山スキーと山歩き みやぶろぐ

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2015山スキー訓練・赤倉山

2015-01-21 | 2014-15山スキー
山域山名:妙高山系・赤倉山(新潟県)
期  日:2015年1月18日(土)
参 加 者:熊トレ山スキーチーム(計14名)
行動記録:江南(5:30)=妙高池の平スキー場P(8:20)=カヤバゲレンデTOP1430m(9:50)→林道1590m(10:30)→赤倉山前衛1920m(12:00/ピットチェック/12:35)~旧カナメゲレンデ(13:00)…ビーコン訓練(13:30~16:15)…池の平スキー場BASE(16:30)
<天候:朝くもり後晴れ>

 2004年から毎シーズン実施している熊トレの山スキービーコン訓練。今年は14名が参加、場所は昨年同様に妙高池ノ平スキー場の閉鎖ゲレンデ(カナメコース)で実施しました。
 今回の訓練目的はいつもの「ビーコン訓練」と「ラッセル技術習得」、そして「山スキーリーダー養成」を据えた。
 熊トレ山スキーチームは22名だが、リーダーはそれほど多くはなく、固定化の傾向と高齢化が進んでいるので、若い会員のリーダー養成が急務である。


今日はスキー子供の日でこどもはリフト無料。たくさんのファミリーで賑わう。




【午前は1920mピークを目標にラッセル訓練】
 出発前に各パーティのCLとSLにリーダーの注意点を伝える。
・効率的な登路ルートの選択
・下山(今回は訓練場所)時刻を逆算したタイムマネージメント
・危険箇所の把握と常に地形図で現在地を確認
・斜面方向別の雪質チェックと雪崩リスクマネージメント
・パーティメンバーの行動観察
・登りながら滑降ルートの選定
・滑降技術を考慮したオーダー配置と先行するリーダーの停止ポイント
・天候判断……などなど。

参加者14名を4人と5人づつの3パーティに分けて出発。
約束事は、
・1920mピークを目標にパーティごとに登る。
・他パーティのトレースを絶対に使わず、あえて自分たちのルートでラッセルして登る。


パーティリーダーからビーコン電源の確認。




閉鎖されたカナメコースを登り始める。




前日の大雪でラッセルは膝下、しかも密度の濃い重雪。先行者のトレースはなく、訓練としては「最高の条件」か。




雪に埋もれるカナメリフト。




林道を横断。




パーティごとに適宜交代しながらラッセルして高度を稼ぐ。




初心者にはラッセルのコツを教える。




ルートとラッセル交代の指示が飛ぶ。










3本のトレースがピークを目指す。




中層を覆っていた雲も次第に消えて晴れ間が多くなり、頭上の霧氷が美しく輝く。




今年は豊富な積雪で、藪は一切埋もれていた。




ピーク下の少し急な斜面を登っているとワッフ音がした。すぐ下と前方にブナの木があり、すぐに周囲を見回したが、亀裂などの変化はなかったが、メンバー全員に無木立斜面には入らないよう伝えた。




3パーティが前後するように順調に進み、約2時間で1920mピークに立つ。










この深雪ラッセルを全員がこなして標高差500mを2時間で登った。
全員のラッセルする様子を観察していたが、この訓練でラッセルのコツを掴んだメンバーもいた。
この条件のなか3パーティとも登れたのは、なかなか誇れることだと思う。




1920ピークでピットチェックを行う。隣の前山では昨日行方不明になった山スキーヤーを捜索するヘリが飛んでいたので、より緊張感をもってテストした。




安全な南斜面を80㎝ほど掘ったが、前日大雪前の下層は確認できなかったが、雪面から20~30㎝とその下層に、顕著ではないが弱層と滑り面になりうる層があった。
直下でワッフ音もあり、判断は要注意。




そのうちに外国人パーティとすぐに日本人パーティが登ってきたので我々は下山する。




リーダーを先頭に滑降開始。







日射で少し重たくはなったが、雪質は良好でディープパウダーを楽しんだ。













【午後はビーコン訓練】
昼食を取った後、閉鎖ゲレンデのカナメコース最上部でビーコン訓練を実施した。基本的に午前のパーティごとに行動する。

まずは、予備ビーコンを雪面において、各メンバーが電波誘導法で目標のビーコンに向かう。あえて発信ビーコンを雪面上の見える位置において、捜索者のデジタルビーコンの方向と距離を声を出して、お互いに確認をしながら近づいた。
・真っ新な雪面には導かれた軌跡が残るので、ビーコン電波の向きを確認する。
・概ね楕円形になるはずだが、ビーコンを置き方によっては、ほぼ直線になったパーティもあった。
・デジタルで表示される距離は、直線距離のだいたい1.5倍となることを確認。




次は、幅20m×長さ30mの仮想デブリを作り、そこにビーコン1個を浅い場所に埋めて、ザックを背負った状況でシールで登行中に1人が埋没したという想定でのビーコン探索訓練を行った。

待機した場所は、デブリ上端から10mほど離れた場所。
・一番先に行うことは状況分析。

雪崩を目撃したメンバーは、埋没者がどこで巻き込まれて、どこまで流されたか、見えなくなったのは
どこか、雪面に出た残置物はないかを確認する。
・次に、ビーコン探索。
・そして、ケアと応急措置。

リーダーから「雪崩!!」の大声の後、「サーチモード」の指示で速やかに全員がビーコンスイッチを受信状態にする。ある程度の間隔を取って埋没者に近づく。




直線で30m以上離れていると、ビーコンの機種によっては最大受信距離を超えているため、捜索モードにしてもすぐには反応はない。
電波を受信したら、他メンバーに聞こえるように距離を大声で叫びながら、ビーコンの指示方向に向かって埋没者に近づき、数字が約2mになったら直角法で埋没箇所を発見する。
結果は、1分10秒から遅くとも2分程度で発見。


次は、ビーコン2個を埋めて複数者埋没を想定した。捜索者の位置によって、電波を受信するビーコンが違う。お互いに声を掛け合うことが必要。
ひとつ目は1分から2分、ふたつ目は3分から遅くとも7分で発見。ひとつ目を発見したら、ロック機能を活用する。(電源をオフしてもいいが、再び雪崩が起きた際には捜索不能になる恐れがある)




ひとつ目を発見した後の埋没者掘り出しと二つ目のビーコンの捜索を同時にできればベストだが、どのように分担をするか。

訓練全般を通して、ビーコン捜索が早い者とそうでないもののレベル差が非常に大きいので、掘る者と探す者を分担した方が早いかもしれない。(ただし、現場でそんな余裕があるだろうか)

最後は、滑降中に雪崩で埋没したと想定。ボーゲンでストックを持ちながらビーコン操作して、信号をキャッチしながら近づいていかなければならないので、スキー技術とビーコン操作のより高度なテクニックが必要である。
結果は、1分10秒から遅くとも2分程度で発見。これも発見者は変わらず。


気になることがあった。2人のメンバーがarva 3Axesを使っているが、サーチモードの切り替えスイッチが捜索している時に送信モードに戻ってしまい(おそらくかがんだ時に押されて)、捜索が混乱したことが2度あった。使用者は何らかの対策をする必要がある。


ビーコン探索訓練全般として、
・サーチモードに切り替えるのに手間取るメンバーがまだ多い。オーバー手袋をした状況でも、いかに切り替えられるか。
・電波受信が遅れた背後のメンバーへの指示と、スコップ&ゾンデの準備をいかに早くできるか。
・スキーを履いたままでの直角法はかなり難しいので、どこでスキーを脱ぐか。
・リーダーの指示を待つのではなく、自分のいる位置から何をするべきなのか、瞬時に判断して動かなければならない。
・今回はビーコン探索に経験の浅いメンバーがいたので、ビーコン操作を行ったが、掘り出しにも技術と分担(V字コンベアベルトメソッド)と何よりパワーが必要となる。
・メンバーがいろいろな機種を使っているので、電源のオンオフのやり方は確認する必要がある。




他パーティの訓練状況を見ることは、いい点、改善すべき点がよく分かる。
1分1秒でも早く埋没者を発見するために、これからも個々に技術を磨かなければならない。