息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

とくさ

2013-03-19 10:20:15 | 著者名 は行
福島サトル 著
4つの後味の悪い短編集。

この後味というのは人によりけり、好みによりけりだ。
すっきりと解決したい派にはえ~っという感じであろうし、
不気味な空気感をよしとする派には、これもありという感じであろう。
空気のよどみ、足元のゆらぎ、微妙な不安感などはたっぷり味わえる。

祖父母が住んでいた山の中の家の裏庭に植えられていたとくさ。
子供心にその姿が珍しくて印象に残っている。
見た目は小さな竹のようなのに、葉がないせいかさらに無機質で、
キュッと引っ張ると節から抜ける面白い植物。
庭で見つけた雲母のかけらや、肉桂の根の香りとともに懐かしく蘇る記憶だ。

交じり合うことのない夢と現実、手に取れそうでつかめない幻想の世界が
これほど似合う植物もない気がする。
物語とは特に関係がないわけだが。

何が怖いって人が怖い。
人が口にする言葉が怖い。
そんな恐怖の原点に立ち返る。いや立ち返らざるを得ない物語だ。