息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

クレオパトラ

2013-03-29 10:03:48 | 宮尾登美子
 


宮尾登美子 著

著者がエッセイなどでも時々触れていたクレオパトラ。
様々な女性の姿を描くうちに、スケールの大きい女王の姿に
興味を惹かれたのだろうか。

念願かなって誕生したこの作品は、これまでのクレオパトラ像を
覆すものだった。

周囲を的に囲まれ、常に暗殺の危険にさらされつつ戦い続ける運命。
愛する人に出会いながらも、その感情に溺れることは許されず、
常に国家のために生きる女性。
どこまでも公に生きたクレオパトラだが、著者は違う視点で見た。
彼女の人間臭さや生々しさを切り取り、心の揺れや苦しみを
リアルに描き出したのだ。

結果、伝説の女としての魅力はやや薄れたように思う。
遠い異国の神秘的な女王だったクレオパトラは、著者の筆にかかると
身近な存在になり、恋愛や嫉妬に苦しむ女になる。
これは好みの分かれるところだと思う。

そのぶん長さのわりには歴史的な部分が減っている気もするし。

しかし、著者の作品がとても好きな私としては読み応えがあった。
独自の切り口も、私自身の理解の助けとなった。

いきなり読むクレオパトラとしてはあまりおすすめできないが、
ひとつの新たな見方としては斬新で面白い。