哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

池田晶子さんの本を一冊選ぶなら

2009-12-20 19:03:21 | 
 最近また雑誌などで本特集が多い。そこで、池田晶子さんの著作の中から、誰かに薦めるために一冊を選ぶとしたら、何を選ぶだろうか。

 池田晶子さんの著作を初期から最後まで比較すると、当然ながら文体も異なり、初期のほうには、なるほど説明を尽くそうとする意思は感じられず、とても一般大衆に理解してもらおうとする文体とはいえないようである。「なんでこんなこともわからないのか」という嘆息がきかれそうな、上から目線にみえる池田さんの文体は、一般の人には独善的と映りやすいのだろう。

 ただ子供向けは別で、例えば『14歳からの哲学』については、子供のほうが真理をしっかり掴める、という直感を持ちながら書いている文体であり、大変目線がやさしい。そしてその後、池田さんも晩年になればなるほど、説明をできるだけ尽くそうとする姿勢を見せた文章が多くなった。

 大人向けでも講演会の記録のようなものは、語り口がやさしい。しかし、どうもそういう文章は逆に池田さんらしく感じられない。いわば牙を抜かれたライオンみたいなものなのだ。

 あえて池田さんらしい文章といえば、やはりがつんとぶっ飛ばすような文章がよい。その意味ではとりあえず一冊選ぶとすれば、『残酷人生論』がお薦めのように思う。
 人生において救いを求めようとするとき、その救いとはどういうことか、と問えば、救いというのは存在をありのままに認めることだと、正当にも論拠づける。そして、ありのままを認めるのであれば、救われたことになっていないではないか、と言われれば、そうなのだ、と残酷に言い放って煙に巻く。大変池田さんらしいと思うのだが、かえって池田さんが嫌われてしまうだろうか。