哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

『古典力』(岩波新書)

2013-01-14 01:26:26 | 
表題の本の著者である齋藤孝氏は、いろんなテレビ番組によく出ていて、あまり好感を持っていなかったし、表題の本も「○○力」といういかにも流行りきった安易な題名であるので、中身の期待はあまりしていなかったのだが、気になって読んでみたところ、これこそは若者が古典をひもとくにあたって是非読むべき本であると思った。

人生の若いうちに古典を読むことをしなければ、絶対に後悔する。そのことは今の若い人たちにこそ絶対にわかってもらいたいことだ。この本のように古典を入門的に取り上げている本は、新書だけでも数多くあるが、この本が優れているのは、冒頭にある古典の読み方の説明が充実していることだろう。我々一般人が読むときの読み方に沿うようにアドバイスされており、専門分野に拘泥しない読み方をしてほしい高校生や大学生にお薦めである。もちろん好みもあるので、この本に載っている全てを読まなくてはならないわけではないものの、少なくとも半分以上は教養として読んでおきたいように思う。

この本で取り上げられている古典もほぼ納得できるものだが、ただ一点だけ引っかかったのは『共産党宣言』である。確かに薄くて読みやすいが、歴史的事件としては格別、繰り返し読みたい本になるだろうか。マルクスで取り上げるなら、その説明文中で触れている『資本論』にすべきではないかと思う。『資本論』が大部だからといっても、古典の読み方としては、それを全部読み切る必要はなく、拾い読みでも構わないのだから。