息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

ピノッキオ

2013-03-30 10:53:51 | 著者名 か行
カルロ・コッローディ 著

ディズニーの可愛らしいキャラクターのイメージが強い。
しかし、物語自体はさまざまな比喩や深い意味に満ちている。

初めて手にした本が結構渋めの挿絵だったせいか、可愛いだけの
ピノッキオはなんだかよくできた偽物のような気がしていた。
無邪気で微笑ましくて、おじいさんが大好きな愛らしい人形。
私がもつイメージはそこにひとさじの毒があったのだ。

いうことを聞かない子どもが陥る罠は、危険なのに甘く魅力的だ。
こちらが簡単だよ、楽しいよ、と言われればすぐになびく。
一瞬のためらいも、こうすればバレないよ、結果は変わらないよ、という
言葉の前には何の力ももたない。
帰ると叱られるからもう少し遊んでから、自分だけでもここならなんとかなる。
なんの根拠もない先伸ばしの考えが、さらに子どもをがんじがらめにしていく。

この悪い子こそ人間のもつ姿。
大人たちはピノッキオの困った様子に自分を重ね、ため息をつく。

多くの冒険と失敗を重ね、おじいさんをフカのお腹から救い出し、
しだいにピノッキオは努力することを身につける。
そんなある日、妖精の手によって念願かない人間の子どもとなる。

ピノッキオが体験する冒険は、一つひとつが鮮やかに心に残るものばかり。
さんざんな経験ののちおだやかな暮らしに落ち着くというのも、
なんだか人生を表している気がする。

幼い頃ワクワクしながら読んだ本を、大人になって深読みする楽しさ。
この作品はそれを堪能させてくれる。