宮尾登美子 著
日本画家・上村松園の生涯を描く。
運命に翻弄され、ただただ美しいものを愛する心のみを頼りに生きた女性。
男性優位の世界にあって、さまざまな中傷や妨害を受けるが、
自分にしかできない美を追求し、素晴らしい作品を残した。
なかでも女性が身につけている着物や飾りのこまやかさは、それを着ける
喜びを知るものならではの、心浮き立つような彩となっている。
つうさん・津也としては、それほどに強い人にも思えないのに、
絵がからむとたくましい。
展覧会に出品した絵の顔部分をつぶされるという嫌がらせにも、
「そのまま見てもらえばよい」と返し、思わぬ妊娠も一人で産む道を選ぶ。
決して強いばかりではなく、清いだけでもない。
どろどろした情念も秘めているし、嫉妬や恨みも人並みにある。
その人間臭さや愚かさまでも昇華させているのが素晴らしい。
そこには常に娘を信じ、男社会での苦労を察して支える母の姿があった。
この母子のつながりは深く、子育ても仕事もその力なしには成し得ていない。
津也が恋の淵へと落ち込んでしまった時期にも、その苦しさを理解し、
帰る場所を用意していたのは母だった。
普通の結婚がいまよりもずっと重要で当たり前だった時代に、娘の才能と生き方を
信じた母の強さには頭が下がる。
ドラマティックで、しかも実在の人物が多数登場する本書であるが、
あくまでも創作である。
著者のエッセイで、さらりとメモした松園の筆跡の素晴らしさが書かれている。
そこに存在した人のあとを追い、残したものを調べるという膨大な作業の末に
こんな物語が紡がれたのかと思うと、胸がときめく。
日本画家・上村松園の生涯を描く。
運命に翻弄され、ただただ美しいものを愛する心のみを頼りに生きた女性。
男性優位の世界にあって、さまざまな中傷や妨害を受けるが、
自分にしかできない美を追求し、素晴らしい作品を残した。
なかでも女性が身につけている着物や飾りのこまやかさは、それを着ける
喜びを知るものならではの、心浮き立つような彩となっている。
つうさん・津也としては、それほどに強い人にも思えないのに、
絵がからむとたくましい。
展覧会に出品した絵の顔部分をつぶされるという嫌がらせにも、
「そのまま見てもらえばよい」と返し、思わぬ妊娠も一人で産む道を選ぶ。
決して強いばかりではなく、清いだけでもない。
どろどろした情念も秘めているし、嫉妬や恨みも人並みにある。
その人間臭さや愚かさまでも昇華させているのが素晴らしい。
そこには常に娘を信じ、男社会での苦労を察して支える母の姿があった。
この母子のつながりは深く、子育ても仕事もその力なしには成し得ていない。
津也が恋の淵へと落ち込んでしまった時期にも、その苦しさを理解し、
帰る場所を用意していたのは母だった。
普通の結婚がいまよりもずっと重要で当たり前だった時代に、娘の才能と生き方を
信じた母の強さには頭が下がる。
ドラマティックで、しかも実在の人物が多数登場する本書であるが、
あくまでも創作である。
著者のエッセイで、さらりとメモした松園の筆跡の素晴らしさが書かれている。
そこに存在した人のあとを追い、残したものを調べるという膨大な作業の末に
こんな物語が紡がれたのかと思うと、胸がときめく。