哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

日めくり池田晶子 38

2011-05-29 04:58:58 | 哲学
 前回経済学的思考をきちんと行うべきとする本を紹介したが、経済学では合理的人間が想定されており、基本的に利益最大化や効用最大化を合理的に選択するのがその人間像だ。それはそれで、論理的思考になじむ。さらに最近は行動経済学など、人間の非合理的行動の研究も多いと聞き及ぶが、それとても損得を基準に選択する点では変わらないであろう。しかし形而上学では、根本的に人間像が異なる。それについて言及した文章を取り上げてみよう。




38 形而上学には値段はつけられない



 なぜなら、値段すなわちこの世の価値とは損得だが、形而上の価値は善悪だからである。多くの人は、損得と善悪とを間違えている。得をするために人間が悪くなることが、どうして善いことなのだろうか。損をしても自分が善くなるのなら、どうしてそれが悪いことなのだろうか。(『考える日々Ⅲ』「私の値段はおそらく0円」より)