにはともあれアーロンの歌声ですよ! 確かに全盛期に比べれば衰えたかもしれません。ですがそれ故にこれまでに無いほど土っぽい響きを聴かせてくれる。冒頭「Stand By Me」での歌唱の素晴らしいこと! 天使のようなファルセットには絶妙な枯れが加わりえも言えぬ味わいを醸し出し、艶やかな地声はトロリとした甘さの中に円熟の旨味を滲ませる。そして“黒いヨーデル”と評される独特の喉まわしはまさに異次元の響き。敢えて生々しい声の質感を際立たせたようなジョー・ヘンリーの手腕も流石。アーロン節を心行くまで堪能出来ます。そして全編で軽やか且つ愛らしく響くアラン・トゥーサンのピアノが良い! 2010年の「ルーツな日記」的助演男優賞を選べと言われれば、迷わずこのアルバムのアラン・トゥーサンを選びますよ! いかにもトゥーサン流な鍵盤さばきが絶妙なアクセントになっていて、作品に一層の深みと輝きを与えています。流石はアラン・トゥーサン! って言うか、アーロンの作品をトゥーサンが全面的にバック・アップしているという事実が嬉しいですよね。楽曲も、オデッタで知られる「Meetin' At The Building」、フレッド・マクダウェルの「You've Got To Move」、マール・トラヴィスの「I Am A Pilgrim」など、見事な選曲。ベルローズ&ピルチの独特なスウィング感も素晴らしいですが、アーロンの歌うゴスペルに、土っぽいグレッグ・リーズのスライドを絡ませる辺り、流石はジョー・ヘンリー! 彼らしい楽器独自のタッチを捉えるような、素朴且つ奥行きの深いサウンドが、現在のアーロンの魅力を見事に浮き上がらせていますね。彼がプロデュースをすれば全てが傑作になってしまうような風潮もどうかと思いますが、これは間違いなく傑作。


第6位

CEDRIC WATSON ET BIJOU CREOLE / CLEOLE MOON: LIVE AT THE BLUE MOON SALOON
ケイジャン/ザディコ界の若きプリンス、セドリック・ワトソン。最新作はこちらのライヴ盤。もう最高ですよ! 前スタジオ作「L'ESPRIT CREOLE」もクレオールの伝統に根ざした味わいが素晴らしかったですが、ライヴはさらに凄い!いきなりローリングしまくるグラグラとしたノリで攻める「Afro Zydeco」からスタート。って言うかこれはヤバいですよ! 外出中にイヤホンなんかで聴いてても、思わず踊り出さずにいられませんからね。跳ねるドラム、うねるベース、ひたすら刻むギター、そしてグルーヴするアコーディオン。土着したノリならではの躍動感に溢れています。力強くハリのある歌声も良いですね。さらに特筆すべきは西アフリカの弦楽器、コラ奏者のMorikeba Kouyateの参加。ケイジャン/ザディコのリズムに乗るコラの音色。斬新ですね~。近年の若者らしく、ロック、ファンク、ヒップ・ホップ等とのクロスオーバーに走るのではなく、アフリカに目を向けるセドリック・ワトソン。クレオールの土着性を掘り下げながらも海を越えたルーツに遡るような姿勢に拍手ですね。またセドリックは、アコーディオンだけではなく、フィドルも弾く。その妙技はほぼフィドル独奏で披露される「Canray's Jig」で堪能出来ますが、フォーキーな哀愁を感じさせる「The Corner Post」や、それに続く寂れたスロー・ナンバー「Pa Janvier」の味わいも格別。またこの「Pa Janvier」での歌が良いんですよ~! まるで“侘び寂び”の世界。クレオールの言葉なのか何語なのか私にはよくわからないのですが、この語感というか響きが妙に滲みるんですよ。そして最後を締める「Juré」はトラッドらしいのですが、ケイジャンとアフリカだけではなく、マルディグラ・インディアンやカリブ的な雰囲気も混ざっているという、このミクスチャー感も素晴らしい。土地及びその文化に根ざした古き良き伝統と、若き探究心と冒険心に溢れたこの人、実はテキサスの出身らしくて、だからこそルイジアナ南部の音楽への真摯な探究心と、輝けんばかりに瑞々しい新鮮さが同居しているのかもしれませんね。

2010年 ベストアルバム10位-7位

2011-01-30 20:30:32 | 2010年総括
第7位

GIL SCOTT-HERON / I'M NEW HERE
ソウル界の吟遊詩人ギル・スコット・ヘロン。13年振りとなる最新オリジナル・アルバム。ストリングスをバックにしたオープニングのポエトリー・リーディングから、デジタルなビートの鳴りに力強い歌唱が絡む「Me And The Devil」へ。なんとロバート・ジョンソンのカヴァーですよ! ロバジョンをこんな風に歌うとは! さらに「Your Soul And Mine」などヘヴィなリズムにドロリとした朗読が乗るダークな質感は下のトリッキーにも通じる世界。一方、アコギをバックに優しく呟くように歌い語る「I'm New Here」、ボーナス・トラックながらジャズ・ピアノをバックにスキャットまで披露するその名も「Is That Jazz」など一筋縄では行かない。ハイライトはピアノとシンフォニーをバックにした「I'll Take Care Of You」でしょう。歌詞はラヴ・ソングのようでもありますが、その歌声には絶望感のような嘆きが濃厚。アルバム全体を貫く世界観は、私のような凡人にはなかなか分かりにくいですが、限りなくディープなその音像と声には、何故か心をえぐられる。手拍子を中心にしたプリミティヴなリズムにざらついた声、そこに電子音と女性コーラスが絡む「New York Is Killing Me」も強力。レジェンドでありながら、これ程までに刺激的な作品を現代に落とすギル・スコット・ヘロン、彼もまた怪物。

第8位

TRICKY / MIXED RACE
トリップ・ホップ界の寵児トリッキー。彼こそ現在のブルースマンだ!と本気で思っていたりするところが「ルーツな日記」流。だからと言ってブルース・ファンの皆様、トリッキーってブルースなの?って思わないでくださいね、全然ブルースではないですから…。とは言え、デビュー以来、混沌とした魔力的なサウンドを打ち立ててきたトリッキーですが、今作ではよりルーツ的な方向へ魔力を求めてきたように感じます。サン・ハウス辺りのミシシッピ臭が香る「Every Day」、トリッキー自身が“俺流のジャズ・ソング”と語る「Early Bird」、アルジェリア音楽ライのミュージシャンを招いた「Hakim」、呪術的ヴォーカルと緩く跳ねるリズムが不気味なスカ曲「Come To Me」など。ブラックな源流と先鋭が混ざり合いながらドロドロとしたダークネスが流れてきます。女性シンガーのフランキー・ライリーも良いですし、そこかしこでガレージな異臭を放つギターと鄙びたホーンも秀逸。さらに「UK Jamaican」のようなエレクトロなダンス・ミュージックもありますが、何となくローウェル・フルスン辺りのファンク・ブルースを想起させられなくもない。エコー・マイノットの「Murder Weapon」も元を辿れば「Peter Gunn Theme」ですしね。本物のダーク、しかしポップでもある、そしてクール、さらにスウィート!

第9位

T-MODEL FORD / THE LADIES MAN
97年にかのファット・ポッサムから、歪んだエレキ・ギターをぶいぶい言わせながらデビューしたミシシッピの怪物T-モデル・フォード。そのデビュー時で既に70代後半の爺さんでしたが、その爆裂振りはいったい何所から見つけてきたの?というインパクト絶大でした。今作はそのT-モデル・フォードによる全編アコースティック作品。T-モデルはディストーションの鎧を脱いでも本物でした。リアル・ブルースの極致。アルバムの完成度などは無意味に思える程、ただただ素のブルースがあります。シンプルだからこそ、かえってT-モデルから滲み出るようなディープな汁を感じることが出来ます。1曲目の「Chicken Head Man」なんて同じようなギター・フレーズが延々続く感じなんですが、その鈍く曇ったような音色と深く吟ずるようなヴォーカルには、「ミシシッピ・ブルースってトランス・ミュージックなんだな」と再認識させられます。ほとんど一発取り的なリラックスした雰囲気なれど、「Two Trains」「I Love You Baby」「My Babe」「That's Alright」など、生々しくも魔力的なブルースの連続。T-モデルによる唸り声もディープ! 聴けば聴く程ハマっていく…。

第10位

THE HOLMES BROTHERS / FEED MY SOUL
ホームズ兄弟を中心にしたゴスペル・ソウル・トリオの最新作。前作では洗練されたオーガニックな開放感を感じさせてくれましたが、今作は初期に戻ったかのようなベタなノリと言いますか、ベタベタな感じが堪りませんね。3人の醸すこの感じ、これぞホームズ・ブラザーズですよ! グルーヴィーなオープニング曲「Dark Cloud」からグッと引き込まれます。そして「Living Well Is The Best Revenge」「Edge Of The Ledge」「Put My Foot Down」などオリジナルのミドル・ナンバーが最高ですね。人懐っこい温もりと粘りを持ったリズム、滋味に溢れる三人のヴォーカル、なんか聴いてて顔がほころんじゃいます。そして「Feed My Soul」や「I Saw Your Face」、「Pledging My Love」といったスロー・ナンバーの素晴らしさは言わずもがな。「Pledging My Love」なんて色々な人に歌い継がれる大スタンダードですが、飾り気の無いしっとりとしたアレンジと、ソウルフルなウェンデル・ホームスの歌が良いですね。カヴァーと言えば、ビートルズの「I'll Be Back」をちょっと変わったアレンジで仕上げる辺りかなりユニーク。そしてラストを締めるゴスペル曲「Take Me Away」が滲みます。

2010年 ベストアルバム20位-11位

2011-01-28 13:07:48 | 2010年総括
第11位

KARMIT RUFFINS / HAPPY TALK
ニューオーリンズを代表するトランぺッターの一人、カーミット・ラフィンズ。こういったオーセンティックなニューオーリンズ・ジャズを聴くとホッとしますね。跳ねるリズムにビッグ・バンドっぽいホーン・アレンジが冴え渡ります。別に新しいことは何もやってないかもしれません。ですがだからと言って古くもない。これぞニューオーリンズ!

第12位

JIM LAUDERDALE / PATCHWORK RIVER
残念ながら日本ではほとんど話題にならないジム・ローダーデイル。近年はブルーグラス作も評判ですが、こちらはアメリカーナなカントリー・ロック。正直、歌詞についてはよく分かりませんが、全曲ジムとロバート・ハンターによる共作というのも興味深いです。アメリカの大地を感じさせてくれる快作。

第13位

TROMBONE SHORTY / BACKTOWN
ニューオーリンズ・ファンなら誰もが知っている“トロンボーン・ショーティ”ことトロイ・アンドリュース。このアルバムでいよいよメジャーに名乗り出ました。鋭角的でファットなリズムとヘヴィ且つアグレッシヴなアレンジが強烈なミクスチャー・ファンク。これはニューオーリンズに限らず、ブラス・ファンクの希望です。

第14位

SOLOMON BURKE / NOTHING'S IMPOSSIBLE
ソロモン・バークがかのウィリー・ミッチェルと組んだ極上サザン・ソウル。何の運命かこれがリリーズされた年に二人とも亡くなられてしまうと言う悲劇。ミッチェルの施すメロウなメンフィス・サウンドをバックに歌う哀愁たっぷりなバークの歌唱はホント凄い!

第15位

BOBBY CHARLES / TIMELESS
ルイジアナが生んだ愛すべき名シンガー、ボビー・チャールズの遺作。この揺る~いノリが堪りません。優し気で、どこか厭世的でもあるボビーの歌声が滲みますね。ドクター・ジョン、サニー・ランドレスも良い仕事しています! ただ、ジャケ写はもうちょっと格好良く出来なかったもんでしょうか…。

第16位

CORINNE BAILEY RAE / THE SEA
フジロックでのパフォーマンスも素晴らしかったコリーヌ・ベイリー・レイ。正直あのライヴを観てこのアルバムの聴こえ方も大分変わってきたんですけど、そんな+αも含めて大好きなアルバム。トロリと溶け込むようなブラックネス、ジワジワと滲みるエモーション、今時のR&Bとは一線を画す孤高のウーマン・ソウル。

第17位

WILLIE NELSON / COUNTRY MUSIC
この人の大御所にして多作、しかも傑作続き振りはホント賞賛してもしきれない程です。今作はTボーン・バーネットをプロデューサーに向かえ、トラッドやカントリーの名曲を収録。ドラムレスながらふくよかなリズムを感じさせるサウンドが秀逸。バディ・ミラーやジム・ローダーデイルの参加も嬉しい。

第18位

FEMI KUTI / AFRICA FOR AFRICA
アフロ・ビートの創始者フェラ・クティの息子、フェミ・クティ。押し寄せるリズムに唸りを上げるホーン・リフ、祝祭的且つ呪術的なヴォーカル&コーラスのレスポンス。曲が進めば進む程ディープな世界に支配されていく。これこそアフロビートですよ!

第19位

ERYKAH BADU / NEW AMERYKAH, PT.2-RETURN OF ANKH
まるで宇宙のような広がりを感じさせるエリカ・バドゥの最新作。前作の続編という形ですが、どちらかと言うとデビュー時のような神秘的な“揺れ”を感じさえてくれる、ジャジーでメロウな仕上がり。と言っても原点回帰ではなくあくまでも未来図を見せてくれるような先鋭的なヴァイブは流石エリカ・バドゥ!

第20位

DUMPSTAPHUNK / EVERYBODY WANT SUM
アイヴァン・ネヴィル率いるニューオーリンズ・ファンク・バンド。流石にネヴィルズ第2世代だけあってリズム隊と鍵盤&ギターの絡みが濃密。日本じゃほとんど買えない状態なのが辛いところですが、dumpstaphunk.bandcamp.comというサイトで全曲試聴出来ます。レイモンド・ウェバーのキレキレのドラムスも最高!

2010年 ベストアルバム30位-21位

2011-01-26 21:53:39 | 2010年総括
第21位

Robert Randolph & The Family Band / We Walk This Road
Tボーン・バーネットをプロデューサーに向かえ、前作のファンク路線から、よりルーツ・ロックな方向へシフトしきた快作。ジェイ・ベルローズとジム・ケルトナーによるふくよかなリズムが肝。そしてランドルフの個性豊かなスライドが縦横無尽に駆け巡る。ジョン・レノン「I Don't Wanna Be A Soldier Mama」のカヴァーも秀逸。

第22位

THE CHIEFTAINS FEATURING RY COODER / SAN PATRICIO
アイリッシュ最重要バンドのチーフタンズが、メキシカン系のアーティストを招き、メキシコ戦争におけるアイリッシュ移民の勇気と悲劇を元に製作された、アイリッシュとメキシコ音楽の邂逅。ライ・クーダーはその監修役といった感じでしょうか? 私にとって、ゲスト・アーティストはほとんど知らない人達でしたが、流石に味わい深いです。これを教科書にそっちの世界をたぐってみるのも面白いかも?

第23位

MOSE ALLISON / THE WAY OF THE WORLD
ジャズ・ピアニストでありながら、多くのロック・アーティストに影響を与え、ザ・フーがカヴァーした「Young Man Blues」のオリジネイターとしても知られるモーズ・アリソン。12年振りとなる最新作はジョー・ヘンリーがプロデュース。ベルローズ&ピルチのリズム隊にモーズ・アリソンのピアノが絡む。80過ぎとは思えない味のある歌声も素敵!

第24位

ROBERT PLANT / BAND OF JOY
グラミー受賞で大物としての貫禄を完全に取り戻した感のあるロバート・プラントのソロ作。あのアリソン・クラウスとの共演に比べれば、よりロック的な作品なれど、バディ・ミラーがプロデューサーに名を連ねるだけあり、オルタナ・カントリー系の広がりと深みを感じさせてくれる。プラントのヴォーカルも思いのほか良いです!

第25位

HOSEA HARGROVE / TEXAS GOLDEN NUGGET
ダイアルトーンからの新たな刺客、ホウジア・ハーグローヴ。御年81歳と言う大ベテランにして本人曰く“伝説のブルースマン”。ジミー・ヴォーンに影響を与えた方だそうなので、テキサスでは本当に伝説的な人なのかもしれませんが、強烈ないなたさでファンキーに決める様は相当エグイ! やっぱブルースはこうでなくちゃ!

第26位

JOHN SMITH / MAP OR DIRECTION
英国フォークの系譜を継ぐ逸材ジョン・スミス。英国らしい内省的且つ幻想的な雰囲気を醸しながら、米南部フィーリングも感じさせる、表情豊かなSSW作品。自由自在に紡がれるアルペジオの繊細な響きと、時に野太くエキセントリックな歌唱を聴かせる、優しくも暖かな歌声。米南部を旅しながら録音したと言う世界観も秀逸。

第27位

ASA / BEAUTIFUL IMPERFECTION
ナイジェリアから世界に羽ばたく若きソウル・クイーン、アシャ。12月に出たばかりのセカンド作。ナイジェリアン・ソウルとでも呼びましょうか? 静かなフォーク・ソウル的な楽曲も素晴らしいですが、ポップなアップ・テンポ曲も独特なスウィートネスがあって惹かれます。土っぽくも艶っぽいアシャの歌声がまた良いですね~。

第28位

BUDDY GUY / LIVING PROOF
1曲目「74 Years Young」のギター・ソロを聴いた瞬間、なんか笑っちゃいました…。流石に弾きすぎでしょう?みたいな。元気過ぎるにも程がありますよ! ギガギガし過ぎた音色もどうかと思う。でも歌は良い! BBキングとの共演も素晴らしい! そして最後はバディの勢いに納得させられてしまう。そんな強引に寄り切るエネルギーに満ち溢れた怪盤。

第29位

SHE & HIM / VOLUME TWO
女優ズーイー・デシャネルがマッド・ウォードと組んだSHE & HIMのセカンド作。60年代のガールズ・ポップな雰囲気を瑞々しくも甘酸っぱく甦らせつつ、二人ならではの世界を感じさせる素敵な作品。ロマンティックなズーイーの歌声にからむ、レトロななかにキレを感じさせるマッド・ウォードのギターが光ります。

第30位

BETTY LAVETTE / INTERPRETATIONS: THE BRITISH SONGBOOK
これだけコンスタントに力作を出し続ける女性ソウル・シンガーは、ベティ・ラヴェットを置いて他にはいないでしょう。この最新作は、ビートルス、ツェッペリン、ストーンズなど、ブリティッシュ・ロックをベティがR&B解釈で歌うという、いかにも昨今ありそうな企画なれど、その圧倒的にソウルフル且つブルージーな歌唱には、企画すら凌駕する凄みを感じさせられます。



さて、ようやく2010年の「ルーツな日記」的ベスト・アルバム30です。なかなか苦労しました。特に30枚に絞るのに。ま、順位の方はさほど意味はありませんよ。何度も書きますが、別に何かのデータを集計した訳ではありませんからね。ただ私個人の趣味と気分で並べた30枚です。まあ、アレが入っていない!とか、なんでアレよりアレが上なんだ!とか色々あるかもしれませんが、その辺はお手柔らかに。では、順次発表していきますのでお楽しみに!

2010年 リイシューベスト10

2011-01-23 14:06:43 | 2010年総括
第1位

TAMMI TERRELL / COME ON AND SEE ME : THE COMPLETE SOLO COLLECTION
マーヴィン・ゲイとのデュエット・パートナーとして知られるタミー・テレル。こらはそのデュエットではなく、彼女のソロ・レコーディングを纏めた2枚組、HIP-O SELECTから。これはファンにとっては堪らない代物ですよね! かくいう私も今年最も興奮させられたアルバム。61年のデビュー・シングル「If You See Bill」から、ジェイムス・ブラウン一座に入っての「I Cried」、モータウンからの幻のソロ・アルバム「IRRESISTIBLE」など、レア音源、未発表曲含めてほぼ年代順に全部入ってる。そして何と言っても4曲のライヴ音源! まさかタミー・テレルのライヴが聴けるとは思いませんでした。しかもこれがスタジオ録音以上に瑞々しい歌声で、もう心底参ってます。「IRRESISTIBLE」からの「I Can't Believe You Love Me」と「Come On And See Me」が最高なのは言わずもがなですが、「Almost Like Being In Love」なんていうジャズをスウィンギーに歌うタミーも良い!メドレーではスプリームスの「Baby Love」も歌ってる。もう、とにかくタミーの歌声にメロメロです。


第2位

NEVILLE BROTHERS / AUTHORIZED BOOTLEG : WARFIELD THEATRE SAN FRANCISCO, CA FEBRUARY 27, 1989
名盤「YELLOW MOON」発表直前と言う、最強時代へ突入した瞬間のネヴィル・ブラザーズによるまさに最強ライヴ。しかも選曲から曲順までこれ以上にないと言える程に鉄板のセット。それをおそらくフルセットで収録した2枚組、こちらもHIP-O SELECTから。この時期のネヴィルズのライヴを全編通しで堪能出来る喜び。とにかくグツグツと煮込んだようなガンボなリズムが圧巻。そして元気なシリルも凄いけど、天にも突き抜けんばかりに力強くも美しいアーロンのファルセットに感動。

第3位

DELANEY & BONNIE / ON TOUR WITH ERIC CLAPTON
クラプトンが参加したデラニー&ボニー&フレンズの歴史的英国ツアーを記録した名ライヴ盤を大幅に拡大し、なんと4夜分収録した4枚組ボックス。こちらはRHINO HANDMADEから。正規盤では分からなかったライヴの全体像が楽しめるのが嬉しい。しかも4夜の聴き比べも出来る。ただセット・リストは概ね変わらないので、かなりのマニア向けかもしれません。ですがこの内容と分量ですから、聴き進めるうちにどんどんスワンプの深みに浸かれます。

第4位

JUNIOR WELLS & THE ACES / LIVE IN BOSTON 1966
これぞシカゴ・ブルース! ジュニア・ウェルズがあのエイシズをバックに従えた66年のライヴ! よくぞ発掘してくれました。こんなの悪い訳がありませんよね。ジュニア・ウェルズにとっては傑作「HOODOO MAN BLUES」をリリースした翌年ですから、ノリにノっている時期ですよね。しかもエイシズは元々50年代の初めにウェルズとやっていたバンド。と言うよりウェルズのバンドだったと言っても良いんですかね? これはある意味、夢のリユニオンです。

第5位

SPENCER WIGGINS / FEED THE FLAME: THE FAME AND XL RECORDINGS
これはサザン・ソウルの桃源郷です。スペンサー・ウィギンスのFAME/XL録音集。この歌声!滲みますね。マスル・ショールズ録音のバックも素晴らしい! 「Love Attack」、「Let's Talk It Over」、「I'd Rather Go Blind」、「Love Machine」、どれも最高。そしてドドーンっと未発表曲も!

第6位

BOB DYLAN / THE BOOTLEG SERIES vol.9 : THE WITMARK DEMOS 1962-1964
このWITMARK録音は、過去にコンピで何曲かは世に出ていますが、これだけの数を一気にリリースしてしまうボブ・ディランはやっぱ凄い! しかもまったく正規リリースすることを考えずに録音したものですからね。ディランの演奏もさることながら、当時の音楽業界の仕組みみたいな物も垣間みれて面白い。

第7位

VA / CLASSIC SOUNDS OF NEW ORLEANS FROM SMITHSONIAN FOLKWAYS
フォークウェイズが編んだニューオーリンズ・コンピ。これはやられましたね。やっぱりニューオーリンズでもフォークウェイズが編纂すると一味違う。いわゆるヒット・チャートを中心にしたメインストリームのクラシックを集めたものではなく、街の深部へ一歩踏み込んだような録音の数々。ニューオーリンズの街の臭いが感じられます。

第8位

R.L.BURNSIDE / ROLLIN' & TUMBLIN'
ミシシッピ・ヒルカントリー・ブルースの王者R.L.バーンサイド。75年、89年、91年の録音を集めたもの。つまりファット・ポッサムでのブレイク以前のバーンサイドが堪能出来ます。これだけプリミティヴなミシシッピ・ブルースは、もうこの人が最後かもしれません。

第9位

ALICE CLARK / THE COMPLETE STUDIO RECORDINGS 1968-1972
68年のデビュー以降、数枚のシングルと1枚のアルバムだけで姿を消してしまった女性ソウル・シンガー、アリス・クラーク。そのシングルとアルバム収録曲、さらに未発表曲を1曲加えたコンプリート集。コンプリートと言ってもたったの16曲。しかもほとんどが既発曲という点でレア度は薄いですが、その内容は素晴らしい!

第10位

BOB DYLAN / IN CONCERT - BRANDEIS UNIVERSITY 1963
日本では「ウィットマーク・デモ」と「モノ・ボックス」を両方買うことで貰えたこのCD。1963年にマサチューセッツのブランダイズ大学で行なわれたフォーク・フェスに出演した際のライヴ音源。内容もレア度も申し分無いのですが、もう少し簡単に手に入るようにして欲しかった…。



以上、2010年「ルーツな日記」的リイシュー及び発掘物ベスト10です。もちろん、何かのデータを集計した訳でもない、ただ私個人の趣味と気分で並べたベスト10ですのであしからず。

さて、昨年は例年にない程リイシュー盤にやられた年でした。特にタミー・テレルとネヴィル・ブラザーズには参りました。この2枚はこの先も我が家の家宝です。そして、残念ながら圏外とさせて頂いた物では、ストーンズの「ならず者」なんかも超興奮させられたんですけど、個人的な気持ちとしては、アウトテイクは出来るだけ手を加えずにリリースして欲しいな、というのも正直なところではあるんですよね~。ジョン&ヨーコの「ダブル・ファンタジー」も良かったですけどね。それとソウル系で評判のシル・ジョンソンは、まだ買ってないんです…。

さて、次回からはいよいよ2010年ベスト・アルバムです。お楽しみに!

2010年 ブライテストホープ

2011-01-21 10:41:33 | 2010年総括
JOHN SMITH / MAP OR DIRECTION

「ルーツな日記」的2010年の新人賞、第1位。これはもう迷うこと無くジョン・スミスです! まずはアルバム「MAP OR DIRECTION」(写真)が素晴らしい! 自らの臨死体験を元に作ったという1曲目の「Invisible Boy」。素朴に爪弾かれるギターの音色が揺れるように滲みる。静かに歌われるジョンの歌声は暖かくふくよかで、そのふくらみに徐々に包み込まれていくような錯覚を覚える。耳を澄ませば虫の鳴き声のようなノイズ、そして風が吹き抜ける。このアルバムはジョンがアメリカ南部を旅しながら、浴室、酒場、森の中、橋の下、バイユーなど、思い思いの場所で録音して完成されたそうです。しかしそんなジョン・スミスは英国人。ジョン・レンボーンやデイヴィ・グレアムなど、英国フォークの系譜を受け継ぐ逸材なのです。彼のギターは巧みなフィンガリングによって楽曲各々の風景を繊細に紡ぎ出し、英国らしい何処か幻想的な世界を描きます。

「Invisible Boy」が静かに終わり、風音と交差するように「Hands」の力強くパーカッジヴな弦裁きが聴こえてくる。この曲での卓越したリズム表現には引き込まれますね。続く「Axe Mountain」は夫と友人を殺した殺人鬼に復習する女性の歌だとか。激しくも緊迫感溢れる歌の説得力もすごいですが、速いテンポでもアルペジオを中心に組み立てるクールなバッキングがさらに素晴らしい!鳥の鳴き声が聴こえるフィールド録音という背景もまた秀逸。(途中で銃声が鳴っているらしい。)

優しく陽性なメロディが印象的な「Another Country」、途中で鉄道が通り過ぎていくような音が聞こえる何処かノスタルジックな「The Fear, The Horror」、美しいラヴ・ソング「Swords」など、情緒豊かな曲が並びます。その一方でバンジョーがリードするマウンテン・ソング調の「Watch Her Die」や、大陸的なスライド・ギターが響く「Oliver」など、直接的にアメリカン・ルーツを感じさせてくれる曲も印象的。イングランドのトラッドという「Death And The Lady」なんかでもやたらブルージーなフレーズが顔を覗かせたり。米南部を旅しながら音に込めたその臭いと、英国らしい内省的表現とが混ざり合い、独特な雰囲気が生まれています。

死と旅立ち、恐れと希望、そういったものが表裏一体に存在するかのような神秘的な世界を感じさせてくれるアルバムです。聴けば聴く程、深みを増していきます。


で、このジョン・スミス、ライヴも素晴らしいんです! 昨年、プロモ来日を果たし、インストア・ライヴや、吉祥寺Star Pine's Cafeなどで、その深遠な世界を披露してくれました。その時の様子はこちら↓
ジョン・スミス@吉祥寺Star Pine's Cafe
ジョン・スミス@渋谷タワーレコード&六本木スターバックス


ジョン・スミスについて詳しくはこちら↓
http://www.mplant.com/johnsmith/



さて、第1位に熱くなりすぎたので、2位以降はさくっと行きます。

第2位

ZAZ / ZAZ
09年のフジロックに出演していたフランスのシンガー、ZAZです。再奥のカフェ・ド・パリで3日間歌ってたんですけど、私は2日目に観に行き、衝撃を受けて最終日にまた観に行っちゃいました。そのZAZが2010年にアルバム・デビュー。雰囲気的にはシャンソン+ジプシーのような感じでしょうか。とにかくハスキーながら突き抜けるような歌声に痺れます。スウィンギー且つ情熱的なライヴはもっと凄い!

第3位

ROX / MEMOIRS
来日公演は行きそびれましたが、個人的にはかなりツボに入ってます。今時のバキバキとした商業的なR&Bとは明らかに違う質感が良いですね。レゲエなんかとのクロスオーヴァー振りが、独特な“濃さ”を生んでて格好良いです。そしてなにより良い声してるんですよ!


第4位

Tess Henley / Easy to Love
シアトル在住のテス・ヘンリー。1曲目の短い「Intro To Pompi's Song」からガッツリと心を持っていかれました。全体的には「Easy To Love」に代表されるちょっぴりジャジーでポップなR&Bといった印象ですが、「Disguise」のような陰影の濃いスローも相当良い! 歌い回しに絶妙な“揺れ”があるんですよね。そんな天性のフィーリングにやられます。

第5位

最後はこの人、「アフリカン・フォーク界の新しい宝石」と賞されるヴィクター・デメ。キャリア30年と言いますから全然新人じゃないですが、一応このアルバムがデビュー・アルバムだそうなので。日本発売は2010年2月。しかしこの声と、このキャラ、インパクトありました!

2010年 天に召された偉人達

2011-01-18 17:46:40 | 2010年総括
SOLOMON BURKE & DE DIJK / HOLD ON TIGHT

悲しいことに、昨年も大勢のアーティスト達が亡くなられました。私の大好きな方達も亡くなられました。そんな訳で、偉大なアーティスト達に敬意を表し、ここに追悼したいと思います。

まずは10月10日に亡くなられたキング・オブ・ソウルことソロモン・バーク。正直ソロモン・バークの訃報にはびっくりしました。だってその数ヶ月前にはウィリー・ミッチェルをプロデュースに向かえた力作「NOTHING'S IMPOSSIBLE」がリリースされ、しかも5月には奇跡の初来日公演まで実現し、大所帯のバック・バンドを率いてダイナミックこの上ないソウル・ショーを見せてくれていたのですから。あの日比谷野音で観たソロモン・バークは一生物のライヴでしたね。で、実はソロモン・バークは「NOTHING'S IMPOSSIBLE」のあともう一枚アルバムを作っていました。それはデ・ダイクというオランダのロック・バンドと共に作った「HOLD ON TIGHT」(写真)です。このアルバムのリリース記念ライヴを行なうため、アムステルダムへ向かう飛行機内で、ソロモン・バークは亡くなられたのです。死因は自然死と発表されました。このデ・ダイクというバンドがどのようなバンドで、キング・ソロモンとどんな関係なのか私にはまったくわからないのですが、ただ一つ言えることは、この「HOLD ON TIGHT」が間違いなく傑作であるということ。バンドの瑞々しくも懐の深い演奏をバックに、近年のソロモン・バークならではの大海原のように大きな歌唱と、円熟の渋みをたっぷりと堪能することが出来ます。それにしてもソロモン・バーク、こんなに元気だったのに…。




WILLLIE MITCHELL / SOLID SOUL & ON TOP
2010年1月5日に81歳で亡くなられたウィリー・ミッチェル。かのハイ・レコードでアル・グリーン、アン・ピーブルズ、オーティス・クレイ、シル・ジョンスン、O.V.ライトなどをプロデュースし一時代を築いたメンフィス・ソウルの立役者。やはりプロデューサーとしての名声が名高いですが、実は本人名義のアルバムも10数枚残しています。写真のアルバムは、68年の「ON TOP」と69年の「SOLID SOUL」を2on1にしたもの。ハイらしい重心の低いリズムが踊るファンキーな仕上がりで、鮮やかなホーンセクションも良い感じです。ジャケ写からもわかるように、ミッチェルは実はトランペットの名手だったりもします。



TEDDY PENDERGRASS / TEDDY LIVE! COAST TO COAST
ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツのリード・シンガーとして、70年代のフィーリー・ソウル全盛期の主役となったテディ・ペンダーグラス。ヒット曲「I Miss You」や「If You Don't Know Me By Now」での野太くもハスキーなバリトン・ヴォイスによる、男気たっぷりな“泣き節”は何度聴いてもグッときます。そしてソロ転向後はセクシーなソウルを爆発させ、まさに「セックス・シンボル」としての人気を不動の物としますが、82年の自動車事故により下半身不随となり、車椅子生活を余儀なくされてしまう。しかしそれでも音楽活動を続けた不屈の人。写真は、人気絶頂だった79年にリリースされた2枚組ライヴ盤(LP盤で言うD面はインタビューとスタジオ録音の新曲)。とにかくライヴの熱気にやられます。女性客の悲鳴のような声援も凄いですが、それに応えるかの様にソウルを放出するテディは流石にディープです。ドリフの「ヒゲダンス」でお馴染みの「Do Me」も演ってます。2010年1月13日、結腸がんの手術に伴う合併症のため亡くなられました。59歳でした。



BOBBY CHARLES / WALKING TO NEW ORLEANS
糖尿病や腎臓がんを患っていたというボビー・チャールズ、2010年1月14日に亡くなられました。ルイジアナ生まれでありながら、ウッドストック・シーンの名シンガーとして知られます。写真のアルバムはそのウッドストック以前、60年代のジュウェル/ポーラ録音を集めた編集盤。ビル・ヘイリーの「See You Later Alligator」やファッツ・ドミノの「Walking To New Orleans」は、実はボビーのペンによる曲。それらを含め愛すべき楽曲を、揺る~いフィーリングで歌うボビー・チャールズ。これぞルイジアナ! ウッドストック時代の名盤「BOBBY CHARLES」も良いですけど、こちらも味わい深いです。あ、それと昨年リリースされ、遺作となってしまった「TIMELESS」も素晴らしいです。



MARVA WRIGHT / AFTER THE LEVEES BROKE
ニューオーリンズの女性シンガーは?と聞かれて、真っ先に思い出すのがこのマーヴァ・ライト。惜しくも2010年3月23日に脳卒中のため亡くなられました。まだ60代前半でした。写真は07年リリースの、おそらく彼女の最後のアルバム。バックには June Yamagishi(g)、Davell Crawford(p)、Benny Turner(b)、Eddie Christmas(ds)、Donald Harrison(sax)、Geechie Johnson(per)など、流石に豪華。ファンク・ブルースなタイトル曲や、アラン・トゥーサンがピアノを弾くゴスペルな「God's Good Hands」も良いですが、力で押し切るような「Change Is Gonna Come」が圧巻!あ~、一度生で観たかったです…。



HANK JONES / LAST RECORDING
2010年5月16日、91歳で亡くなられたジャズ・ジャイアンツ、ハンク・ジョーンズ。写真はそのおよそ3ヶ月前の2月に東京で録音され、彼の遺作となったその名も「LAST RECORDING」。この歳にしてこの瑞々しい演奏には驚かされます。トリオに客演したロイ・ハーグローヴ(tp)とレイモンド・マクモーリン(sax)も素晴らしい! 私はなかなかジャズのライヴとか観に行けないんですけど、ハンク・ジョーンズは08年の東京JAZZで一度だけ観ることが出来ました。エレガントなピアノにうっとりさせられました。



THE TEMPTATIONS / TRULY FOR YOU
アリ・オリ・ウッドソン。かのデイヴィッド・ラッフィン~デニス・エドワーズの栄光を引き継いだ元テンプテーションズのリード・シンガー。2010年5月30日、白血病にて死去。58歳でした。写真は彼が初めてテンプスに参加した84年発表の作品。ゴスペル仕込みの力強さと都会的なしなやかさで軽快に歌うアリ・オリが良いですね~。彼の参加はテンプスにとってまさに新時代の幕開けとなりましたね。大ヒットした「Treat Her Like A Lady」では歌だけでなくソングライトにもクレジットされています。日本にも何度も来てくれていますが、残念ながら私は観た事ないんですよね~。ちなみにこのジャケ写で赤い服を着ているのがアリ・オリ・ウッドソンです。



ISLEY BROTHER / 3+3
アイズレー・ブラザーズのベーシスト、マーヴィン・アイズレー。兄達が結成したアイズレー・ブラザーズに73年のアルバム「3+3」から正式加入。ファンキー且つ艶やかなベース・ラインでアイズレー全盛期の屋台骨を支えました。83年の「BETWEEN THE SHEETS」の発表後に分裂という形でアイズレーを脱退しますが、91年に復帰。しかし97年には糖尿病の後遺症から足を切断し、音楽活動から遠のいていたそうです。マーヴィン在籍時のアイズレーは名盤のオン・パレードですが、特に新体制によるファンク化の号砲となった「3+3」はインパクトありますよね。名曲「That Lady」や「Summer Breeze」も良いですが、私は「What It Comes Down To」が好きなんですよね~。2010年6月6日、56歳で死去。



KINKS / KINKS
ピート・クウェイフ、ザ・キンクスの初代ベーシスト。ライヴ盤を含め7枚目のアルバム「THE KINKS ARE THE VILLAGE GREEN PRESERVATION SOCIETY」(68年作)までキンクスに在籍していました。もちろんデビュー作「KINKS」収録の大ヒット曲「You Really Got Me」でベースを弾いているのもこの人のはず。初期のキンクスは良いですよね~。2010年6月23日、 腎不全のため亡くなられました。



PHILLIP WALKER / THE BOTTOM OF THE TOP
97年のパークタワー・ブルース・フェスティヴァルで来日したフィリップ・ウォーカー。私も観に行きましたけど、痺れましたよね~。確かキャンセルになったジミー・ロジャースの代役で急遽出演が決まったように記憶しています。ですがトリの大役を見事に果たしてくれましたね。音色に貫禄があると言うか、シャキッとしたブルース・ギターが印象に残っています。写真のアルバムは彼の代表作で73年のアルバム。50年代から活動している人ですが、アルバムとしてはこれが最初の作品だそうです。格好良いですよ! ホーンセクションに絡むキレのあるギター! 音色の立ち具合や鋭角的なフレーズにはテキサス流儀が感じられますね。実はこの人、ルイジアナ生まれで、幼少の頃にテキサスに移住したそうです。ですがルイジアナに縁があったのか、活動初期にはクリフトン・シェニエのバックなんかも務めていたそうです。2010年7月22日、心不全のため亡くなられました。



JAMES BROWN / LOVE POWER PEACE LIVE AT THE OLYMPIA PARIS 1971
フェルプス“キャットフィッシュ”コリンズ。70年に弟ブーツィー・コリンズと共にジェイムス・ブラウンのバックに参加したギタリストです。JB一座ではあの「Sex Machine」を始め、「Super Bad」「Soul Power」「Give It Up Or Turnit A Loose」「Get Up, Get Into It, Get Involved」などの録音に携わりました。その後はブーツィーと共に、Pファンクに合流し、ブーツィーズ・ラバー・バンドでも活躍しました。写真はそんなキャットフィッシュがJB一座にいた頃の名ライヴ盤。オリジナルJB’Sと呼ばれるこの頃のバンドには、キャットフィッシュ、ブーツィーの他、ドラムにジャボ・スタークス、トロンボーンにフレッド・ウェスリーなどがいました。このライヴ盤はホント凄いですよね~! で、ブーツィーを中心に、このキャットフィッシュ、ジャボ、フレッドにパーカッションのジョニー・グリッグス、さらにヴィッキー・アンダーソンやダニー・レイまで含めたメンバーで、08年のフジロックに来日したんですから、あれは奇跡でしたよね。ホワイトステージで繰り広げられた響宴は、まさにJB’Sの再結成と言っても良いライヴでした。往年のJBファンクを切れのあるカッティングで弾くキャットフィッシュの勇姿。彼はその2年後の2010年8月6日に亡くなられました。66歳だったそうです。



ESTEBAN JORDAN / AHORITA
テックス・メックスが誇る隻眼のボタン・アコーディオン奏者スティーヴ・ジョーダン。チカーノの伝統音楽にジャズ的な要素を織り込みながら独自の世界観を築き上げ、リリースしたアルバムは30を越えると言われる奇才。写真は79年リリースの「AHORITA」。ポルカやクンビアのリズムにのせ軽快にアコーディオンが跳ねる。また「アコーディオン界のジミ・ヘンドリックス」との異名を取るだけあり、1曲目「Falsa Y Mancornadora」でのエフェクトのかかったアコーディオンの音色が飛び交う感じはかなり斬新。2010年8月13日、肝臓ガンのため亡くなられました。



GREGORY ISAACS / LONELY LOVER
レゲエ界のラヴァーマンにして偉大なるレジェンド、グレゴリー・アイザックス。最高のシンガーですよね。映画「ロッカーズ」で「Slave Master」を歌うシーンの格好良さには参りました。私も10年以上前のレゲエ・ジャパン・スプラッシュで彼の勇姿を観ましたが、まあ、随分昔のことなのであまりよく覚えていません…。ただ、本物だ~!みたいな感動があったことは覚えています。写真は80年の傑作「LONELY LOVER」。緩さの中に黒光りするセクシーな声! 素晴らしい! 2010年10月25日、肺がんのため亡くなられました。



CAPTAIN BEEFHEART AND THE MAGIC BANDS / LIVE IN THE USA 72-81
キャプテン・ビーフハート。名作「TROUT MASK REPLICA」など、アヴァンギャルドな作風で知られますが、その底辺にはブルースが横たわっています。写真のアルバムは72年~81年のライヴ音源を集めたもの。客席録りが中心と言う内容なので、音質はそれなりですが、それがまたビーフハートらしい感じもします。ハウリン・ウルフの「Old Black Snake」やスリム・ハーポの「I'm A King Bee」の爆裂カヴァーもあったりで痺れます。決して聴きやすい音楽ではないかもしれませんが、盟友フランク・ザッパと並び、後続に与えた影響は計り知れません。82年のアルバム「ICE CREAM FOR CROW」を最後に音楽活動を引退。以降は画業に専念していたとか。2010年12月17日、69歳で死去。死因は多発性硬化症の合併症のためだそうです。




他にもケイト・マクギャリグル、ゲイリー・シャイダー、アレックス・チルトン、マルコム・マクラーレン、レナ・ホーン、ロニー・ジェイムズ・ディオ、ハーヴィー・フークア、ウォルター・ホーキンス、谷啓、ティーナ・マリー、など本当に沢山の方が天国に逝かれてしまいました。

残念ですけど、仕方ないんですよね…。皆様、安らかに。


2010年 観たライヴ

2011-01-15 14:32:49 | 2010年総括
CAROLE KING & JAMES TAYLOR / LIVE AT THE TROUBADOUR

上原ひろみさんの東京オペラシティ公演を書いて、ようやく2010年のライヴ・レポを全て書き終えた感じで、ホッとしています。いよいよ恒例の年間ベスト・アルバムへと行きたいところですが、ちょっと2010年を振り返っておこうかと思っています。

という訳で今回は私が観たライヴのおさらい。まあ、貧乏なりに色々観ましたけど、中でも印象に残ったものは以下の通り。


01/24 CHICAGO; Blues & Soul Showdown@よしもとプリンスシアター
03/03 ジョン・バトラー・トリオ@代官山UNIT
03/24 ボブ・ディラン@ZEPP東京
03/28 ギャラクティック@渋谷クラブ・クアトロ
04/14 キャロル・キング&ジェイムス・テイラー@武道館
05/30 ソロモン・バーク@ジャパン・ブルース&ソウル・カーニヴァル
06/19 マリア・マルダー&ダン・ヒックス@ビルボードライヴ東京
07/14 ジョン・スミス@吉祥寺Star Pine's Cafe
07/30 コリーヌ・ベイリー・レイ@フジロックフェスティヴァル
07/31 デレク・トラックス&スーザン・テデスキ・バンド@フジロックフェスティヴァル
07/31 ジョン・フォガティ@フジロックフェスティヴァル
07/31 モリアーティ@フジロックフェスティヴァル
08/01 モー@フジロックフェスティヴァル
08/08 スティーヴィー・ワンダー@サマーソニック2010
08/19 クレア&リーズンズ@丸の内コットンクラブ
08/26 ダン・ペンwithボビー・エモンズ@ビルボードライヴ東京
09/12 カルロス・ジョンソン@赤坂B♭
10/08 ジェフ・マルダー&エイモス・ギャレット@渋谷クラブクアトロ
10/11 WORLD BEAT 2010 @日比谷野外音楽堂
11/21 マウントシュガー@誠月
11/28 スタンリー・クラーク・トリオ@ブルーノート東京
12/13 トロンボーン・ショーティ@渋谷クラブクアトロ
12/27 カウント・ベイシー・オーケストラwithレディシ@ブルーノート東京
12/28 上原ひろみ@東京オペラシティ



やっぱり何と言ってもフジロックですよね! 特に土曜の夜、ジョン・フォガティ~デレク&スーザン~モリアーティという流れは、とんでもない程の濃密さでした。でもアーティスト単体での2010年ベスト・ライヴは?と問われれば、それはサマソニで観たスティーヴィー・ワンダー! これはホント素晴らしかったですよ! 夏の野外で観るスティーヴィー、最高でした!

夏フェス以外では3月から5月に掛けてボブ・ディラン、キャロル・キング&ジェイムス・テイラー、ソロモン・バークと、大物が立て続けに来日しましたよね。ディランはまさかのオールスタンディングによるライヴハウス公演でしたし、SSWシーンのソウルメイト、キャロル・キングとジェイムス・テイラーが共演で観れた喜び、そして最後のソウル・レジェンド、ソロモン・バークは奇跡の初来日。しかしソロモン・バークはその数ヶ月後に亡くなられてしまったんですよね…。ホント貴重な来日公演でしたし、素晴らしいステージでした。

マリア・マルダー、クレア・マルダー、ジェフ・マルダー。ルーツ愛好家には特別な名前であるマルダー姓を持つ方々が次々に来日してくれたのも特筆もの。しかもマリアはダン・ヒックスと、ジェフはエイモス・ギャレットと共演と言う、これまた貴重なライヴでした。しかもクレアもこの単独来日のあと、ヴァン・ダイク・パークスとの共演で再び来日してるんですよね~。残念ながらそちらは見逃しましたが…。

そして嵐のように日本を駆け抜けていったスタッフ・ベンダ・ビリリ。アフリカン・スピリッツをまざまざと見せつけられたWORLD BEAT 2010は熱かった! さらにニューオーリンズからはギャラクティックとトロンボーン・ショーティーが新時代の到来を告げるような溌剌としたライヴを披露してくれましたね。ニューオーリンズを愛好する私にとって、この2組の勢いにはワクワクさせられました。今後の活躍もまた楽しみです!


*写真は昨年リリースされたキャロル・キング&ジェイムス・テイラーの共演ライヴ盤。07年、ロサンジェルスのトルバドールで収録。これ観ると来日公演を思い出しますよね~。