息をするように本を読む

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と、なんだかだらだら日常のことなども

狼王ロボ

2012-11-10 10:49:46 | 著者名 さ行
アーネスト・トンプソン・シートン 著

「シートン動物記」で知られる博物学者の創作物語。
「ファーブル昆虫記」にならぶ魅力満載の作品で、子ども向きのやさしい読み物にも
なっており、本が好きでなくてもこれだけは読んだ、という人も多い。

カナダの博物学者・シートンは、アメリカで牧場経営をしている知人の依頼を受ける。
現地で「魔物」と呼ばれている「ロボ」は大きなからだと知性を併せ持ち、さらには
巨大な牛を引きずるほどの体力にも恵まれている。
多くの牧場主やハンターが彼に挑んだが、すべて失敗に終わり、家畜や猟犬は
ただ殺されていくばかりだ。
動物の生態に詳しいシートンは、この状況に風穴を開けることを望まれていた。

シートンは何ヶ月もかけてロボの群れを観察する。そして知れば知るほど、
ロボの賢さ、群れの統率の取れ方や優秀さに舌を巻く。
全く弱点がなかに見えたロボの群れだが、唯一「ブランカ」というたった一頭の雌が
例外的にロボから寛大な扱いをうけていることがわかる。
ブランカはロボの妻であり、唯一の弱みといえた。
綿密な計画のもとブランカは罠にかかり、殺される。
ロボは混乱し、ついに捕獲されるものの、食べ物にも水にも目もくれず餓死した。

賢いはずの人の卑怯さと、害獣であるはずの狼の気高さ。
そんな対比が心に残る物語だ。
最愛のブランカを失ったことで全てが崩れていくさまは、狼の知性の高さや
群れの統率の難しさなど、さまざまなものを象徴する。

まだ未開の地が残るアメリカの広大な大地と、そこに残る野生動物たち。
スケールが違う自然の力に圧倒される。
牧場主にとって確かに狼は驚異だった。
しかしその土地は人間によって勝手に開拓されたことを思うと、ただ害獣と言い切って
いいのかという思いもわいてくる。
そうしなければ生きられない人間の勝手さと翻弄される自然と。

子供向けアニメなどにもなった本書だが、来年はミュージカルになるらしい。

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