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高杉良さんの『勁草の人』(その11)

2016年03月10日 | 小説・映画等に出てくる「たばこ」
《さらば興銀特別顧問室》

【323ページ】
「その後、西村は安倍さんと大変親密な兄弟になったと聞いています。お母さんが立派な人だったのでしょう。安倍家に嫁いで一子成したあとで、実家の会社が倒産して、安倍家を追い出されたあと西村家に嫁いで一子成し、二人とも長い間兄弟とは知らなかったそうですから」
合田は緑茶を一杯飲んで退散した。
その間中山は二本煙を燻らせた。
【325ページ】
中山は右翼の大物、四元義隆を同席させて細川に引導を渡した。
「細川さん、潔く降りたらよろしい。四元さんの意見も聞いたが、佐川急便とのつきあいは魔が差したというか、脇が甘すぎると指摘されても仕方ないと思います」
「ご忠告に従います。言い訳したいことは一杯ありますが」
「男を下げるだけのことですよ」
「おっしゃるとおりです」
細川内閣は4月28日に崩壊、263日の短命内閣に終わった。
【339~340ページ】
煙草に火をつけたのは高井の方がほんの少し早かった。
「バブルが崩壊して7年経ちますが、日本はこのまま傾いていくんでしょうか。終身雇用が否定される、日本式経営が非難される時代になっています。中山さんのご意見を聞かせて下さい」
「米国式の株式会社は株主利益が第一というのが基準になっている。しかし僕は米国式には与しない。経営者とは株主だけではなく、従業員、顧客、当該企業が存在する地域社会、さらには日本社会など全部に責任があると思う。終身雇用を否定するのはいかがなものかとも思います」
【340ページ】
中山は煙草を灰皿に置いてコーヒーを飲み、間を取った。
「よく、公的資金を使うのならば、責任をはっきりしろというが、税金を使うからこそ、そのお金を生かすことを考えるべきなんです。昔、山一の日銀特融の時、田中角栄蔵相は公的資金を使うのに無制限と言いました。一見無責任な話ですが、これで資金が生きたんです。大銀行には社会的責任がある。貸し渋りなどもってのほかです」
高井が煙草の煙を吐き出した。
【341ページ】
「どうすれば活力の戻り、何をなすべきなのでしょうか」
中山は2本目の煙草に火をつけて、上体を前に寄せた。
「全人口の8割が中産階級の意識を持ち、貧富の格差が小さいのは貴重な日本の財産です。これを守る方向で税制、社会保障などの政策転換が必要です。現在は明治維新、第二次世界大戦後に続く第三の変革期であり、政策を誤った政策不況に循環不況などが重なった複合不況です。これを乗り切るには優れた危機管理能力が求められる。難関に直面したときは決断が重要です。決断の先送りが不況を長引かせたと思います」

[ken]  抜き書き(その4)《国鉄分割化異聞》で、中山素平さんは国鉄分割民営化に執拗に反対していた田中角栄氏を説得し、本節では細川首相に印籠を渡す場面がありました。興銀特別顧問室は興銀ばかりではなく、政財界の重鎮が数多く訪れました。
また、「終身雇用制度」を否定する世論の中で、中山素平さんは肯定的に評価しています。何よりも、現在のような「格差社会」への危惧を持ち、そうならないための政策転換を強調していますが、残念ながら「悪い予感どおり」に時は進んでしまったようです。
それにしても、中山顧問はその部屋で何本の煙草を吸ったことでしょう。換気しているとはいえ、中山素平さんのチェーンスモーカーぶりによって、壁や天井の汚れは相当ひどかったものと推測できます。(つづく)
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ナベを焦がして考えたこと!

2016年03月10日 | O60→70(オーバー70歳)
▼先日の炊事当番で、私は煮魚に失敗し、生まれて初めて炭ができるほど、ナベをこがしてしまいました。反省の日々です。
▼翌日は、白菜と豚肉のミルフィーユ、豆腐ハンパーグを作り、家族から「合格」をいただきました。
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