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抜き書き帳『永井荷風』(その2)

2016年03月13日 | 小説・映画等に出てくる「たばこ」
『すみだ川』(明治42年8月~10月作)①

【53ページ】
「葭町(あしちょう)へ出るのか。そいつァ豪儀だ。子供の時からちょいと口のききようのませた、好い娘だったよ。今夜にでも遊びに来りゃァいいに。ねぇ、お豊よ。」と宗匠は急に元気づいたが、お豊はポンと長煙管をはたいて、
「以前とちがって、長吉も今が勉強ざかりだしね。」

【79~80ページ】
「いやにふけちまったでしょう。皆そう云ってよ。」とお糸は美しく微笑んで、紫縮緬の羽織の紐の解けかかったのを結び直すついでに帯の間から緋天鵞絨(ひびろーど)の煙草入れを出して、「おばさん。わたし、もう煙草を喫むようになったのよ。生意気でしょう。」

【95ページ】
悠然として巻煙草を吸い初める。長吉は「そうか」と感服したらしく返事をしながら、しかし立ち上がったままに立見の鉄格子から舞台の方を眺めた。

[ken]お豊さんが吸っていたのは、長煙管を使っているので、現在ではとんと見かけなくなった「刻みたばこ」ですね。現在でも市販されているのは「小粋」という小箱ぐらいだと記憶しています。演劇の舞台や日本の伝統芸能である歌舞伎では、演目によって刻みたばこが必要な場合があって、製造技術の継承を含め、将来ともに残しておくべき「たばこ」だと思います。次に、女性がたばこを吸うことは長年、とても贅沢なこととされてきたようですし、お豊さんの言葉にもそれが現れています。
また、私の育った福島県の農村では、女性のお年寄りが隠居(嫁に家のやりくりを一任する)したとき、「これでやっと、私もたばこを吸える身分になりました」と述べていたことを覚えています。私の祖母も60歳近くなってからたばこを吸うようになり、年齢とともにしんせいから始まり、ハイライト、マイルドセブンという銘柄を代え、95歳で亡くなる前年まで愛飲していました。長吉さんは巻煙草ということで、ちょうど刻みたばこから巻たばこにシフトしていた時代であったことが推察できます。
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針仕事はお任せあれ!

2016年03月13日 | O60→70(オーバー70歳)
▼カミさんの仕事で、会社から貸与されたユニフォームのすそ上げをしました。ミシンは別ですが、針仕事は私の趣味みたいなもので、自らかって出ます。子どもの頃から縫い物が好きで、今でも針を手にすると心が落ち着くのです。
▼表地に糸が出ないように、引っ掛ける感じでギザギザに縫っていきます。ユニホーム二本、少々時間はかかりましたが、仕上がりも完璧で、とても楽しいひと時でした。それから、面倒な洋服のボタン付けも大好きです。
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