ウクライナがロシアの攻撃を受け続けて昨日で6カ月、島岡美延です。「戦争の長期化」と聞くと日本の戦争を考えてしまいます。犠牲者が多かったのは敗戦が見えていた1945年。終戦の日のあとのこと、どこまで知っていますか?
井上卓弥著『満州難民 北朝鮮・三八度線に阻まれた命』(幻冬舎文庫)を読むと、日本政府の傍観者ぶりに絶望的な気持ちに。著者は紛争地帯など取材した記者で、幼い子どもたちを連れて帰国した祖母の手記などを元にした本書。何が起きているか知るすべもなく、どこへ行けば助かるのかもわからなかった一人一人が、命をつないだ記録。
1945年8月、ソ連軍の侵攻から逃れるため、満州から多くの日本人が北朝鮮に避難。飢え、寒さ、伝染病。本土終戦の日から始まった地獄の難民生活で次々と命を落とす知人、家族。難民、いや棄民だったという記憶を辿るのは、どれほど辛いか。著者も祖母が戦争を語るのを聞くことはなかったそう。遺された過酷な記憶を引き継ぐのは、戦争を知らない私たちの使命。