息をするように本を読む

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お初の繭

2014-10-05 10:42:17 | 著者名 あ行
一路晃司 著

日本ホラー小説大賞受賞。

小学校を卒業したばかりのお初は、同級生3人とともに製糸工場へ向かう。
かつてその工場に向かった少女たちの多くは遺骨すら還らず、彼女たちが
とった絹糸が一束戻っただけということは知っていたが、模範工女として
故郷に錦を飾るわずかな可能性に望みをかけるしかない。
食べることすらままならない貧しい村に生まれ、ほかに選択肢はなかった。

予想に反して製糸工場の寮は清潔で、食事も豊富だった。
身体検査やランク付けなど過酷な出来事はあったのものの、仕事らしい仕事はなく、
のんびりと暮らす日々。しかしその後に待っていたのは地獄だった。

ひとりまたひとりと姿が消える少女たち。
稼働しているはずの製糸工場には残飯しか運ばれず、人の出入りもない。
やがてそこには恐ろしい秘密があることが発覚した。

この世のものとは思えない美しい糸は、少女たちの体を餌にして生み出されていた。
体のかたちはそのままに幼虫に巣食われ、やがては煮られて糸になる。
すでに月経がはじまっている少女たちはよい糸の材料になれないからと、
仲間の少女たちから糸を取る仕事を強制される。
それを3年間乗り越えた者こそが模範工女の真の姿だった。

煮繭の匂いなど知らないのに、そのむっとした空気が伝わってくる。
半透明になった少女の体の中でうごめく蚕の姿が浮かぶ。
なんともグロテスクでホラーな物語が、おとぎ話のような丁寧な文体で
淡々と語られる。

好みは分かれるが、怖さはひときわ。

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