しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

「奥の細道」今日よりや書付消さん笠の露 (山中温泉)

2024年09月13日 | 旅と文学(奥の細道)

江戸を出てからずっと一緒だった芭蕉と曾良は、曾良の病のため山中温泉で別れた。
以後、金沢から同行していた北枝と二人で福井まで旅をつづける。

 

 

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「日本の古典11松尾芭蕉」 山本健吉 世界文化社 1975年発行

今日よりや書付消さん笠の露

(旅の門出に、笠の裏に「乾坤無住、同行二人」と書いたのだが、
今日からは一人旅だから、その笠に置く露で、その書付を消してしまおう。
寂しいことだ。)

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旅の場所・石川県加賀市「山中温泉」 
旅の日・2020年1月28日                  
書名・奥の細道
原作者・松尾芭蕉

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「芭蕉物語」  麻生磯次 新潮社 昭和50年発行

今日よりや書付消さん笠の露

露は季語であるが、これには複雑な意味がこめられている。
露は消え易いものであるから、会者別離のはかなさとか、露は涙にたとえられるので、別離の涙という意味もある。
また曽良の旬の「萩」との関連も考えられる。
「書付」は巡礼が笠に書く「乾坤無住、同行二人」の文字をいう。
天地の間に留まることなく、仏と我と一体となって旅をするという意味であるが、転じて同伴者二人の意に用いたのである。
「笠の露」は、笠の上におりているである。
笠は檜笠の類で、行脚の僧などがかぶるものをいう。
笠の上に置く露は消えやすいものであるが、
人の世の姿も笠の露のようにはかないものだという寂寥感が、「笠の露」という言葉の中にこめられている。

これまでは笠に「同行二人」と書きつけて、一緒に旅を続けて来たが、
今日からはひとりぼっちの旅になるのだから、同行二人という文字を、折から笠に置いた露で消してしまおう。
さてさて会者定離は人生ので、笠の上に置く露のように、はかないものである、というのである。

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「超訳芭蕉百句」 嵐山光三郎  筑摩書房 2022年発行

どこまでもしつこく芭蕉につきまとったのは北枝で、
山中温泉から福井の天龍寺までついてきて俳諧技法やあり方をたずねて、それを『山中問答』という聞き書き本にまとめた。
北枝は、芭蕉に心酔して、以後は加賀蕉門の重鎮となった。

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