息をするように本を読む

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と、なんだかだらだら日常のことなども

灰色熊の伝記

2013-03-09 11:09:44 | 著者名 さ行
アーネスト・トンプソン・シートン 著

狼王ロボ』と同じ野生動物のシリーズ。

世界でももっとも大きな陸上生物・灰色熊
その類まれなる力で、牛や豚を遅い、時として人間にも被害をもたらす。

絶対的な力の差、体格の違い、どうしてもかなわない相手を目の前にし、どう立ち向かうか。
高い知能をもつだけに、一度人間の味を知れば、再び襲うという。

早くに母を失い、ようやく成長した灰色熊・ワーブ。
彼にとって人間はしたしみを感じる存在であるが、手加減などは知らない。
結果として人間たちから害獣とみなされ、追われる立場となる。

自力で大きくなり、自信をもつワーブ。その力を発揮し、森の王者として風格を増していく。
過酷な運命は彼にゆとりを与えず、ただ殺すことに価値を見出していく。
銃や罠にもその高い知能で対抗し、さらに強くたくましく生き延びる。

しかし、かれにも老いが忍び寄る。
ワーブの縄張りに現れた若い熊は頭が良く、木の切り株を踏み台にして、実際の背丈よりはるかに高い位置に
縄張りのしるしをつけた。
まだ見ぬ敵に怯えるワーブ。やがてその恐怖と古傷の痛みに耐え兼ねて硫黄ガスを吐く死の谷での眠りを選ぶ。

圧倒的な力の世界で生きている動物は、相手にその差をみとめると身を引くしかないのだ。
それは生命の、生き物の掟である。

それにしても巨大な熊というのは世界各地でさまざまな物語を生んでいる。
日本では『羆嵐(くまあらし)』など、有名な実話も多数ある。
高度な知能をもつだけにエピソードには事欠かない。

今思えばこれ、子どもに読ませるには刺激的ではないか?